亜急性虹彩炎の症状と診断と治療

亜急性虹彩炎と診断と治療

亜急性虹彩炎:臨床で迷いやすい要点
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所見は「前房細胞・フレア」を軸に評価

スリットランプで前房の細胞とフレアを定量し、治療反応や再燃を追います(記載の共通言語としてSUN分類が便利)。

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治療の基本はステロイド点眼+散瞳

炎症を抑えるステロイド点眼と、虹彩後癒着予防の散瞳薬を組み合わせ、所見改善に合わせて漸減します。

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合併症は緑内障・白内障を常に意識

炎症そのものと治療(ステロイド)双方で眼圧上昇が起こり得るため、眼圧と水晶体変化を定期確認します。


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亜急性虹彩炎の症状と経過と再発

亜急性虹彩炎は、急性のように激烈な痛みだけで始まらず、数日〜数週間かけて「充血」「羞明」「かすみ」「軽い眼痛」などがじわじわ増えるパターンがあり、患者本人は疲れ目や結膜炎として様子を見ることがあります。

一方で、前部ぶどう膜炎の炎症は周囲組織へ波及しうるため、放置や治療中断により視力低下が固定化するリスクがあり、「軽そうに見える」段階で拾うことが重要です。

医療従事者としての問診では、発症様式(突然か潜行性か)、過去の同様エピソード(再発性か)、片眼か両眼か、全身症状(皮疹・口内炎・関節痛など)を短時間で整理し、原因検索の方向性を決めます(ぶどう膜炎全体では原因が多様で、全身疾患が隠れるため総合判断が必要とされます)。

再発の観点では、「炎症が落ち着いた=治癒」ではなく、点眼の自己中断で再燃しやすい患者が一定数います。ぶどう膜炎領域では経過の表現(acute / chronic / recurrent など)を定義して共通化する流れがあり、診療録上も「再発」「寛解」「活動性」を意識して記載すると、引き継ぎ・紹介時の情報価値が上がります。

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また、再燃を繰り返す症例では、感染性(ヘルペスなど)や免疫異常(サルコイドーシス等)の可能性が上がるため、眼所見だけでなく、初回から「何を除外すべきか」をチームで共有しておくと後手になりにくいです。

亜急性虹彩炎の診断とスリットランプと前房細胞

亜急性虹彩炎(前部ぶどう膜炎の一型)を疑ったら、診断の中核はスリットランプでの前房炎症評価です。MSDマニュアル(医療者向け)でも、前部ぶどう膜炎は前房の「細胞」と「フレア」を認めることが診断の基本とされ、暗室で細い強光を前房にフォーカスすると最も明瞭になります。

日本眼炎症学会の「ぶどう膜炎診療ガイドライン」でも、前房細胞・前房フレアを定量評価し、治療効果判定を客観化する重要性が述べられています。

実務的には、以下の所見を“セット”で確認すると見落としが減ります。

・前房細胞(cell)と前房フレア(flare):SUNの評価スケールを使うと記載が揃う(例:0、0.5+、1+…)。

・角膜後面沈着物(KP):粒状か豚脂様か、色素を伴うかで鑑別のヒント(例:ヘルペス関連では特徴的所見が挙がる)。

・虹彩後癒着:瞳孔形状の変形、散瞳で解除可能か、瞳孔ブロックの兆候はないか。

・眼圧:炎症性眼圧上昇やステロイド反応性眼圧上昇を想定し、初診から測定をルーチン化します(続発緑内障の議論もガイドラインに記載)。

意外と軽視されがちなのが「定量の継続」です。初回に“虹彩炎っぽい”で終わると、漸減中に再燃したときに「どの程度悪化したのか」が比較できません。前房細胞・フレアのグレード、眼圧、散瞳の必要性(癒着の有無)を毎回同じフォーマットで書くと、治療調整の精度が上がります。

亜急性虹彩炎の治療とステロイド点眼と散瞳

亜急性虹彩炎の初期治療は、原則として局所治療が中心で、炎症を抑えるステロイド点眼が基本になります(非感染性ぶどう膜炎ではまずステロイド点眼から開始する、と日本眼科医会の解説でも示されています)。

日本眼炎症学会ガイドラインでは、前房に炎症細胞がみられる場合にステロイド点眼を開始し、同時に「瞳孔管理」として散瞳薬(必要に応じてアトロピンなど)を併用すると明記されています。

散瞳薬は、痛みの軽減(毛様体痙攣の緩和)だけでなく、虹彩後癒着の予防・解除という“視機能予後に直結する役割”があるため、症例ごとに必要性を判断します。

点眼設計で重要なのは「開始強度」と「漸減」です。ガイドラインでは、炎症所見の改善を確認しながら点眼回数を徐々に減らし、炎症細胞が消失した後も1〜2週間は継続し、再燃がなければ中止する、という流れが示されています。

この“消えてからの1〜2週間”が短すぎると再燃が増え、長すぎると副作用リスクが上がるため、前房所見の定量がそのまま治療安全性に効いてきます。

副作用としては、局所ステロイドでも白内障進行や眼圧上昇(ステロイド緑内障)に注意が必要で、ガイドラインでも十分注意するよう強調されています。

医療者向けの説明では、患者が最も不安になりやすい「いつ治るのか」より先に、「途中でやめると再燃し、癒着や眼圧問題で治療が長引く」点を短く具体的に伝えると、アドヒアランスが上がります(治療のポイントとして再発・再燃を防ぐことが重要とされます)。

亜急性虹彩炎の鑑別とヘルペスと全身疾患

亜急性虹彩炎の鑑別は、「感染性か非感染性か」を最初に分ける発想が臨床上安全です(ぶどう膜炎は免疫異常による非感染性と、病原体による感染性に大別されると解説されています)。

感染性の代表としてヘルペス関連前部ぶどう膜炎があり、ガイドラインではHSV/VZV/CMVが原因となり得ること、早期所見として角膜後面沈着物・高眼圧・虹彩萎縮などが挙げられ、前房水PCRなどで同定することが有用と記載されています。

ここでの落とし穴は「ステロイド単独で押してしまう」ことです。ガイドラインでも、ヘルペスが原因の虹彩毛様体炎は他の虹彩炎と異なり、ステロイド点眼単独では効果がなく慢性化することがある、と注意喚起があります。

非感染性側では、サルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病、ベーチェット病などが背景にあり得て、日本眼科医会の一般向け解説でも、問診・眼科所見・全身所見を総合して診断し、必要に応じて他科連携すると説明されています。

全身検索の導入は症例の重症度や再発性により濃淡がありますが、少なくとも「呼吸器症状」「皮膚」「神経」「口腔内」「関節」などのスクリーニングをテンプレ化すると、見逃しが減ります。

また、ガイドラインには疫学として日本での原因疾患頻度(サルコイドーシスなど)や、感染性ぶどう膜炎の割合が示されており、地域差(HTLV-1関連など)も議論されています。

臨床で意外と役立つ“独自視点”としては、患者が「亜急性=軽い」と受け取りやすい点に注意することです。症状が軽いほど自己判断で点眼を飛ばしやすく、結果的に再燃→癒着→眼圧上昇という悪循環が起きます。医療者側が「炎症の強さ」を前房細胞・フレアで見える化し、数値(グレード)で説明すると、行動変容につながりやすいです(所見の定量が治療効果判定に重要とされています)。

亜急性虹彩炎の合併症と緑内障と白内障

亜急性虹彩炎で実害が出るのは、炎症そのものだけではなく合併症です。日本眼科医会の解説でも、ぶどう膜炎の主な合併症として白内障と緑内障が挙げられ、炎症が強い・長期化した場合に視力が回復しないことがあると述べられています。

日本眼炎症学会ガイドラインでも、続発緑内障の原因として虹彩後癒着による瞳孔ブロック、周辺虹彩前癒着、房水流出路障害、さらに治療薬としてのステロイド副作用などが整理され、病態に応じた治療選択の重要性が書かれています。

実務での注意点は、以下の“二重の眼圧上昇リスク”を同時に追うことです。

・炎症で上がる:隅角炎症、線維柱帯機能障害、虹彩後癒着→iris bombéなど。

・ステロイドで上がる:点眼でも反応する体質があり、長期化でリスク上昇。

白内障についても、炎症の慢性化そのものに加え、ステロイド点眼が長期化すると進行要因になり得るため、視力・水晶体所見を定期的に取り、患者説明にも含めます(点眼治療では白内障進行やステロイド緑内障に注意と明記)。

さらに、虹彩後癒着が進むと瞳孔形状の変形だけでなく、将来的な白内障手術の難易度にも影響し得るため、散瞳薬の目的を「痛み止め」ではなく「癒着予防」として伝えると理解されやすいです。

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診断・治療の根拠や所見の定量(前房細胞・フレア、ステロイド点眼、散瞳、合併症など)。

日本眼炎症学会 ぶどう膜炎診療ガイドライン(PDF)

患者説明に使いやすい、ぶどう膜炎の原因分類・検査・治療の全体像。

日本眼科医会 目についての健康情報「ぶどう膜炎 なぜ?どうしたらいいの」