アクタリット販売中止の経緯と影響
先発品も後発品も全て消える薬剤があります。
アクタリット販売中止の背景と時系列
抗リウマチ剤アクタリット錠は、関節リウマチ治療において比較的早期の段階で使用される mild DMARD(疾患修飾性抗リウマチ薬)として長年処方されてきました。しかし、原薬供給の問題により、製品の製造継続が困難な状況に陥っています。
沢井製薬のアクタリット錠100mg「サワイ」は、2022年2月から供給停止の状態となっていました。規格に適合した原薬が確保できない状況が続き、2025年6月に正式に販売中止が発表されたのです。薬価基準からの削除も決定され、経過措置期間満了時期は2027年3月末と設定されています。
さらに深刻なのは後発品だけではありません。
先発品のオークル錠100mg(日本新薬)も、2025年9月8日に販売中止が発表されました。在庫消尽予定は2026年12月頃とされており、その後は経過措置期間に入ります。もう一つの先発品であるモーバー錠100mg(田辺ファーマ)については、現時点では通常出荷が続いているものの、同じ原薬を使用する製品であるため、今後の供給状況には注意が必要です。
つまり原薬が基本です。
原薬の確保困難という根本的な問題は、単一のメーカーの問題ではなく、アクタリット製剤全体に影響を及ぼす構造的な課題となっています。原薬の製造が海外に依存している場合、その国の状況や国際情勢に供給が左右されるリスクが指摘されてきましたが、まさにその懸念が現実化した形です。
沢井製薬の公式案内文書(PDF)には、販売中止の詳細な経緯と代替候補製品が記載されています。
アクタリット中止が関節リウマチ治療に与える影響
アクタリットは、オーラノフィンと並んで効果はさほど高くないものの、重篤な副作用が少ない mild DMARD として位置づけられてきました。日本リウマチ学会のガイドラインでも、比較的早期の関節リウマチで骨破壊が著明でなく炎症反応も高度でない場合に使用される薬剤として記載されています。
効果については中等度改善率が37%程度とされており、メトトレキサート(MTX)に比べると控えめな数値です。しかし、副作用プロファイルが比較的穏やかであることから、高齢者や腎機能障害のある患者、MTXが使用できない患者などに選択されてきた経緯があります。
現在アクタリットを服用している患者数は正確には把握されていませんが、mild DMARD の使用率から推測すると、一定数の患者が影響を受けると考えられます。特に、MTXの副作用で治療を継続できなかった患者や、生物学的製剤の導入前段階でアクタリットを使用していた患者では、代替薬への切り替えに際して新たな副作用リスクの評価が必要になります。
薬効の違いに注意です。
患者によっては、代替薬に変更することで効果が変わったり、新たな副作用が出現したりする可能性があります。イグラチモドは比較的安全性が高いとされていますが、MTXと比べると抗炎症作用が異なるため、痛みを感じやすくなることも報告されています。
処方変更のタイミングも重要な課題です。経過措置期間は2027年3月末までとされていますが、在庫状況によってはそれより早く入手困難になる可能性があります。医療機関では、早めの処方変更計画を立てる必要があるでしょう。
代替薬としてのイグラチモドとメトトレキサートの比較
沢井製薬の販売中止案内では、代替候補製品として「イグラチモド錠25mg『サワイ』」と「メトトレキサートカプセル2mg『サワイ』」が提示されています。これらの薬剤は、アクタリットとは異なる特性を持っているため、切り替えに際しては慎重な検討が必要です。
イグラチモド(商品名:ケアラム、コルベット)は、日本で開発された抗リウマチ薬で、MTXとの併用における有効性のエビデンスが認められた国内初の薬剤です。薬価は1錠37.40円(25mg)で、アクタリットの19.80円と比較すると高くなりますが、先発品のオークル錠29.20円よりは経済的な選択肢といえます。
服用方法はアクタリットよりシンプルで、曜日を気にせず毎日朝と夕に服用します。MTXのように週1〜2回の服用スケジュールを管理する必要がないため、患者のコンプライアンスは良好な傾向があります。副作用としては皮疹や肝機能障害が報告されていますが、腎臓への影響は比較的少ないとされています。
メトトレキサートは現在です。
メトトレキサート(MTX)は、関節リウマチ治療の第一選択薬として世界的に位置づけられています。薬価は1カプセル49.70円(2mg)で、週1〜2回の服用が一般的です。効果発現までには1〜2カ月かかりますが、抗リウマチ剤の中で最も確実に効果が期待できる薬剤とされています。
ただし、MTXには葉酸代謝拮抗作用に関連した副作用があり、口内炎、吐き気、肝機能障害、間質性肺炎などに注意が必要です。定期的な血液検査や画像検査による副作用モニタリングが必須となるため、患者への説明と理解が重要になります。
両薬剤の選択基準は、患者の年齢、腎機能、肝機能、既往歴、併用薬、疾患活動性などを総合的に評価して決定します。アクタリットから切り替える際には、これまでの治療効果と副作用の有無を確認し、個々の患者に最適な選択を行うことが求められます。
日本リウマチ学会の抗リウマチ薬情報では、各薬剤の詳細な特徴と使い分けが解説されています。
処方変更時の患者説明と注意点
アクタリットから代替薬への切り替えに際しては、患者への丁寧な説明が不可欠です。薬剤の供給問題による変更であることを明確に伝え、不安を軽減することが重要になります。
まず説明すべきは変更理由です。「製造に必要な原料が確保できなくなったため、メーカーが製造を中止することになりました」と具体的に伝えましょう。患者は「自分の治療が失敗したから薬を変えるのか」と誤解する可能性があるため、供給側の問題であることを強調する必要があります。
次に、新しい薬剤の特徴を説明します。効果の違い、服用方法の変更、予想される副作用、必要な検査などを、患者の理解度に合わせて丁寧に伝えることが大切です。特にMTXへ変更する場合は、週1〜2回の服用スケジュールや葉酸の併用について、具体的な指導が求められます。
副作用の初期症状も重要です。
イグラチモドでは皮疹や発熱、MTXでは口内炎や吐き気などの症状が出た場合、すぐに医療機関に連絡するよう指導します。「このような症状が出たら、次の診察を待たずに連絡してください」と具体的な行動を示すことで、患者の不安を軽減できます。
服薬アドヒアランスの確保も課題となります。アクタリットは1日2回の服用でしたが、MTXは週1〜2回と服用パターンが大きく変わるため、誤服用のリスクがあります。服薬カレンダーの活用や、家族への協力依頼なども検討しましょう。
経過観察の計画も患者に伝えるべき内容です。切り替え後、どのタイミングで効果を評価するのか、どのような検査が必要なのかを事前に説明しておくと、患者の治療への理解と協力が得られやすくなります。
費用面の変化についても触れておく必要があります。薬価が変わることで、患者負担額も変動する可能性があるため、おおよその金額を事前に伝えておくと良いでしょう。
医療機関が今すぐ取るべき対応と今後の展望
アクタリットの販売中止に対して、医療機関では早急な対応が求められています。まず、現在アクタリットを処方している患者のリストアップを行い、優先順位をつけて処方変更計画を立てることが第一歩です。
患者の優先順位付けは、疾患活動性、併存疾患、腎機能・肝機能の状態、年齢、服薬アドヒアランスなどを考慮して行います。特に高齢者や複数の慢性疾患を持つ患者では、代替薬の選択と副作用モニタリング計画を慎重に検討する必要があります。
院内の情報共有も重要です。医師、薬剤師、看護師が連携して、患者ごとの処方変更計画と注意点を共有しておくことで、スムーズな移行が可能になります。特に薬剤師は、代替薬の特性や服薬指導のポイントを理解しておく必要があります。
在庫管理にも注意が必要です。
経過措置期間中であっても、メーカーの在庫が消尽すれば入手できなくなります。定期的に卸業者と連絡を取り、供給状況を把握しておくことが大切です。急な入手困難に備えて、早めの処方変更を進めることをお勧めします。
電子カルテやレセプトコンピュータでの対応も必要です。アクタリットの経過措置期間終了後は、システム上でエラーが出る可能性があるため、事前にシステム管理者と調整しておきましょう。
今後の医薬品供給問題への備えとして、この経験を活かすことも重要です。抗リウマチ薬に限らず、原薬の供給問題は他の薬剤でも起こり得る課題です。複数の治療選択肢を持つこと、代替薬の知識を常にアップデートすること、患者との信頼関係を築いておくことが、今後の医薬品供給不安への備えとなるでしょう。
日本リウマチ学会や各種医療団体では、抗リウマチ薬の供給問題に関する情報提供を行っています。定期的に最新情報をチェックし、適切な対応を取ることが医療従事者に求められています。
厚生労働省の薬価基準削除品目リスト(PDF)では、経過措置期間などの公式情報が確認できます。