アジソンクリーゼ 犬 症状と嘔吐 下痢 虚脱 低血糖

アジソンクリーゼ 犬 症状

アジソンクリーゼの臨床像を一枚で把握
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最優先はショック対応

虚脱・失神・低血圧があれば「診断前に治療」が原則。輸液とステロイド投与の準備を同時進行で進めます。

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電解質だけに頼らない

非定型ではNa/Kが目立たないことも。低血糖・低アルブミン・低コレステロールの組み合わせも重要な手がかりになります。

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再発を減らす設計

維持療法(グルココルチコイド+必要ならミネラルコルチコイド)と、ストレス時の増量ルールの共有が再受診を減らします。

アジソンクリーゼ 犬 症状の嘔吐 下痢 虚脱の見分け方

 

アジソンクリーゼ(副腎クリーゼ)は、犬の副腎皮質機能低下症が生命に関わる状態まで急激に悪化した局面で、ショックや虚脱を伴うことがあり緊急対応が必要です。副腎機能が著しく低下し、強いストレスなどを契機に発症し得る点は、日常診療で「胃腸炎の増悪」に見えて紛れ込みやすい落とし穴です。富士フイルムVETの獣医療従事者向け解説でも、アジソンクリーゼ(Addisonian crisis / Adrenal crisis)は生命の危険にさらされる状態であることが明確に述べられています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
症状は「嘔吐・下痢・食欲不振」といった消化器症状と、「ぐったり」「元気消失」「虚脱」「失神」「けいれん」などの循環・神経徴候が同時に出る(あるいは短時間で連続する)パターンが要注意です。実臨床では、飼い主の主訴が「吐いた」「下痢」だけでも、診察室で立てない、冷感がある、反応が鈍い、脈が弱いといった所見が出ていればクリーゼとして扱う判断が安全側になります。一般向け情報でも、痙攣・失神・虚脱は副腎クリーゼ(アジソンクリーゼ)を疑って速やかな受診が必要と明記されています。参考:https://pshoken.co.jp/note_dog/disease_dog/case101.html
ここで医療者向けに強調したいのは、「症状が良くなったり悪くなったりする経過」自体がヒントになることです。JBVPの解説では、初期は良くなったり悪くなったりする経過が特徴で、ストレスがかかったときに発症しやすく、副腎皮質が90%以上破壊されてから激しい症状が起こると説明されています。参考:https://www.jbvp.org/family/dog/endocrine/02.html
鑑別としては、出血性腸炎、膵炎、異物、腎不全、敗血症、低血糖発作などが並びますが、アジソンクリーゼの怖さは「鑑別を詰めている間に循環が破綻する」点です。したがって、嘔吐・下痢+虚脱で来院した時点で、まずはショックプロトコル(循環血液量の補正、電解質評価、低血糖是正)を開始しつつアジソンの可能性を残すのが実務的です。JBVPも、虚脱で来院する場合は診断確定を待つと手遅れになり得るため、緊急治療を行いながら検査を進めることが多いとしています。参考:https://www.jbvp.org/family/dog/endocrine/02.html

アジソンクリーゼ 犬 症状の低血糖 電解質 ナトリウム カリウム

定型的なアジソン病では、ミネラルコルチコイド(主にアルドステロン)不足により、低ナトリウム血症・高カリウム血症が強く疑いの入口になります。富士フイルムVETの解説でも、アジソン病を特徴づける異常として電解質異常が挙げられ、経験例として著しい低ナトリウム血症に言及しています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
一方で、現場を悩ませるのが「非定型(グルココルチコイド不足型)」です。富士フイルムVETは、糖質コルチコイド(主にコルチゾール)の分泌のみが低下し、通常は電解質異常が認められないタイプが存在すると解説しています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
さらに「意外に役に立つ」所見として、低アルブミン血症や低コレステロール血症が挙げられます。富士フイルムVETは、非定型アジソン病のケースシリーズで低アルブミン血症が多くの例で認められた点を注目情報として述べています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
アジソンクリーゼの定義・拾い上げに関しては、論文ベースの視点も有用です。富士フイルムVETは、回顧研究(Chalifouxら、2023)を紹介し、低血圧・低血糖・顕著な高カリウム血症のいずれかを満たす場合をアジソンクリーゼとしたと説明しています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism

臨床現場の実装としては、次の「検査の見方」を習慣化すると、疑い漏れが減ります(特に夜間・救急で効きます)。

  • 電解質(Na、K)だけで安心しない(非定型がある)。
  • 血糖(低血糖の有無)を初期から確認する。
  • アルブミン・コレステロールが低い慢性消化器症状の犬では、アジソンも鑑別に残す。
  • 低血圧があるなら、検査より先に循環を立て直す。

アジソンクリーゼ 犬 症状のACTH刺激試験とコルチゾール

確定診断の中核はACTH刺激試験で、これができるかどうかは「疑う」ことに強く依存します。富士フイルムVETは、アジソン病の確定診断にはACTH刺激試験が必要で、まず疑えなければ検査・診断に進めないと明記しています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
クリーゼ疑いで「検査か治療か」を迫られたとき、実務的には“採血→治療”の順番を最短で組みます。JBVPの解説は、虚脱症例ではまず点滴準備、採血、血液検査や血糖・電解質測定を行い、低血糖で副腎皮質機能低下症が疑われたら副腎を刺激するホルモンを注射して機能検査を行う流れを示しています(ただし結果はすぐ出ないので治療を進めることが多い)。参考:https://www.jbvp.org/family/dog/endocrine/02.html
もう一つ、あまり一般記事で前面に出にくいが有用なのが「無処置コルチゾール」の使い方です。富士フイルムVETは、消化器症状のようなストレス状態なら通常コルチゾールは基準範囲〜高値を示し得るため、無処置でのコルチゾール低値はアジソン病を疑わせる所見で、初期検査に組み込むことも考慮し得ると述べています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
注意点として、診断がつく前にプレドニゾロン等を投与すると、後から評価が難しくなる場面があります。富士フイルムVETは、うかつに副腎皮質ステロイド剤を投与すると結果が評価できなくなる可能性があるため、非定型アジソン病は疑って狙って検査しないと診断できないと指摘しています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
必要に応じて、論文(医療者の背景確認用)もリンクしておきます。非特異症状で診断が難しい点は総説でも繰り返し述べられ、アジソン病が “the great pretender” と呼ばれることが有名です。参考:https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2797351/

アジソンクリーゼ 犬 症状の緊急治療 輸液 グルココルチコイド

アジソンクリーゼは、治療を早く受けないと命に関わるため、院内では「救急疾患」として初動を標準化しておく必要があります。一般向け情報でも、アジソンクリーゼではけいれん・失神・虚脱などが出るため急いで動物病院を受診とされており、重篤性の認識合わせに使えます。参考:https://wanko.peace-winds.org/journal/30852
治療の柱は大きく「循環血液量の回復」と「不足ホルモンの補充」です。ALL動物病院グループの解説では、アジソンクリーゼはショック症状の改善が必要で、循環血液量を点滴で補充し、足りないホルモンを注射で補うと説明されています。参考:https://www.wizoo.co.jp/infomation/disease/2022/7050/
ステロイド(グルココルチコイド)については、英語圏の教育記事ですが投与薬の考え方が整理されています。Today’s Veterinary Nurseのケース解説では、低副腎皮質機能症の治療にグルココルチコイド補充(例:デキサメタゾン、プレドニゾン/プレドニゾロン)とミネラルコルチコイド補充が含まれること、急性期に静注で開始し経口が可能になったら移行することが説明されています。参考:https://todaysveterinarynurse.com/emergency-medicine-critical-care/addisonian-crisis-in-a-dog/

院内オペレーションとしては、次のように「同時並行」で進めると、抜けが減ります。

  • トリアージ:意識レル、脈圧、CRT、体温、脱水の評価。
  • ルート確保→輸液:ショック対応(循環の立て直し)。
  • 採血:血糖、電解質、腎指標、血液ガス(可能なら)を初期にまとめて取る。
  • 低血糖があれば是正、嘔吐が強ければ制吐と胃粘膜保護も併用。
  • ステロイド投与:アジソンクリーゼを否定できないなら早期に検討。

参考リンク(緊急治療の概要の根拠部分):アジソン病の緊急状態であるアジソンクリーゼでは輸液療法やグルココルチコイド投与が必要。

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アジソンクリーゼ 犬 症状と医原性ステロイド中止の落とし穴(独自視点)

検索上位の多くは「自然発生のアジソン病(原発性)」中心で、クリーゼ=突然の発症として読まれがちですが、現場で本当に怖いのは「医原性の落とし穴」です。すなわち、長期ステロイド投与後に急に中止・急減量してしまい、相対的な副腎不全状態(クリーゼ様)に落ちるケースで、飼い主の申告が曖昧だと見逃しやすくなります。さだひろ動物病院の解説でも、ステロイド薬を急にやめると危険であること、そしてアジソンクリーゼでは激しい嘔吐や下痢、脱水、血圧低下、ショックなどが起こり得ることがまとめられています。参考:https://sadahiro-ah.com/%E7%8A%AC%E3%81%AE%E5%8C%BB%E5%8E%9F%E6%80%A7%E3%82%AF%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%E3%81%A8%E3%82%A2%E3%82%B8%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
医原性が絡むと、問診で拾うべき情報が増えます(しかも“飼い主に悪気がない”ことが多い)。例えば、皮膚病で他院からステロイドをもらっていた、耳の炎症で断続的に飲んでいた、人の薬を少し分けた、といった線は、救急外来で特に起こりやすいです。JBVPの解説でも、クッシング治療に用いる薬物が副腎を破壊することがある点や、医原性クッシング症候群では副腎自体が萎縮しているため本質的には副腎機能低下症である点が述べられています。参考:https://www.jbvp.org/family/dog/endocrine/02.html
「意外な情報」として、医療従事者同士でも共有しておきたいのは、アジソン病(特に非定型)が慢性消化器症状の集団に一定割合で含まれ得るという点です。富士フイルムVETが紹介している多施設研究では、慢性消化器症状を示す犬151頭のうち6頭(4%)がアジソン病と診断されたとされています。参考:https://www.fujifilm.com/jp/ja/healthcare/veterinary/column/cl-tm-k9-hypoadrenocorticism
最後に、再発予防の観点で「現場で効く一言」を置いておきます。アジソン病は維持療法で安定しやすい一方、ストレス時(旅行、手術、重い感染症など)に必要量が増える設計を知らないと再びクリーゼに寄ります。AAHAの治療ガイダンスでも、臨床徴候(食欲不振、無気力、嘔吐、下痢など)が出た場合にグルココルチコイド量を増やし、副作用が出る場合は減らす、といった調整の考え方が示されています。参考:https://www.aaha.org/resources/2023-aaha-selected-endocrinopathies-of-dogs-and-cats-guidelines/therapy-3/

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