LDLコレステロール 基準と動脈硬化リスク診断

LDLコレステロール 基準と診断

LDLコレステロールの基本情報
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基準値

LDLコレステロールの基準値は一般的に140mg/dL未満とされています。120~139mg/dLは境界域として注意が必要です。

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健康リスク

高LDLコレステロール血症は動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な疾患リスクを高めます。

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検査の重要性

定期的な検査で数値を把握し、生活習慣の改善や必要に応じた治療を行うことが重要です。

LDLコレステロール 基準値の正しい理解

LDLコレステロール(低密度リポタンパク質コレステロール)は、一般的に「悪玉コレステロール」と呼ばれ、血液検査で重要視される項目の一つです。日本の診断基準では、LDLコレステロール値が140mg/dL以上の場合に「高LDLコレステロール血症」と診断されます。また、120~139mg/dLの範囲は「境界型高LDLコレステロール血症」として注意が必要な状態とされています。

健康診断の結果表では、LDLコレステロールの基準値として70~139mg/dLが示されることが多いですが、医療機関によって若干の違いがあります。一部の医療機関では60~119mg/dLを基準値としているケースもあります。

重要なのは、単に基準値内かどうかだけでなく、他の健康指標や個人の健康状態を総合的に評価することです。特に注目すべきは、すでに冠動脈疾患を発症している方の場合、より厳格な管理が必要とされ、LDLコレステロール値の目標が100mg/dL未満に設定されることがあります。

LDLコレステロールと動脈硬化リスクの関係

LDLコレステロールが血液中で増加すると、血管壁に沈着して動脈硬化を促進するリスクが高まります。特に、LDLコレステロールが酸化されると「酸化LDL」となり、血管内壁に付着しやすくなります。この状態が続くと、血管内腔が狭くなり、血流が阻害されることで、心筋梗塞脳梗塞などの重篤な疾患を引き起こす可能性が高まります。

動脈硬化リスクを評価する際には、LDLコレステロール値だけでなく、HDLコレステロール(善玉コレステロール)との比率も重要な指標となります。LDL/HDL比(L/H比)が高いほど、動脈硬化リスクが高まるとされています。理想的なL/H比は2.0未満とされており、この値が2.0を超える場合は、たとえLDLコレステロール値が基準値内であっても、動脈硬化リスクに注意が必要です。

また、他の危険因子(高血圧糖尿病、喫煙、肥満、家族歴など)を複数持つ場合は、LDLコレステロール値がわずかに高いだけでも、動脈硬化リスクが相乗的に高まることに注意が必要です。

LDLコレステロール 基準と総コレステロールの違い

健康診断では、「総コレステロール」と「LDLコレステロール」の両方が測定されることがありますが、これらは異なる指標です。総コレステロールは、LDLコレステロール、HDLコレステロール、およびその他のリポタンパク質中のコレステロールを合わせた総量を示します。

総コレステロールの基準値は一般的に140~219mg/dLとされていますが、この値が基準内であっても、LDLコレステロールが高値を示す場合があります。逆に、総コレステロールが高くても、HDLコレステロールが多ければ健康リスクは低いこともあります。

このため、脂質異常症の診断においては、総コレステロール値よりもLDLコレステロール値を重視することが推奨されています。日本動脈硬化学会のガイドラインでも、「血清総コレステロール値よりも、LDLコレステロール値を参照することが大切である」と明記されています。

LDLコレステロール値が直接測定されていない場合は、以下の計算式で推定することができます。

LDLコレステロール = 総コレステロール – HDLコレステロール – (中性脂肪÷5)

ただし、この計算式は中性脂肪が400mg/dL未満の場合にのみ有効です。中性脂肪が高値の場合は、直接測定法によるLDLコレステロール値の確認が必要です。

Non-HDLコレステロールとLDLコレステロール 基準の新たな視点

近年、動脈硬化リスクの評価において、「Non-HDLコレステロール」という指標が注目されています。Non-HDLコレステロールは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値で、LDLコレステロールだけでなく、中性脂肪を多く含むリポタンパク質(VLDL、IDL、レムナント)中のコレステロールも含まれます。

Non-HDLコレステロールの基準値は170mg/dL未満とされており、150~169mg/dLは境界域とされています。Non-HDLコレステロールは、特に中性脂肪が高い場合や食後の状態でも比較的安定した値を示すため、空腹時採血が難しい場合や、中性脂肪が高い患者さんの動脈硬化リスク評価に有用です。

一部の研究では、LDLコレステロール単独よりも、Non-HDLコレステロールの方が心血管疾患の予測因子として優れているという報告もあります。このため、最新の脂質異常症診療ガイドラインでは、LDLコレステロールとともにNon-HDLコレステロールも重要な治療目標として位置づけられています。

日本動脈硬化学会による2018年の脂質異常症診療ガイドラインでは、Non-HDLコレステロールの臨床的意義について詳しく解説されています

LDLコレステロール 基準値を超えた場合の対策と治療

LDLコレステロール値が基準値を超えた場合、まずは生活習慣の改善が基本となります。具体的には以下の対策が推奨されます。

  1. 食事療法
    • 飽和脂肪酸(肉の脂身、バター、チーズなど)の摂取を控える
    • トランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングなど)を避ける
    • 食物繊維(野菜、果物、全粒穀物)を積極的に摂取する
    • 魚(特に青魚)に含まれるオメガ3脂肪酸を取り入れる
    • 大豆製品に含まれる植物性タンパク質を活用する
  2. 運動療法
    • 週に150分以上の中等度の有酸素運動(ウォーキング、水泳など)
    • レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)を週2回以上
    • 日常生活での活動量を増やす(階段の使用、徒歩での移動など)
  3. その他の生活習慣改善
    • 禁煙(喫煙はLDLコレステロールの酸化を促進)
    • 適正体重の維持(BMI 22前後を目標)
    • 過度のアルコール摂取を控える
    • ストレス管理(慢性的なストレスはコレステロール値に悪影響)

生活習慣の改善を3~6ヶ月間実施しても十分な効果が得られない場合や、すでに動脈硬化性疾患を発症している場合は、薬物療法が検討されます。主な脂質異常症治療薬には以下のものがあります。

  • スタチン系薬剤:LDLコレステロールの合成を抑制
  • エゼチミブ:小腸からのコレステロール吸収を抑制
  • PCSK9阻害薬:LDL受容体の分解を抑制し、LDLコレステロールの除去を促進
  • 胆汁酸吸着薬:腸管での胆汁酸の再吸収を阻害
  • フィブラート系薬剤:主に中性脂肪を低下させる効果

薬物療法を開始する場合は、個人の心血管リスクに応じて治療目標値が設定されます。冠動脈疾患の既往がある「二次予防」の場合は、LDLコレステロール値を70mg/dL未満にすることが推奨されるケースもあります。

日本動脈硬化学会による脂質異常症治療ガイドラインでは、リスク別の治療目標値が詳細に解説されています

LDLコレステロール値の管理は、単に数値を下げることだけが目的ではなく、動脈硬化性疾患の予防が最終的な目標です。そのため、他の危険因子(高血圧、糖尿病、喫煙など)の管理も同時に行うことが重要です。

また、薬物療法を開始した場合でも、生活習慣の改善は継続して行うべきです。薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせることで、より効果的にLDLコレステロール値をコントロールし、心血管イベントのリスクを低減することができます。

定期的な検査でLDLコレステロール値をモニタリングし、必要に応じて治療内容を調整することも大切です。特に薬物療法を開始した場合は、効果の確認と副作用のチェックのために、定期的な血液検査が推奨されます。

LDLコレステロール値の管理は生涯にわたるものであり、一時的な改善で治療を中断すると再び値が上昇する可能性があります。医師の指導のもと、継続的な管理を心がけましょう。

以上、LDLコレステロールの基準値と管理について解説しました。健康診断でLDLコレステロール値が高いと指摘された場合は、まずは生活習慣の見直しから始め、必要に応じて医師に相談することをお勧めします。早期からの適切な管理により、動脈硬化性疾患のリスクを大幅に低減することができます。

最後に、LDLコレステロール値は個人の健康状態や他のリスク因子によって評価が異なることを理解し、単に数値だけにとらわれず、総合的な健康管理の一環として捉えることが重要です。定期的な健康診断と医師との相談を通じて、あなたに最適な管理方法を見つけていきましょう。