ラコールNF配合経腸用半固形剤の代替品
ラコールNF配合経腸用半固形剤の販売中止と代替品の必要性
大塚製薬株式会社は2025年11月頃をもって「ラコールNF配合経腸用半固形剤」の販売中止を発表しました。この決定により、医療機関では代替品への切り替えが必要となっています。
販売中止の背景には、より患者のニーズに適応した新製品の開発があります。特に、維持エネルギー量の低い患者への栄養管理において、従来のラコールNF配合経腸用半固形剤では1,600kcal/日での設計であったため、医療現場からより柔軟な栄養管理が可能な製品が求められていました。
代替品として推奨されているのが「イノソリッド配合経腸用半固形剤」です。この製品は2025年1月17日に新発売され、従来の問題点を改善した設計となっています。
医療機関における切り替えスケジュールは以下の通りです。
- 2025年5月13日:イノソリッド配合経腸用半固形剤のオーダー開始
- 2025年11月頃:ラコールNF配合経腸用半固形剤の在庫消尽による販売終了
- 院内は在庫消尽次第オーダー停止、院外は当面継続
イノソリッド配合経腸用半固形剤の特徴と栄養組成
イノソリッド配合経腸用半固形剤は、ラコールNF配合経腸用半固形剤の改良版として開発された製品です。最も大きな特徴は、処方設計熱量が900kcal/日に設定されていることです。
✨ 主な特徴。
- 処方設計熱量:900kcal/日(従来品は1,600kcal/日)
- 栄養素充足:900kcal(3袋)で1日必要量をほぼ充足
- 微量元素配合:ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンを日本人食事摂取基準に基づき配合
- 長期栄養管理対応:カルニチン、コリンを配合し欠乏に配慮
栄養組成の比較を以下に示します。
成分 | ラコールNF | イノソリッド |
---|---|---|
エネルギー | 300kcal/袋 | 300kcal/袋 |
たん白質 | 13.14g | 13.50g |
脂肪 | 8.52g | 8.83g |
食塩相当量 | 0.57g | 1g |
薬価 | 321円/袋 | 432円/袋 |
特に注目すべきは、イノソリッドには従来品にはなかった以下の成分が追加されていることです。
- カルニチン:長期栄養管理時の欠乏予防
- コリン:183.6mg配合
- ドコサヘキサエン酸(DHA):131.4mg配合
- イヌリン:食物繊維源として配合
ラコールNF配合経腸用半固形剤の投与方法と器具の継続使用
代替品への切り替えにおいて重要なのは、既存の投与方法と器具が継続して使用できることです。両製品とも胃瘻からの投与を前提として設計されており、投与方法は大きく2種類あります。
🔧 専用アダプタを用いる方法
専用アダプタには新旧2つの規格があります。
- 旧規格:従来型の専用アダプタ
- 新規格:ISO 80369-3タイプ対応
投与手順は以下の通りです。
- 胃瘻チューブに専用アダプタを接続
- 製品袋を専用アダプタに取り付け
- 加圧バッグを使用して投与
💉 カテーテルチップシリンジを用いる方法
この方法は以下の特徴があります。
- 50mLまたは60mLのカテーテルチップシリンジを使用
- 製品を直接シリンジに吸引して投与
- 少量投与時や調整が必要な場合に適用
投与時間については、両製品とも1袋あたり6~12分程度とされており、大きな違いはありません。ただし、粘度特性により若干の調整が必要な場合があります。
ラコールNF配合経腸用半固形剤から代替品への切り替え時の注意点
代替品への切り替えにおいて、医療従事者が注意すべき点を以下にまとめます。
⚠️ アレルギー対応の違い
重要な変更点として、大豆アレルギーへの対応が挙げられます。
- ラコールNF:大豆アレルギー患者にも使用可能
- イノソリッド:分離大豆たん白質配合のため、大豆アレルギー患者には注意が必要
📊 投与量の調整
処方設計熱量の違いにより、投与量の見直しが必要です。
- ラコールNF:成人標準量1,200~2,000g/日
- イノソリッド:成人標準量900~1,500g/日
💰 薬価の変更
薬価に差があるため、医療経済的な検討が必要です。
- ラコールNF:321円/袋
- イノソリッド:432円/袋(約35%の増額)
🧪 栄養管理の最適化
イノソリッドの特徴を活かした栄養管理が可能です。
- 低エネルギー必要量患者への適用拡大
- 微量元素欠乏の予防効果向上
- 長期栄養管理時の安全性向上
ラコールNF配合経腸用半固形剤の代替品選択における独自の臨床的考察
代替品選択において、従来の製品比較だけでは見えてこない臨床的な視点から考察します。
🔬 消化吸収特性の微細な違い
イノソリッドに含まれるイヌリンは、単なる食物繊維としての機能だけでなく、腸内細菌叢への影響も期待されます。特に長期経腸栄養管理において、腸内環境の維持は重要な要素となります。
従来の半固形経腸栄養剤では、腸内細菌叢の変化により便性状の悪化や感染リスクの増加が報告されていました。イヌリンのプレバイオティクス効果により、これらの問題が改善される可能性があります。
🧬 長期栄養管理における代謝的配慮
カルニチンとコリンの配合は、従来品にはない独特の配慮です。特に以下の患者群において効果が期待されます。
- 神経変性疾患患者:長期臥床により筋肉量減少が著しい
- 高齢者:基礎代謝の低下により栄養素要求量が変化
- 慢性疾患患者:疾患による代謝異常への対応
これらの成分配合により、従来では見過ごされがちだった微細な栄養不足を予防できる可能性があります。
⚗️ 薬物相互作用の新たな視点
イノソリッドの食塩相当量増加(0.57g→1g)は、心疾患や腎疾患を併存する患者において注意が必要です。特に以下の薬剤との相互作用に留意する必要があります。
🏥 在宅医療における実用性
代替品の切り替えは、在宅医療の現場においても重要な影響を与えます。投与方法の継続性は保たれるものの、以下の点で在宅ケアの質向上が期待されます。
- 投与量減少による介護負担の軽減
- 栄養管理の個別化による患者満足度向上
- 長期使用時の安全性向上による医療費削減効果
これらは、単純な製品切り替えを超えて、患者の生活の質(QOL)向上に寄与する可能性があります。
医療従事者向けの製品切り替えガイドラインの詳細情報
患者・家族向けの在宅使用方法について