スタチン比較表で効果・副作用・薬価の特徴を一覧解説

スタチン比較表

スタチン系薬剤の特徴概要
💊

分類による違い

スタンダードスタチンとストロングスタチンでLDL-コレステロール低下率が約2倍異なる

⚖️

処方実績

ロスバスタチン、アトルバスタチン、ピタバスタチンがストロングスタチン上位3位を独占

🔍

選択のポイント

患者の治療目標、腎機能、薬物相互作用リスクを総合的に評価して選択

スタチンの分類と強さの比較表

スタチン系薬剤は、LDL-コレステロール低下効果の強さにより「スタンダードスタチン」と「ストロングスタチン」に分類されます。この分類は臨床現場での薬剤選択において極めて重要な指標となります。

スタンダードスタチンとストロングスタチンの効果比較

分類 一般名 商品名 規格 LDL-コレステロール低下率
スタンダード プラバスタチン メバロチン 5mg, 10mg 約15-20%
スタンダード シンバスタチン リポバス 5mg, 10mg, 20mg 約15-20%
スタンダード フルバスタチン ローコール 10mg, 20mg, 30mg 約15-20%
ストロング ロスバスタチン クレストール 2.5mg, 5mg 約30-40%
ストロング ピタバスタチン リバロ 1mg, 2mg, 4mg 約30-40%
ストロング アトルバスタチン リピトール 5mg, 10mg 約30-40%

ストロングスタチンの効果はスタンダードスタチンの約2倍となっており、治療目標値到達率の向上が期待できます。しかし、効果が高い分、副作用リスクも考慮する必要があります。

投与時点による使い分け

  • スタンダードスタチン:就寝前投与が基本
  • ストロングスタチン:食事のタイミングに関係なく投与可能

この違いは、薬剤の半減期と肝臓でのコレステロール合成リズムに関連しています。

スタチン各薬剤の効果と特徴比較

各スタチン製剤には、効果以外にも重要な特徴があります。水溶性・脂溶性の違いや代謝経路の違いが、臨床での使い分けのポイントとなります。

物性と代謝経路による分類

一般名 物性 代謝経路 特徴
プラバスタチン 水溶性 CYP代謝なし(胆汁+腎排泄) 薬物相互作用が少ない
シンバスタチン 脂溶性 CYP3A4 グレープフルーツ相互作用あり
フルバスタチン 脂溶性 CYP2C9 比較的軽度の副作用
アトルバスタチン 脂溶性 CYP3A4 グレープフルーツ相互作用あり
ピタバスタチン 脂溶性 CYP2C9(わずか) 薬物相互作用が少ない
ロスバスタチン 水溶性 CYP2C9・CYP2C19(わずか) 胆汁排泄主体

プラバスタチンの特殊性

プラバスタチンは水溶性でCYP代謝を受けないため、「重篤な肝障害のある患者」への禁忌対象から除外されている唯一のスタチンです。この特徴により、肝機能に不安のある患者への第一選択となることがあります。

ロスバスタチンの優位性

平成28年度の処方量データでは、ロスバスタチンが約10億4000万で第1位を占めており、臨床現場での評価の高さを示しています。これは、強力な効果と比較的良好な安全性プロファイルが評価されている結果と考えられます。

スタチンの副作用と相互作用比較

スタチン系薬剤の副作用プロファイルと薬物相互作用の理解は、安全な薬物療法のために不可欠です。特に、横紋筋融解症やグレープフルーツとの相互作用は重篤な結果を招く可能性があります。

主要な副作用比較

  • 肝機能障害:全スタチン共通のリスク
  • 間質肺炎:稀だが重篤な副作用
  • ミオパチー様症状:筋肉痛、筋力低下
  • 横紋筋融解症:最も注意すべき重篤な副作用

グレープフルーツとの相互作用

グレープフルーツに含まれるフラノクマリンが小腸のCYP3A4を阻害するため、以下の薬剤で相互作用が発現します。

  • 相互作用あり:アトルバスタチン、シンバスタチン
  • 相互作用なし:プラバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチン

相互作用の程度。

  • アトルバスタチン:AUC +146%上昇、Cmax +6%上昇
  • シンバスタチン:AUC +1514%上昇、Cmax +842%上昇

シンバスタチンでは極めて強い相互作用が認められるため、特に注意が必要です。

フィブラート系薬剤との併用

2018年10月16日の添付文書改訂により、スタチンとフィブラート系薬剤の「原則併用禁忌」の表記が削除されました。しかし、横紋筋融解症のリスク増加は依然として存在するため、併用時は以下の監視が必要です。

  • 定期的な腎機能検査の実施
  • CK(CPK)値の監視
  • 自覚症状(筋肉痛、脱力感)の確認
  • 血中・尿中ミオグロビン値の測定

スタチンの薬価と処方量比較

医療経済性の観点から、スタチンの薬価と処方量の関係を理解することは重要です。効果と安全性のバランスに加え、医療費への影響も考慮した薬剤選択が求められます。

処方量ランキング(平成28年度データ)

順位 一般名 処方量 分類
第1位 ロスバスタチン 約10億4000万 ストロング
第2位 アトルバスタチン 約8億6400万 ストロング
第3位 ピタバスタチン 約4億7300万 ストロング
第4位 プラバスタチン 約4億7100万 スタンダード
第5位 シンバスタチン 約8100万 スタンダード
第6位 フルバスタチン 約6000万 スタンダード

ストロングスタチンが上位3位を独占しており、臨床現場での効果への期待の高さが反映されています。

薬価比較例(クレストールの場合)

  • クレストール20mg:485.2円(121.3×4錠)
  • クレストール10mg:242.6円(121.3×2錠)
  • クレストール5mg:121.3円

用量調整により薬価コントロールが可能ですが、効果と経済性のバランスを考慮した処方設計が重要です。

日本フォーミュラリ学会の推奨

経済性の観点から、ピタバスタチンとアトルバスタチンが第一推奨薬とされています。一方、供給安定性を考慮し、複数の薬剤を並列で推奨する施設もあります。

スタチン選択時の患者背景別考慮点

臨床現場では、患者の個別性を考慮したスタチン選択が求められます。従来の効果や副作用プロファイルに加え、患者のライフスタイルや併用薬、治療継続性も重要な選択因子となります。

腎機能低下患者への配慮

腎機能が低下している患者では、以下の点を考慮する必要があります。

  • プラバスタチン:腎排泄の比率が高いため用量調整が必要
  • ロスバスタチン:胆汁排泄主体だが、腎機能低下時は慎重投与
  • ピタバスタチン:腎機能への影響が比較的少ない

高齢者への処方配慮

高齢者では薬物代謝能力の低下や多剤併用のリスクがあるため。

  • 低用量から開始し、効果を確認しながら漸増
  • 相互作用の少ないプラバスタチンやピタバスタチンを優先検討
  • 定期的な副作用モニタリングの徹底

妊娠可能年齢女性への対応

スタチン系薬剤は胎児への奇形リスクがあるため。

  • 妊娠中、妊娠希望、授乳中の女性は禁忌
  • 妊娠可能年齢の女性には確実な避妊指導が必要
  • 妊娠判明時は即座に服薬中止

服薬アドヒアランス向上のための工夫

患者の服薬継続性を高めるために。

  • 服薬時間の制約が少ないストロングスタチンの活用
  • 副作用への不安軽減のための丁寧な説明
  • 定期的な効果確認と患者へのフィードバック

併用薬との相互作用回避戦略

これらの考慮点を総合的に評価し、個々の患者に最適なスタチン選択を行うことが、効果的で安全な脂質異常症治療につながります。

スタチン不耐に関する診療指針の詳細情報