ランジオロール商品名一覧とオノアクト薬価詳細解説

ランジオロール商品名詳細情報

ランジオロール商品名の基本情報
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主要商品名

オノアクト、コアベータ、ランジオロール塩酸塩点滴静注用「F」の3つが主要商品

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薬価範囲

1,850円〜9,963円と幅広い価格帯で、先発品と後発品で大きな差がある

特徴

短時間作用型β1選択的遮断剤として緊急時の不整脈治療に使用

ランジオロール主要商品名オノアクトとコアベータ特徴

ランジオロール塩酸塩の商品名として最も知られているのは、小野薬品工業が製造販売する「オノアクト」です。オノアクトは手術時の頻脈性不整脈に対する緊急処置薬として広く使用されており、50mgと150mgの2つの規格が用意されています。

一方、同じく小野薬品工業から販売されている「コアベータ」は、12.5mgの規格で提供される特殊な製剤です。コアベータの適応症は他の製剤とは異なり、「コンピューター断層撮影による冠動脈造影における高心拍数時の冠動脈描出能の改善」という非常に特殊な用途に限定されています。

📌 オノアクトとコアベータの主な違い。

  • オノアクト:手術時不整脈の緊急処置用
  • コアベータ:CT冠動脈造影時の心拍数調整用
  • 用量:オノアクトは50mg・150mg、コアベータは12.5mg

これらの商品名の由来を見ると、オノアクトの「アクト」は「action(作用)」を意味し、迅速な効果発現を表現したものと考えられます。コアベータの「コア」は心臓の中核部分を、「ベータ」はβ受容体を示しており、心臓のβ受容体に特異的に作用することを表現した命名といえるでしょう。

ランジオロール先発品と後発品薬価比較

ランジオロールの薬価構造は、先発品と後発品で大きな差が見られます。現在承認されている製剤の薬価は以下の通りです。

🏥 先発品(小野薬品工業)の薬価

  • オノアクト点滴静注用50mg:3,786円/瓶
  • オノアクト点滴静注用150mg:9,963円/瓶
  • コアベータ静注用12.5mg:2,616円/瓶

💊 後発品(富士製薬工業)の薬価

  • ランジオロール塩酸塩点滴静注用50mg「F」:1,850円/瓶
  • ランジオロール塩酸塩点滴静注用150mg「F」:4,848円/瓶

この薬価差は医療経済的に重要な意味を持ちます。50mg製剤では先発品3,786円に対して後発品1,850円と約51%の価格差があり、150mg製剤では先発品9,963円に対して後発品4,848円と約51%の価格差となっています。

興味深いことに、コアベータについては現在のところ後発品が存在しません。これは適応症が非常に特殊であり、使用頻度が限定的なため、後発医薬品メーカーが参入するメリットが少ないことが理由と考えられます。

医療機関における薬剤選択において、後発品の使用促進は医療費抑制の観点から重要な課題となっています。ランジオロールの場合、先発品と後発品の有効性・安全性に差はないため、適切な後発品使用により大幅なコスト削減が可能です。

ランジオロール適応症と心房細動治療効果

ランジオロールの適応症は製剤により若干の違いがありますが、主要な適応症は手術時の頻脈性不整脈に対する緊急処置です。具体的な適応症には以下があります。

⚕️ 主要適応症

  • 術後心房細動・心房粗動・洞頻脈
  • 術中心房細動・心房粗動・洞頻脈
  • 心機能低下に伴う上室頻拍・心房細動・心房粗動
  • 難治性・血行動態不安定な心室頻拍
  • 難治性心室細動
  • 血症に伴う心房細動・心房粗動・洞頻脈

ランジオロールの最大の特徴は、血中半減期が約4分という極めて短時間作用型であることです。この特性により、投与開始後2〜3分で効果が発現し、投与中断後は速やかに効果が消失するため、緊急時の心拍数コントロールに理想的な薬剤といえます。

心房細動治療における効果は特に注目されており、手術中に突然発症した心房細動に対して迅速に正常洞調律に復帰させることができます。従来のβ遮断薬では効果発現までに時間がかかり、また効果が長時間持続するため手術の進行に支障をきたす可能性がありましたが、ランジオロールではこれらの問題が解決されています。

敗血症患者における心房細動治療も重要な適応の一つです。敗血症患者では血行動態が不安定になりやすく、長時間作用型のβ遮断薬使用は困難な場合が多いため、ランジオロールの短時間作用性は大きなメリットとなります。

ランジオロール用法用量と注意点

ランジオロールの用法用量は適応症により細かく設定されており、体重に基づいた投与量計算が必要です。基本的な投与方法は以下の通りです。

🔬 手術時頻脈性不整脈の用法用量

  • 投与開始1分間:0.125mg/kg/minで静脈内持続投与
  • 投与開始1分後以降:0.04mg/kg/minで持続投与
  • 調整範囲:0.01〜0.04mg/kg/min

💉 CT冠動脈造影時の用法用量(コアベータ)

  • 投与開始時:1μg/kg/min
  • 調整範囲:1〜10μg/kg/min

投与時の重要な注意点として、ランジオロールは劇薬に指定されており、処方箋医薬品として厳格な管理が必要です。また、以下の患者には禁忌とされています。

⚠️ 主な禁忌事項

特に注意すべき相互作用として、交感神経系抑制薬(レセルピンなど)との併用では交感神経系の過剰抑制が起こる可能性があります。また、血糖降下剤との併用時は低血糖症状のマスキングが起こる可能性があるため、血糖値の慎重な監視が必要です。

投与中の監視項目には心電図、血圧、心拍数の継続的モニタリングが含まれ、必要に応じて投与量の調整や投与中止の判断が求められます。

ランジオロール海外展開と将来展望

ランジオロールの海外展開は近年注目される動向の一つです。現在、米国では「RAPIBLYK」という商品名でAOP Orphan Pharmaceuticals GmbHから販売されており、日本発の革新的医薬品として国際的な評価を受けています。

🌍 海外展開の意義

  • 日本発の短時間作用型β遮断薬として世界初
  • 欧米の手術室での緊急不整脈治療に新たな選択肢を提供
  • アジア諸国への展開も期待される

ランジオロールの将来展望として、適応症の拡大が検討されています。現在の適応症は主に手術時の緊急処置に限定されていますが、集中治療室での長期使用や、外来での心房細動治療への応用も研究されています。

技術的な進歩として、新しい製剤技術による安定性向上や、投与デバイスの改良による使用利便性向上も期待されています。特に、プレフィルドシリンジ製剤の開発により、緊急時の迅速な投与が可能になる可能性があります。

また、薬理遺伝学的研究の進歩により、患者個々の遺伝的特性に基づいた投与量設定の最適化も将来的には実現可能と考えられます。これにより、より安全で効果的な個別化医療の実現が期待されています。

ランジオロールの市場における位置づけも今後変化していく可能性があります。高齢化社会の進展に伴い心房細動患者数の増加が予想される中、短時間作用型という特性を活かした新たな治療戦略の構築が重要な課題となっています。

KEGG医薬品データベース – ランジオロール塩酸塩の詳細情報