輸液種類と商品名完全ガイド医療現場

輸液種類と商品名

輸液製剤の主要分類
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電解質輸液

体内の水分・電解質バランスを調整する基本的な輸液製剤

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栄養輸液

カロリーや必須栄養素を静脈内投与で補給する輸液製剤

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特殊輸液

利尿作用や循環血漿量増加など特定目的に使用される輸液製剤

輸液の電解質輸液種類と代表商品名

電解質輸液は医療現場で最も頻繁に使用される輸液製剤であり、その種類と商品名を正確に把握することは医療従事者にとって不可欠です。

等張電解質輸液の主要商品

生理食塩液は最も基本的な電解質輸液で、主要商品には以下があります。

  • 大塚生食注(大塚製薬工場)
  • テルモ生食(テルモ)
  • 生理食塩液(ニプロ)

生理食塩液は浸透圧が細胞外液とほぼ等しく、基本的な水分・電解質補給に使用されますが、大量投与時には高ナトリウム血症や代謝性アシドーシスのリスクがあるため注意が必要です。

リンゲル液系統の商品名

リンゲル液は生理食塩水よりも細胞外液に近い電解質組成を持ち、以下の商品が代表的です。

  • リンゲル液(大塚製薬工場)
  • 乳酸リンゲル液:ラクテック注(大塚製薬工場)、ポタコールR輸液(大塚製薬工場)、ソルラクト輸液(テルモ)
  • 酢酸リンゲル液:ソルアセトD(テルモ)、ヴィーンD(扶桑薬品工業)、ソルアセトF輸液(500mL、1L)、ヴィーンF輸液、ソリューゲンF注、リナセートF輸液

酢酸リンゲル液は代謝性アシドーシスを防ぐ目的で乳酸や酢酸が添加されており、血液のpH維持に重要な役割を果たします。価格面では、ソリューゲンF注500mLが168円、リナセートF輸液500mLが168円と比較的安価で、ソルアセトF輸液やヴィーンF輸液は191円となっています。

重炭酸リンゲル液の特徴

重炭酸リンゲル液は等張性電解質輸液の中で最も細胞外液に近い電解質組成を持ち、代表商品にビカネイト輸液(大塚製薬工場)やビカーボン輸液があります。ビカーボン輸液500mLは364円と他の電解質輸液と比較して高価ですが、マグネシウムが添加されており、細胞外液のマグネシウム補給が可能です。

低張電解質輸液の分類

低張電解質輸液は術前術後の管理や維持輸液として使用され、以下のような分類と商品名があります。

1号輸液(開始液)。

  • ソリタ-T1号輸液(エイワイファーマー)
  • ソルデム1輸液(テルモ)

2号輸液(脱水補給液)。

  • ソリタ-T2号輸液(エイワイファーマー)
  • ソルデム2輸液(テルモ)

3号輸液(維持液)。

  • ソリタ-T3号輸液(エイワイファーマー)
  • ソルデム3A輸液(テルモ)
  • フルクトラクト注(大塚製薬工場)
  • フィジオ35輸液(大塚製薬工場)

4号輸液(術後回復液)。

  • ソリタ-T4号輸液(エイワイファーマー)
  • ソルデム6輸液(テルモ)

輸液の栄養輸液種類と主要商品名

栄養輸液は静脈からエネルギーやアミノ酸などの栄養素を補給する目的で用いられ、末梢静脈栄養療法(PPN)と中心静脈栄養療法(TPN)に大別されます。

PPN(末梢静脈栄養)輸液の商品名

PPN輸液は末梢血管から投与可能な浸透圧に調整された栄養輸液で、以下の商品が代表的です。

  • ツインパル輸液(500mL、1000mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • パレセーフ輸液(500mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • プラスアミノ輸液(200mL、500mL):大塚製薬工場
  • ビーフリード輸液(500mL、1000mL):大塚製薬工場
  • パレプラス輸液(500mL、1000mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • エネフリード輸液(550mL、1100mL):大塚製薬工場

これらのPPN輸液は糖・電解質・アミノ酸・総合ビタミン・微量元素を含有しており、経口摂取困難な患者の栄養管理に重要な役割を果たします。

脂肪乳剤の商品名

脂肪乳剤は必須脂肪酸とカロリー補給を目的とし、以下の商品があります。

  • イントラリポス輸液10%(250mL):大塚製薬工場
  • イントラリポス輸液20%(50mL、100mL、250mL):大塚製薬工場

アミノ酸製剤の多様な商品名

アミノ酸製剤には一般用から特殊用途まで多数の商品が存在します。

一般用アミノ酸製剤。

  • モリプロンF輸液(200mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • アミニック輸液(200mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • モリアミンS注(200mL):エイワイファーマ=陽進堂
  • アミパレン輸液(200mL、300mL、400mL):大塚製薬工場
  • アミゼットB輸液(200mL):テルモ
  • プロテアミン12注射液(200mL):テルモ
  • ネオアミユー輸液(200mL):エイワイファーマ=陽進堂

腎不全用アミノ酸製剤。

  • キドミン輸液(200mL、300mL):大塚製薬工場

肝不全用アミノ酸製剤。

  • モリヘパミン点滴静注(200mL、300mL、500mL):エイワイファーマ=EAファーマ
  • アミノレバン点滴静注(200mL、500mL):大塚製薬工場
  • テルフィス点滴静注(200mL、500mL):テルモ
  • ヒカリレバン注(200mL、500mL):光製薬

TPN(中心静脈栄養)輸液の商品名

TPN輸液は高カロリー・高浸透圧のため中心静脈からの投与が必要で、以下のような商品があります。

  • ハイカリック液-1号、2号、3号(700mL):テルモ
  • ハイカリックRF輸液(250mL、500mL):テルモ
  • ピーエヌツイン-1号、2号、3号輸液:エイワイファーマ=陽進堂
  • ネオパレン1号、2号輸液(1000mL、1500mL):大塚製薬工場
  • フルカリック1号、2号、3号輸液:テルモ=田辺三菱製薬
  • エルネオパNF1号、2号輸液(1000mL、1500mL、2000mL):大塚製薬工場
  • ワンパル1号、2号輸液(800mL、1200mL):エイワイファーマ=陽進堂

輸液商品名の製薬会社別分類

輸液製剤の製薬会社別分類を把握することは、医療現場での調達管理や品質管理において重要な意味を持ちます。

大塚製薬工場の主力商品

大塚製薬工場は日本の輸液製剤市場において最大手の一つで、幅広い製品ラインナップを持ちます。

電解質輸液。

  • 大塚生食注
  • リンゲル液
  • ラクテック注
  • ポタコールR輸液
  • ビカネイト輸液

栄養輸液。

  • プラスアミノ輸液(200mL、500mL)
  • ビーフリード輸液(500mL、1000mL)
  • エネフリード輸液(550mL、1100mL)
  • イントラリポス輸液(10%、20%)
  • アミパレン輸液(200mL、300mL、400mL)
  • キドミン輸液(200mL、300mL)
  • アミノレバン点滴静注(200mL、500mL)
  • ネオパレン1号、2号輸液
  • エルネオパNF1号、2号輸液

テルモの製品戦略

テルモは医療機器メーカーとしても知られますが、輸液分野でも重要な地位を占めています。

電解質輸液。

  • テルモ生食
  • ソルラクト輸液
  • ソルアセトD
  • ソルデム1、2、3A、6輸液

栄養輸液。

  • アミゼットB輸液
  • プロテアミン12注射液
  • テルフィス点滴静注
  • ハイカリック液シリーズ
  • フルカリック輸液シリーズ

エイワイファーマー(陽進堂)の特色

エイワイファーマー=陽進堂は低張電解質輸液のソリタシリーズで知られ、PPN輸液でも多数の製品を展開しています。

  • ソリタ-T1号、2号、3号、4号輸液
  • ツインパル輸液
  • パレセーフ輸液
  • パレプラス輸液
  • モリプロンF輸液
  • アミニック輸液
  • モリアミンS注
  • ネオアミユー輸液
  • ピーエヌツイン輸液シリーズ
  • ワンパル輸液シリーズ

扶桑薬品工業の専門性

扶桑薬品工業は電解質輸液分野で特徴的な製品を持ちます。

  • ヴィーンD(酢酸リンゲル液)
  • プレアミン-P注射液

これらの製薬会社別分類により、医療機関では供給の安定性、価格競争力、品質保証体制を総合的に評価して輸液製剤の選択を行っています。

輸液種類選択の臨床判断基準

輸液種類の選択は患者の病態、治療目標、投与経路などを総合的に判断して決定する必要があります。

病態別輸液選択の原則

脱水症状を呈する患者に対しては、脱水の程度と電解質異常の有無により輸液を選択します。軽度から中等度の脱水では等張電解質輸液(生理食塩液、乳酸リンゲル液、酢酸リンゲル液)が第一選択となります。

重度の脱水や電解質異常を伴う場合は、重炭酸リンゲル液(ビカネイト輸液、ビカーボン輸液)が推奨されます。これらの輸液はマグネシウムを含有し、より生理的な電解質バランスを提供します。

術前術後管理における輸液選択

手術前後の輸液管理では、患者の代謝状態と必要カロリーに応じて段階的に輸液を選択します。

術前(絶食期間):1号輸液(開始液)

  • ソリタ-T1号輸液
  • ソルデム1輸液

術後早期(水分・電解質補正):2号輸液(脱水補給液)

  • ソリタ-T2号輸液
  • ソルデム2輸液

維持期:3号輸液(維持液)

  • ソリタ-T3号輸液
  • ソルデム3A輸液
  • フルクトラクト注
  • フィジオ35輸液

回復期:4号輸液(術後回復液)

  • ソリタ-T4号輸液
  • ソルデム6輸液

栄養状態による選択基準

経口摂取が困難で栄養補給が必要な場合、投与期間と栄養必要量により以下のように選択します。

短期間(1-2週間)の栄養補給:PPN輸液

  • ツインパル輸液
  • ビーフリード輸液
  • エネフリード輸液

長期間(2週間以上)の栄養補給:TPN輸液

  • ハイカリック液シリーズ
  • ネオパレン輸液シリーズ
  • エルネオパNF輸液シリーズ

特殊病態における輸液選択

腎機能障害患者では、通常のアミノ酸製剤ではなく腎不全用アミノ酸製剤を選択します。

  • キドミン輸液(慢性腎不全用)
  • キドパレン輸液(慢性腎不全高カロリー輸液用)

肝機能障害患者では、分岐鎖アミノ酸を多く含む肝不全用アミノ酸製剤を使用します。

  • モリヘパミン点滴静注
  • アミノレバン点滴静注
  • テルフィス点滴静注
  • ヒカリレバン注

これらの臨床判断基準により、患者個々の病態に最適化された輸液療法を実施することが可能となります。

輸液商品名の価格差と経済性評価

医療経済の観点から輸液製剤の価格差を理解することは、医療機関の経営効率化と適正な医療提供の両立において重要な要素です。

電解質輸液の価格比較分析

同一成分の電解質輸液であっても製薬会社により価格差が存在します。酢酸リンゲル液500mLの価格比較では。

  • ソリューゲンF注:168円
  • リナセートF輸液:168円
  • ソルアセトF輸液:191円
  • ヴィーンF輸液:191円

最安価格と最高価格の差は23円(約13.7%)となっており、大量使用する医療機関では年間数十万円の差額が生じる可能性があります。

大容量製剤の経済性

輸液製剤では容量による単価の違いも重要な要素です。ソルアセトF輸液の場合。

  • 500mL:191円(1mLあたり0.382円)
  • 1L:304円(1mLあたり0.304円)

大容量製剤は単位容量あたりの価格が約20%安くなっており、適応患者では経済的メリットが大きくなります。

重炭酸リンゲル液の価格プレミアム

重炭酸リンゲル液は他の電解質輸液と比較して高価格に設定されています。

  • ビカーボン輸液500mL:364円
  • 一般的な酢酸リンゲル液500mL:168-191円

価格差は約2倍となっていますが、マグネシウム含有による細胞外液補正効果や代謝性アシドーシス予防効果を考慮すると、重篤患者では費用対効果が高い場合があります。

栄養輸液の価格構造

栄養輸液は電解質輸液と比較して高価格となっています。PPN輸液では製品により価格差があり。

  • 基本的なPPN輸液:500-800円程度
  • 総合ビタミン・微量元素添加PPN輸液:1000-1500円程度
  • TPN輸液:2000-4000円程度

TPN輸液は高カロリー・高栄養価のため価格が高くなりますが、経腸栄養が不可能な患者では必要不可欠な治療となります。

ジェネリック輸液の価格優位性

後発医薬品(ジェネリック)の輸液製剤は先発品と比較して10-30%程度の価格優位性を持ちます。同等の品質・安全性が確保されていれば、ジェネリック輸液の採用により医療費削減効果が期待できます。

経済性評価の総合指標

輸液選択の経済性評価では以下の要素を総合的に判断する必要があります。

  • 薬剤費(製品価格)
  • 投与に要する人件費
  • 合併症発生リスクとその治療費
  • 在院日数への影響
  • 患者満足度・QOL向上効果

これらの多面的な評価により、真の医療経済性を判断することが重要です。特に栄養輸液では、適切な栄養管理による治癒促進や合併症予防効果を金銭的価値として評価することで、初期投資の高さを上回る長期的な経済効果が期待できる場合があります。

輸液製剤協議会 – 各製薬会社の輸液製剤の詳細な組成表や最新情報
メディカルオンライン薬データベース – 輸液製剤の薬価情報と添付文書比較