酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症治療薬 一覧
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症(ASMD)の治療薬として、2022年に日本で世界初の承認を受けたのが「ゼンフォザイム®点滴静注用 20mg(一般名:オリプダーゼ アルファ)」です。この薬剤は、体内で不足している酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)を補充し、蓄積したスフィンゴミエリンを分解する酵素補充療法(ERT:Enzyme Replacement Therapy)に用いられます。
特徴:
- 2週間に1回の点滴静脈内投与
- 維持用量は体重1kgあたり3mg
- 主に非中枢神経系病変(肝臓・脾臓・肺など)への効果が期待される
- 神経症状には効果が限定的
副作用:頭痛、発熱、関節痛、アレルギー反応、低血圧などが報告されています。特に重度の過敏症反応や胎児毒性の可能性があり、妊婦への使用は推奨されません。
オリプダーゼ アルファは、ASMDの成人患者36名を対象とした第II/III相試験(ASCEND試験)と、小児患者20名を対象とした第I/II相試験(ASCEND-Peds試験)で有効性と安全性が確認されました。
主な臨床効果:
- 肺機能の改善
- 脾臓・肝臓の容積縮小
- 生活の質(QOL)の向上
これらの試験結果をもとに、日本、米国(Xenpozymeとして承認)、欧州で承認が進んでいます。
製品名 | 一般名 | 治療法 | 適応症 | 承認年 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ゼンフォザイム® | オリプダーゼ アルファ | 酵素補充療法 | ASMD(NPD A/B型) | 2022 | 日本・米国・欧州で承認 |
現時点でASMDの治療薬はゼンフォザイム®(オリプダーゼ アルファ)のみが承認されており、他の治療薬はありません。
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症は希少疾患であり、患者数が非常に少ないため、治療薬の開発や臨床試験の実施が困難です。ゼンフォザイム®は非中枢神経系症状に対して有効ですが、神経症状への効果は限定的であり、今後は中枢神経系へのアプローチや遺伝子治療など新たな治療法の開発が期待されています。
また、治療薬の高額さや継続的な点滴投与の負担、医療費助成制度の活用など、患者と家族のQOL向上に向けた社会的支援も重要な課題です。
酸性スフィンゴミエリナーゼ欠損症は、症状が他の疾患と類似しているため診断までに時間がかかることが多く、早期診断・早期治療が生命予後に直結します。
診断のポイント:
- 肝脾腫、肺疾患、成長障害など多様な症状の組み合わせ
- 酵素活性測定や遺伝子検査による確定診断
- 希少疾患ネットワークや専門医療機関との連携
早期診断のためには、医療従事者間の情報共有や患者家族への啓発も不可欠です。
【参考リンク】
・ゼンフォザイム®の詳細な薬剤情報や承認経緯については、サノフィ公式プレスリリースが詳しいです。
・ASMDの疾患概要や社会保障制度については、ライソライフ公式サイトの「ASMDとは」ページが参考になります。
・治療薬の作用機序や副作用については、Medical OnlineのFDA承認解説が有用です。