セクタ型プローブ超音波診断装置の主要メーカー商品と特徴

セクタ型プローブ超音波診断装置の主要メーカー商品と特徴

セクタ型プローブの基本情報
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セクタ型の特徴

接地面が小さく、深部にいくにしたがい扇状に広い視野の観察が可能。心臓検査に最適。

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周波数帯域

一般的に2~7.5MHzの周波数帯域で、深部組織の観察に適している。

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主な用途

心臓(体表、経食道心エコー)、腹部、大血管の検査、手術用途など。

セクタ型プローブの基本特性と他プローブとの比較

超音波診断装置のプローブ選択は検査の質を左右する重要な要素です。セクタ型プローブは、その特徴的な形状から、特定の検査シーンで大きな優位性を発揮します。

セクタ型プローブの最大の特徴は、接地面(エコーウィンドウ)が極めて小さいことです。これにより、肋骨間などの狭いスペースからでも深部の観察が可能となります。浅い部分の視野は比較的狭いものの、深部に進むにつれて扇状に広がるため、心臓や大血管などの深部臓器の広範囲な観察に適しています。

周波数帯域は一般的に2~7.5MHzと比較的低周波数帯を使用しており、これにより深部への超音波の到達が可能となります。素子数は機種によって異なりますが、32chから128chのものが一般的です。

他のプローブタイプと比較すると、以下のような特徴があります。

プローブタイプ 接地面 視野特性 主な用途 周波数帯域
セクタ型 小さい 深部で広い扇状視野 心臓、大血管 2~7.5MHz
リニア型 広い 均一な直線的視野 末梢血管、表在臓器 2.5~12MHz
コンベックス型 広い 浅部から深部まで広い視野 腹部全般 2~7.5MHz

セクタ型プローブは特に心エコー検査において重宝されます。肋骨によりエコーウィンドウが制限される心臓の観察において、小さな接地面でも効率的に検査が可能なためです。また、手術中の使用や、限られたスペースからのアプローチが必要な場面でも優れた性能を発揮します。

セクタ型プローブを搭載したGEヘルスケア・ジャパンの最新機種

GEヘルスケア・ジャパンは超音波診断装置市場において、特にセクタ型プローブを搭載した製品で高い評価を得ています。2024年の最新機種として注目を集めているのが「Vscan Air SL」です。

Vscan Air SLは、セクタとリニアのデュアルプローブを実現したワイヤレス超音波診断装置です。セクタ探触子には同社の上位機種エコーで使われている独自のXDclearプローブ技術を採用しており、高画質な画像を提供します。2021年に発表された「Vscan Air CL」(コンベックス・リニアのデュアルプローブ)に続く最新モデルとして、2024年9月に発表されました。

Vscan Air SLの主な特徴は以下の通りです。

  • 革新的な機能: パルスドプラとMモードを新たに搭載し、Bモード画像だけでなく血流速度や壁運動の可視化が可能
  • 高度な心エコー検査: 場所を問わず心不全患者の収縮能・拡張能の評価など多角的な心エコー検査が可能
  • ワイヤレス設計: プローブ重量は約218gと軽量で、連続使用時間は約50分
  • デバイスフリー: 専用端末を持たないデバイスフリー設計で、モニタのサイズやモバイル端末を自由に選択可能
  • 価格: 1,100,000円~(2024年現在)

また、GEヘルスケア・ジャパンは2024年10月に「Venue™」および「Venue Go™」の新バージョンも発売開始しました。これらの製品は救命救急、集中治療、手術室などのPoint of Care超音波検査に特化しており、ノイズリダクションによる基本画質の向上に加え、AI技術を用いた心エコー検査サポート機能を搭載しています。

特筆すべきは、これらの新しいAI技術が、超音波検査の根本的な課題である「操作者による撮像技術の違い」に対する新しいアプローチを提供している点です。Point of Careとして超音波検査室外で実施される検査において、心エコー検査の撮像技術の検者間誤差を低減し、高いクオリティの検査を安定して提供することを目指しています。

セクタ型プローブを採用したコニカミノルタの超音波診断装置SONIMAGE HS2

コニカミノルタの超音波診断装置「SONIMAGE HS2」は、セクタ型プローブの性能を最大限に引き出す独自技術を搭載した注目の機種です。2022年に発売されたこの装置は、特に画質と操作性において高い評価を得ています。

SONIMAGE HS2の特徴的なセクタプローブは「S4-2A」と呼ばれ、従来のセクタプローブの形状を刷新し、肋間からアプローチしやすいフットプリント形状を採用しています。これにより、心臓などの検査において、より安定した画像取得が可能となりました。

コニカミノルタの超音波診断装置の技術的特徴として、以下の点が挙げられます。

  1. iXRET技術: 超解像技術を応用したコニカミノルタ独自の技術により、フレームレートを維持しながら高分解能を実現
  2. Simple Clear Flowモード: 微細で低流速な血流を高分解能な血流表示モードで感度よく描出
  3. MPA機能(Multi Parameter Adjuster): 表示深度を変更するだけで、あらかじめ設定した画質パラメーターが自動適用される便利機能
  4. Vascular NAVI: Colorボタンや PWボタンを押すだけでROI位置やサンプルボリュームサイズなどの各種パラメータが自動設定

特に注目すべきは、コニカミノルタ独自開発の超広帯域高周波プローブと画像エンジンの組み合わせです。この技術により、帯域内に入ってくる多くの差音/和音/高調波を効率的に送受信することに成功しています。結果として、従来のセクタプローブよりも鮮明な画像取得が可能となり、特に心臓の微細構造の観察において優位性を発揮します。

SONIMAGE HS2は、セクタプローブの弱点とされていた「浅部の視野が狭い」という課題に対しても、独自の画像処理技術によって改善を図っています。これにより、心臓検査だけでなく、腹部や手術用途など、より幅広い臨床シーンでの活用が期待されています。

フィリップス・ジャパンとシーメンスのセクタ型プローブ搭載機種の比較

フィリップス・ジャパンとシーメンスは、医療機器市場において長い歴史を持つグローバル企業であり、セクタ型プローブを搭載した超音波診断装置においても高品質な製品を提供しています。両社の代表的な製品を比較してみましょう。

フィリップス・ジャパンの主要製品としては、高性能な心臓血管用超音波診断装置「EPIQ CVx」が挙げられます。この装置は容易かつ迅速に一貫した検査を実施可能な設計となっており、セクタ型プローブと組み合わせることで、心臓検査において優れたパフォーマンスを発揮します。また、ポータブルタイプとしては「Lumify」というタブレット型超音波診断装置も提供しており、セクタ、コンベックス、リニアの各種プローブを接続可能です。

一方、シーメンス株式会社は超音波検査分野のパイオニアとして知られ、循環器領域に特化した「ACUSON Origin」や「ACUSON SC2000 PRIME」などのセクタプローブ搭載機種を提供しています。これらの機種は心臓血管領域に優れたイメージング性能とアプリケーションを提供することに特化しています。

両社の製品を比較すると、以下のような特徴があります。

メーカー 代表機種 特徴 セクタプローブの性能 主な用途
フィリップス EPIQ CVx 高い臨床性能、操作性、高度な自動化技術 高解像度、広帯域 心臓血管専用
フィリップス Lumify タブレットでの診断が可能、ポータブル コンパクト設計 ポイントオブケア、救急
シーメンス ACUSON Origin 循環器領域に特化 高精細画像 心臓血管領域
シーメンス ACUSON Freestyle ケーブルレス超音波ソリューション ワイヤレス設計 Point of Care

両社とも、AI技術の活用による画像処理の向上や、操作性の改善に力を入れています。特にフィリップスの「EPIQ Elite」シリーズでは、高度な自動化技術により検査の効率化を図っており、シーメンスの「ACUSON」シリーズでは、組織の硬さの定性・定量情報を表示する次世代ストレイン機能など、先進的な技術を搭載しています。

セクタプローブの性能面では、フィリップスが高解像度と広帯域を重視しているのに対し、シーメンスは特に心臓領域での精細な画像取得に強みを持っています。どちらを選ぶかは、使用目的や予算、既存の機器との互換性などを考慮して判断する必要があるでしょう。

セクタ型プローブ搭載ポータブルエコーの臨床現場での活用事例

近年、医療技術の進歩により、セクタ型プローブを搭載したポータブルエコー装置の性能が飛躍的に向上しています。これらの機器は、従来の据え置き型超音波診断装置に比べて小型軽量でありながら、高い診断能力を有しており、様々な臨床現場で活用されています。

救急医療現場での活用

救急医療現場では、迅速な診断が求められる状況が多く、セクタ型プローブ搭載のポータブルエコーが重要な役割を果たしています。特に心臓や大血管の評価において、セクタプローブの特性である「小さな接地面で深部まで観察可能」という点が大きなメリットとなります。

例えば、外傷患者の初期評価において、FAST(Focused Assessment with Sonography for Trauma)検査を行う際、セクタプローブを用いることで、心嚢液貯留や胸腔内出血の有無を迅速に評価することができます。また、ショック状態の患者において、心機能評価や下大静脈径の測定を行うことで、循環血液量の推定や治療方針の決定に役立てることができます。

集中治療室での活用

集中治療室では、患者の状態が刻々と変化するため、ベッドサイドで繰り返し検査が可能なポータブルエコーの需要が高まっています。セクタプローブを用いることで、心機能評価や肺うっ血の評価、輸液反応性の予測などが可能となり、治療方針の決定に大きく貢献しています。

特に注目されているのは、GEヘルスケア・ジャパンの「Venue™」シリーズに搭載されたAI技術です。この技術により、集中治療室のような超音波検査室外での心エコー検査において、検者間の技術差による誤差を低減し、安定した質の高い検査を提供することが可能となっています。

在宅医療での活用

高齢化社会の進展に伴い、在宅医療の重要性が高まっています。在宅医療の現場では、患者を病院に搬送することなく適切な診断を行うことが求められており、ポータブルエコーはその強力なツールとなっています。

セクタ型プローブを搭載したワイヤレスエコー装置は、その小型軽量性と高い画質により、在宅での心不全管理や胸水評価などに活用されています。例えば、富士フイルムメディカルの「iViz air」やGEヘルスケア・ジャパンの「Vscan Air」シリーズは、専用アプリと連携することで、取得した画像データを電子カルテに簡単に取り込むことができ、遠隔医療にも対応しています。

教育・トレーニングでの活用

医学教育の現場でも、セクタ型プローブ搭載のポータブルエコーが活用されています。特に心エコー検査のトレーニングにおいて、AI技術を活用した撮像ガイダンス機能は、初学者の学習効率を大きく向上させています。

例えば、GEヘルスケア・ジャパンの「Venue™」シリーズに搭載されたAI技術は、大学・基幹病院のトレーニングセンターなどにおける教育目的での活用も想定されており、心エコー検査の標準化と質の向上に貢献しています。

これらの活用事例からも分かるように、セクタ型プローブを搭載したポータブルエコー装置は、その特性を活かして様々な臨床現場で重要な役割を果たしています。今後も技術の進歩により、さらなる小型化・高性能化が進み、医療の質の向上に貢献していくことが期待されます。