ジェネリック医薬品と先発医薬品の効果と特許の関係性

ジェネリック医薬品と医療費

ジェネリック医薬品の基本情報
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定義と特徴

先発医薬品(新薬)の特許満了後に製造・販売される、同じ有効成分を同量含む医薬品です。

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価格メリット

先発医薬品に比べて薬価が約5割程度安く、患者負担と国民医療費の抑制に貢献します。

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普及状況

日本では2019年時点で約77%の数量シェアを達成し、2020年までに80%を目標としています。

ジェネリック医薬品の定義と先発医薬品との違い

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、先発医薬品(新薬)の特許期間が満了した後に製造・販売される医薬品です。先発医薬品と同じ有効成分を同量含み、同等の効果があると厚生労働省に認められたものを指します。

先発医薬品は、製薬会社が長期間(約9年~17年)にわたる研究開発と臨床試験を経て開発され、その過程で数百億円から数千億円もの投資が必要とされます。この莫大な開発コストが薬価に反映されるため、新薬は比較的高価格になります。

一方、ジェネリック医薬品は既に有効性や安全性が確認された先発医薬品の特許満了後に製造されるため、開発期間やコストを大幅に削減できます。そのため、先発医薬品と比較して薬価が約5割程度、場合によってはそれ以上安くなるのが特徴です。

医薬品には「一般用医薬品」(市販薬)と「医療用医薬品」(処方薬)があり、ジェネリック医薬品は後者に分類されます。医療用医薬品の中でも、新たに開発された「先発医薬品」と、その特許満了後に製造される「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」に分けられます。

ジェネリック医薬品という名称は、欧米では医薬品を一般名(generic name)で処方することが多いことに由来しています。日本では以前、「ゾロ」と呼ばれることもありましたが、これは特許切れ後に「ゾロゾロと後発品が出てくる」ことに由来する呼び名でした。

ジェネリック医薬品の特許切れ後の製造販売の仕組み

先発医薬品を開発した製薬会社には、その新薬を独占的に販売できる特許期間(20~25年)が与えられています。この期間は、莫大な研究開発費を回収するために必要な保護期間です。特許期間が終了すると、その医薬品に使われた有効成分や製法などは「国民共有の財産」となります。

特許満了後は、厚生労働大臣の承認を得ることで、他の製薬会社もジェネリック医薬品として同じ有効成分を使った医薬品を製造・販売できるようになります。この仕組みにより、医薬品市場に競争原理が導入され、薬価の低下につながります。

ジェネリック医薬品の開発にあたっては、先発医薬品と同様に体内で溶けるか(溶出試験)、先発医薬品と同速度かつ同量の有効成分が体内に吸収されるか(生物学的同等性試験)、気温・湿度による品質への影響の有無、長期保存による変化の有無(安定性試験)など、様々な試験が行われます。これらの試験によって先発医薬品と効き目や安全性が同等であることが証明されたものだけが、厚生労働大臣によって承認されます。

特許切れの医薬品は、高血圧や高脂血症、糖尿病、花粉症といった様々な疾患に対応するものがあり、その剤形もカプセル・錠剤など多様です。ジェネリック医薬品メーカーは、これらの医薬品を専門に製造していますが、先発医薬品メーカーが自社の先発品のジェネリック医薬品を製造することもあります。

ジェネリック医薬品の効果と安全性の検証方法

「安くて本当に効き目はあるのか」「安全性は大丈夫なのか」という懸念は多くの患者さんや医療従事者が持つ疑問です。ジェネリック医薬品の品質確保のために、以下のような検証が行われています。

  1. 開発段階での試験
    • 溶出試験:先発医薬品と同様に体内で溶けるかを確認
    • 生物学的同等性試験:先発医薬品と同速度かつ同量の有効成分が体内に吸収されるか検証
    • 安定性試験:気温・湿度による品質への影響や長期保存による変化を確認
  2. 市販後の品質確認
    • 後発医薬品品質確保対策事業:都道府県などの協力を得て検査が実施され、結果も公表
    • ジェネリック医薬品品質情報検討会:品質に対する懸念を示す学会発表などに基づいて試験検査を実施
    • 医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック):品質に関する情報を体系的にとりまとめて公表

これらの検証によって、ジェネリック医薬品は先発医薬品と同等の効果と安全性を持つことが確認されています。さらに、製品によっては先発医薬品よりも改良が加えられているものもあります。例えば、薬の大きさや味、においの改良、湿気や光に弱いなどの品質面の改善による保存性の向上など、より使いやすく工夫されたものも存在します。

ただし、有効成分は同じでも添加物が異なることがあるため、アレルギーなどがある場合は注意が必要です。初めてジェネリック医薬品を使用する場合は、「分割調剤」という方法で、一部の期間だけジェネリック医薬品を試し、体調の変化や副作用が疑われる症状の有無を確認した上で、継続するかどうかを決めることもできます。

ジェネリック医薬品の医療費削減効果と普及状況

ジェネリック医薬品の最大のメリットは、医療費の削減効果です。先発医薬品に比べて薬価が5割程度安くなるため、患者さん個人の自己負担額が減少するだけでなく、国全体の医療費抑制にも大きく貢献します。

特に慢性疾患で長期間薬を服用する必要がある患者さんにとっては、ジェネリック医薬品の使用によって薬代の大幅な削減につながります。また、自己負担分を除いた薬代は公的医療保険から支払われているため、薬代の削減は保険料や税金の負担減にもつながります。

日本におけるジェネリック医薬品の数量シェアは、2019年9月時点で約77%まで進展しています。厚生労働省は「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」を策定し、2020年9月までに数量シェアを80%とすることを目標に普及を進めてきました。

一方、欧米ではジェネリック医薬品がより広く普及しており、アメリカでは数量シェアが90%以上、ヨーロッパでも60~80%となっています。日本でも15年ほど前から医療費削減のため、行政がジェネリック医薬品の使用を推進した結果、現在では約80%の薬がジェネリック医薬品になっています。

厚生労働省「後発医薬品(ジェネリック医薬品)の使用促進について」- ジェネリック医薬品の普及率と医療費削減効果の詳細データ

ジェネリック医薬品の課題と医療現場での実情

ジェネリック医薬品の普及が進む一方で、いくつかの課題も浮き彫りになっています。2023年現在、特に注目すべき問題として「薬品の供給不足」があります。

この供給不足の発端は、ジェネリック医薬品を専門に製造する医薬品メーカーの不正事件がきっかけとなっています。不正があった上に健康被害が出たことは許されることではありませんが、この事態の背景には、あまりに急速にジェネリック医薬品の使用が増えていることがあると考えられます。

短期間で無理に普及を進めたひずみが、供給不足という形で表れているのです。医薬品3割で供給不足が生じ、4200品目に影響が出ているという報告もあります。

また、ジェネリック医薬品と先発医薬品の効果の同等性についても議論があります。「有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同じ医薬品」とされていますが、有効成分以外の成分(添加物など)は異なる場合があります。

例えば、ある薬は主成分のほかに副成分で胃での主成分の分解を妨げる成分が入っていますが、そのジェネリック品にはその副成分が入っていないため、主成分の効果が減弱するケースもあります。ジェネリックでも先発品と全く同じ効果が期待できるものもあれば、効果が落ちるものもあり、玉石混合の状態です。

医師の中には、「ジェネリック医薬品は先発品と同じ効果があります」という一般的な宣伝に不快感を示す声もあります。すべてのジェネリック医薬品を一律に推奨するのではなく、薬の種類によって信頼できるものとそうでないものを見極める必要があるという意見もあります。

医療現場では、患者さんの状態や薬の特性に応じて、ジェネリック医薬品の使用を判断しているケースが多いようです。特に、効果の微妙な調整が必要な薬(例:てんかん薬、甲状腺ホルモン薬など)については、先発医薬品を選択することもあります。

日本静脈経腸栄養学会誌「ジェネリック医薬品の現状と課題」- 医療現場での実情と課題の詳細分析

ジェネリック医薬品の選び方と患者さんの意思表示

ジェネリック医薬品を希望する場合、どのように意思表示すればよいのでしょうか。以下に具体的な方法をご紹介します。

  1. 医師・薬剤師への直接相談
    • 診察時に医師に希望を伝える
    • 医師に直接言いにくい場合は受付で相談する
    • 処方箋を受け取った後、薬局で薬剤師に相談する
  2. 意思表示ツールの活用
    • 「ジェネリック医薬品希望シール」を診察券や保険証に貼付する
    • 「ジェネリック医薬品希望カード」を受付に提示する
  3. 処方箋の確認
    • 処方箋に「変更不可」の欄にチェックがなければ、薬剤師と相談のうえジェネリック医薬品を選ぶことができる
    • 処方箋に医薬品の商品名ではなく成分名が記載されている場合(「一般名処方」)も同様に選択可能

ただし、すべての医薬品にジェネリック医薬品があるわけではありません。また、アレルギーなどがある場合は選択できない場合もあります。薬局に在庫がない場合は、お薬の用意に時間がかかることもあります。

初めてジェネリック医薬品を使用する場合は、「分割調剤」という方法も検討してみましょう。これは、処方箋記載の期間のうち、一部の期間だけジェネリック医薬品を調剤してもらい、体調の変化や副作用が疑われる症状の有無を確認した上で、継続するかどうかを決める方法です。

ジェネリック医薬品の選択は患者さんの権利ですが、持病や体質によっては先発医薬品の方が適している場合もあります。最終的には、かかりつけの医師や薬剤師とよく相談して、自分に合った医薬品を選ぶことが大切です。

医療費削減は重要な課題ですが、それ以上に患者さんの健康と安全が最優先されるべきです。ジェネリック医薬品と先発医薬品のメリット・デメリットを理解した上で、適切な選択をしましょう。

日本ジェネリック製薬協会「ジェネリック医薬品を希望される方へ」- 患者向けの具体的な選択方法と注意点