高尿酸血症と痛風の関係や原因と治療法

高尿酸血症の原因と症状

高尿酸血症の基本情報
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定義

血清尿酸値が7.0mg/dLを超える状態で、性別・年齢を問わず同じ基準値が適用されます。

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主なリスク

痛風関節炎、腎障害、尿路結石などの尿酸塩沈着症のリスクが高まります。

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患者数の推移

2010年頃には成人男性の20~25%、成人女性の5%に認められ、年々増加傾向にあります。

高尿酸血症は、血液中の尿酸濃度が正常値を超えて高くなった状態を指します。日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインによれば、性別や年齢に関わらず、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える場合に高尿酸血症と診断されます。この状態は、それ自体では自覚症状がほとんどないものの、放置すると様々な健康リスクを引き起こす可能性があります。

高尿酸血症の患者数は年々増加しており、2010年頃には成人男性の20~25%、成人女性の5%に高尿酸血症が認められています。この増加傾向は現代の食生活や生活習慣の変化と密接に関連していると考えられています。

高尿酸血症の病型分類と発症メカニズム

高尿酸血症は、その発症メカニズムによって以下の4つの病型に分類されます。

  1. 尿酸産生過剰型:体内での尿酸産生が過剰な状態
  2. 尿酸排泄低下型:腎臓からの尿酸排泄が低下している状態
  3. 混合型:上記の両方の特徴を持つ状態
  4. 腎外排泄低下型:腸管などからの尿酸排泄が低下している状態

近年の研究では、従来の分類に加えて「腎外排泄低下型」が新たに認識されるようになりました。これは腸管からの尿酸排泄が減少することで、見かけ上、腎臓からの尿酸排泄が増加する病型です。

体内の尿酸バランスについて理解するには、「尿酸プール」という概念が重要です。成人男性の体内には約1,200mgの尿酸が存在し(尿酸プール)、毎日約700mgが産生され、ほぼ同量が排泄されています。排泄経路としては、約2/3が腎臓から、残りの約1/3が腸管から排泄されます。高尿酸血症は、このバランスが崩れ、尿酸プールが増大した状態です。

高尿酸血症の原因となる生活習慣と食事

高尿酸血症の主な原因として、以下の要因が挙げられます。

  1. 食生活の乱れ:プリン体を多く含む食品の過剰摂取
  2. アルコール摂取:特にビールなどのアルコール飲料
  3. 肥満:内臓脂肪の蓄積
  4. 運動不足:代謝機能の低下
  5. ストレス:ホルモンバランスの乱れ

特にプリン体を多く含む食品の摂取は、血中尿酸値の上昇に直接関連します。以下は、プリン体含有量の多い主な食品です。

食品 プリン体含有量
レバー類 210~320mg/100g
白子 300mg/100g
エビ、イワシ、カツオ 210~270mg/100g
ビール 3~7mg/100ml

日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインでは、高尿酸血症患者のプリン体摂取量を1日400mg以下に抑えることを推奨しています。

高尿酸血症と痛風発作の関連性と症状

高尿酸血症が長期間続くと、体内に蓄積した尿酸が結晶化し、関節内に沈着することで痛風発作を引き起こします。痛風は、高尿酸血症の最も代表的な合併症の一つです。

痛風発作の主な症状には以下があります。

  • 激しい関節の痛み(特に足の親指の付け根に多い)
  • 発赤
  • 腫れ
  • 熱感
  • 動かしにくさ

痛風発作は通常、夜間から早朝にかけて突然発症することが多く、その痛みは「焼けるような」「締め付けられるような」と表現されるほど激烈です。初回の発作は数日で自然に治まることが多いですが、高尿酸血症を放置すると発作の頻度が増加し、複数の関節に症状が現れるようになります。

国民生活基礎調査によると、2019年時点で日本の痛風患者数は125万人を超えており、急速な増加傾向にあります。年齢分布では60歳代が最も多く、次いで70歳代、50歳代となっていますが、初発年齢は30歳代が最も多いという特徴があります。

高尿酸血症による腎障害と尿路結石のリスク

高尿酸血症は痛風だけでなく、腎臓にも重大な影響を及ぼします。尿酸の約2/3は腎臓から排泄されるため、高尿酸血症が続くと腎機能に負担がかかります。

高尿酸血症による腎障害のメカニズムには、以下の2つがあります。

  1. 尿酸塩結晶の沈着による直接的な腎障害
  2. 尿酸の直接作用による腎障害
    • 酸化促進作用
    • 内皮機能障害
    • レニン・アンジオテンシン系の活性化
    • 輸入細動脈の血管障害
    • 腎尿細管細胞の上皮間葉転換

また、高尿酸血症は尿路結石の形成リスクも高めます。尿酸結石の主な危険因子は以下の3つです。

  • 尿量低下(水分摂取不足)
  • 持続する酸性尿(尿pH6.0未満)
  • 尿中尿酸排泄量の増加

高尿酸血症は尿酸結石だけでなく、最も頻度の高いシュウ酸カルシウム結石の形成も促進するため、総合的に尿路結石のリスクを高めます。

高尿酸血症と他の生活習慣病との関連性

高尿酸血症は単独で存在するだけでなく、様々な生活習慣病と密接に関連しています。特に注目すべきは、メタボリックシンドロームとの関係です。

高尿酸血症とメタボリックシンドロームの関連。

  • 高尿酸血症はメタボリックシンドロームの診断基準には含まれていないが、血清尿酸値が高いほどメタボリックシンドロームを有する頻度が高い
  • メタボリックシンドロームの因子数が多いほど、血清尿酸値も高くなる傾向がある
  • 内臓肥満、高血圧、高中性脂肪血症、インスリン抵抗性と血清尿酸値の間に関連がある

また、高尿酸血症は以下の疾患のリスク因子としても注目されています。

  • 高血圧:特に若年者、肥満者、女性で高血圧発症リスクが高まる
  • 心血管疾患:冠動脈疾患などの罹患率・死亡率増加と関連
  • 心不全:発症増加・増悪・全死亡率の増加と関連
  • 慢性腎臓病CKD:腎機能低下の進行と関連

興味深いことに、血清尿酸値高値と総死亡との関連は男性よりも女性で強い傾向があることが報告されています。一方で、血清尿酸値高値が悪性腫瘍(特に肺がん)のリスク低下に関連する可能性も示唆されており、尿酸の抗酸化作用が一部の臓器では保護的に働く可能性も考えられています。

日本痛風・尿酸核酸学会による高尿酸血症と生活習慣病の関連についての研究

高尿酸血症の診断と治療法

高尿酸血症の診断は、血液検査による血清尿酸値の測定が基本となります。日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインでは、血清尿酸値が7.0mg/dLを超える場合に高尿酸血症と診断します。

診断のプロセスには以下が含まれます。

  1. 問診:症状の経過、食生活、運動習慣、ストレス、既往歴、家族歴など
  2. 血液検査:血清尿酸値の測定
  3. 尿検査:尿中尿酸排泄量の測定(病型分類のため)
  4. 画像検査:関節X線検査、超音波検査など(痛風結節や関節破壊の評価)

高尿酸血症の治療ガイドラインと治療目標値

高尿酸血症の治療は、血清尿酸値のレベルや合併症の有無によって異なります。日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインに基づく治療方針は以下の通りです。

  1. 尿酸値7.0~8.0mg/dL未満
    • 生活習慣の改善のみで経過観察
    • 痛風や痛風結節がある場合は薬物療法を開始
  2. 尿酸値8.0~9.0mg/dL未満
    • 合併症がない場合は生活習慣の改善で経過観察
    • 腎障害、尿路結石、高血圧、心疾患、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの合併症がある場合は薬物療法を開始
  3. 尿酸値9.0mg/dL以上
    • 生活習慣の改善に加えて薬物療法を開始

治療目標値は以下の通りです。

  • 痛風や痛風結節がある場合:6.0mg/dL以下
  • 痛風や痛風結節がない場合:6.0~7.0mg/dL未満

高尿酸血症の薬物治療と作用機序

高尿酸血症の薬物治療には、主に以下の3種類の薬剤が使用されます。

  1. 尿酸生成抑制薬
    • アロプリノール:キサンチンオキシダーゼ阻害薬で、尿酸の生成を抑制
    • フェブキソスタット:非プリン型選択的キサンチンオキシダーゼ阻害薬
    • トピロキソスタット:日本で開発された選択的キサンチンオキシダーゼ阻害薬
  2. 尿酸排泄促進薬
    • ベンズブロマロン:腎臓での尿酸再吸収を抑制し、尿中への排泄を促進
    • プロベネシド:腎尿細管での尿酸再吸収を抑制
  3. 尿酸トランスポーター阻害薬
    • ドチヌラド:URAT1阻害により尿酸排泄を促進する新しいタイプの薬剤

薬剤選択の際には、患者の病型(尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、混合型、腎外排泄低下型)や腎機能、合併症などを考慮します。例えば、尿酸排泄低下型には尿酸排泄促進薬が、尿酸産生過剰型には尿酸生成抑制薬が適しています。

トピロキソスタットは、日本で開発された比較的新しい尿酸生成抑制薬で、使用成績調査によると高い安全性と有効性が報告されています。腎機能障害のある患者にも使用しやすいという特徴があります。

トピロキソスタットの使用実態下における安全性および有効性の評価に関する研究

高尿酸血症の食事療法とプリン体制限の実践法

高尿酸血症の非薬物療法として、食事療法は極めて重要です。以下に具体的な食事療法のポイントを示します。

  1. 適正体重の維持
    • 肥満は尿酸値上昇の独立した危険因子
    • BMI 25未満を目標に、必要に応じて減量
  2. プリン体摂取の制限
    • 1日のプリン体摂取量を400mg以下に抑える
    • 高プリン体食品(レバー、白子、一部の魚介類など)の摂取を控える
    • 完全に禁止するとストレスになるため、適度な制限を心がける
  3. アルコール摂取の制限
    • 特にビールは控える(プリン体含有量が多い)
    • 日本酒や蒸留酒も適量にとどめる
    • 休肝日を設ける
  4. 水分摂取の増加
    • 1日2リットル程度の水分摂取を心がける
    • 尿量を増やし、尿酸の排泄を促進
    • 尿路結石の予防にも効果的
  5. バランスの良い食事
    • 五大栄養素(炭水化物、たんぱく質、脂質、ビタミン、ミネラル)と食物繊維のバランス
    • 野菜や果物を積極的に摂取(アルカリ性食品で尿のpHを上げる効果)

プリン体制限の実践例として、以下のような食事パターンが推奨されます。

朝食の例

  • トースト + 卵 + サラダ + 牛乳
  • シリアル + ヨーグルト + 果物

**昼食の