RASSスコアで鎮静を正しく評価・管理する方法
深く眠らせるほど患者が安全、というのは間違いで、過鎮静はICU在室日数を平均3日以上延ばす原因になります。
RASSスコアの評価手順と10段階の意味
RASS(Richmond Agitation-Sedation Scale)は、ICUで人工呼吸管理中の患者の鎮静状態を評価するために開発されたスケールです。 −5から+4までの10段階で構成され、「0=意識清明で落ち着いている」を基準に、プラスになるほど興奮・不穏、マイナスになるほど深い鎮静を示します。 plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
評価は3ステップで行います。
- ステップ1(視診):30秒間患者を観察し、RASS 0〜+4を判定する plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
- ステップ2(呼びかけ刺激):「目を開けてください」と大声で呼びかけ、名前を呼ぶ。開眼・アイコンタクトが10秒以上持続すれば RASS −1、10秒未満なら −2、動きはあるがアイコンタクトなしなら −3 と判定 plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
- ステップ3(身体刺激):呼びかけに無反応なら肩を揺するか胸骨を摩擦し、反応があれば −4、全く反応なしなら −5 と評価 md.tsukuba.ac(https://www.md.tsukuba.ac.jp/clinical-med/e-ccm/_src/342/RASS.pdf)
| スコア | 用語 | 状態の説明 |
|:—:|:—:|:—|
| +4 | 好戦的 | 暴力的・スタッフへの危険 |
| +3 | 非常に興奮 | チューブ類の自己抜去・攻撃的 |
| +2 | 興奮 | 頻繁な非意図的な動き |
| +1 | 不穏 | 不安、落ち着きのない動き |
| 0 | 意識清明 | 落ち着いている |
| −1 | 傾眠 | 呼びかけに10秒以上のアイコンタクト |
| −2 | 軽い鎮静 | 呼びかけに10秒未満の開眼 |
| −3 | 中等度鎮静 | 呼びかけに動きまたは開眼、アイコンタクトなし |
| −4 | 深い鎮静 | 身体刺激に動きまたは開眼 |
| −5 | 覚醒せず | 声・身体刺激に無反応 |
つまり、ステップを順番に踏んで初めて正確なスコアが出ます。 いきなり身体刺激をするのは評価手順として誤りです。これが基本です。 plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
RASSスコアの目標鎮静レベルはどう設定するか
鎮静管理の目的は「眠らせること」ではなく、「患者の不安を和らげ、快適さを確保すること」です。 この前提を見落とすと、過鎮静という落とし穴にはまります。 plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
一般的なICU人工呼吸器管理中の患者では、RASS −2〜0(浅い鎮静)が目標とされています。 これは「目を開けられる・呼びかけに反応できるが、過度に苦痛を感じていない」状態に相当します。浅い鎮静が原則です。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10799/)
ただし、目標は一律ではありません。 患者の基礎疾患、精神状態、せん妄の有無、処置内容によって最適な鎮静レベルは変わります。重症患者リハビリテーション診療ガイドライン(日本集中治療医学会 2023年)では、リハビリ実施時の適切な鎮静深度はRASS −2〜+1とされています。 m3(https://www.m3.com/clinical/news/1324556)
目標を設定する際の判断軸。
- 🫁 人工呼吸器との同調性:自発呼吸と非同調があればスコアだけでなく呼吸パターンも観察 kango-roo(https://www.kango-roo.com/work/6049/)
- 🧠 せん妄リスク:RASS −3以下が続く場合はCAM-ICUによるせん妄評価を追加 hokuto(https://hokuto.app/post/tnwQWpo4FxL3OqFlKzPv)
- 🏃 早期リハビリの可否:RASS −2〜0程度まで鎮静を軽減できるかを毎日検討 homerion.co(https://www.homerion.co.jp/topics/gtes-icu-13/)
目標レンジと現在値の「差」を記録することで、鎮静調整後の再評価につなげやすくなります。 これは使えそうです。 rehabilikunblog(https://rehabilikunblog.com/richmond-agitation-sedation-scale/)
参考:重症患者リハビリテーション診療ガイドライン(日本集中治療医学会)
https://www.jsicm.org/pdf/JSICM_J-ReCIP2023_Vol30-Supplement2.pdf
RASSの目標鎮静深度やリハビリ実施条件について詳細な記述があります。
過鎮静(RASSスコアが深すぎる)のリスクと臨床への影響
深鎮静の必要がない患者でも、漫然と深く眠らせてしまう「過鎮静」は現場でよく起きます。 これが後のアウトカムを大きく左右します。厳しいところですね。 jseptic(https://www.jseptic.com/nursematerial/nursematerial0004.pdf)
過鎮静の主な弊害は以下の通りです。
- 🕒 人工呼吸器離脱の遅延:過度な鎮静はウィーニングを困難にし、ICU滞在期間を延ばします kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/3855/)
- 💪 ICUAW(ICU獲得性筋力低下):長期臥床による廃用が進み、退院後の身体機能が低下します homerion.co(https://www.homerion.co.jp/topics/gtes-icu-13/)
- 🧠 せん妄の増悪:深鎮静はせん妄リスクと密接に関連しています hokuto(https://hokuto.app/post/tnwQWpo4FxL3OqFlKzPv)
- 📉 死亡率との関連:Sedation Indexを用いた研究では、鎮静深度の増加がアウトカム悪化と関連することが示されています medicalonline(https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=1755)
SPICE研究の二次解析では、深鎮静の不要な患者にはRASS 0を目標とした管理が合理的と結論づけられています。 つまり、スコアを下げること自体が目的化しないことが条件です。 medicalonline(https://www.medicalonline.jp/review/detail?id=1755)
過鎮静を防ぐ具体的な運用として、毎日の鎮静中断(DSI: Daily Sedative Interruption)と看護師主導の鎮静プロトコルの両方が有効です。 どちらの方法でも浅い鎮静の達成・維持が可能とされています。 kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10799/)
参考:ICUにおける鎮静(看護roo!)

浅い鎮静の定義、DSIの運用方法、鎮痛評価との組み合わせについて詳しく解説されています。
RASSスコアとCAM-ICUを組み合わせたせん妄評価
RASSスコアはせん妄の評価とセットで運用するのが現在の標準です。 これが条件です。 hokuto(https://hokuto.app/post/tnwQWpo4FxL3OqFlKzPv)
CAM-ICU(Confusion Assessment Method for the ICU)は、ICU患者のせん妄を客観的に評価するツールです。評価の前提として、まずRASSスコアで鎮静深度を確認します。 hokuto(https://hokuto.app/post/tnwQWpo4FxL3OqFlKzPv)
- RASS −4・−5の場合:反応がなくCAM-ICUの評価ができないため、「評価不能(UTA)」と記録します
- RASS −3以上の場合:CAM-ICUによるせん妄評価を実施します
- 小児(小児ICU)の場合:CAPD評価でRASSが−3以上の患児を対象にせん妄スクリーニングを行います
maruishi-pharm.co(https://www.maruishi-pharm.co.jp/media/20190130.pdf)
RASSが−3以下だと「眠っているだけでせん妄はない」と誤解されがちですが、深鎮静自体がせん妄の誘発・遷延因子になります。 意外ですね。 hokuto(https://hokuto.app/post/tnwQWpo4FxL3OqFlKzPv)
せん妄のリスクファクターは「THINK」という頭字語で整理されると覚えやすいです(Toxic situations, Hypoxia, Immobilization, Non-pharmacological interventions, K+または電解質異常)。RASSスコアで過鎮静を防ぎ、可能な限り早期から離床を促す介入がせん妄予防の中心になります。 homerion.co(https://www.homerion.co.jp/topics/gtes-icu-13/)
参考:ナース専科 RASS解説ページ

RASSのスコアリング方法から鎮静薬の調節方法まで、看護師向けにわかりやすく解説されています。
RASSスコアを鎮静プロトコルに活かす:看護師主導の実践アプローチ
RASSを「採点して記録するだけ」で終わらせると、その本来の価値の半分も活かせません。 結論は「差を見て次の一手を決める尺度」です。 rehabilikunblog(https://rehabilikunblog.com/richmond-agitation-sedation-scale/)
看護師主導の鎮静プロトコルを運用する際のポイントは次の通りです。
- ✅ 目標RASSを明示する:医師の指示として目標レンジ(例:RASS −2〜0)を明文化し、シフト間で情報共有する jseptic(https://www.jseptic.com/nursematerial/nursematerial0004.pdf)
- ✅ 評価間隔を設定する:1時間〜数時間ごとに定期的にRASSを評価し、目標との差を確認する knowledge.nurse-senka(https://knowledge.nurse-senka.jp/500283)
- ✅ 鎮痛評価と連動させる:RASS評価と並行して、NRS・VAS ≦3、またはBPS ≦5、CPOT ≦2となるよう鎮痛管理できているか確認する kango-roo(https://www.kango-roo.com/learning/10799/)
- ✅ 目標超過時の対応手順を事前に決めておく:RASS が目標より深い(過鎮静)または浅い(不穏・疼痛)場合の対応フローを施設SOPに組み込む rehabilikunblog(https://rehabilikunblog.com/richmond-agitation-sedation-scale/)
鎮静薬の増減調整は医師の指示に従います。 看護師が自己判断で増量するのはルール違反です。しかし、RASSスコアの記録・評価・報告は看護師主導で実施する部分であり、適切な評価が治療の質を大きく左右します。 plaza.umin.ac(http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/yc01-2.pdf)
また、緩和ケア領域では目標が異なります。 日本緩和医療学会のガイドラインでは、治療抵抗性の苦痛に対する持続的深い鎮静の治療目標はRASS ≦−4とされ、ミダゾラムの維持投与で管理する方法が示されています。 ICU鎮静と緩和鎮静は目的も目標スコアも別物だけは例外です。 jspm.ne(https://www.jspm.ne.jp/files/guideline/sedation_2023/10_shiryo.pdf)
RASSスコアをベッドサイドで迅速に確認できるツールとして、評価フローと早見表をラミネートしてベッド周囲に貼っておくと、スタッフ間の評価精度が統一しやすくなります。 rehabilikunblog(https://rehabilikunblog.com/richmond-agitation-sedation-scale/)
参考:m3.com エキスパート解説「RASSはこう使う!」

現場の医師によるRASSの実践的な使い方と、目標鎮静レベルの決め方について具体的な解説があります。
参考:JSEPTIC 鎮静管理資料(集中治療専門医向け)
https://www.jseptic.com/nursematerial/nursematerial0004.pdf
鎮静スケールを用いた定期チェックと目標設定の考え方が実践的にまとめられています。