トルリシティ皮下注の薬価と処方判断のポイント
トルリシティ皮下注の薬価を「発売当初からずっと同じ」と思っていると、患者への説明で約3,586円→2,749円という大幅な差額を見落とし、医療費試算が大きくズレます。
トルリシティ皮下注の現行薬価と規格の違い
トルリシティ皮下注(一般名:デュラグルチド〔遺伝子組換え〕)は、現在2規格が薬価収載されています。 0.75mgアテオスが1キット2,749円、2025年5月に新たに収載された1.5mgアテオスが1キット5,498円です。 つまり1.5mgはちょうど0.75mgの2倍の薬価設定ということですね。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071463)
週1回投与のため、1か月(4週間)あたりの薬剤費は0.75mgで約10,996円、1.5mgで約21,992円となります。 患者の自己負担は3割負担の場合、それぞれ約3,299円・約6,598円/月です。これは保険適用下での概算です。 k-takeuchi-naika(https://k-takeuchi-naika.com/mounjaro/)
規制区分は「生物由来製品・劇薬・処方箋医薬品」の3区分すべてに該当します。 取り扱いに際しては生物由来製品の管理基準が適用されます。生物由来製品の管理が条件です。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00071463)
トルリシティ皮下注の薬価改定の歴史と市場拡大再算定
2015年9月の発売時、トルリシティ皮下注0.75mgアテオスの薬価は1キット3,586円でした。 その後、GLP-1受容体作動薬カテゴリー全体が市場拡大再算定の対象となり、繰り返し薬価が引き下げられています。 dm-rg(https://dm-rg.net/news/2015/09/017198.html)
令和3年度(2021年度)の薬価算定では、中医協の薬価算定組織でトルリシティに対して陳述が行われるほど、製薬企業側の関心が高い案件でした。 同改定サイクルで3,280円→2,917円(約11.1%減)という引き下げが実施されています。 薬価が毎年度または2年ごとに改定されるというのは、処方頻度の高い薬剤ほど影響が大きいです。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_24955.html)
意外なのは、2025年4月以降の現行薬価が2,749円と、直前の2,917円よりさらに低い点です。 薬価は「一度下がれば底値」と思っている医療従事者もいますが、市場拡大再算定・毎年薬価改定のいずれも対象になり得るため、定期的な確認が不可欠です。薬価サーチや厚労省の薬価基準収載品目表での定期確認が原則です。 yakka-search(https://yakka-search.com/index.php?s=622442201&stype=9)
参考:厚生労働省が公開している薬価基準収載品目表・改定資料(市場拡大再算定の詳細が確認できます)
中央社会保険医療協議会 薬価算定組織資料(令和3年度)- 厚生労働省
トルリシティ皮下注の薬価と患者負担の実際の計算方法
薬価から患者実負担を計算する際、「薬価=患者負担額」と誤解されがちですが実際は異なります。これは痛いですね。薬価はあくまで保険償還の基準価格であり、患者の自己負担は薬価に負担割合(1〜3割)を掛けた金額に調剤技術料・薬学管理料が加算されたものになります。
0.75mgを週1回、4週間投与した場合の薬剤費は2,749円×4=10,996円。 3割負担なら薬剤費のみで約3,299円/月、1割負担の高齢者では約1,100円/月です。実際の窓口負担はここに調剤基本料等が上乗せされる点を患者説明時に明確に伝えることが重要です。 k-takeuchi-naika(https://k-takeuchi-naika.com/mounjaro/)
1.5mgに増量した場合は月の薬剤費が倍の21,992円となり、3割負担で約6,598円/月と患者負担が約3,300円増加します。 高額療養費制度の適用可否については、他の薬剤・診療費との合算で判断が必要な場合もあります。増量を検討する際は費用対効果の説明も合わせて行うことが大切です。 clinicalsup(https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=71463)
他のGLP-1受容体作動薬との薬価比較と処方選択
GLP-1受容体作動薬はトルリシティ以外にも複数存在し、薬価は製剤によって大きく異なります。 週1回製剤では、オゼンピック(セマグルチド)やマンジャロ(チルゼパチド)と同一カテゴリで比較されることが多いです。 kegg(https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG01493)
マンジャロ皮下注の月当たり患者負担(自費換算)は2.5mgで約7,696円/月から最大46,176円/月(15mg)と幅広く、患者の経済的背景に応じた製剤選択が求められます。 トルリシティ0.75mgは月約10,996円(薬剤費)と、入門用量としてはGLP-1製剤の中でも比較的コストが抑えられた選択肢です。これは使えそうです。 k-takeuchi-naika(https://k-takeuchi-naika.com/mounjaro/)
ただし薬価のみで製剤を選ぶことはできません。HbA1c改善効果・心血管アウトカムエビデンス・操作性・患者アドヒアランスなどを総合的に評価することが医療従事者としての正しい判断です。 同効薬の比較は「くすりすと」「今日の臨床サポート」など医療従事者向けデータベースで一覧確認が可能です。 answers.and-pro(https://answers.and-pro.jp/pharmanews/13210/)
参考:GLP-1受容体作動薬の同効薬一覧・薬価比較(今日の臨床サポート)
トルリシティ皮下注0.75mgアテオス – 今日の臨床サポート
参考:GLP-1受容体作動薬の薬価・規格一覧(KEGG MEDICUS)
GLP-1受容体作動薬 商品一覧 – KEGG MEDICUS
トルリシティ皮下注の後発品未収載という盲点と薬剤管理の注意点
多くの医療従事者が見落としがちな点として、トルリシティ皮下注は2026年4月時点で後発品(ジェネリック医薬品)が存在しない先発品のみの薬剤であるという事実があります。 「長期収載品だからジェネリックがある」と思い込んだまま処方・調剤すると、在庫確認ミスや患者への誤った説明につながるリスクがあります。 data-index.co(https://www.data-index.co.jp/kusulist/detail.php?trk_toroku_code=2499416G1029)
後発品なし、が条件です。生物学的製剤(バイオ医薬品)であるトルリシティはバイオシミラーの開発対象にはなりますが、化学合成薬と比べて後発品参入のハードルが高く、現時点での薬価競争は起こっていません。 このため、薬価はメーカー品の薬価改定に全面的に依存する構造になっています。 data-index.co(https://www.data-index.co.jp/kusulist/detail.php?trk_toroku_code=2499416G1029)
管理面では「生物由来製品」として2℃〜8℃の冷蔵保管が必要であり、凍結禁止・遮光管理が義務付けられています。 在庫管理の際は温度逸脱記録の保管が求められます。さらに「劇薬」指定のため、他の薬剤と区別した保管と譲渡記録の整備が法的に必要です。これを怠ると薬事法上の違反となり、施設への行政処分リスクが生じます。劇薬管理の記録整備は必須です。 gifu-upharm(https://www.gifu-upharm.jp/di/mdoc/iform/2g/i3538172406.pdf)
参考:トルリシティ皮下注の添付文書・薬価情報(しろぼんねっと)
トルリシティ皮下注0.75mgアテオス – しろぼんねっと(医療従事者向け)
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以下は主要な薬価推移をまとめた参考表です。
| 時期 | 規格 | 薬価(1キット) | 変動率 |
|---|---|---|---|
| 2015年9月(発売時) | 0.75mg | 3,586円 | 基準 |
| 2022年4月(市場拡大再算定後) | 0.75mg | 2,917円 | 約▲18.6% |
| 2025年4月〜(現行) | 0.75mg | 2,749円 | 発売比約▲23.3% |
| 2025年5月(新規収載) | 1.5mg | 5,498円 | 新規 |