抗pd-l1抗体一覧と適応がん種選択

抗pd-l1抗体一覧と適応

PD-L1発現50%未満でも単剤投与できる抗体があります。

この記事の3つのポイント
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国内承認済み3剤の特徴

アテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブの適応がん種と投与間隔の違いを把握できる

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効果予測因子の活用法

PD-L1発現率、MSI-High、TMBなど複数のバイオマーカーによる治療選択基準を理解できる

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irAEの発現頻度と対策

抗PD-1抗体との副作用プロファイルの違いと早期発見のモニタリング方法が分かる

抗pd-l1抗体3製剤の基本情報と承認状況

現在日本国内で承認されている抗PD-L1抗体は3製剤あります。それぞれが異なる特徴と適応がん種を持ち、臨床現場での使い分けが求められています。

アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)は、ロシュ・中外製薬が開発した抗PD-L1抗体で、最も幅広い適応を持つ製剤です。非小細胞肺癌では単剤療法に加え、化学療法やベバシズマブとの併用療法が承認されています。進展型小細胞肺癌に対しても化学療法との併用で使用可能です。さらに肝細胞癌ではベバシズマブとの併用療法が標準治療の一つとなっており、乳癌尿路上皮癌への適応も取得しています。投与間隔は1200mgを3週間ごと、または840mgを2週間ごとの選択が可能で、患者さんの治療スケジュールに合わせた柔軟な設定ができます。

デュルバルマブ(商品名:イミフィンジ)は、アストラゼネカが開発した製剤で、特に肺癌領域で独自のポジションを確立しています。切除不能なステージIII非小細胞肺癌に対する根治的化学放射線療法後の地固め療法として、世界的に標準治療となりました。この適応は他の抗PD-L1抗体にはない特徴です。また、進展型小細胞肺癌に対しても化学療法との併用で承認されており、肝細胞癌や胆道癌への適応拡大も進んでいます。投与量は10mg/kgを2週間間隔、または1500mgを4週間間隔で投与します。

アベルマブ(商品名:バベンチオ)は、メルクセローノ・ファイザーが開発した製剤です。主な適応はメルケル細胞癌と腎細胞癌で、特にメルケル細胞癌に対しては本邦初の承認薬として重要な位置づけにあります。腎細胞癌では抗VEGF薬アキシチニブとの併用療法が承認されており、免疫療法血管新生阻害の相乗効果が期待できます。投与量は800mgを2週間間隔で、1回の投与時間は60分です。

これら3製剤はいずれもPD-L1とPD-1の結合を阻害する機序を持ちますが、結合するエピトープや抗体の構造が異なります。そのため臨床効果や副作用プロファイルにも微妙な差が生じています。

PMDAの免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象対策マニュアル(PDF)では、各薬剤の特性と副作用管理の詳細が解説されています

抗pd-l1抗体の投与スケジュールと薬価

投与間隔の選択は患者さんの通院負担と医療経済性の両面で重要な判断ポイントです。各製剤で異なるスケジュールが設定されており、臨床状況に応じた使い分けが可能になっています。

アテゾリズマブは2つの投与レジメンから選択できます。1200mgを3週間間隔で投与する標準的なスケジュールと、840mgを2週間間隔で投与するスケジュールです。化学療法と併用する場合は3週間間隔が一般的ですが、単剤療法では患者さんの通院可能な頻度に合わせて選択できます。薬価は1200mg製剤が約52万円、840mg製剤が約36万円で設定されており、年間の薬剤費は約900万円に達します。ただし高額療養費制度の適用により、患者負担は所得に応じて月額数万円程度に抑えられます。

デュルバルマブの投与間隔は疾患によって異なります。非小細胞肺癌の地固め療法では10mg/kgを2週間間隔で最長12ヶ月間継続します。この長期投与により、根治的化学放射線療法後の再発リスクを大幅に減少させることが臨床試験で示されました。一方、進展型小細胞肺癌や肝細胞癌では1500mgを4週間間隔で投与するレジメンも使用可能です。薬価は500mg製剤が約18万円で、体重60kgの患者さんに10mg/kg投与する場合、1回あたり約43万円のコストとなります。

アベルマブは800mgを2週間間隔で投与する固定用量レジメンです。体重による用量調整が不要なため、投与準備が簡便で調剤ミスのリスクも低減できます。薬価は200mg製剤が約9万円で、1回の投与に4バイアル必要となり、約36万円です。腎細胞癌でアキシチニブと併用する場合は、両剤の費用を合わせると年間で約1200万円の薬剤費が発生します。

医療経済性の観点からも適応判断が重要です。

投与スケジュールの違いは、患者さんの生活スタイルや通院可能性、併用する化学療法のサイクルとの調和を考慮して選択する必要があります。例えば化学療法を3週間サイクルで行う場合は、同じタイミングで投与できる3週間間隔の免疫チェックポイント阻害薬が管理しやすくなります。

つまり投与間隔の選択が重要です。

抗pd-l1抗体のPD-L1発現率と効果予測

PD-L1発現率は免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する最も重要なバイオマーカーの一つです。しかし、抗PD-1抗体と抗PD-L1抗体では、PD-L1発現率による治療選択の考え方が異なります。

抗PD-1抗体のペムブロリズマブでは、非小細胞肺癌の単剤療法においてTPS(Tumor Proportion Score)50%以上が適応の条件となっています。これは高いPD-L1発現が治療効果と強く相関するというエビデンスに基づいた設定です。TPS 1-49%の中等度発現では化学療法との併用が推奨され、TPS 1%未満では化学療法単独が標準とされてきました。

一方、抗PD-L1抗体ではより柔軟な使用が可能です。アテゾリズマブは非小細胞肺癌の2次治療以降でPD-L1発現に関わらず使用できます。これは抗PD-L1抗体が腫瘍細胞のPD-L1だけでなく、腫瘍微小環境の免疫細胞上のPD-L1にも作用するためと考えられています。デュルバルマブの地固め療法でも、PD-L1発現の有無に関わらず有効性が示されていますが、高発現群でより顕著な効果が認められています。

PD-L1検査には複数のアッセイ系が存在し、使用する抗体クローンによって結果が異なる場合があります。ペムブロリズマブでは22C3抗体、ニボルマブでは28-8抗体、アテゾリズマブではSP142抗体、デュルバルマブではSP263抗体が対応するコンパニオン診断薬として承認されています。これらのアッセイ間で完全な互換性はなく、同じ検体でも陽性率に差が出ることが報告されています。

判定基準も薬剤や癌種によって異なります。非小細胞肺癌ではTPSが主に使用されますが、頭頸部癌や尿路上皮癌ではCPS(Combined Positive Score)が用いられます。CPSは腫瘍細胞だけでなく免疫細胞の染色も含めて評価するため、TPSよりも高い値が出る傾向があります。

PD-L1発現率だけで治療効果を完全に予測できるわけではありません。PD-L1陰性でも効果が得られる症例は約15-20%存在し、逆にPD-L1高発現でも無効な症例もあります。そのため他のバイオマーカーとの組み合わせによる総合的な判断が求められています。

結論はPD-L1発現だけでは不十分です。

抗pd-l1抗体の効果を高めるMSI-HighとTMB

PD-L1発現以外にも、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測する重要なバイオマーカーが存在します。その代表がMSI-High(高頻度マイクロサテライト不安定性)とTMB-High(高腫瘍遺伝子変異量)です。

MSI-Highは、DNAのミスマッチ修復機構に異常がある腫瘍で認められる現象です。DNAの短い繰り返し配列(マイクロサテライト)が不安定になり、多数の遺伝子変異が蓄積します。これらの変異により生じた異常なタンパク質が腫瘍抗原として認識されやすくなり、免疫チェックポイント阻害薬に対する高い感受性をもたらします。大腸癌では約5%、胃癌では約8%、子宮体癌では約30%にMSI-Highが認められます。ペムブロリズマブは、MSI-High固形癌に対してがん種を問わず承認されており、奏効率は約40%、完全奏効率も10%程度と非常に良好な成績を示しています。

TMB-Highは、腫瘍ゲノム中の体細胞変異の数が多い状態を指します。一般的に1メガベースあたり10個以上の変異があればTMB-Highと判定されます。変異が多いほど腫瘍抗原も多くなり、免疫系による認識と攻撃を受けやすくなります。肺癌の約20%、メラノーマの約30%、膀胱癌の約25%がTMB-Highに該当します。ペムブロリズマブはTMB-High固形癌に対しても承認されており、PD-L1発現と組み合わせることでさらに精密な効果予測が可能になります。

興味深いのは、MSI-HighとPD-L1高発現には相関関係があることです。MSI-High腫瘍では免疫細胞の浸潤が多く、PD-L1も高発現している傾向があります。そのため抗PD-L1抗体の効果が特に期待できる集団となります。実際の臨床データでも、MSI-High大腸癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の奏効率は50-60%に達し、化学療法の約30%を大きく上回っています。

これらのバイオマーカー検査は、次世代シーケンサー(NGS)を用いた包括的ゲノムプロファイリング検査で同時に評価できます。保険適用の条件を満たせば、一度の検査でMSI、TMB、EGFR、ALKなど複数の情報が得られ、最適な治療選択につながります。

ただし、すべての施設でNGS検査が実施できるわけではなく、結果が出るまで2-3週間かかることも考慮が必要です。急速に進行する症例では、PD-L1検査の結果のみで初期治療を開始し、NGS結果を待って治療方針を調整するアプローチも取られています。

MSDコネクトのキイトルーダ開発経緯ページでは、MSI-High固形癌への適応拡大の背景が詳しく解説されています

抗pd-l1抗体と化学療法・血管新生阻害薬の併用戦略

免疫チェックポイント阻害薬の効果を最大化する方法として、化学療法や血管新生阻害薬との併用療法が急速に発展しています。単剤では効果が限定的な症例でも、併用により奏効率が大幅に向上することが分かってきました。

化学療法との併用では、相反する作用機序が相乗効果を生み出します。化学療法は腫瘍細胞を直接破壊し、その過程で腫瘍抗原が放出されます。免疫系がこれらの抗原を認識しやすくなり、抗PD-L1抗体による免疫活性化の効果が増強されます。また、一部の化学療法薬は制御性T細胞を減少させ、免疫抑制環境を改善する作用も持っています。非小細胞肺癌では、アテゾリズマブとカルボプラチン/パクリタキセルの併用により、化学療法単独と比較して全生存期間が約4ヶ月延長しました。

血管新生阻害薬との併用は、さらに興味深いメカニズムを持っています。抗VEGF抗体のベバシズマブは、腫瘍血管の正常化を促し、免疫細胞が腫瘍内に浸潤しやすい環境を作ります。同時に、VEGFによる免疫抑制シグナルも遮断されるため、抗PD-L1抗体の効果が発揮されやすくなります。肝細胞癌におけるアテゾリズマブとベバシズマブの併用療法(IMbrave150試験)では、標準治療のソラフェニブと比較して全生存期間の中央値が約7ヶ月延長し、新たな標準治療として確立しました。

最近では、PD-1とVEGFの両方に結合する二重特異性抗体も開発されています。Ivonescimabは中国で承認され、非小細胞肺癌に対してPD-1単剤や化学療法と比較して優れた効果を示しています。1つの分子で2つの経路を同時に阻害することで、併用療法の煩雑さを解消し、投与コストも削減できる可能性があります。

併用療法では副作用の増加にも注意が必要です。化学療法との併用では骨髄抑制や消化器症状が、血管新生阻害薬との併用では高血圧や出血リスクが問題になります。免疫関連有害事象(irAE)の発現頻度も単剤より高くなる傾向があり、Grade 3以上の重篤な副作用は併用療法で20-30%に達します。

こうした効果と副作用のバランスを考慮し、患者さんの全身状態、臓器機能、併存疾患を総合的に評価して治療方針を決定します。

併用療法が標準治療です。

抗pd-l1抗体のirAE発現パターンと早期発見

免疫関連有害事象(irAE)は、免疫チェックポイント阻害薬特有の副作用で、自己免疫疾患に類似した多彩な症状を呈します。抗PD-L1抗体は抗PD-1抗体と比較して、irAEの発現頻度がやや低い傾向がありますが、重篤化するリスクは同様に存在します。

最も頻度が高いのは皮膚障害で、全患者の15-20%に出現します。

発疹、そう痒、白斑などが代表的な症状です。

多くは軽症で対症療法で管理可能ですが、Stevens-Johnson症候群のような重篤な皮膚粘膜障害も稀に報告されています。患者さんに皮膚の変化を観察し、異常があれば早期に報告するよう指導することが重要です。

内分泌障害は、抗PD-L1抗体で10-15%の頻度で認められます。甲状腺機能異常が最も多く、初期には甲状腺機能亢進症を呈し、その後低下症に移行するパターンが典型的です。下垂体炎は頻度は低いものの(1-2%)、副腎不全を引き起こすと生命に関わります。頭痛、倦怠感、低血圧が持続する場合は、早急にACTH、コルチゾール、甲状腺ホルモンを測定する必要があります。

消化器障害は治療開始後2-3ヶ月以内に多く発現します。下痢や大腸炎の頻度は抗CTLA-4抗体より低く、抗PD-L1抗体単剤では約5-10%です。しかし化学療法との併用では15-20%に増加します。Grade 2以上の下痢が出現した時点で、速やかにステロイド治療を開始することで重症化を防げます。

肝機能障害は無症状で進行することが多く、定期的な血液検査によるモニタリングが不可欠です。AST、ALT、ビリルビンの上昇が認められた際は、他の原因を除外した上で免疫性肝炎を疑います。Grade 3以上の肝障害は5%程度の頻度で発現し、高用量ステロイドや免疫抑制剤による治療が必要になります。

肺臓炎は頻度は低い(2-5%)ものの、致死的になりうる重要なirAEです。咳、息切れ、発熱などの症状に加え、胸部CTで間質性陰影を確認した場合は直ちに投与を中止します。感染症との鑑別が困難なことも多く、気管支鏡検査や経気管支肺生検が必要になる場合もあります。

irAEの発現時期は多くが治療開始後3ヶ月以内ですが、治療終了後数ヶ月経過してから出現する遅発性irAEも報告されています。そのため治療中断後も少なくとも6ヶ月間は定期的なフォローアップが推奨されています。

早期発見のポイントが救命につながります。

PMDAの免疫関連有害事象マニュアルでは、各臓器別のirAE対応アルゴリズムが詳細に記載されています