オビヌツズマブ添付文書の重要事項
初回投与時の投与速度を上げるとinfusion reactionが65%以上発現します。
オビヌツズマブの基本的な製剤情報と特徴
オビヌツズマブ(商品名:ガザイバ点滴静注1000mg)は、中外製薬株式会社と日本新薬株式会社が製造販売する抗悪性腫瘍剤です。ヒト化抗CD20モノクローナル抗体に分類される分子標的薬で、CD20陽性のB細胞性悪性リンパ腫の治療に使用されます。
添付文書に記載されている承認適応は、CD20陽性の濾胞性リンパ腫と、CD20陽性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)の2つです。2025年11月には未治療の慢性リンパ性白血病に対するベネトクラクスとの併用療法が追加承認されました。
製剤は1バイアル40.0mLあたりオビヌツズマブ1000mgを含有しています。添加物としてトレハロース水和物3632.0mg、L-ヒスチジン57.6mg、L-ヒスチジン塩酸塩水和物89.6mg、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ポリソルベート80)8.0mgが配合されています。
保管は2~8℃での冷蔵保存が必須です。外箱開封後は遮光して保存する必要があります。凍結させないよう注意し、調製後速やかに使用できない場合も2~8℃で保存し、調製の翌日までに使用しなければなりません。
つまり冷蔵管理が原則です。
オビヌツズマブは既存のリツキシマブと同じくCD20に結合しますが、タイプⅡ抗体に分類され、糖鎖改変により抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)と抗体依存性細胞貪食活性(ADCP)が向上している点が特徴です。リツキシマブはキメラ抗体ですが、オビヌツズマブはヒト化抗体であるため、免疫原性が低減されています。
GALLIUM試験では、濾胞性リンパ腫の初回治療において、オビヌツズマブと化学療法の併用がリツキシマブと化学療法の併用と比較して、無増悪生存期間を29%改善することが示されました。
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中外製薬の電子添文ページでは、最新の添付文書情報をHTML形式で確認できます。用法用量や警告、禁忌事項など重要な情報が掲載されています。
オビヌツズマブの用法用量と投与スケジュール
添付文書に記載されている用法用量は、適応疾患によって異なります。CD20陽性の濾胞性リンパ腫では、導入療法と維持療法の2段階で投与を行います。
導入療法では、オビヌツズマブとして1日1回1000mgを点滴静注します。1サイクル目は1日目、8日目、15日目の3回投与し、2サイクル目以降は各サイクルの1日目のみ投与します。化学療法との併用では28日を1サイクルとして最大8サイクル、ベンダムスチンとの併用では56日を1サイクルとして最大6サイクル実施します。
維持療法では、導入療法終了後に単独投与で2ヵ月に1回、最長2年間投与を繰り返します。
CD20陽性の慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)では、28日を1サイクルとして投与します。1サイクル目の1日目に100mg、2日目に900mgを投与し、2サイクル目以降は各サイクルの1日目に1000mgを投与します。化学療法との併用では最大6サイクル、ベネトクラクスとの併用では最大12サイクル、アカラブルチニブとの併用では最大6サイクル実施します。
1サイクル目の投与を100mgと900mgに分割する理由は、infusion reactionのリスク軽減です。初回投与時は腫瘍量が多く血中リンパ球数も高値のため、全量を一度に投与すると重篤なinfusion reactionや腫瘍崩壊症候群が発現しやすくなります。分割投与により、これらのリスクを段階的に管理できます。
投与速度の管理も極めて重要です。添付文書では、点滴静注用として用い、静脈内大量投与や急速静注を行わないことが明記されています。注入速度を守るために輸液ポンプの使用が必須とされています。
濾胞性リンパ腫の1サイクル目1日目は25mg/時の速度で4時間以上かけて投与し、投与速度を上げてはいけません。1サイクル目2日目以降は50mg/時で開始し、30分毎に50mg/時ずつ最大400mg/時まで投与速度を上げることができます。2サイクル目以降は100mg/時で開始し、同様に30分毎に増速できます。
慢性リンパ性白血病の1サイクル目1日目(100mg投与)は25mg/時で4時間以上かけて投与し、投与速度を上げません。1サイクル目2日目(900mg投与)は10mg/時で開始し、30分毎に10~15mg/時ずつ最大100mg/時まで増速します。2サイクル目以降は25mg/時で開始し、30分毎に25mg/時ずつ最大400mg/時まで増速できます。
投与速度を上げないことが基本です。
Infusion reactionが発現した場合の対応も添付文書に詳細に記載されています。Grade2以下の場合は投与を中断するか投与速度を下げ、症状が消失または軽快すれば投与を再開できます。再開時は投与中断前の半分以下かつ400mg/時以下の速度とし、その後30分毎に50mg/時ずつ増速します。Grade3以上やGrade4の場合は投与を直ちに中止し、再投与しません。
オビヌツズマブ投与時の前投薬と対策
Infusion reactionのリスクを軽減するため、オビヌツズマブ投与の30分~1時間前に前投薬を実施することが添付文書で推奨されています。抗ヒスタミン剤と解熱鎮痛剤の前投与は必須です。
副腎皮質ホルモン剤と併用しない場合は、オビヌツズマブの投与に際して副腎皮質ホルモン剤の前投与も必要です。GAZELLE試験では、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤、解熱鎮痛剤の前投与を必須としてinfusion reactionのリスク軽減が図られました。
腫瘍量が多い患者や血中リンパ球数が25,000/μLを超える患者では、infusion reactionや腫瘍崩壊症候群のリスクが特に高くなります。このような患者には前投薬の徹底が不可欠です。
実際の臨床試験データでは、オビヌツズマブのinfusion reaction発現率は濾胞性リンパ腫患者で59.0%、慢性リンパ性白血病患者で64.6%と高率でした。日本人濾胞性リンパ腫患者を対象とした研究では、IRR発現率は59.0%と報告されています。
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前投薬の具体的な内容としては、抗ヒスタミン剤(例:d-クロルフェニラミンマレイン酸塩2~6mg)、解熱鎮痛剤(例:ジクロフェナクナトリウム25mg、ロキソプロフェンナトリウム60mg)、副腎皮質ホルモン剤(例:デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム6.6~20mg、プレドニゾロン100mg相当)が使用されます。
副腎皮質ホルモン剤の増量により、infusion reactionの発現率を低減できる可能性があります。ある研究では、副腎皮質ホルモン剤を増量した群でGrade3以上のIR発現率が0%となり、全GradeのIR発現率も43.3%と忍容可能な範囲でした。
前投薬の徹底がリスク管理の鍵です。
腫瘍崩壊症候群のリスクがある患者には、オビヌツズマブ投与開始12~24時間前からアロプリノールの投与など、腫瘍崩壊症候群の予防処置を行うことが推奨されます。投与中および投与後は、血清中電解質濃度および腎機能検査を行い、異常が認められた場合には適切な処置が必要です。
日本新薬の医療関係者向けサイトでは、ガザイバの電子添文やインタビューフォーム、製剤写真などの詳細情報が掲載されています。
投与方法や安全性情報の確認に有用です。
オビヌツズマブの重大な副作用とB型肝炎リスク
添付文書の重大な副作用の項には、生命を脅かす可能性のある事象が複数記載されています。特にB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化による劇症肝炎や肝炎の増悪は、死亡に至る可能性があるため最重要の管理項目です。
オビヌツズマブを含む抗CD20抗体薬投与患者において、HBVの再活性化が起こり、劇症肝炎、肝不全など致命的な転帰をたどる可能性が知られています。添付文書では、投与に先立って肝炎ウイルス感染の有無を確認し、投与前に適切な処置を行うことが必須とされています。
HBs抗原陽性またはHBs抗体陽性、HBc抗体陽性の患者では、投与期間中および投与終了後は継続して肝機能検査や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行います。投与中または投与終了後にHBV-DNA量の上昇またはALT上昇が認められた場合は、直ちに抗ウイルス剤を投与するなど適切な処置が必要です。
本邦での化学療法施行例のHBs抗原陽性割合は1~3%、HBs抗体またはHBc抗体の陽性割合は20~30%前後です。これらの患者では全てHBV再活性化のリスクがあると考えられます。
20~30%の患者がリスク保有者です。
HBV既往感染患者に免疫抑制剤などが投与され、HBV再活性化を来して急性肝不全に陥った場合、致死率は90%以上となる報告があります。一方、継続的にHBV-DNA量がモニタリングされ、早期に診断と適切な治療介入がなされれば、死亡に至る可能性は非常に低くなります。
Infusion reactionも重大な副作用として記載されています。症状には発熱、悪寒、悪心、嘔吐、下痢、頭痛、発疹、そう痒、咳嗽、気管支痙攣、咽喉刺激感、呼吸困難、頻脈、低血圧などがあります。
典型的なinfusion reactionの好発時期は、初回と2回目投与時、および投与開始30分~2時間後です。症状は投与24時間後まで持続する場合があります。頻度は低いですが、アナフィラキシーにも注意が必要です。
その他の重大な副作用として、腫瘍崩壊症候群、感染症(敗血症、肺炎、サイトメガロウイルス感染症、帯状疱疹など)、好中球減少、血小板減少、進行性多巣性白質脳症(PML)、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死融解症などが添付文書に記載されています。
好中球減少の発現率は濾胞性リンパ腫で45.5%、慢性リンパ性白血病で33.5%と高頻度です。好中球減少により敗血症や肺炎などの重篤な感染症があらわれる場合があり、十分な注意が必要です。
高齢者では重篤な副作用の発現率が高い傾向が認められています。患者の状態を十分に観察しながら慎重に投与を行うことが求められます。
オビヌツズマブの調製方法と取り扱い上の注意
オビヌツズマブの調製時には、添付文書に記載された手順を厳守する必要があります。バイアルから必要量を抜き取り、0.9%生理食塩液250mLの点滴バッグに希釈します。希釈後は緩やかに転倒混和し、泡立てないようにします。
他の薬剤や輸液との混注は行ってはいけません。オビヌツズマブは生理食塩液のみでの希釈が承認されており、他の輸液との配合変化に関するデータはありません。
調製後は速やかに使用することが原則ですが、やむを得ず保存する場合は2~8℃で保存し、調製の翌日までに使用しなければなりません。生理食塩液による希釈後の安定性は、オビヌツズマブ濃度0.4~4.0mg/mLの範囲で、2~8℃保存および30℃保存のいずれにおいても最長24時間確認されています。
バイオ医薬品であるオビヌツズマブは、微粒子が認められることがあります。投与前に目視で確認し、変色や異物が認められた場合は使用しないでください。
投与時には血管外漏出を起こさないように注意が必要です。血管外漏出による注射部位の紅斑、腫脹、疼痛等が報告されています。漏出が疑われる場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行います。
投与ルートの管理も重要です。ガザイバ注入開始時の投与速度が極めて緩徐なため、ルート内の残液注入量をできるだけ少なくすることが推奨されます。生理食塩液でプライミングを行い、投与終了後も生理食塩液でフラッシュします。
結論は冷蔵管理と緩徐投与です。
抗体医薬品であるため、本剤に対する抗体産生が報告されています。繰り返し投与する場合は、患者の状態を十分に観察することが重要です。
PMDAの医療用医薬品情報ページでは、最新の添付文書PDFやHTML版、患者向医薬品ガイドなどが入手できます。添付文書は定期的に改訂されるため、最新情報の確認が不可欠です。
オビヌツズマブとリツキシマブの相違点と選択基準
オビヌツズマブとリツキシマブは、どちらもCD20陽性B細胞性悪性リンパ腫に使用される抗CD20モノクローナル抗体ですが、分子構造と作用機序に違いがあります。この違いを理解することは、適切な薬剤選択に重要です。
リツキシマブはタイプⅠ抗CD20抗体でキメラ抗体です。CD20の細胞外大ループに結合し、補体依存性細胞傷害(CDC)活性が強い特徴があります。一方、オビヌツズマブはタイプⅡ抗CD20抗体でヒト化抗体です。糖鎖改変により抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性と抗体依存性細胞貪食(ADCP)活性が向上しています。
オビヌツズマブはリツキシマブと比較して、補体依存性細胞傷害活性は低いものの、直接的な細胞死誘導能が高いことが特徴です。Fc受容体との結合親和性が向上しており、単球やマクロファージによる腫瘍細胞の貪食が促進されます。
GALLIUM試験では、初発濾胞性リンパ腫患者に対して、オビヌツズマブと化学療法の併用がリツキシマブと化学療法の併用と比較されました。追跡期間中央値34.5カ月において、オビヌツズマブ群の無増悪生存期間がリツキシマブ群より有意に延長し、病勢進行または死亡のリスクを29%低下させました。
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一方、有害事象についてはオビヌツズマブ群で増加する傾向があります。Grade3~5の有害事象発現率は、リツキシマブ群67.8%に対してオビヌツズマブ群74.6%でした。特にinfusion reactionの発現率は、オビヌツズマブ群72.6%、リツキシマブ群64.2%とオビヌツズマブで高い傾向がありました。
オビヌツズマブはヒト化抗体であるため、キメラ抗体であるリツキシマブと比較して免疫原性が低いと考えられていますが、infusion reactionの発現率が高い理由は、タイプⅡ抗体としての強力なエフェクター機能に関連すると推測されています。
薬剤選択においては、患者の病状、治療歴、全身状態、そして副作用発現リスクを総合的に評価する必要があります。初発濾胞性リンパ腫で無増悪生存期間の延長を優先する場合はオビヌツズマブが選択肢となりますが、infusion reactionのリスク管理が重要となります。
リツキシマブは長い使用実績があり、副作用プロファイルが確立されています。高齢者や併存疾患が多い患者では、忍容性を考慮してリツキシマブを選択することも妥当です。
2025年11月にはオビヌツズマブの慢性リンパ性白血病に対する適応が拡大され、ベネトクラクスとの併用療法が承認されました。この併用療法では、オビヌツズマブ以外の他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性は確立していないため、承認された併用薬との組み合わせのみが推奨されます。
つまり適応拡大が進んでいます。
医療現場では、各施設の経験や医療スタッフの習熟度も考慮に入れる必要があります。オビヌツズマブは投与速度管理が複雑で、初回投与時の分割投与や段階的な増速など、細かな手順の遵守が求められます。
患者への説明も重要です。infusion reactionの発現率が高いこと、投与時間が長時間にわたること、前投薬が必要なこと、B型肝炎ウイルス検査が必須であることなど、治療前に十分な情報提供を行い、患者の理解と同意を得ることが不可欠です。
添付文書を熟読し、各薬剤の特性を理解した上で、個々の患者に最適な治療選択を行うことが医療従事者に求められています。