ブリグチニブ添付文書の重要事項
14日以上休薬したら90mgから再スタート
ブリグチニブの基本情報と適応
ブリグチニブは、ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対して承認された第3世代ALKチロシンキナーゼ阻害薬です。商品名はアルンブリグで、武田薬品工業から販売されています。
本剤の特徴は、複数の二次耐性変異型ALKに対しても阻害活性を示す点にあります。臨床現場では、クリゾチニブなどの既存ALK阻害薬治療後に病勢進行した患者に対する治療選択肢として重要な位置づけです。
投与対象は、十分な経験を有する病理医または検査施設における検査により、ALK融合遺伝子陽性が確認された患者に限定されています。検査には承認された体外診断用医薬品または医療機器を用いる必要があり、この点は添付文書の効能効果関連注意に明記されている重要事項です。
本剤は劇薬および処方箋医薬品に指定されており、緊急時に十分対応できる医療機関において、がん化学療法に十分な知識及び経験を持つ医師のもとでのみ投与が認められています。治療開始前には患者または家族への十分な説明と同意取得が必須です。
剤形は30mg錠と90mg錠の2規格があり、いずれも白色~オフホワイトのフィルムコーティング錠として供給されています。
室温保存で有効期間は3年間です。
PMDAウェブサイトでは承認された体外診断用医薬品の最新情報を確認できます
ブリグチニブの用法用量と投与スケジュール
通常、成人にはブリグチニブとして1日1回90mgを7日間経口投与した後、1日1回180mgを経口投与します。この特徴的な投与スケジュールは「リードイン期間」と呼ばれ、副作用発現を軽減する目的で設定されています。
90mgから開始する理由は、治療初期の間質性肺疾患などの重篤な副作用リスクを低減するためです。7日間の観察期間を経て、忍容性が確認されてから180mgへ増量する設計になっています。
患者の状態により適宜減量することが可能であり、用量レベルは5段階で設定されています。レベル0が180mg、レベル1が120mg、レベル-1が60mgとなり、60mgで忍容性が得られない場合は投与中止となります。レベル2という記載も添付文書にありますが、これは減量前の状態を指します。
14日間以上休薬した後に再開する場合、休薬の理由を問わず7日間は1日1回90mgから投与を開始します。その後の投与量は、副作用や患者の状態に応じて1日1回120mgまたは180mgとすることができます。この規定は見落とされやすいため注意が必要です。
食事の影響については、空腹時投与に対する高脂肪食後投与におけるCmaxおよびAUCの幾何平均値の比は、それぞれ0.87および0.98であり、臨床的に問題となる影響はありません。
つまり食事のタイミングを問わず投与できます。
ブリグチニブの副作用発現頻度と減量基準
国内臨床試験における主な副作用は、血中CPK増加が75.0%と最も高頻度で、次いで下痢40.3%、高血圧37.5%、悪心33.3%、リパーゼ増加31.9%、アミラーゼ増加30.6%、AST増加29.2%、口内炎27.8%でした。血中CPK増加は約4人に3人という極めて高い割合です。
重大な副作用として、間質性肺疾患が6.3%、肝機能障害が32.2%、膵炎が頻度不明で報告されています。間質性肺疾患は本剤の警告欄にも記載されており、初期症状として息切れ、呼吸困難、咳嗽、発熱等に注意が必要です。
副作用発現時の対応は、グレードに応じて詳細な休薬・減量・中止基準が設定されています。間質性肺疾患ではGrade 1は休薬してベースラインに回復後同一用量で再開可能ですが、Grade 2では1用量レベル減量、Grade 3以上では投与中止となります。
高血圧についてはGrade 3でGrade 1以下に回復するまで休薬し、回復後1用量レベル減量して再開します。Grade 4では休薬後1用量レベル減量で再開できますが、再発した場合は投与中止です。
CK上昇については、Grade 3または4でかつGrade 2以上の筋肉痛または脱力を伴う場合に、Grade 1以下またはベースラインに回復するまで休薬します。回復後は同一用量または1用量レベル減量して再開可能ですが、再発時は必ず1用量レベル減量となります。
リパーゼまたはアミラーゼ上昇では、Grade 3で休薬してGrade 1以下またはベースラインに回復後同一用量で再開できますが、再発時は1用量レベル減量が必要です。Grade 4では回復後に1用量レベル減量して再開します。
徐脈、視覚障害、高血糖についても、それぞれ具体的な対応基準が添付文書に明記されており、これらを正確に把握しておくことが安全な治療継続のために重要です。
武田薬品の医療関係者向けサイトでは副作用マネジメントの詳細な適正使用ガイドを入手できます
ブリグチニブの薬物相互作用と併用注意
ブリグチニブは主に薬物代謝酵素CYP2C8およびCYP3A4により代謝されるため、これらの酵素を阻害または誘導する薬剤との併用には細心の注意が必要です。相互作用により血中濃度が大きく変動し、副作用増強または効果減弱のリスクがあります。
強いまたは中程度のCYP3A阻害剤との併用では、本剤の血中濃度が上昇するおそれがあります。イトラコナゾールとの併用では、CmaxおよびAUCの幾何平均値の比がそれぞれ1.21および2.01となり、AUCは約2倍に上昇しました。このため、イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ジルチアゼムなどとの併用は避けるべきです。
グレープフルーツジュースもCYP3A阻害作用を有するため、併用を避ける必要があります。併用が避けられない場合は、本剤の減量を考慮するとともに、患者の状態を慎重に観察し、副作用の発現に十分注意することが求められます。
強いまたは中程度のCYP3A誘導剤との併用では、本剤の代謝が促進され血中濃度が低下します。リファンピシンとの併用では、CmaxおよびAUCの幾何平均値の比がそれぞれ0.40および0.20となり、AUCは5分の1に低下しました。
つまり効果が著しく減弱する可能性があります。
リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピンなどのCYP3A誘導剤や、セイヨウオトギリソウ含有食品との併用は避け、CYP3A誘導作用のないまたは弱い薬剤への代替を考慮する必要があります。
ベラパミルやジルチアゼムなどの中程度のCYP3A阻害剤との併用でも、生理学的薬物動態モデルによるシミュレーションでは、AUCが1.38~1.43倍に増加すると推定されています。エファビレンツなどの中程度のCYP3A誘導剤との併用では、AUCが0.53倍に低下すると推定されます。
本剤はP糖蛋白質、BCRP、OATP1A2の基質となり、CYP3A4の誘導作用並びにP-gp、BCRP、OCT1、MATE1、MATE2-Kの阻害作用を示すため、これらのトランスポーターの基質となる薬剤との併用時にも注意が必要です。
ブリグチニブ投与時の特定患者への配慮事項
間質性肺疾患またはその既往歴のある患者では、間質性肺疾患が発現または増悪するおそれがあるため、特に慎重な観察が必要です。治療初期は入院またはそれに準ずる管理の下で、間質性肺疾患等の重篤な副作用発現に関する観察を十分に行うことが警告欄に記載されています。
重度の腎機能障害患者では、減量を考慮するとともに患者の状態をより慎重に観察し、副作用の発現に十分注意します。eGFRが30mL/min/1.73㎡未満の重度腎機能障害患者では、非結合型ブリグチニブのAUCが1.92倍に上昇するためです。
重度の肝機能障害患者でも同様に減量を考慮し、慎重な観察が求められます。Child-Pugh分類Cの重度肝機能障害患者では、非結合型ブリグチニブのCmaxおよびAUCがそれぞれ1.65倍および1.37倍に上昇します。
妊娠可能な女性に対しては、本剤投与中および投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導することが必要です。ラットを用いた胚・胎児発生毒性試験では、臨床曝露量の約0.8倍で奇形が認められています。
パートナーが妊娠する可能性のある男性に対しても、本剤投与中および投与終了後一定期間は適切な避妊を行うよう指導します。反復投与毒性試験で精巣毒性が認められており、造精機能の低下があらわれる可能性があります。
授乳婦については授乳しないことが望ましいとされています。本剤は乳汁中に移行する可能性があり、乳児が乳汁を介して本剤を摂取した場合、重篤な副作用が発現するおそれがあるためです。
小児等を対象とした臨床試験は実施されていないため、小児への投与に関する情報はありません。本剤の適応は成人の非小細胞肺癌に限定されています。
非臨床試験では、反復投与毒性試験において最大臨床用量における曝露量の約0.6倍で非回復性の白内障および網膜変性が認められたことから、視覚障害には特に注意が必要です。視覚障害はGrade 2または3でGrade 1以下に回復するまで休薬し、回復後1用量レベル減量して再開することになっています。
PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導することも重要です。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発する可能性があります。