ダコミチニブ添付文書の重要事項
プロトンポンプ阻害剤との併用でダコミチニブの血中濃度が39%も低下します
ダコミチニブ添付文書の基本情報と販売状況
ダコミチニブ水和物(商品名:ビジンプロ錠)は、ファイザー株式会社が製造販売する抗悪性腫瘍剤です。EGFR遺伝子変異陽性の手術不能または再発非小細胞肺癌を適応症として、2019年3月に日本国内で発売されました。本剤はEGFR(HER1、ErbB1)だけでなく、HER2、HER4も不可逆的に阻害する第2世代EGFR-TKIに分類されます。
しかし重要な情報として、本剤は世界的な需要僅少のため、全世界において供給停止が決定されています。日本国内では2024年10月27日に日本肺癌学会から販売中止のお知らせが発表され、2025年10月頃を目途に発売中止となる予定です。
つまり供給停止の事実ですね。
添付文書における用法及び用量は、通常成人にダコミチニブとして1日1回45mgを経口投与することとされています。患者の状態により適宜減量が可能で、減量段階として1段階減量(30mg/日)、2段階減量(15mg/日)が設定されています。薬価は15mg錠が2,828.9円/錠、45mg錠が6,772.4円/錠です。
製剤は劇薬、処方箋医薬品に指定されており、緊急時に十分対応できる医療施設において、がん化学療法に十分な知識・経験を持つ医師のもとでのみ投与が可能です。添付文書では警告欄において、間質性肺疾患による死亡例が報告されていることから、治療開始に先立ち患者または家族への十分な説明と同意取得が求められています。
上記リンクでは、医薬品添付文書の全文と詳細な薬剤情報を確認できます。
ダコミチニブの用法用量と減量基準の詳細
添付文書における用法及び用量に関連する注意として、副作用があらわれた場合の休薬、減量または中止基準が詳細に規定されています。間質性肺疾患が発現した場合は全Gradeで投与中止が必須となります。間質性肺疾患以外の副作用については、Grade2とGrade3以上で対応が異なります。
下痢に関しては、Grade2の場合はGrade1以下に回復するまで休薬し、回復後に同一用量または1段階減量して投与再開が可能です。Grade3または4の場合は、Grade1以下に回復するまで休薬し、回復後は必ず1段階減量して投与を再開することになっています。
これが基本です。
皮膚毒性(発疹、紅斑及び剥離を伴う皮膚の症状)についても下痢と同様の基準が適用されます。上記以外の副作用でGrade3または4の場合は、Grade2以下に回復するまで休薬し、回復後に1段階減量して投与を再開できる方針です。
実臨床における減量の実施状況として、ARCHER1050試験では85%の患者で何らかの副作用が発現し、45%の患者で減量が実施されました。最も頻度の高い減量理由は下痢、口内炎、皮膚関連の有害事象でした。減量によって多くの症例で副作用管理が可能となり、治療継続率の向上につながっています。
つまり減量が重要ということですね。
添付文書では他の抗悪性腫瘍剤との併用について、有効性及び安全性が確立していないことが明記されています。単剤療法としての使用が原則であり、併用療法を検討する場合は慎重な判断が求められます。
ダコミチニブ添付文書における副作用と安全性情報
添付文書の重大な副作用として、間質性肺疾患(2.2%)、重度の下痢(8.4%)、重度の皮膚障害(31.7%)、肝機能障害(28.6%)が記載されています。間質性肺疾患は死亡に至る可能性があり、初期症状(呼吸困難、咳嗽、発熱等)の確認と定期的な胸部画像検査の実施が必須です。
その他の副作用として、発現頻度が10%以上の主なものには口内炎(59.5%)、下痢(85%)、爪囲炎(61.7%)、ざ瘡様皮膚炎(48.9%)、発疹・斑状丘疹状皮疹(36.1%)、皮膚乾燥(29.5%)、食欲減退(25.1%)、脱毛症(20.3%)、そう痒症(19.8%)、結膜炎(16.7%)、手掌・足底発赤知覚不全症候群(14.5%)が報告されています。
興味深いことに、ダコミチニブによる副作用の発現時期は比較的早期です。代表的な副作用である下痢、口内炎、ざ瘡様皮膚炎は治療開始後数日から2週間以内に出現することが多く、早期からの積極的な支持療法が重要となります。例えば下痢に対してはロペラミドなどの止瀉薬の予防的投与、皮膚障害に対しては保湿剤やステロイド外用薬の早期使用が推奨されます。
重度の下痢に関しては、脱水症状から急性腎障害に至った症例も報告されています。添付文書では止瀉薬(ロペラミド等)の投与、補液等の適切な処置を行うとともに、本剤の休薬、減量または投与中止を考慮することが求められています。
発現頻度8.4%は無視できない数値です。
重度の皮膚障害の発現頻度は31.7%と高く、内訳としてざ瘡様皮膚炎(13.7%)、爪囲炎(7.5%)等があります。必要に応じて皮膚科を受診するよう患者に指導することが添付文書に明記されています。
適切に対応すれば大丈夫です。
肝機能障害については、ALT、AST、ビリルビン等の上昇を伴うことがあり、本剤投与開始前及び投与中は定期的な肝機能検査の実施と患者状態の観察が必要です。発現頻度28.6%は注意が必要な水準といえます。
このリンク先では、ダコミチニブの安全性監視計画と副作用の詳細な発現頻度データが記載されています。
ダコミチニブ添付文書の相互作用と併用注意
添付文書において、ダコミチニブはCYP2D6の阻害作用を示すことが記載されています。このため、CYP2D6基質である薬剤(プロカインアミド、ピモジド、三環系抗うつ薬、β遮断薬、デキストロメトルファン等)との併用時には、これらの薬剤の血中濃度が上昇し、副作用の発現頻度及び重症度が増加するおそれがあります。
併用注意事項として明記されている内容です。
特に重要な相互作用として、胃内pHに影響を及ぼす薬剤、特にプロトンポンプ阻害剤(PPI)との併用が挙げられます。添付文書では「本剤の血中濃度が低下し、本剤の有効性が減弱するおそれがあるので、これらの薬剤との併用は可能な限り避けること」と記載されています。
具体的なデータとして、健康成人にラベプラゾール30mg(反復投与)と本剤45mg(単回投与)を併用投与したとき、ダコミチニブのAUC96及びCmaxは本剤単剤投与時と比べてそれぞれ39%及び34%低下しました。
この低下率は臨床的に意義のある数値です。
PPIの代替として、局所性制酸薬(H2受容体拮抗薬やアルミニウム・マグネシウム含有制酸剤等)の使用が推奨されますが、これらについても添付文書投与前後のタイミングに注意が必要です。H2受容体拮抗薬はダコミチニブ投与の約10時間前、または投与の約2時間後に使用し、制酸剤はダコミチニブ投与の約3時間前、または投与の約3時間後に使用することが望ましいとされています。
食事の影響については、添付文書の薬物動態の項に記載されています。健康成人24例に本剤45mgを高脂肪食後に単回経口投与したとき、空腹時投与と比較してAUCinfが14%、Cmaxが24%増加しました。ただし、この程度の変化は臨床的に問題とならないため、食後・空腹時を問わず投与可能とされています。
問題ありません。
ダコミチニブがCYP2D6基質薬剤の血中濃度に与える影響を考慮すると、β遮断薬を服用している患者では血圧や心拍数のモニタリング、三環系抗うつ薬を服用している患者では抗コリン作用や中枢神経系への影響に注意が必要です。
適切なモニタリングで対応できます。
ダコミチニブの臨床成績と添付文書における位置づけ
添付文書の臨床成績の項には、ARCHER1050試験の結果が記載されています。これは化学療法歴のないEGFR遺伝子変異(エクソン19欠失またはL858R変異)陽性の進行または転移性非小細胞肺癌患者452例を対象とした国際共同第III相試験です。
主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ダコミチニブ群14.7ヵ月(95%信頼区間:11.1-16.6)、ゲフィチニブ群9.2ヵ月(95%信頼区間:9.1-11.0)で、ハザード比0.59(95%信頼区間:0.47-0.74、p<0.0001)と、ダコミチニブ群で統計学的に有意な延長が示されました。
約5.5ヵ月のPFS延長ということですね。
日本人部分集団解析では、日本人患者87例(ダコミチニブ群44例、ゲフィチニブ群43例)における盲検下独立中央判定によるPFS中央値は、ダコミチニブ群16.5ヵ月、ゲフィチニブ群9.2ヵ月で、ハザード比0.45(95%信頼区間:0.27-0.75)と、全体集団よりもさらに良好な結果でした。
全生存期間(OS)の最終解析では、ダコミチニブ群34.1ヵ月(95%信頼区間:29.5-37.7)、ゲフィチニブ群27.0ヵ月(95%信頼区間:23.7-31.5)で、ハザード比0.760(95%信頼区間:0.582-0.993、p=0.044)と、統計学的に有意な延長が確認されました。
OS延長が示されたのは重要です。
しかし、ARCHER1050試験における有害事象の発現状況として、Grade3以上の有害事象はダコミチニブ群87.5%、ゲフィチニブ群56.3%と、ダコミチニブ群で高頻度でした。減量はダコミチニブ群66%、ゲフィチニブ群15%、投与中止はダコミチニブ群9%、ゲフィチニブ群11%でした。
添付文書の効能または効果に関連する注意として、以下の3点が記載されています。第一に、EGFR遺伝子変異検査を実施し、承認された体外診断薬を用いて確認された患者に投与すること。第二に、臨床成績の内容を熟知し、有効性及び安全性を十分に理解した上で適応患者を選択すること。第三に、術後補助療法における有効性及び安全性は確立していないこと。
これらは重要な制限事項です。
第2世代EGFR-TKIとしてのダコミチニブの位置づけは、第1世代薬と比較してPFS及びOS延長が示された一方で、副作用の頻度と重症度が高いという特徴があります。そのため、副作用マネジメントに自信のある施設や、第1世代薬の効果不十分例などでの使用が検討されていました。ただし前述の通り、2025年10月頃に販売中止となる予定であり、今後は第3世代EGFR-TKIであるオシメルチニブやラゼルチニブが主流となっていきます。
このリンク先では、販売中止に関する公式な情報と、今後の対応について確認できます。