造血幹細胞移植補助薬の種類と役割、使い分け

造血幹細胞移植補助薬の種類と役割

移植後6か月以降も免疫抑制剤を継続する患者は約4割います。

この記事の3ポイント要約
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造血幹細胞移植前処置薬の種類

リサイオ(チオテパ)やブスルフェクスなど、移植前に投与する抗がん剤で腫瘍細胞を減少させ免疫抑制を図る

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GVHD予防薬の選択と投与法

シクロスポリンやタクロリムスとメソトレキセートの併用が標準的で、移植種類により適応外のMMFを使用する場合もある

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生着促進・支持療法薬の管理

G-CSF製剤による白血球増加促進、輸血による造血回復支援、抗菌・抗ウイルス薬による感染予防が生着まで必須

造血幹細胞移植前処置薬の種類と目的

 

造血幹細胞移植における前処置薬は、移植の成功を左右する重要な役割を担っています。移植当日の約1週間前から投与が開始され、その目的は腫瘍細胞をできる限り減少させる抗腫瘍効果と、患者本人の免疫細胞の働きを抑制してドナー由来の造血幹細胞の拒絶を予防する免疫抑制効果の2つです。

前処置薬として代表的なものに、リサイオ(チオテパ)とブスルフェクス(ブスルファン)があります。リサイオは2019年5月に約10年ぶりに国内で承認された造血幹細胞移植前治療薬で、小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療と、悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療に適応があります。

チオテパは以前「テスパミン」として国内で販売されていましたが、2009年に原薬製造会社の設備老朽化により製造中止となり、2010年9月に承認整理届が提出されました。しかしその間も欧米での使用実績があり、特に2010年に欧州で造血幹細胞移植の前治療薬として承認されたことから、国内の学会などから臨床使用の要望が多数出されていました。

結論は再導入が必要ということですね。

ブスルフェクスは、ブスルファンを主成分とする注射剤で、移植前処置として広く使用されています。通常は1日1回2時間から4時間かけて点滴静注し、これを4日間連続で行います。投与中は吐き気の副作用が出やすいため、1日2回の制吐剤を併用するのが一般的です。

吐き気止めは必須です。

造血幹細胞移植におけるGVHD予防薬の選択

同種造血幹細胞移植において、移植片対宿主病(GVHD)の予防は移植成功の鍵となります。GVHDとは、ドナー由来の免疫細胞が患者の体を異物として攻撃してしまう合併症で、米国国立衛生研究所(NIH)によると、ドナーとレシピエントが血縁関係にない場合、移植例の60~80%でGVHDが発生するとされています。

標準的なGVHD予防法は、カルシニューリン阻害薬であるシクロスポリンまたはタクロリムスに、メソトレキサート(MTX)を併用する方法です。これらの免疫抑制剤は移植前日から点滴で投与を開始し、患者の状態や血中濃度をモニタリングしながら用量を調整します。投与量が安定し、食事や水分摂取が十分にできるようになったら、点滴から内服に変更されます。

近年では、移植の種類によってミコフェノール酸モフェチル(MMF、商品名セルセプト)を使用する場合もあります。MMFはもともと臓器移植の拒絶反応抑制に用いられてきた薬剤ですが、2021年6月に造血幹細胞移植における移植片対宿主病の抑制に対する適応追加の承認を取得しました。それまでは保険適応外でしたが、特に臍帯血移植や骨髄非破壊的前処置を用いた移植では、MTXに比べて重度の口内炎が少なく、血小板生着遅延のリスクが低いため使用されていました。

MMFは保険適応外だったということですね。

東北大学病院など一部の施設では、移植の種類によってMMFを使用する場合があると公表しています。MMFの投与は移植後30日間、1日最大3000mgまでの範囲で、分2投与(朝9時・夜21時)または分3投与(朝6時・昼14時・夜22時)のいずれかの投与間隔で行われます。

日本造血・免疫細胞療法学会の公式サイトでは、免疫抑制療法の詳細な説明が掲載されており、GVHD予防に関する最新の標準的治療法を確認できます。

造血幹細胞移植における白血球増加薬G-CSFの役割

G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)製剤は、造血幹細胞移植において多様な場面で使用される重要な補助薬です。G-CSFは遺伝子組換え技術によって生産されるタンパク製剤で、白血球の一つである好中球を選択的に増加させ、その機能を増強する作用を持っています。

末梢血幹細胞移植では、ドナーの血液中に造血幹細胞を動員するためにG-CSFが不可欠です。通常、造血幹細胞は骨髄に存在し、血液中にはほとんど流れていません。ドナーにG-CSFを3~5日間連続注射することで、骨髄から血液中に造血幹細胞が流れ出し、血液成分分離装置を使って移植に必要な量の造血幹細胞を採取できるようになります。

つまり採取前の準備が必須です。

移植後の好中球回復促進にもG-CSF製剤が使用されます。造血幹細胞移植施行翌日ないし5日後から、フィルグラスチム(遺伝子組換え)300μg/m²を1日1回点滴静注するのが標準的な用法です。好中球数が回復するまでの期間は、骨髄移植で2~3週間、末梢血幹細胞移植で約2週間、臍帯血移植で3~4週間とされており、この間の感染リスクを低減するためにG-CSF製剤が重要な役割を果たします。

G-CSF製剤の主な副作用には、背部痛、関節痛筋肉痛、骨痛などの筋・骨格系症状があります。これらは投与中に比較的高頻度で出現しますが、通常は対症療法で管理可能です。ただし、まれに脾臓腫大や脾臓破裂、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの重篤な副作用が報告されているため、患者の状態を注意深く観察する必要があります。

2024年11月には、骨髄バンクが非血縁ドナーへの持続型G-CSF導入についての情報を公開しました。従来の連日型G-CSF(毎日注射するタイプ)に加えて、1回の注射で効果が持続するタイプのG-CSF製剤の使用が検討されており、ドナーの負担軽減が期待されています。

造血幹細胞移植後の輸血療法と感染予防薬

造血幹細胞移植後、移植した造血幹細胞が患者の体内で血液細胞を作り始める「生着」が起こるまでには一定の時間がかかります。生着までの間、患者にはさまざまな支持療法が必要になりますが、その中核となるのが輸血療法と感染予防薬の投与です。

輸血療法では、赤血球と血小板の補充が行われます。赤血球が不足すると酸素不足により息切れや動悸、だるさ、めまいなどの貧血症状が現れます。血小板が減少すると出血しやすくなり、重篤な場合は生命に関わる出血を起こす可能性があります。科学的根拠に基づいた血小板製剤の使用ガイドラインでは、造血幹細胞移植における血小板輸血は予防的に行うことが推奨されています(推奨グレード2C)。

血小板輸血の基準は、通常、血小板数が1~2万/μL以下の場合とされていますが、感染症、発熱、播種性血管内凝固(DIC)などの合併症がある場合は出血傾向が増強するため、より高い血小板数でも輸血が必要になることがあります。

これは状態次第で変わります。

感染予防薬の投与も生着までの重要な支持療法です。移植前処置による強力な免疫抑制状態と、好中球減少により、患者は細菌、ウイルス、真菌などさまざまな病原体に対して極めて脆弱になります。予防的に抗菌薬、抗ウイルス薬、抗真菌薬が投与されます。

特にサイトメガロウイルス(CMV)の予防は重要です。CMV感染症の予防には、造血幹細胞に対する毒性を考慮して移植前と生着後から開始し、少なくとも6か月以上、免疫抑制剤終了まで継続するのが一般的です。発疹などの副作用が出現した場合は、薬剤の変更や用量調整が行われます。

国立がん研究センター希少がんセンターのサイトでは、造血幹細胞移植における支持療法の詳細が解説されており、医療従事者にとって有用な情報源となっています。

造血幹細胞移植補助薬の投与スケジュールと長期管理

造血幹細胞移植における補助薬の投与スケジュールは、移植の時期を基準として前処置期、移植期、生着期、回復期の各段階で異なります。適切なタイミングでの投与と、患者個々の状態に応じた調整が移植の成功率を高める鍵となります。

前処置期(移植約1週間前~移植日)には、リサイオやブスルフェクスなどの前処置薬が投与されます。リサイオは通常、ブスルファンとの併用で1日1回5mg/kgを2時間かけて点滴静注し、これを2日間連続で行います。ブスルフェクスは1日1回を4日間連続投与するのが標準的です。この時期には制吐剤や肝機能保護薬なども併用されます。

移植期(移植前日~移植後早期)には、GVHD予防のための免疫抑制剤投与が開始されます。シクロスポリンまたはタクロリムスは移植前日から点滴投与を開始し、メソトレキサートは移植後1日目、3日目、6日目、11日目に投与するのが典型的なスケジュールです。

生着期(移植後~好中球回復まで)には、G-CSF製剤の投与が継続され、輸血や感染予防薬の投与が行われます。G-CSF製剤は移植施行翌日ないし5日後から開始され、好中球数が十分に回復するまで継続されます。好中球数が500/μL以上になると、感染リスクは大きく低下します。

回復期以降の長期管理では、免疫抑制剤の投与継続が重要な課題となります。急性GVHDが起こらなければ、通常は移植後3~6か月かけて徐々に免疫抑制剤を減量し、最終的には中止を目指します。しかし、慢性GVHDが発症した場合や、免疫機能の回復が遅れている場合は、投与期間が延長されます。

実際には、移植後6か月以降も免疫抑制剤を継続する患者は約4割に上るとされており、この期間中は感染症のリスクが継続するため、予防的な抗菌薬投与も延長されます。欧米のガイドラインでは、移植後1年間の予防投与が推奨されていますが、慢性GVHD合併例や免疫抑制療法継続例では投与期間をさらに延長する必要があります。

免疫抑制剤の中止後も注意が必要です。免疫力は完全には回復しておらず、感染予防行動の継続が求められます。手洗い・うがいなどの基本的な感染予防策は、移植後少なくとも1年間、可能であれば2年間継続することが推奨されています。移植後最低1年は動物や動物の排泄物との接触を避けることも重要な注意点です。

長期管理において、医療従事者は患者の免疫機能の回復状態を評価しながら、個別化された投薬計画を立てる必要があります。CD4陽性T細胞数や免疫グロブリン値などの免疫学的指標をモニタリングし、感染症発症のリスクと免疫抑制剤の副作用のバランスを考慮した判断が求められます。

これは個別対応が基本です。

日本造血・免疫細胞療法学会が公開している長期フォローアップガイドラインでは、移植後の時期別の管理指針が詳細に示されており、臨床現場での意思決定に役立つ情報が提供されています。

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