ベルパタスビル作用機序|NS5A阻害と耐性ウイルス対策

ベルパタスビル作用機序とNS5A阻害

ベルパタスビルはNS5B阻害剤と併用しても耐性変異株には効きません。

ベルパタスビルの作用機序3つのポイント
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NS5A複製複合体を標的とする

HCV RNAの複製及びウイルス粒子の会合に必須な非構造蛋白質NS5Aを阻害し、ウイルスの増殖を抑制します

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NS5Bポリメラーゼ阻害剤と併用

ソホスブビルとの配合により、複製過程の異なるステップを同時に阻害し相加的な抗ウイルス作用を発揮します

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全ジェノタイプに有効

C型肝炎ウイルスのジェノタイプ1~6型すべてに対して抗ウイルス活性を示す汎ジェノタイプ型DAA製剤です

ベルパタスビルのNS5A複製複合体阻害メカニズム

ベルパタスビルは、C型肝炎ウイルス(HCV)が細胞内でRNA複製を行う際に形成する「HCV複製複合体」の構成要素であるNS5A複製複合体を標的とします。HCVが宿主細胞に侵入すると、ウイルスRNAは小胞体膜上にHCV複製複合体を形成します。この複製複合体は、NS3、NS4A、NS4B、NS5A、NS5Bなどの非構造蛋白質から構成される、いわばウイルスRNA複製の「工場」です。

ベルパタスビルはこの工場の中でも、特にNS5A複製複合体に結合して、その機能を阻害します。NS5Aは、HCV RNAの複製だけでなく、ウイルス粒子の会合(アセンブリ)にも関与する多機能な蛋白質です。ベルパタスビルがNS5Aを阻害することで、ウイルスRNAの複製と新たなウイルス粒子の形成が同時にブロックされます。

in vitro耐性発現試験及び交差耐性試験の結果から、ベルパタスビルの作用機序としてNS5Aを標的とすることが裏付けられています。

つまり阻害作用の標的は明確です。

他のNS5Aを標的としない抗ウイルス要素に対しては阻害作用を示さないことも確認されており、作用の特異性が高い薬剤といえます。

ベルパタスビルとソホスブビルの相加的作用

エプクルーサ配合錠は、ベルパタスビル(NS5A阻害剤)とソホスブビル(核酸型NS5Bポリメラーゼ阻害剤)を組み合わせた配合剤です。ソホスブビルはHCV RNAの複製を行う酵素であるNS5Bポリメラーゼを阻害します。この2種類の有効成分が、ウイルスRNA複製の異なるステップを同時に阻害することで、相加的に抗ウイルス作用が強まります。

具体的には、ソホスブビルが細胞内で活性代謝物に変換され、NS5Bポリメラーゼの基質として取り込まれることでRNA鎖の伸長を停止させます。一方、ベルパタスビルはNS5A複製複合体の形成と機能を阻害します。2つの異なる作用機序を持つ薬剤を併用することで、ウイルスが耐性を獲得するリスクを低減できます。

このような作用機序の組み合わせにより、エプクルーサ配合錠はC型肝炎ウイルスを効果的に排除できる可能性が高まります。

治療期間は12週間が基本です。

臨床試験(ASTRAL-1試験)では、ジェノタイプ1、2、4、5、6型のC型慢性肝炎患者に対して、12週間投与でウイルス学的著効率(SVR12)が99%(624/631例)と報告されています。

KEGG医療用医薬品データベースのエプクルーサ情報(作用機序と臨床試験データ)

ベルパタスビルの耐性プロファイルと汎ジェノタイプ活性

ベルパタスビルの大きな特徴の一つは、C型肝炎ウイルスの全ジェノタイプ(1~6型)に対して抗ウイルス活性を示す点です。従来のDAA(直接作用型抗ウイルス剤)では、ジェノタイプによって治療効果に差があり、特定のジェノタイプに対しては効果が限定的な薬剤もありました。しかし、ベルパタスビルは汎ジェノタイプ型であるため、事前にウイルスのジェノタイプを詳細に調べなくても治療を開始できます。

耐性に関しては、NS5A領域の変異がベルパタスビルの感受性に影響を与える可能性があります。特にNS5A領域のY93H変異やL31M変異などが知られていますが、ベルパタスビルはこれらの変異株に対しても比較的高い活性を維持することが報告されています。ただし、複数の耐性変異を持つウイルス株では、治療効果が低下する可能性があります。

臨床試験ASTRAL-2及びASTRAL-3試験では、ジェノタイプ2型及び3型のC型慢性肝炎患者に対して、12週間投与でSVR12がそれぞれ99%(133/134例)、95%(277/292例)と報告されています。ジェノタイプ3型はこれまで治療困難とされてきましたが、エプクルーサ配合錠では高い治療効果が示されました。

耐性変異株が存在する場合でも、ソホスブビルとの併用により治療成功率が向上するのが特徴です。

PassMedのエプクルーサ配合錠の作用機序詳細解説(臨床試験データ付き)

ベルパタスビルの薬物動態とトランスポーター阻害作用

ベルパタスビルの薬物動態には、トランスポーターが深く関与しています。ベルパタスビルはP-gp(P糖タンパク質)及びBCRP(乳癌耐性タンパク質)の基質であり、これらのトランスポーターによって細胞外への排出を受けます。同時に、ベルパタスビル自身もP-gp及びBCRPの阻害作用を持つことが知られています。

この阻害作用により、併用薬剤の血中濃度が変化する可能性があります。例えば、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を併用した場合、ベルパタスビルのP-gp及びBCRPに対する阻害作用により、TDFの血中濃度が上昇することが報告されています。作用機序は不明な点もありますが、TDFが基質となるトランスポーターに対するベルパタスビルの阻害が関与すると考えられています。

代謝に関しては、ベルパタスビルはCYP2B6、CYP2C8、CYP3A4により弱い代謝を受けますが、主要な代謝経路ではありません。むしろ、未変化体のまま胆汁中に排泄される割合が高いです。

このようなトランスポーターへの影響を考慮すると、P-gp及びBCRPの基質となる薬剤(ロスバスタチン、ダビガトランなど)を併用する際には注意が必要です。血中濃度の上昇により、副作用のリスクが高まる可能性があるためです。

ベルパタスビル使用時の臨床的注意点と非代償性肝硬変への適応

エプクルーサ配合錠(ソホスブビル/ベルパタスビル)の特筆すべき点は、C型非代償性肝硬変に対して使用できる唯一のDAA製剤である点です。従来のDAA製剤は、重度の肝機能障害を有する非代償性肝硬変患者には使用できませんでした。しかし、エプクルーサ配合錠は、リバビリンとの併用により、非代償性肝硬変患者にも投与可能です。

非代償性肝硬変患者への投与では、Child-Pughスコアによる肝機能評価が重要となります。Child-Pugh分類BまたはCの患者に対しては、リバビリンとの併用で12週間投与が推奨されます。臨床試験では、非代償性肝硬変患者に対するSVR12は87%(87/100例)と報告されており、代償性肝硬変や慢性肝炎と比較すると若干低いものの、これまで治療選択肢がなかった患者群に対して有効な治療法となっています。

使用に際しての注意点として、以下が挙げられます。

  • 腎機能障害患者への投与:ソホスブビルは主に腎臓から排泄されるため、重度の腎機能障害(eGFR<30 mL/分/1.73m²)のある患者では慎重投与が必要です
  • 併用禁忌薬リファンピシン、セイヨウオトギリソウ含有食品、カルバマゼピンフェニトインフェノバルビタールなど、P-gp及びCYP誘導剤との併用は避けます
  • 投与期間:基本的に12週間の投与期間が推奨されますが、患者の状態により調整が必要です

定期的な肝機能検査とHCV RNA量の測定により、治療効果と安全性をモニタリングすることが重要です。

薬剤師の転職相談所のエプクルーサ配合錠解説(添付文書読み解き)