バニプレビル販売中止の理由と代替薬

バニプレビル販売中止

バニプレビルはIFN併用が前提でした。

バニプレビル販売中止の3つのポイント
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販売中止時期と製造元

MSD株式会社が2016年に販売中止を決定、2018年3月に経過措置満了

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中止理由

DAA製剤の普及により薬事上の必要性が低下、副作用ではなく治療法進化が原因

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代替療法

マヴィレット、エプクルーサ、ゼパティエなどのIFNフリー療法へ移行

バニプレビル販売中止の時期と経緯

バニヘップカプセル150mg(一般名:バニプレビル)は、2014年9月にMSD株式会社から承認を取得したC型肝炎治療薬でした。

参考)バニプレビル販売中止の理由は?【保存版】再販予定や代替薬3選…

セログループ1のC型慢性肝炎または代償性肝硬変に適応を持ち、NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬として作用します。しかし、2016年に販売中止が決定され、2018年3月31日に経過措置期間が満了しました。

参考)【販売中止】製造中止となって失われた医薬品たち【名称変更】│…

販売期間はわずか2年程度です。

この短期間での販売終了は、医療現場に少なからず影響を与えましたが、患者への不利益は最小限に抑えられました。

バニプレビル販売中止の理由

販売中止の直接的な理由は、薬事上の必要性の低下と後続の新薬普及による経営判断です。

重大な副作用が発見されたわけではありません。バニプレビルは第二世代のプロテアーゼ阻害薬として、第一世代のテラプレビルと比較して副作用が少なめという利点がありました。interq+1

主な副作用は発熱73.3%、好中球減少50.7%、頭痛44.1%などでしたが、これらはペグインターフェロンとリバビリンとの併用によるものが大半でした。

参考)バニヘップカプセル150mgの添付文書/電子添文(副作用など…

つまり治療法の進化です。

バニプレビルが承認された2014年は、すでにインターフェロンフリー療法(IFNフリー)の時代が到来していました。同年9月にはアスナプレビル(ASV)とダクラタスビル(DCV)による経口薬のみの治療が可能となり、患者負担が大幅に軽減されました。

参考)C型肝炎の治療 – 独立行政法人国立病院機構 熊本医療センタ…

バニプレビルはインターフェロン併用が前提だったため、市場での競争力を失いました。

バニプレビルとインターフェロン併用療法の限界

バニプレビルはペグインターフェロンアルファ-2b及びリバビリンとの3剤併用療法として使用されました。

インターフェロン療法は発熱、倦怠感うつ状態などの重い副作用があり、患者への負担が極めて大きかったのです。

国内Ⅲ相臨床試験では、安全性評価対象288例中287例(99.7%)に副作用が認められました。この高い副作用発現率は、バニプレビル単独ではなく併用療法全体の課題でした。

治療完遂が困難なケースもありました。

医療従事者にとって、患者のQOL低下への対処は大きな負担となっていました。IFNフリー療法の登場により、こうした課題が一気に解決されたのです。

バニプレビルに代わる最新DAA製剤の特徴

DAA(直接作用型抗ウイルス薬)は、C型肝炎ウイルスの非構造蛋白領域に存在するNS3/A4プロテアーゼ、NS5A、NS5Bポリメラーゼのいずれかに作用します。

参考)C型肝炎治療薬DAA一覧・作用機序・レジメンまとめ【インター…

現在の主流はマヴィレット配合錠、エプクルーサ配合錠、ゼパティエ配合錠などです。

マヴィレットは全ジェノタイプに対応し、最短8週間で治療が完了します。エプクルーサは難治性ケースや肝硬変進行例にも適応があり、治療期間は12週間です。

バニプレビル時代には考えられなかったほどの短期間・高効率な治療となっています。

副作用も格段に軽減されました。DAA製剤は投与期間が比較的短く、副作用がほとんどないことが大きな特徴です。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/joma/128/3/128_231/_pdf/-char/ja

インターフェロン併用療法と比較して、患者の治療継続率が飛躍的に向上しました。

バニプレビル服用中患者への対応

現在バニプレビルを処方されている患者はほとんど存在しませんが、もし残薬がある場合は自己判断で服用を継続させてはいけません。

バニプレビルは既に薬価基準から削除されており、保険診療での処方は不可能です。sunpharma+1

医療従事者は患者に最新のDAA製剤への切り替えを提案すべきです。

切り替え時には、患者の遺伝子型(ジェノタイプ)、肝硬変の程度、腎機能、併用薬などを総合的に評価する必要があります。特にP糖蛋白の基質や阻害剤、誘導剤との相互作用には注意が必要です。pharmacista+1

過去にバニプレビル治療で効果不十分だった患者でも、最新のDAA製剤なら高い完治率が期待できます。再治療の機会を逃さないよう、積極的な情報提供が求められます。

バニプレビル再販可能性と今後の展望

バニプレビルが今後再販される可能性は限りなくゼロに近いと言えます。

製薬業界において、より優れた後継薬が登場して販売中止になった製品が再び市場に戻ることはほぼありません。

医療従事者は既に最新DAA製剤への処方切り替えを完了しています。

日本は世界的に見てもC型肝炎の治療体制が非常に整っている国です。バニプレビルが販売中止となり、より完成度の高いDAA製剤に統一されたことは、国を挙げて肝炎を根絶するという強い意志の表れでもあります。

時期 治療の主役 バニプレビルの立ち位置
2010年代前半 IFN併用療法 第2世代の主力薬として期待
2010年代後半 IFNフリー療法 需要が急減、順次切り替え
2020年代 最新配合錠(DAA) 販売中止・代替薬へ完全移行

治療の主流は完全にIFNフリー療法に移行しました。

医療従事者は最新のエビデンスに基づいた治療選択を行うことで、患者により良い治療成績とQOLを提供できます。バニプレビル販売中止は、C型肝炎治療の進化における必然的な過程だったと言えるでしょう。

バニプレビルの薬理作用と他剤との違い

バニプレビルはNS3/4Aプロテアーゼの阻害薬として、C型肝炎ウイルスの複製に必要な酵素を可逆的に阻害します。

参考)https://www.pmda.go.jp/drugs/2014/P201400135/170050000_22600AMX01313_B100_1.pdf

ただし、R155位、A156位(A156Sを除く)、D168位の変異に対しては阻害活性が低下する特性がありました。

この耐性変異の問題は第二世代でも完全には解決されていませんでした。

バニプレビルはインターフェロンアルファ-2bとの併用で相加作用を示し、リバビリンとも相乗効果が確認されていました。

これが3剤併用療法の根拠となっていました。

参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/146/3/146_159/_pdf

一方、最新のDAA製剤は複数の作用機序を持つ薬剤を組み合わせることで、耐性変異の出現リスクを大幅に低減しています。

これが完治率向上の鍵です。

NS5A阻害薬とNS3/4A阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬などを組み合わせることで、ウイルスの逃げ道を塞ぐ戦略が主流となっています。バニプレビルのような単剤でのプロテアーゼ阻害では、現在の治療水準には到達できません。

バニプレビル販売中止による医薬品情報管理上の注意点

バニプレビルは多くの医薬品の添付文書から相互作用の項目として削除されています。med.towayakuhin+2

2024年6月の使用上の注意改訂では、アスナプレビルとともに国内販売中止のため削除されました。

参考)https://jp.sunpharma.com/null/file/news/20240611.pdf

医薬品情報管理上の見落としは避けねばなりません。

特にシクロスポリンなどの免疫抑制剤、HIV治療薬、抗不整脈薬などとの相互作用情報が更新されているため、医療従事者は最新の添付文書を確認する必要があります。

参考)https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/special/img/handbook2022.pdf

肝移植患者では、タクロリムス、シメプレビル、バニプレビル、グラゾプレビルなどの肝炎薬との併用に注意が必要とされていましたが、バニプレビル販売中止後は該当薬剤が減少しました。

情報の整理が重要です。

医薬品医療機器総合機構(PMDA)の最新安全性情報を定期的に確認することで、販売中止品目や相互作用情報の変更を把握できます。

DI業務において、過去の処方歴にバニプレビルが含まれる患者の記録整理も必要です。治療効果や副作用の経過を把握することで、現在の治療方針決定に役立てることができます。

バニプレビル販売中止から学ぶ医薬品選択の視点

バニプレビルの販売中止は、医薬品の生命周期における自然淘汰の一例です。

新薬承認から販売中止までの期間が短かったことは、医療技術の急速な進歩を物語っています。

医療従事者は常に最新情報へアップデートする必要があります。

C型肝炎治療では、2014年のIFNフリー療法登場、2015年以降の全経口DAA製剤の普及という大きな変革がありました。この流れの中で、インターフェロン併用が前提のバニプレビルは時代に合わなくなったのです。

今後も新規作用機序の薬剤が登場すれば、現在主流のDAA製剤も更新される可能性があります。

治療効果と安全性のバランスが重要です。

医療従事者は、単に「新しい薬」を選ぶのではなく、患者個々の病態、遺伝子型、併存症、服薬アドヒアランスなどを総合的に評価し、最適な治療法を選択する能力が求められます。

バニプレビル販売中止の経緯を理解することは、医薬品評価の視点を養う良い教材となります。