インテグラーゼ阻害薬ゴロで覚える種類と作用機序
ラルテグラビルとエルビテグラビルは交差耐性を示します。
インテグラーゼ阻害薬の基本ゴロ合わせ
HIVインテグラーゼ阻害薬を覚えるための最も効果的な語呂合わせは「イン(in)するのは、ラル(Ral)とエル(El)!」です。この語呂合わせは、作用機序と代表的な薬剤名を同時に記憶できる優れた方法です。
参考)25年4月神ワザ集◎hiv薬ゴロHIVインテグラーゼ阻害薬の…
「イン(in)する」はインテグラーゼによる宿主細胞のゲノムへの挿入(integration)を表現しています。つまり、HIVウイルスが宿主の染色体にDNAを組み込む過程を指しているわけです。
「ラル(Ral)」はラルテグラビル(Raltegravir)、「エル(El)」はエルビテグラビル(Elvitegravir)の頭文字を表します。これらは初期に承認された第1世代のインテグラーゼ阻害薬で、臨床現場でも頻用されています。
語呂合わせの構造が単純なため、国家試験や臨床での暗記に適しています。作用機序と薬剤名を一度に覚えられるのが最大のメリットです。
別の覚え方として「インテグラーゼ」という薬剤分類名そのものを活用する方法もあります。「イン→宿主細胞のゲノムへ挿入(in)」「テグラ→〇〇テグラビル」という分解方法で、ラルテグラビル、エルビテグラビルなど語尾が「テグラビル」で終わる薬剤を連想できます。
参考)HIVインテグラーゼ阻害薬のゴロ(覚え方)|薬学ゴロ – 薬…
インテグラーゼ阻害薬の全種類と特徴
日本で承認されているインテグラーゼ阻害薬は現在4種類あります。第1世代と第2世代に分類され、それぞれ耐性バリアや薬物相互作用のプロファイルが異なります。hiv-resistance+1
第1世代には以下の2剤があります。
第2世代には以下の2剤があります。
- ドルテグラビル(DTG) – 2014年に承認。第1世代より耐性バリアが高いid-info.jihs.go+1
- ビクテグラビル(BIC) – 最新の薬剤で、インテグラーゼ/DNA複合体への結合時間が長い
第2世代の薬剤は第1世代よりも耐性バリアが高いのが特徴です。ドルテグラビルとビクテグラビルは、ラルテグラビルやエルビテグラビルで耐性が生じた患者にも有効な場合があります。
参考)https://www.hiv-practiceupdates.jp/education/edu004/edu06.html
投与回数にも違いがあります。ラルテグラビルは1日2回投与が基本ですが、600mg錠では1日1回投与も可能です。一方、ドルテグラビルやビクテグラビルは1日1回投与が標準となっています。hiv-guidelines+1
カボテグラビル(CAB)という注射製剤も海外では承認されていますが、日本での承認状況は2026年2月時点で確認が必要です。hiv-practiceupdates+1
インテグラーゼ阻害薬の作用機序詳細
HIVインテグラーゼは、ウイルス遺伝子にコードされたウイルス複製に必要な酵素です。インテグラーゼ阻害薬は、このHIVインテグラーゼの触媒活性を阻害することで効果を発揮します。msdconnect+1
HIVの増殖サイクルを理解すると作用点が明確になります。HIVは宿主細胞に侵入後、自身のRNA遺伝子をDNAに変換(逆転写反応)します。この逆転写されたDNAが、インテグラーゼによって宿主の染色体に組み込まれるのです。hiv-guidelines+1
インテグラーゼ阻害薬はこの「組み込み」のステップを特異的にブロックします。結果として、ウイルスDNAが宿主DNAに統合されず、感染が不成立になるということですね。
参考)https://hiv-guidelines.jp/2023/part08-1.htm
他の抗HIV薬との違いも理解しておくと臨床判断に役立ちます。逆転写酵素阻害薬はDNA合成を阻害し、プロテアーゼ阻害薬はウイルスタンパクの成熟を阻害します。インテグラーゼ阻害薬はその中間のステップに作用するため、併用療法で相補的な効果が期待できます。
ビクテグラビルは、HIV-1インテグラーゼ/DNA複合体への結合時間が他の薬剤より長いという特性があります。この結合時間の長さが、高い抗ウイルス効果と耐性バリアの向上に寄与していると考えられています。
インテグラーゼ阻害薬の耐性パターンと交差耐性
第1世代のラルテグラビルとエルビテグラビル間には高度な交差耐性が生じます。医療現場でラルテグラビル耐性が確認された場合、エルビテグラビルへの切り替えは効果が期待できないリスクがあります。hiv-practiceupdates+1
ラルテグラビル耐性は3つの主要な変異獲得経路で生じます:
- N155Hとそれに続くE92Qおよび副次変異
- Q148H/R/K + G140S/Aおよび副次変異
- Y143C/R + T97Aおよび副次変異
N155H変異はラルテグラビルとエルビテグラビルの両方に高度耐性をもたらします。この変異を持つ患者では、さらにINSTI耐性関連変異が発現すると、ドルテグラビルでもウイルス学的失敗が報告されています。
第2世代のドルテグラビルとビクテグラビルは耐性バリアが高いのが利点です。一般的に、ラルテグラビル/エルビテグラビル耐性患者にドルテグラビル50mg1日2回を投与すると良好な反応が得られます。
ただし例外もあります。Q148変異と2つ以上の副次変異(G140A/C/S、E138A/K/TまたはL74I)が共存する場合は、ドルテグラビルへの反応が低下します。このような複雑な耐性パターンでは、遺伝子型検査の結果を慎重に評価する必要があります。
Y143変異によるラルテグラビルへの交差耐性は比較的少なく、ドルテグラビルへの影響も最小限です。ビクテグラビルに対する感受性は低下させないとされています。
インテグラーゼ阻害薬の併用注意と薬物相互作用
ラルテグラビルの血漿中濃度を低下させる薬剤との併用には注意が必要です。臨床的に意味のある濃度低下が起こると、有効性が減弱するおそれがあります。
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2021/02/explanation_isentress_tab600.pdf
UGT1A1誘導作用を持つ薬剤との併用で問題が生じます。具体的には、リファンピシン、カルバマゼピン、フェノバルビタール、フェニトインとの併用でラルテグラビルの血漿中濃度が低下すると予測されています。
2価の金属イオンを含む薬剤とキレートを形成し、吸収抑制が起こる可能性もあります。制酸剤やカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛を含むサプリメントとの服用タイミングには配慮が必要です。
インテグラーゼ阻害薬自体は比較的薬物相互作用が少ない分類です。副作用や薬物相互作用が少なく、抗ウイルス効果に優れるため、キードラッグとして重要な位置を占めています。
併用療法を組む際は、他の抗HIV薬との相互作用も考慮します。プロテアーゼ阻害薬のリトナビルやコビシスタットなど、CYP3A阻害作用を持つ薬剤との組み合わせでは、併用薬の血中濃度モニタリングが推奨されます。
食事の影響も薬剤によって異なります。ラルテグラビル600mg錠は食事の有無にかかわらず投与できるのがメリットです。患者の服薬アドヒアランス向上のため、生活パターンに合わせた薬剤選択が重要になります。
インテグラーゼ阻害薬の臨床使用と副作用プロファイル
ラルテグラビル1,200mg(600mg錠×2)1日1回投与で2%以上に認められた主な副作用は限定的です。悪心(7.5%)、腹痛(3.0%)、頭痛(3.0%)、下痢(2.4%)、嘔吐(2.3%)、浮動性めまい(2.3%)が報告されています。
中等度または重度の副作用は患者の2%以上には報告されていません。これは他の抗HIV薬と比較して忍容性が高いことを示しています。
抗ウイルス剤の服用開始時期に見られる副作用には、服用を続けている間に次第に軽減するものがあることが知られています。体内で薬を分解する酵素が増えることなどで、体が薬に適応していくためです。
初回治療では、インテグラーゼ阻害薬を含む3剤併用療法が推奨されています。核酸系逆転写酵素阻害薬2剤とインテグラーゼ阻害薬1剤の組み合わせが標準的です。hiv-guidelines+1
配合剤も複数承認されており、服薬錠数の削減に貢献しています。ビクタルビ配合錠(ビクテグラビル+エムトリシタビン+テノホビルアラフェナミド)、トリーメク配合錠(ドルテグラビル+ラミブジン+アバカビル)などが代表例です。hiv-resistance+1
患者の背景因子も薬剤選択に影響します。腎機能障害のある患者では、テノホビルアラフェナミド(TAF)を含む配合剤が、テノホビルジソプロキシルフマル酸塩(TDF)を含む製剤より推奨されます。hiv-guidelines+1
妊婦や授乳婦への使用に関しては、各薬剤の添付文書を確認する必要があります。ドルテグラビルは一部のガイドラインで妊婦への使用が推奨されていますが、妊娠初期の神経管閉鎖障害リスクについて議論がありました。
長期投与時の骨密度への影響や体重増加も注目されています。特にインテグラーゼ阻害薬を含むレジメンでは体重増加の報告があり、患者への生活指導と定期的なモニタリングが重要です。
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