アモロルフィン作用機序と真菌細胞膜エルゴステロール合成阻害

アモロルフィン作用機序とエルゴステロール生合成阻害

アモロルフィンは真菌にも細菌にも効く可能性があります。shinryo-to-shinyaku+1

この記事の3ポイント要約
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2段階阻害という独自機序

アモロルフィンはエルゴステロール生合成経路のΔ14-レダクターゼとΔ8-Δ7-イソメラーゼの2つの酵素を同時に阻害します

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モルホリン系の特徴

イミダゾール系とは異なる化学構造を持ち、T.mentagrophytesに対して0.001μg/mLという低濃度で殺真菌作用を示します

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意外な抗細菌作用

コリネバクテリウム属の細菌に対しても増殖抑制効果があり、培養7時間後に顕著な抑制を示します

アモロルフィンのエルゴステロール生合成経路における二重阻害機構

 

アモロルフィン塩酸塩は、真菌の細胞膜を構成する主要成分であるエルゴステロール生合成経路において、Δ14-ステロールレダクターゼ反応とΔ8-Δ7-イソメラーゼ反応という2つの段階を選択的に阻害します。この二重阻害機構がモルホリン系抗真菌薬の大きな特徴です。pins.japic+1

他の抗真菌薬と比較すると、イミダゾール系のフルコナゾールはラノステロールの14位脱メチル化反応を、アリルアミン系のテルビナフィンはスクアレンエポキシ化反応をそれぞれ単一段階で阻害するのに対し、アモロルフィンは複数の酵素を標的とする点で異なります。2つの酵素を同時に阻害することで、エルゴステロールの枯渇とともに阻害された酵素の基質が細胞膜および細胞質に蓄積し、真菌細胞に強い打撃を与えます。wikipedia+1

この作用機序により、細胞膜の構造と機能が障害され、抗真菌効果が発揮されます。

つまり2段階阻害が基本です。

参考)くすりのしおり : 患者向け情報

アモロルフィンの抗真菌スペクトルと殺菌濃度

アモロルフィン塩酸塩は、白癬菌の一種であるTrichophyton mentagrophytes(T.mentagrophytes)に対して0.001μg/mLという極めて低い濃度で殺真菌作用を示します。また、カンジダ属のCandida albicans(C.albicans)に対しては1μg/mLの濃度で殺真菌作用を発揮します。

参考)https://teika-products.jp/mdcFiles/doc/mdc75.pdf

白癬菌への感受性が特に高いことが特徴です。

爪白癬の臨床試験では、アモロルフィン外用剤を1週間または2週間使用した場合、有効率が60~71パーセントと報告されています。ただし、6ヶ月間の治療後に使用を中止し、その3ヶ月後に完全治癒していた割合は38~46パーセント程度に留まります。

結論は長期管理が必要です。

参考)アモロルフィン – Wikipedia

海外では抗真菌剤の内服単独療法よりも、アモロルフィンなどの爪白癬外用剤との併用治療の方が治癒率が高いと報告されています。ただし、日本では併用療法は保険診療上の制約があります。

参考)https://medical-pro.kaken.co.jp/seminar/flyer/seminar_20220424.pdf

アモロルフィンの意外なコリネバクテリウム増殖抑制効果

アモロルフィンは本来真菌を標的とした薬剤ですが、in vitro試験において細菌であるコリネバクテリウム属の増殖を抑制する現象が見いだされています。この抗コリネバクテリウム作用は濃度依存的で、特に薬剤暴露初期である培養7時間後に高い増殖抑制効果を示します。shinryo-to-shinyaku+1

どういうことでしょうか?

真菌の細胞膜にはエルゴステロールが主要構成成分として存在しますが、細菌の細胞膜にはエルゴステロールが存在しません。そのため、アモロルフィンが細胞膜生合成経路を阻害することにより細菌の増殖を抑制するという説明は理論上考えにくいとされています。抗コリネバクテリウム作用の詳細な機序は現在のところ不明です。shinryo-to-shinyaku+1

コリネバクテリウム属は皮膚の常在菌として存在し、体臭の原因となる物質を産生することが知られています。アモロルフィンの抗真菌作用以外のユニークな作用として、今後の研究が期待されます。

これは注目すべき発見ですね。

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アモロルフィンと他の抗真菌薬との作用点比較

エルゴステロール生合成経路を標的とする抗真菌薬には、作用点の違いによりいくつかの系統があります。テルビナフィン(TBF)はスクアレンという中間産物を蓄積させ、フルコナゾール(FCZ)はラノステロールを、アモロルフィン(AMF)はフェコステロールを蓄積させることが知られています。

参考)同一経路で働く抗真菌剤の異なる作用—抗真菌剤の新しい用途開発…

各薬剤が阻害する酵素の位置により、蓄積する中間体が異なります。

つまり作用点で差が出ます。

イミダゾール系は最も種類が多く、その他にモルホリン系(アモロルフィン)、アリルアミン系、ベンジルアミン系、チオカルバミン酸系の系統があります。アモロルフィンは化学構造が他の系統と異なるモルホリン系に分類され、2段階でエルゴステロール生合成を選択的に阻害する特徴を持ちます。teika-products+1

爪白癬合併例では内服抗真菌薬が第一選択とされていますが、外用抗真菌薬との併用も治療戦略の一つです。ビホナゾール1%クリームを対照としたアモロルフィン0.5%クリームの臨床試験も実施されています。maruho.co+1

アモロルフィンの体内動態と安全性プロファイル

外用剤として使用されるアモロルフィンは、皮膚からの全身吸収が極めて少ないことが特徴です。健常成人において300mg(臨床用量の約30倍)を広範囲の皮膚面積(15×20cm)に塗布した試験では、投与後48時間までのすべての測定時点で、血清中および尿中のアモロルフィン濃度が検出限界以下でした。この試験では自他覚的にも異常所見は認められませんでした。

参考)https://teika-products.jp/mdcFiles/doc/mdc76.inv.pdf

全身吸収がほぼないため安心です。

爪白癬治療において、爪甲およびその下の皮膚に存在する原因菌に到達するために、薬剤の浸透性が重要となります。アモロルフィンを含む外用爪白癬治療剤は、この病変部位への薬剤送達を目的として設計されています。外用剤としての安全性プロファイルは良好と考えられます。

参考)https://www.feldsenfpharma.co.jp/dcms_media/other/EFI-1.pdf

ペキロンクリーム(アモロルフィン0.5%製剤)は、白癬(たむし、水虫など)、皮膚カンジダ症、癜風などの治療に使用されます。2025年9月時点で、アモロルフィン塩酸塩と同じ成分の市販薬は日本では販売されていません。安全性の観点からも医療機関での処方が推奨されます。minacolor+1

白癬の治療全般について、マルホ医療関係者向けサイトで外用抗真菌薬の系統別分類と使い分けの詳細が解説されています
エルゴステロール合成阻害剤の作用機序の違いについて、東京大学の研究で3種類の抗真菌薬(テルビナフィン、フルコナゾール、アモロルフィン)が異なる中間体を蓄積することが詳しく報告されています

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