アムホテリシンb作用機序|エルゴステロール結合から細胞膜破壊まで

アムホテリシンb作用機序とエルゴステロール結合

リポソーム製剤なら腎毒性を気にせず使えると思っている方は要注意です。

📋 この記事の3つのポイント
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エルゴステロール特異的結合

アムホテリシンBは真菌細胞膜のエルゴステロールに高い親和性で結合し、イオンチャネルを形成して細胞膜を破壊します

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腎毒性と電解質異常

従来製剤は累積投与量5gを超えると不可逆的な腎障害を引き起こし、低カリウム血症などの重篤な副作用が高頻度で発現します

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リポソーム製剤の特性

リポソーム化により動物細胞への膜障害活性が低減され、抗真菌作用を維持しながら副作用を軽減した製剤が利用可能です

アムホテリシンbのエルゴステロール結合メカニズム

 

アムホテリシンBは真菌の細胞膜を構成する主要成分であるエルゴステロールに特異的に結合する性質を持っています。エルゴステロールは人間の細胞膜には存在しない真菌特有の成分であり、この選択性がアムホテリシンBの抗真菌作用の基盤となっています。sumitomo-pharma+2

結合後、アムホテリシンB分子が複数集まって細胞膜に小さな穴を形成します。このイオンチャネルは親水的な部分を内側に配置した構造をとり、カリウムイオンやナトリウムイオンが透過できる通路となります。

これが細胞膜破壊の起点です。

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一方、アムホテリシンBは動物細胞膜のコレステロールに対しても低いながら親和性を有しています。エルゴステロールへの親和性と比較すると弱いものの、この性質が副作用発現の原因となります。

参考)http://www.pharm.kobegakuin.ac.jp/~seizai/DDSExam2016Tsui.pdf

アムホテリシンbによるイオンチャネル形成と細胞死

アムホテリシンBがエルゴステロールと結合すると、複数のアムホテリシン分子とエルゴステロール分子が会合してイオンチャネル複合体を形成します。大阪大学と岡山大学の共同研究により、このイオンチャネルの詳細な立体構造が2022年に明らかにされました。sci.osaka-u.ac+2

形成されたイオンチャネルを通じてカリウムイオン、ナトリウムイオン、その他の細胞質成分が細胞外へ漏出します。細胞内のイオンバランスが崩壊すると、真菌細胞は正常な代謝機能を維持できなくなります。

つまり殺菌的に作用するということですね。

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このプロセスは不可逆的であり、細胞膜の透過性が著しく増大した真菌細胞は最終的に死滅します。深在性真菌症の治療薬として最も古い薬剤ですが、このメカニズムにより現在もなお高い治療効果を持つ薬剤として位置づけられています。sumitomo-pharma+1

アムホテリシンbと他の抗真菌薬との作用機序の違い

抗真菌薬は作用する標的部位によって大きく異なる分類に分けられます。アムホテリシンBを含むポリエン系は細胞膜を直接破壊する殺菌的作用を持ちますが、アゾール系抗真菌薬は小胞体でのエルゴステロール合成を阻害して真菌の成長を抑制する静菌的作用を示します。

参考)抗真菌薬の作用メカニズムとその効果|住友ファーマ 医療関係者…

キャンディン系抗真菌薬はさらに異なるアプローチをとっており、細胞壁を構成する1,3-β-Dグルカンの合成を阻害します。細胞膜ではなく細胞壁を標的とする点が特徴的です。

薬剤師国家試験でも頻出のテーマであり、エルゴステロールと結合することで細胞膜の機能障害を起こすという記述が正答とされています。作用点の違いを理解することで、併用療法や耐性菌への対応を適切に判断できます。yakugakulab+1

アムホテリシンbの腎毒性と副作用プロファイル

アムホテリシンBは強力な抗真菌作用の一方で、腎毒性などの強い副作用を併発することが長年問題視されてきました。従来のアムホテリシンBデオキシコレート製剤では、累積投与量が5gを超えると不可逆的な腎障害を引き起こします。5gというのは体重60kgの患者で約100日間連日投与した場合の量に相当します。jstage.jst+1

腎毒性は低カリウム血症、ナトリウムやマグネシウムの消耗、腎尿細管アシドーシス、腎濃縮能力の障害などの電解質異常として現れます。ムーコル症の治療においては高率な腎毒性と電解質異常が報告されています。academia.carenet+1

発熱・悪寒・吐き気といった投与時関連反応も高頻度で発現します。点滴注射中にこれらの症状が出現する可能性があるため、投与速度は3〜6時間以上かけて徐々に行う必要があります。

厳しいところですね。

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アムホテリシンbリポソーム製剤の特性と従来製剤との違い

リポソーム製剤であるアムビゾームは、アムホテリシンBをリポソームの脂質二分子膜中に封入することで開発されました。リポソーム中のコレステロールとの親和性によってアムホテリシンBがリポソームに保持され、真菌に対する膜障害作用を維持しつつ、動物細胞に対する膜障害活性が低減されています。antibiotic-books+2

真菌感染症部位で真菌と接触した際、リポソームから放出されたアムホテリシンBが真菌細胞膜のエルゴステロールと結合します。従来のアムホテリシンB製剤と同様のin vitro抗真菌活性ならびに動物実験でのin vivo効果を示すことが確認されています。jsmm+1

深在性真菌症を対象とした臨床試験では、全体の有効性は63.6%であり、カンジダ症では66.7%、アスペルギルス症では51.4%の有効性が示されました。副作用を軽減しながら治療効果を維持できることが確認されています。

参考)https://www.chemotherapy.or.jp/journal/jjc/06104/061040347.pdf

アムビゾームの製品特性と作用機序の動画解説

リポソーム製剤の詳細な薬物動態データや投与方法については、添付文書を参照することで適切な使用が可能になります。

アムホテリシンbの投与方法と用量設定の実際

深在性真菌症に対する静脈内投与では、通常1日体重1kg当たりアムホテリシンB 0.25mgから開始し、次回より症状を観察しながら漸増して1日量として体重1kg当たり0.5mgを点滴静注します。投与量は最大で1日1mg/kg、または隔日1.5mg/kgまで増量可能です。

参考)アムホテリシンB (Amphotericin B):抗菌薬イ…

副作用の発現のため投与困難な場合には、初回量を1日1mgから開始し、症状を観察しながら漸増して1日総量50mgまでを連日または隔日1回点滴静注します。体重50kgの患者なら1日最大25mgが標準的な維持量となります。

気管内注入では1バイアル(50mg)を注射用水10mlに溶解し、その0.2〜4ml(1〜20mg)をさらに注射用水約10mlに希釈して使用します。初回量は1日1mgまたは5〜10mgから開始し、漸次増量して1日10〜20mgを隔日1回気管内に注入します。pins.japic+1

胸膜内注入や髄腔内注入といった局所投与も可能であり、感染部位に応じた投与経路の選択が重要です。各投与経路における適切な希釈濃度と投与速度を守ることで、副作用のリスクを最小限に抑えられます。

アムホテリシンBの詳細な用法用量と注意事項

投与量の調整や副作用モニタリングについては、患者の腎機能や電解質バランスを定期的に評価しながら個別化する必要があります。


感染と抗菌薬 Vol.20 Suppl.1 2017: アムホテリシンBリポソーム製剤を選ぶ時・使う時―適正な治療を目指して