プリマキン作用機序と適応
G6PD検査を受けずに投与すると重篤な溶血性貧血を起こす
プリマキンの作用機序における2つの主要メカニズム
プリマキンは8-アミノキノリン誘導体に分類される抗マラリア薬で、1940年代に最初に合成された歴史ある薬剤です。この薬剤の最大の特徴は、肝細胞内に潜む休眠体(ヒプノゾイト)を殺滅できる唯一の承認薬である点にあります。ヒプノゾイトは三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)と卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)が肝臓内で形成する特殊な発育段階です。
このヒプノゾイトは数年から数十年間も肝臓内に残存し続ける可能性があります。通常の抗マラリア薬では血液中の原虫しか殺滅できないため、休眠体が残った状態では、数ヵ月後や時には1年以上経過してから再発することがあります。つまり真の根治にはプリマキンが不可欠ということですね。
作用機序については現在も完全には解明されていませんが、主に2つの経路が推察されています。第一の機序は、休眠体原虫のミトコンドリア電子伝達系を阻害することです。ミトコンドリアはエネルギー産生の中心であり、その機能を止められた原虫は生存できなくなります。
第二の機序は、活性酸素による酸化的損傷です。プリマキンあるいはその代謝物がミトコンドリアで活性酸素を生成し、膜脂質の過酸化を引き起こして原虫に致命的なダメージを与えます。in vitroの実験では、100μmol/Lのプリマキン存在下で紫外線照射後にミトコンドリアの機能低下を伴うアポトーシスが生じることが確認されています。
カニクイザルの培養肝細胞を用いた研究では、プリマキンの肝細胞内休眠体原虫に対する殺作用のIC50値が0.80μmol/Lと報告されています。アカゲザルを用いた別の研究では、10μmol/Lのプリマキン処理により肝細胞内の休眠体原虫数が対照群の約10%まで減少しました。これらの実験データは、プリマキンの休眠体殺滅能力を裏付けています。
プリマキン投与におけるG6PD欠損症の致命的リスク
プリマキン投与において最も重大なリスクが、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症患者における溶血性貧血です。この酵素は赤血球を酸化ストレスから守る重要な役割を果たしており、欠損すると赤血球が脆弱になります。プリマキンは活性酸素を生成する作用があるため、G6PD欠損症患者に投与すると赤血球が破壊され、重篤な溶血性貧血を引き起こします。
添付文書にも「警告」として明記されており、G6PD欠損症患者への投与は絶対禁忌です。溶血性貧血は投与開始後1週間以内に発症することがあり、尿の暗色化、青白い肌、息切れ、めまい、疲労などの症状が現れます。
放置すれば生命に関わる危険性があります。
日本では極めて稀ですが、アフリカやアジアに問題があります。サハラ以南アフリカでは地域によってG6PD欠損症の割合が20%を超えることもあり、東南アジアでもその頻度は高くなっています。日本人患者の割合は低いものの、海外からの渡航者や移民の診療では特に注意が必要ということです。
最も深刻な問題は、日本国内でG6PD検査用の診断薬が未承認である点です。WHO(世界保健機関)は、プリマキン投与前にG6PD活性を測定することを推奨していますが、日本の医療現場では実施できません。したがって、投与前には家族歴を含めた詳細な問診を行い、溶血性貧血のリスクを慎重に評価する必要があります。
問診では、過去の溶血性貧血の既往、家族内でのG6PD欠損症の有無、出身地域(アフリカ・東南アジア・地中海沿岸など)、特定薬剤や食品(ソラマメなど)による溶血発作の経験などを確認します。少しでもリスクが疑われる場合は、投与を見送るか、より慎重なモニタリング体制を整える必要があります。
投与中は、ヘモグロビン値、ハプトグロビン値などの血液検査を頻回に行い、異常が認められた場合は直ちに投与を中止します。患者にも溶血性貧血の徴候について説明し、異常を感じたらすぐに連絡するよう指導することが重要です。
プリマキンが効かない赤血球内原虫と併用治療戦略
プリマキンの作用には重要な限界があります。それは赤血球内の原虫に対してはほとんど効果がないという点です。プリマキンの標的は肝細胞内の休眠体であり、血液中で増殖する赤血球内原虫の殺滅には他の抗マラリア薬が必要になります。
根治が目的ということですね。
添付文書にも「本剤は三日熱マラリア又は卵形マラリア原虫の休眠体を殺滅する目的(根治療法)のみに使用する薬剤」と明記されており、急性期の発熱や症状がある段階では、まず赤血球内の原虫を殺滅する治療を行わなければなりません。
急性期治療には、クロロキンやメフロキン、アルテミシニン誘導体などの抗マラリア薬が使用されます。これらの薬剤で赤血球内の原虫を殺滅した後、肝臓に残存する休眠体を根絶するためにプリマキンを投与するという二段階の治療戦略が基本です。
海外の臨床試験では、アルテスネート投与後にプリマキン30mgを14日間投与した三日熱マラリア患者52例で、28日間の追跡期間中に再発例は0例という優れた成績が報告されています。また、クロロキン投与後にプリマキン0.5mg/kg/日を14日間投与した患者群では、11ヵ月間の追跡で再発率がわずか1.8%だったのに対し、プラセボ群では31.0%と高率でした。
プリマキンにキニーネやクロロキンを併用すると根治率が高くなることが知られています。メフロキンなどの他の抗マラリア薬ではプリマキンのようなヒプノゾイト殺滅作用は認められていないため、三日熱マラリアや卵形マラリアの完全な根治にはプリマキンが唯一の選択肢になります。
ただし、熱帯熱マラリアの場合は休眠体が形成されないため、プリマキンによる根治療法は不要です。四日熱マラリアでも同様に休眠体は形成されません。つまり、プリマキンが必要なのは三日熱マラリアと卵形マラリアに限られるわけです。
併用による相互作用にも注意が必要です。プリマキンの薬物動態に関する研究では、メフロキンやキニーネとの併用時にプリマキンのCmaxやクリアランスに大きな変化は見られませんでした。
安全に併用可能ということです。
プリマキンの標準的な用法用量と投与期間
日本で承認されているプリマキンの用法用量は、成人では30mgを1日1回14日間、食後に経口投与することです。小児では体重に応じて0.5mg/kg(最大30mg)を1日1回14日間、食後に投与します。15mg錠が1錠あたり2,242.8円の薬価で、成人の標準治療では2錠を14日間服用するため、薬剤費は約6万3千円になります。
投与期間の14日間は、肝臓内の休眠体を完全に殺滅するために必要な期間として設定されています。短縮すると休眠体が残存し、再発のリスクが高まります。逆に延長しても効果の向上は期待できず、副作用のリスクが増すだけです。
標準療法を守ることが重要ということですね。
食後投与が推奨されるのは、吸収率と消化器症状の軽減のためです。健康成人を対象とした薬物動態試験では、空腹時投与に比べて食直後投与でプリマキンのCmaxが26%、AUCが14%増加しました。また、最高血中濃度到達時間(tmax)は空腹時で2.0時間、食後で1.5時間と、食後のほうがやや早く吸収されます。
プリマキンの血中半減期は約6〜8時間と比較的短く、1日1回の投与で有効血中濃度を維持できます。14日間の反復投与でも蓄積性は認められず、1日目と14日目の薬物動態パラメータに大きな差はありません。つまり長期投与でも安定した効果が期待できるわけです。
海外では感染地域や再発例に応じて、より高用量のプリマキン投与が検討されることもあります。パプアニューギニアでの感染例では標準量でも再発が報告されており、地域特性を考慮した用量調整が必要な場合があります。ただし、日本の承認用量は30mg/日であり、これを超える投与は適応外使用になります。
妊婦への投与は絶対禁忌です。プリマキンは母体および胎児に血管内溶血を引き起こす可能性があり、遺伝毒性の報告もあるため、妊娠している可能性のある女性には投与できません。妊娠する可能性のある女性には、投与中および最終投与後6ヵ月間の避妊が必要です。男性にも投与中および最終投与後3ヵ月間のバリア法による避妊が推奨されています。
日経メディカル:休眠体を殺滅して再発を予防する抗マラリア薬の解説
プリマキン療法の副作用モニタリングと対処法
プリマキン投与で最も注意すべき副作用は溶血性貧血、白血球減少、メトヘモグロビン血症です。これらは重大な副作用として分類され、発現した場合は直ちに投与を中止する必要があります。溶血性貧血の徴候としては、尿の暗色化、ヘモグロビン値や赤血球数の急激な減少、黄疸などが挙げられます。
メトヘモグロビン血症は、危険因子のない患者でもメトヘモグロビン濃度を一過性に最大10%上昇させる可能性があります。青みがかった唇や爪、チアノーゼなどの症状が特徴です。重症例では症状のあるメトヘモグロビン血症に対して、メチレンブルー1〜2mg/kgによる治療が推奨されています。
その他の比較的頻度の高い副作用として、消化器症状(悪心、嘔吐、胃部不快感、腹痛)、精神神経系症状(浮動性めまい)、過敏症(発疹、そう痒症)などがあります。海外の用量検討試験では、頭痛4.5%、めまい3.0%、食欲不振・悪心・下痢が各1.5%の頻度で報告されました。
軽度なら対症療法で継続可能です。
投与中のモニタリングでは、投与前および投与中に血液検査を頻回に実施することが重要です。ヘモグロビン値、赤血球数、白血球数、ハプトグロビン値、LDH、間接ビリルビンなどを定期的に測定し、異常の早期発見に努めます。投与開始後1週間以内が特にリスクが高い期間です。
併用注意薬にも十分な配慮が必要です。イブプロフェンなどの解熱消炎鎮痛剤、セフェム系抗生物質、メチレンブルーなど溶血性貧血を引き起こす可能性のある薬剤との併用は、溶血のリスクを相加的に高めます。抗悪性腫瘍剤や骨髄抑制剤との併用では骨髓抑制が増強される可能性があります。
キノロン系抗菌薬、クラスIA・III抗不整脈薬など、QT延長を起こす薬剤との併用にも注意が必要です。心疾患などのリスクを有する患者では、QT間隔延長や不整脈が発現するおそれがあります。
併用薬の見直しが必要な場合もあります。
高齢者では生理機能の低下により副作用が出やすいため、患者の状態を観察しながら慎重に投与します。4歳未満の小児に対する臨床試験は実施されておらず、小児への投与では溶血性貧血を含むリスクとベネフィットを十分に考慮する必要があります。
過量投与時には、腹部仙痛、嘔吐、黄疸、心窩部灼熱感、不整脈やQT延長を含む心臓血管系障害、中枢神経系障害、チアノーゼ、メトヘモグロビン血症、急性溶血性貧血などが発現する可能性があります。症状に応じた支持療法を行い、必要に応じてメチレンブルーによる治療を検討します。
医薬品インタビューフォーム:プリマキン錠の詳細な安全性情報(PDF)

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