キニーネ トニックウォーター 日本での規制と医療従事者の注意点

キニーネ トニックウォーター 日本の現状

日本で流通する国産トニックウォーターの99%以上にはキニーネが含まれていない事実がある。

この記事の3つのポイント
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日本国内の製品状況

国産トニックウォーターの99%以上はキニーネ不使用で代替成分を使用。一方で輸入品の一部にはキナ抽出物が含まれる。

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医療従事者が注意すべき副作用

キニーネ含有トニックウォーターによる固定疹の症例報告が国内で複数あり、視覚障害や血小板減少などの重篤な副作用リスクも存在。

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規制の動向

2025年に実施された使用実態調査では最大65ppmのキニーネ使用が確認され、消費者庁が使用基準設定を検討中。

キニーネ トニックウォーター 日本市場の特殊性

 

日本の飲料市場におけるトニックウォーターは、世界標準とは大きく異なる特徴を持っています。現在、日本で消費されている99%以上のトニックウォーターにはキニーネが含まれていません。これは、海外のプレミアムトニックウォーターとは根本的に異なる点です。

どういうことでしょうか?

トニックウォーターは本来、マラリア治療薬として使われていたキナの樹皮から抽出されるキニーネを含む炭酸飲料として、18世紀にインドで英国軍兵士のために開発されました。キニーネ特有の苦味を和らげるために砂糖や炭酸水を加えたのが、現代のトニックウォーターの原型です。しかし、日本では長らくキニーネを含む製品が流通していませんでした。

国産のトニックウォーターでは、キニーネの代わりに香料や苦味料などの代替成分が使用されています。ウィルキンソンやシュウェップスなど、日本で製造される大手ブランドの製品には、キニーネやキナ抽出物は含まれていません。つまり、患者が「トニックウォーターを飲んでいる」と申告しても、それが国産品であれば、キニーネによる薬物相互作用や副作用の心配はないということです。

一方で、フィーバーツリーなどの輸入プレミアムトニックウォーターには、キナ抽出物が含まれている製品が存在します。フィーバーツリーはコンゴ民主共和国産のキナから抽出された天然のキニーネ成分を使用しており、これが本来のトニックウォーターの味わいとされています。近年、クラフトジンブームに伴って、こうしたキニーネ含有のプレミアムトニックウォーターの輸入量が増加しています。

医療従事者としては、患者がどのブランドのトニックウォーターを飲んでいるのかを確認することが重要です。国産品か輸入品かで、キニーネ含有の有無が大きく異なるためです。

キニーネ含有トニックウォーターによる固定疹症例

キニーネを含むトニックウォーターによる固定疹の症例報告が、日本国内で複数確認されています。固定疹とは、特定の物質を摂取するたびに体の同じ部位に繰り返し皮疹が出現する疾患です。この症状は、医療従事者が見逃しやすい重要なポイントです。

実際の症例では、30歳男性が口唇、硬口蓋、陰茎、亀頭に紅斑とびらんを繰り返し発症し、9カ月間同様の症状を繰り返していました。また、41歳男性が口周囲、手足、陰部に疼痛を伴う紫紅色斑を2015年から2017年にかけて複数回発症した報告もあります。これらの症例では、海外製のキニーネ含有トニックウォーター(シュウェップスやフィーバーツリーなど)の摂取が原因と特定されました。

固定疹が基本です。

特に口唇部に繰り返し水疱や紅斑が出現する場合、単純ヘルペスウイルス感染症と誤診されるケースが少なくありません。ある症例では、2年間にわたり右口唇に疼痛を伴う皮疹が出現していた40歳女性が、当初HSV感染症と診断されていましたが、実際にはトニックウォーターのキニーネによる固定疹だったことが判明しています。

患者が「ジントニックをよく飲む」「最近海外製のトニックウォーターを購入した」などの情報を申告した場合、固定疹の可能性を疑う必要があります。診断確定のためには、原因物質の摂取中止と再摂取試験が有効ですが、患者の安全を考慮して慎重に実施すべきです。問診時には、飲料の銘柄まで具体的に聴取することが診断の鍵となります。

トニックウォーターによる多発固定疹の症例報告(臨床皮膚科)

この文献では、トニックウォーター摂取と固定疹の因果関係について詳細な臨床経過が記載されています。

キニーネの副作用リスクと患者指導のポイント

キニーネは本来マラリア治療薬として使用されてきた医薬品成分であり、トニックウォーターに含まれる量は微量ですが、副作用リスクはゼロではありません。医療従事者として患者に適切な情報提供を行う必要があります。

医薬品としてのキニーネの重大な副作用には、黒水熱、黒内障、血小板減少性紫斑病無顆粒球症溶血性尿毒症症候群などがあります。トニックウォーターに含まれる量は医薬品投与量よりはるかに少ないものの、頻繁な摂取や大量摂取では健康影響が出る可能性があるとドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)が指摘しています。

特に注意が必要な患者群があります。

妊婦については、妊娠中にトニックウォーターを毎日1リットル以上摂取していた母親から生まれた新生児に、神経過敏や震えなどの健康障害(jitteriness)が報告されています。この症例報告に基づき、ドイツでは妊娠中のキニーネ含有飲料の摂取を避けるよう勧告が出されています。日本でも妊婦に対しては、キニーネ含有の輸入トニックウォーターの摂取を控えるよう指導することが望ましいでしょう。

また、キニーネには視覚障害のリスクがあります。大量摂取により視力低下色覚異常が引き起こされる可能性があり、特に自家製トニックウォーターではキニーネが過剰に含まれていてキニーネ中毒になる危険性が指摘されています。症状としては、視覚障害、難聴、めまい、吐き気などが報告されています。

患者への指導では、以下の点を伝えることが重要です。国産トニックウォーターにはキニーネが含まれていないこと、輸入プレミアムトニックウォーターには含まれている可能性があること、繰り返し同じ部位に皮疹が出る場合は受診すること、妊娠中や妊娠の可能性がある場合は輸入品の摂取を控えることです。

キニーネの食品添加物としての規制状況

日本におけるキニーネの食品添加物としての扱いは、複雑な経緯をたどってきました。よく「キニーネは日本で劇薬指定されているため使用できない」という誤った情報が流布していますが、これは正確ではありません。

実際には、キニーネそのものは劇薬には指定されていません。しかし、精製されたキニーネを食品添加物として使用することは認められていないのが現状です。一方で、「キナ抽出物」という形態であれば、既存添加物として使用が認められています。キナ抽出物は、アカキナの樹皮から得られたキニジン、キニーネ及びシンコニンを主成分とするもので、1996年の食品衛生法改正時に設定された既存添加物名簿に収載されています。

規制状況が変わりつつあります。

2025年2月に厚生労働省と消費者庁は、既存添加物「キナ抽出物」の使用実態調査を実施しました。この調査は、食品安全委員会での安全性評価において、キニーネの生殖発生に関する懸念を示唆する情報が得られたことを受けて行われたものです。調査の結果、清涼飲料水(トニックウォーター)やリキュール等の酒類に使用されており、使用最大量としてはトニックウォーターで65ppmのキニーネが使用されていたことが判明しました。

この65ppmという数値は、米国の基準値である83ppmを下回っています。米国では炭酸飲料にキニーネ換算で83ppmを超えないように使用することが規定されており、JECFAでは清涼飲料水における最大100mg/L(キニーネベース)の使用レベルは毒性学的に懸念されないと評価されています。つまり、現在日本で流通している製品のキニーネ含有量は、国際基準と比較しても安全域内にあると言えます。

消費者庁は今後、使用対象食品と食品中に残存するキニーネの量で基準値を設定することを検討しています。使用基準案としては、清涼飲料水、シロップ、果実酒、ウイスキー、スピリッツ及びリキュール以外の食品への使用を禁止し、これらの食品においてもキニーネとして1Lにつき0.083g(83ppm)を超えて残存しないように使用することが提案されています。

国産トニックウォーターのキニーネ代替成分

日本の飲料メーカーは、キニーネの代わりにどのような成分を使用しているのでしょうか。この点を理解することは、患者からの質問に答える際に役立ちます。

国産トニックウォーターの多くは、人工香料や苦味料を組み合わせてキニーネの風味を模倣しています。具体的な成分としては、柑橘系の香料、酸味料、炭酸が基本構成です。ウィルキンソントニックの原材料を見ると、果糖ぶどう糖液糖、炭酸、酸味料、香料のみで、キナ抽出物は含まれていません。

興味深いのは国産代替品です。

近年登場した日本独自のクラフトトニックウォーターでは、キハダ(黄檗)という和のボタニカルを使用した製品があります。キハダはミカン科の植物で、縄文時代から日本で生薬として使われてきた歴史があります。樹皮に含まれるベルベリンという成分が、キニーネと同等の苦味を持つとされています。

代表的な製品が「kizashi(キザシ)トニックウォーター黄檗」です。この製品は日和株式会社が開発したもので、キハダの樹皮抽出物に加えて、柚子果汁、カボス、シークワーサーなどの和柑橘を使用しています。香料や色素を添加せず、自然な味わいを追求している点が特徴です。キハダは大木に成長するまでに20年ほどかかる希少な植物であり、抗菌作用も持つことから、伝統的な生薬としての価値も認められています。

こうした国産代替品の登場は、キニーネアレルギーを持つ患者や妊婦にとって安全な選択肢となります。患者が「トニックウォーターを楽しみたいがキニーネが心配」と相談してきた場合、国産のキハダ使用製品を紹介することも一つの対応策です。

医療現場での問診と記録のポイント

キニーネ含有トニックウォーターに関連した健康問題を早期に発見し、適切に対応するためには、医療現場での問診と記録が重要です。特に皮膚科、内科、産婦人科では、このテーマに関する知識が直接的に診療に役立ちます。

皮膚症状で受診した患者には、飲食習慣の詳細な聴取が必要になります。単に「お酒を飲みますか」という質問だけでは不十分で、「ジントニックやカクテルを飲む習慣がありますか」「どのブランドのトニックウォーターを使っていますか」「国産ですか、輸入品ですか」といった具体的な質問が効果的です。

記録する情報は明確にします。

電子カルテや紙カルテに記録する際は、「トニックウォーター摂取あり(フィーバーツリー、週3回程度)」のように、ブランド名と頻度を具体的に記載します。これにより、他の医療従事者も情報を共有でき、薬疹や固定疹の鑑別診断時に重要な手がかりとなります。

また、繰り返し同じ部位に皮疹が出現する患者には、食品や飲料との関連を必ず確認すべきです。固定疹は薬剤だけでなく食品によっても引き起こされることを念頭に置き、「新しい飲み物や食べ物を試したことはありますか」「症状が出る前に毎回同じものを食べたり飲んだりしていませんか」といった質問が診断につながります。

妊婦健診では、嗜好品の確認時にトニックウォーターについても言及することが推奨されます。つわりや食欲不振で炭酸飲料を好む妊婦は多く、その中にはトニックウォーターを選ぶケースもあります。「炭酸飲料を飲んでいますか」と聞いた後、「トニックウォーターは控えた方が良いですよ」と具体的に伝えることで、不要なリスクを避けることができます。

薬剤師による服薬指導でも、この情報は活用できます。キニーネと相互作用のある薬剤(抗凝固薬、抗不整脈薬など)を処方される患者には、トニックウォーターの摂取について確認し、必要に応じて注意喚起を行うことが望ましいでしょう。食品由来のキニーネ摂取量は微量ですが、大量摂取する習慣がある患者では相互作用のリスクが高まる可能性があります。

医療従事者間での情報共有も重要な要素です。院内の症例検討会や勉強会で、キニーネ含有トニックウォーターによる固定疹症例を共有することで、診断精度の向上につながります。特に若手医師や研修医は、この比較的新しい健康問題について学ぶ機会が限られているため、教育的な視点からも情報提供が必要です。


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