ラスクフロキサシン商品名と特徴選択方法比較

ラスクフロキサシン商品名の基礎知識

ラスビック錠75mgは適応外処方していませんか?

この記事の3つのポイント
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商品名はラスビック錠75mg

ラスクフロキサシン塩酸塩の商品名で、2019年9月承認、2020年1月発売の新規キノロン系抗菌薬です

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呼吸器・耳鼻科領域のみ適応

大腸菌や緑膿菌には適応がなく、肺炎球菌やインフルエンザ菌などに限定された適応菌種です

腎機能調節不要が最大の利点

未変化体の尿中排泄率が8.38%と低く、CKDや透析患者でも通常量投与が可能です

ラスクフロキサシンの商品名と基本情報

ラスクフロキサシン塩酸塩の商品名は「ラスビック錠75mg」です。販売名は英語で「Lasvic Tablets 75mg」と表記され、製造販売元は杏林製薬株式会社となっています。

この薬剤は2019年9月20日に製造販売承認を取得し、同年11月19日に薬価収載されました。その後、2020年1月8日に発売が開始された、比較的新しいニューキノロン系経口抗菌剤です。薬価は277.9円(75mg1錠)に設定されており、レボフロキサシン500mg錠の先発品クラビット錠(約133円)と比較すると約2倍強の価格となっています。

現時点でラスビック錠75mgにジェネリック医薬品(後発品)は存在していません。

先発品のみの状況です。

薬効分類番号は6241で、ニューキノロン系経口抗菌剤に分類されます。略号はLSFXと表記されることが多く、臨床現場や文献ではこの略号が頻繁に使用されます。処方箋医薬品に指定されているため、医師の処方箋なしでは使用できない薬剤です。

1錠にはラスクフロキサシン塩酸塩81.23mgが含有されており、これはラスクフロキサシンとして75mgに相当します。淡黄色のフィルムコーティング錠で、直径7.8mm、厚さ3.8mm、質量約196mgという物理的特性を持っています。

貯法は室温保存で、有効期間は3年間です。

ラスクフロキサシンの適応症と適応菌種の制限

ラスビック錠の適応症は呼吸器・耳鼻咽喉科領域の感染症に限定されています。

これが原則です。

具体的には、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、中耳炎、副鼻腔炎が適応症として承認されています。泌尿器領域や皮膚科領域の感染症には適応を有していないため、膀胱炎や蜂窩織炎などへの処方は適応外使用となります。

適応菌種にも明確な制限があります。本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、クレブシエラ属、エンテロバクター属、インフルエンザ菌、レジオネラ・ニューモフィラ、プレボテラ属、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)が対象です。

大腸菌や緑膿菌は適応菌種に含まれていません。レボフロキサシンやシプロフロキサシンなど従来のキノロン系薬剤が幅広い菌種をカバーしていたのとは対照的です。これは薬剤耐性(AMR)問題への対応として、本剤が呼吸器・耳鼻咽喉科領域に特化して開発されたためです。

咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、副鼻腔炎への使用にあたっては、厚生労働省が作成した「抗微生物薬適正使用の手引き」を参照し、抗菌薬投与の必要性を判断した上で投与することが添付文書に明記されています。

つまり処方前のアセスメントが必須です。

参考情報として、厚生労働省の抗微生物薬適正使用の手引きは以下から確認できます。

厚生労働省:抗微生物薬適正使用の手引き

ラスクフロキサシンの薬理学的特徴と他剤との違い

ラスクフロキサシンは国内で開発された新規キノロン系合成抗菌薬で、細菌のDNA複製に必須なDNAジャイレースおよびトポイソメラーゼIVの両方を同程度に阻害するという独特の作用機序を持っています。

既存のキノロン系薬剤、例えばレボフロキサシンシプロフロキサシンは、DNAジャイレースまたはトポイソメラーゼIVのどちらか片方をより強く阻害する特性があります。一方、ラスクフロキサシンは両方の標的酵素を同程度に阻害します。この特性により、耐性菌の発現を抑制する効果が期待されています。

肺組織への優れた移行性も特筆すべき特徴です。ラスクフロキサシンは肺胞上皮被覆膜に存在するホスファチジルセリンと高い結合親和性を持ち、レボフロキサシンよりも親和性が高いため、肺組織への移行が良好です。呼吸器感染症患者36例に本剤75mgを経口投与後1~3時間での対血漿中濃度比は喀痰で0.613±0.289(平均値±標準偏差)と報告されています。

嫌気性菌に対する強い抗菌力も重要な特徴です。従来のキノロン系薬剤では嫌気性菌への効果が不十分でしたが、ラスクフロキサシンは口腔レンサ球菌や嫌気性菌(プレボテラ属、バクテロイデス属など)に対しても高い抗菌活性を示します。これにより、誤嚥性肺炎など嫌気性菌が関与する呼吸器感染症への有効性が期待されます。

グラム陽性菌、嫌気性菌を含む呼吸器・耳鼻咽喉科感染症の適応菌種に対する抗菌力(MIC90)は0.015~2μg/mLという優れた値を示しています。これはクラビットと比較しても同等以上の抗菌力です。

用法・用量は「1回75mgを1日1回経口投与」というシンプルな設定です。レボフロキサシン500mgと比べると明らかに低用量ですが、組織移行性に優れているため、少ない投与量でも十分な治療効果を発揮します。

これがアドヒアランス向上にもつながります。

ラスクフロキサシンの腎機能と投与量調節

ラスビック錠75mgの最大の臨床的メリットは、腎機能による投与量調節が不要という点です。

これは実務的に大変重要です。

ラスクフロキサシンは胆汁排泄型のキノロン系抗菌薬で、腎臓からの未変化体排泄率はわずか8.38%と極めて低い値を示します。大部分は肝臓で代謝され、胆汁を介して消失するため、腎機能低下の影響をほとんど受けません。

慢性腎臓病(CKD)患者や透析患者でも通常量の75mgを1日1回投与できます。レボフロキサシンでは腎機能に応じて500mg→250mgへの減量や投与間隔の延長が必要でしたが、ラスビック錠ではそのような調整が不要です。これが処方の簡便性を大幅に向上させています。

実際の臨床試験データでは、腎機能正常者から重度腎機能障害者まで、ラスクフロキサシンの薬物動態に大きな違いは認められませんでした。透析患者でも薬物動態パラメータは腎機能正常者と同様であり、用量調整は不要であると結論づけられています。

高齢者においても投与量調節は不要です。ラスビック錠の臨床試験成績では、高齢者(65~88歳)において認められた副作用の種類及びその発現率は、非高齢者(16~64歳)と同様でした。高齢者では生理機能が低下していることが一般的ですが、本剤では特別な配慮は必要ありません。

ただし、中等度以上の肝機能障害患者では血漿中濃度上昇のおそれがあるため注意が必要です。肝代謝型の薬剤であるため、肝機能が著しく低下している場合には慎重投与が求められます。

腎機能調節不要という特性は、多剤併用が多い高齢者や複雑な基礎疾患を持つ患者への処方において、処方ミスのリスクを減らし、医療安全にも貢献します。

これが他のキノロン系薬剤にはない利点です。

ラスクフロキサシンの副作用と安全性情報

ラスビック錠75mgの主な副作用として、下痢、悪心、そう痒症、発疹、頭痛などが報告されています。発現頻度は0.5~2%未満と比較的低く、従来のキノロン系薬剤と同程度の安全性プロファイルを示しています。

重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシー(いずれも頻度不明)、白血球減少症(0.2%)、間質性肺炎(0.2%)が挙げられます。間質性肺炎では発熱、咳嗽呼吸困難、胸部X線異常、好酸球増多等を伴うことがあるため、これらの症状が認められた場合には直ちに投与を中止し、副腎皮質ホルモン剤の投与等の適切な処置が必要です。

QT延長、心室頻拍(Torsades de pointesを含む)(いずれも頻度不明)も報告されているため、重篤な心疾患(不整脈、虚血性心疾患等)のある患者では注意が必要です。本剤投与によりQT間隔が延長するおそれがあるため、投与開始前及び投与中は患者の状態を十分に観察し、必要に応じて心電図検査等を実施することが推奨されます。

アキレス腱炎、腱断裂等の腱障害(頻度不明)はキノロン系薬剤に特徴的な副作用です。腱周辺の痛み、浮腫、発赤等の症状が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。特に高齢者では腱障害があらわれやすいとの報告があるため、注意深い観察が求められます。

大動脈瘤大動脈解離(いずれも頻度不明)も重要な副作用です。海外の疫学研究において、フルオロキノロン系抗菌剤投与後に大動脈瘤及び大動脈解離の発生リスクが増加したとの報告があります。大動脈瘤又は大動脈解離を合併している患者、既往、家族歴若しくはリスク因子(マルファン症候群等)を有する患者では、必要に応じて画像検査の実施を考慮する必要があります。腹部、胸部又は背部に痛み等の症状があらわれた場合には直ちに医師の診察を受けるよう患者指導が重要です。

その他、横紋筋融解症、痙攣、錯乱・せん妄等の精神症状、重症筋無力症の悪化、偽膜性大腸炎等の血便を伴う重篤な大腸炎、低血糖、肝機能障害なども報告されています。いずれも頻度は低いものの、重篤な転帰をたどる可能性があるため、早期発見と適切な対応が必要です。

禁忌事項として、本剤の成分又は他のキノロン系抗菌剤に対し過敏症の既往歴のある患者、妊婦又は妊娠している可能性のある女性、小児等が設定されています。動物実験(ラット)で胎児への移行及び器官形成期の胎児に発育遅延及び骨格異常が認められているため、妊婦への投与は絶対禁忌です。授乳婦についても、乳汁中への移行が報告されているため、授乳しないことが望ましいとされています。

併用注意薬剤として、制酸剤(アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛を含有する製剤)、非ステロイド性消炎鎮痛剤フルルビプロフェン等)、リファンピシンフェニトインカルバマゼピンテオフィリン、クラスⅠA・Ⅲ抗不整脈薬、副腎皮質ホルモン剤などが挙げられています。特に制酸剤との併用では難溶性のキレートを形成し、本剤の吸収が阻害されるため、本剤と同時に服用させないことが重要です。

参考情報として、PMDAの医薬品医療機器情報提供ホームページで最新の安全性情報を確認できます。

PMDA:医薬品医療機器総合機構