総合感冒配合剤の成分・副作用と処方時の注意点

総合感冒配合剤の成分と副作用リスク

米国では12歳未満に処方禁止です

この記事の3つのポイント
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総合感冒配合剤の基本成分

PL顆粒やピーエイ配合錠など代表的な総合感冒配合剤の4~6種類の有効成分と、それぞれの作用機序を詳しく解説

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副作用と安全性の課題

5年間で93件の副作用報告、死亡例8件を含む重篤な有害事象と、依存性のある成分による問題点を具体的に提示

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海外との処方基準の違い

米国が2017年に12歳未満への処方を禁止した背景と、日本の2019年対応、単剤処方への移行推奨を解説

総合感冒配合剤の主要成分と配合の根拠

 

総合感冒配合剤は、風邪の諸症状に対して複数の有効成分を一剤に配合した医薬品です。代表的なPL配合顆粒やピーエイ配合錠には、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩(抗ヒスタミン成分)、アセトアミノフェン(解熱鎮痛成分)、サリチルアミド(解熱鎮痛成分)、無水カフェイン(中枢神経刺激成分)の4成分が含まれています。

これらの成分は、それぞれ鼻水・鼻づまり、発熱、頭痛、倦怠感といった風邪の代表的症状に対応する目的で配合されています。プロメタジンメチレンジサリチル酸塩は、第一世代抗ヒスタミン薬に分類され、ヒスタミンH1受容体をブロックすることで鼻汁分泌を抑制します。アセトアミノフェンとサリチルアミドは、視床下部の体温調節中枢に作用し解熱効果を示すとともに、痛み物質の産生を抑えて鎮痛作用を発揮します。

一剤で複数症状に対応できるのが特徴です。

しかし、ここで重要な問題があります。患者さんに出ていない症状に対する成分まで、必然的に服用することになってしまうのです。たとえば鼻水が出ていない患者さんにも抗ヒスタミン成分が投与され、熱がない患者さんにも解熱成分が投与されます。これは、不要な成分による副作用リスクを高めることにつながります。

医療現場では、こうした配合剤の特性を理解した上で、症状に応じた単剤処方との使い分けが求められています。実際、日本老年医学会の「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」でも、第一世代抗ヒスタミン薬を含む総合感冒配合剤は高齢者への使用を慎重に検討すべきとされています。

くすりのしおり(PL配合顆粒)の詳細情報

風邪症状は自然治癒が原則であり、対症療法として薬剤を用いる場合は、必要最小限の成分を選択することが基本となります。総合感冒配合剤は一見便利に見えますが、その配合根拠と限界を理解することが、医療従事者には不可欠です。

総合感冒配合剤による副作用報告の実態

全日本民医連の副作用モニターでは、過去5年間に総合感冒配合剤による副作用が93件報告されています。その内訳を見ると、発疹や掻痒感などの過敏症が43件と最も多く、次いで眠気、ふらつき、せん妄、幻覚など精神神経系の副作用が22件、尿閉や排尿困難などの泌尿器系副作用が9件、口渇や吐き気などの消化器系副作用も報告されています。

つまり全体の約46%が過敏症です。

さらに深刻なのは、消費者庁が公表した一般用医薬品による重篤副作用の調査結果です。2009年度から2013年度の5年間で、総合感冒薬による副作用報告は404件あり、そのうち死亡例が8件、後遺症を残した例が9件含まれていました。重篤な副作用としては、スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死融解症といった致死的な皮膚粘膜障害が報告されています。

これらの副作用発現率は一見低く見えるかもしれません。しかし、風邪という自然治癒する疾患の対症療法として使用する薬剤で、死亡例や重篤な後遺症が発生している事実は重く受け止める必要があります。特に問題となるのは、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩による抗コリン作用です。

この成分は、前立腺肥大症患者では排尿困難を悪化させるリスクがあり、添付文書上も禁忌とされています。また、緑内障患者では眼圧上昇のリスクがあり、注意喚起がなされています。高齢者においては、認知機能低下やせん妄を引き起こす可能性が指摘されており、実際に服用後に強い眠気や混乱状態を呈した症例が複数報告されています。

民医連による総合感冒剤の副作用報告詳細

医療従事者は、これらの副作用情報を踏まえ、患者背景を十分に評価した上で総合感冒配合剤の処方可否を判断する必要があります。特に高齢者、基礎疾患を有する患者、複数の薬剤を服用している患者では、リスクとベネフィットのバランスを慎重に検討すべきです。

総合感冒配合剤に含まれる依存性成分の問題

総合感冒配合剤の中でも特に問題視されているのが、カフコデN配合錠に含まれるブロモバレリル尿素という成分です。この成分は催眠鎮静作用を有する有機臭素化合物で、連用により薬物依存症を引き起こすことが知られています。実際、厚生労働省の調査では、ブロモバレリル尿素を含む総合感冒薬の依存症例が報告されており、2023年4月からは「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されました。

海外では発売自体が禁止されています。

ブロモバレリル尿素による中毒では、悪心、嘔吐、傾眠、せん妄、錯乱、興奮といった症状が出現し、重篤な場合は昏睡、痙攣重積発作、呼吸抑制・停止に至ることもあります。体内に蓄積されやすく、連続使用により慢性ブロム中毒を発症するリスクがあります。この成分は海外では医薬品に含有されておらず、日本特有の問題となっています。

また、ジヒドロコデインリン酸塩を含む総合感冒配合剤も問題視されています。コデイン類は麻薬性鎮咳薬であり、依存性や乱用のリスクがあることから、2019年7月より12歳未満の小児への使用が禁忌となりました。米国では2017年にすでに12歳未満への使用が禁止されており、日本の対応は2年遅れでした。

コデイン類を含む市販の鎮咳去痰薬や総合感冒薬は、若年層によるオーバードーズ(過量服薬)の対象となっており、社会問題化しています。厚生労働省は2024年11月の規制改革会議で、これら濫用等のおそれのある医薬品について、20歳未満への大容量・複数個販売を禁止する方針を示しました。

依存が成立すると治療が困難です。

厚生労働省による濫用等のおそれのある医薬品の範囲見直し資料

医療従事者は、これらの依存性成分を含む総合感冒配合剤を処方する際、短期間の使用にとどめること、患者への説明を十分に行うこと、代替薬の検討を行うことが求められます。特に若年者や精神疾患の既往がある患者では、処方を避けるべきとされています。

総合感冒配合剤における成分重複と肝障害リスク

総合感冒配合剤で見落とされがちなのが、アセトアミノフェンの成分重複による肝障害リスクです。PL配合顆粒やピーエイ配合錠にはアセトアミノフェンが75mg含まれており、患者さんが他の解熱鎮痛薬や市販の風邪薬を併用した場合、知らないうちにアセトアミノフェンの過量摂取となる可能性があります。

1日1500mg超えで肝障害リスク上昇です。

アセトアミノフェンは、通常用量では比較的安全な解熱鎮痛薬ですが、1日総量1500mgを超える高用量投与や、慢性的な過量摂取では重篤な肝障害を引き起こすことが知られています。実際、厚生労働省は2014年に、総合感冒薬や解熱鎮痛剤等の配合剤には、アセトアミノフェンを含むものがあり、偶発的な併用によりアセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあるとして、注意喚起を行いました。

医療現場での実例として、カロナールなどのアセトアミノフェン単剤を処方された患者さんが、自己判断で市販の総合感冒薬を併用し、1日のアセトアミノフェン総量が2000mgを超えてしまったケースが報告されています。また、PL配合顆粒と解熱鎮痛薬を同時処方されたものの、服薬指導が不十分で両方を同時服用してしまった事例もあります。

アセトアミノフェンによる肝障害は、初期症状として悪心、嘔吐、発汗、全身倦怠感などが出現しますが、風邪症状と区別がつきにくいという問題があります。重症化すると肝性脳症を経て急性肝不全に至り、肝移植以外に救命手段がない状態となります。欧米諸国では長年、急性肝不全の原因として最多を占めているのがアセトアミノフェンの過量摂取です。

処方時は必ず併用薬を確認しましょう。

PMDAによるアセトアミノフェン含有製剤の注意喚起文書

医療従事者は、総合感冒配合剤を処方する際、患者さんが服用している全ての薬剤(市販薬を含む)を確認し、アセトアミノフェンの重複投与がないかチェックする必要があります。また、患者さんに対して「他の風邪薬や痛み止めと一緒に飲まないこと」を明確に説明し、お薬手帳への記載を徹底することが重要です。

総合感冒配合剤から単剤処方への移行推奨

近年、医療現場では総合感冒配合剤から症状に応じた単剤処方への移行が推奨されています。その背景には、前述した副作用リスクの問題に加え、対症療法の本来の目的である「必要な症状にのみ必要な薬剤を使用する」という原則への回帰があります。風邪の症状は患者さんごとに異なり、発熱のみの人、咳のみの人、鼻水のみの人など様々です。

症状に合わせて薬を選ぶのが基本です。

単剤処方のメリットは、まず不要な成分を服用せずに済むため副作用リスクが低減できることです。たとえば鼻水が出ていない患者さんに抗ヒスタミン薬を投与する必要はなく、熱がない患者さんに解熱薬を投与する必要もありません。また、症状の変化に応じて薬剤を調整しやすいという利点もあります。風邪の経過で鼻水は止まったが咳が残っているという場合、単剤処方であれば抗ヒスタミン薬を中止して鎮咳薬のみ継続することが容易です。

実際の処方例として、喉の痛みと発熱がある患者さんにはアセトアミノフェン単剤、鼻水・鼻づまりがある患者さんには第二世代抗ヒスタミン薬(眠気が少ない)、咳がひどい患者さんには中枢性鎮咳薬といった形で、症状に応じた処方が行われています。この方法では、各症状に対してより高用量の有効成分を投与できるため、効果も高まります。

もちろん、単剤処方にもデメリットはあります。処方する薬剤の種類が増えるため、服薬コンプライアンスが低下する可能性があることです。特に高齢者や多剤併用患者では、薬剤数の増加は服薬管理の負担となります。また、複数の症状がある場合、総合感冒配合剤1剤で済むところを3~4剤処方することになり、薬剤費も増加します。

それでも安全性を優先すべきです。

医師が総合感冒薬を勧めない理由についての医学解説

医療従事者としては、患者さんの年齢、基礎疾患、服薬能力、症状の種類と程度を総合的に評価し、総合感冒配合剤と単剤処方のどちらが適切かを個別に判断する必要があります。ただし、原則として単剤処方を優先し、総合感冒配合剤は補助的な選択肢と位置づけることが、現在の医療における標準的な考え方となっています。

総合感冒配合剤の海外との処方基準の相違点

日本と海外では、総合感冒配合剤に対する規制や処方基準に大きな差があります。米国では2008年に2歳未満への市販風邪薬の使用禁止勧告が出され、2017年には12歳未満への処方が禁止されました。英国でも6歳未満への使用が推奨されておらず、カナダ、オーストラリアでも同様の規制が設けられています。これらの規制の根拠となったのは、小児における総合感冒薬の有効性が証明されていないこと、および重篤な副作用報告があることです。

日本の対応は2年遅れました。

米国家庭医学会のガイドラインでは、4歳以下の児童に対してはOTC風邪薬を与えないよう推奨されています。その理由として、風邪症状に対する有効性が確認できないこと、抗ヒスタミン薬による中枢神経系の副作用(鎮静、傾眠、運動失調など)のリスクがあること、小児では成人よりも副作用の感受性が高いことが挙げられています。

日本でも2019年7月に、コデイン類を含む医薬品について12歳未満への使用禁忌措置が取られましたが、これは海外での規制から2年遅れの対応でした。それまでの間、日本では依然として小児への処方が行われており、安全性への懸念が指摘されていました。現在でも、12歳以上であれば処方可能という状況は変わっていませんが、医療現場では慎重な判断が求められています。

また、ブロモバレリル尿素については、海外では医薬品への含有自体が禁止されているにもかかわらず、日本では長年にわたって総合感冒配合剤や頭痛薬に配合されてきました。2022年には催眠鎮静剤としての単剤製品が発売中止となり、2025年3月末の経過措置をもって市場から完全に撤退する予定ですが、OTC医薬品には依然として含有されている製品があります。

国際基準との整合性が課題です。

総合感冒薬が時代遅れとされる理由の詳細解説

こうした日本と海外の規制の差は、医薬品の承認制度や医療文化の違いに起因しています。日本では古くから使用されている医薬品については、使用実績を重視する傾向があり、規制強化が遅れる傾向があります。しかし、グローバルスタンダードの観点から見れば、日本の総合感冒配合剤に対する規制は不十分と言わざるを得ません。医療従事者としては、海外の規制動向や最新のエビデンスを把握し、それを処方判断に反映させていくことが求められています。

Please continue.


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