去痰配合剤と成分・種類・使い分け

去痰配合剤の成分と種類

コデイン配合剤を12歳以上に処方しても依存リスクが高まる可能性がある

この記事で分かること
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去痰配合剤の主要成分

ジヒドロコデイン・メチルエフェドリン・クロルフェニラミンの3成分配合とその作用機序

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年齢別の使用制限

12歳未満は禁忌、高齢者では減量が必要な理由と呼吸抑制リスクの実態

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配合剤と単剤の使い分け

乾性咳嗽と湿性咳嗽での選択基準、併用時の注意点と相互作用

去痰配合剤の代表的な製剤と構成成分

 

去痰配合剤は、鎮咳成分と気管支拡張成分、抗ヒスタミン成分を組み合わせた医薬品です。医療現場で頻繁に処方される代表的な製剤として、フスコデ配合錠・配合シロップ、ムコブロチン配合シロップ、クロフェドリンS配合錠などがあります。

これらの配合剤に共通して含まれる主要成分は3つあります。まず鎮咳作用を持つジヒドロコデインリン酸塩は、延髄の咳中枢に直接作用して咳反射を抑制する麻薬性中枢性鎮咳薬です。

コデインより鎮咳作用が強いとされています。

次にdl-メチルエフェドリン塩酸塩は、α及びβ受容体を刺激することで気管支平滑筋を弛緩させ、気管支を拡張して呼吸を楽にする働きがあります。そしてクロルフェニラミンマレイン酸塩は、抗ヒスタミン作用により気道の炎症や刺激を抑える成分です。

つまり3つの異なる作用で咳を抑えるということですね。

フスコデ配合錠の場合、1錠中にジヒドロコデインリン酸塩8mg、dl-メチルエフェドリン塩酸塩17mg、クロルフェニラミンマレイン酸塩2.5mgが含まれています。シロップ剤では10mL中にそれぞれ30mg、75mg、12mgと濃度が調整されており、嚥下困難な患者や小児(12歳以上)にも対応できる剤形です。

配合剤の適応疾患は広範囲にわたります。急性気管支炎、慢性気管支炎、感冒・上気道炎、肺炎、肺結核に伴う咳嗽が保険適応となっています。これらの疾患に共通するのは、炎症や分泌物により気道が刺激され、持続的な咳が生じている状態です。配合剤は単に咳を止めるだけでなく、気管支拡張により喀痰の排出を促し、抗ヒスタミン作用でアレルギー性の刺激も軽減するという多面的なアプローチが可能になります。

フスコデ配合錠の詳細な添付文書情報(日経メディカル処方薬事典)

一方で、配合剤にはない作用を持つ単独の去痰薬も存在します。カルボシステイン(ムコダイン)は気道粘液の性状を正常化し、シアル酸/フコース比を調整することで痰の粘度を下げます。アンブロキソール(ムコソルバン)は気道粘液の分泌を促進し、線毛運動を活発化させて痰の排出を助けます。ブロムヘキシン(ビソルボン)はアンブロキソールの前駆体で、体内で代謝されて同様の作用を発揮します。

これらの単独去痰薬と配合剤を併用する場合もあります。痰が非常に粘稠で排出困難な場合、配合剤の鎮咳・気管支拡張作用に加えて、カルボシステインやアンブロキソールの粘液調整作用を組み合わせることで、より効果的な治療が可能になるためです。

去痰配合剤のコデイン成分と濫用リスク

去痰配合剤に含まれるジヒドロコデインは、厚生労働省が指定する「濫用等のおそれのある医薬品」に該当します。2023年4月の告示改正により、それまでは鎮咳去痰薬に限定されていた規制が、コデイン・ジヒドロコデインを含む総合感冒薬にも拡大されました。

規制が拡大された背景には深刻な問題があります。コデイン製剤のオーバードーズは市販薬の薬物乱用の約7割を占めるというデータが存在します。ジヒドロコデインを高用量に使用すると多幸感が得られるため、この効果を求めて大量服用する事例が報告されています。さらに大量服用すると、めまい、傾眠、悪心、便秘、呼吸抑制、痙攣発作などの急性中毒症状を引き起こし、場合によっては死に至る可能性もあります。

死に至る可能性があるということです。

長期間の使用により薬物依存が形成されることも重要なリスクです。コデインは従来「弱オピオイド」に分類され、比較的安全と考えられていましたが、長期間大量服用した際には精神依存や身体依存を形成します。離脱時には「自律神経症状の嵐」と表現される発汗、流涙、瞳孔散大、下痢、嘔吐などの身体症状が出現し、薬物に対する強い欲求や不安焦燥感などの精神症状も生じます。

医療従事者として注意すべきは、12歳以上の患者に適正に処方していても依存リスクが存在することです。処方期間が長期化している患者、頻繁に処方を求める患者、指示された用量以上を服用している可能性がある患者には、特に注意深い観察が必要になります。

依存の兆候を見逃さないことが重要です。

濫用防止医薬品の指定に関する厚生労働省通知(PDF)

ドラッグストアや薬局での販売時には、令和5年4月以降、より厳格な対応が求められています。購入者の年齢確認、購入理由の確認、適正使用の指導、販売記録の作成などが義務付けられており、同一人物への短期間での繰り返し販売は避けるべきとされています。医療機関においても、処方時には必要性を慎重に判断し、できるだけ短期間の処方にとどめ、代替薬の検討も行うことが推奨されます。

コデイン製剤の代替として使用できる鎮咳薬には、デキストロメトルファン(メジコン)があります。これは非麻薬性の中枢性鎮咳薬で、依存性のリスクが低いとされています。ただし、デキストロメトルファンにも大量服用による乱用事例が報告されているため、完全に安全というわけではありません。患者背景を考慮した上で、最も適切な薬剤を選択する必要があります。

去痰配合剤の小児への使用制限と理由

去痰配合剤は12歳未満の小児には絶対禁忌です。この制限は2019年7月以降、医療用医薬品およびOTC医薬品の両方に適用されています。禁忌となった最大の理由は、重篤な呼吸抑制のリスクです。

米国FDAは2017年4月に、12歳未満の小児でコデイン類を使用した際に死亡を含む重篤な呼吸抑制が報告されたことを公表しました。特に問題となったのは、扁桃摘出術やアデノイド切除術後に鎮痛目的でコデインを使用した小児での死亡例です。これらの症例では、手術後の上気道狭窄や睡眠時無呼吸が背景にあり、コデインによる呼吸抑制が重なって致命的な結果を招いたと考えられています。

致命的な結果につながったということです。

日本でもこの海外情報を踏まえて検討が行われ、12歳未満の小児では呼吸抑制の感受性が高いことが確認されました。厚生労働省は段階的な規制強化を実施し、2018年度末までは経過措置期間として使用を避けるよう注意喚起を行い、2019年度からは全コデイン類含有製剤を対象に12歳未満への投与を禁忌としました。

さらに12歳から18歳未満の患者についても注意が必要です。特に肥満、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、重篤な肺疾患を有する18歳未満の患者には投与しないこととされています。これらの状態では呼吸機能が低下しており、コデインによる呼吸抑制のリスクが増加するためです。

では12歳未満の小児が咳症状を呈した場合、どのような代替治療が考えられるでしょうか。

非麻薬性鎮咳薬であるデキストロメトルファン(メジコン)が第一選択となります。メジコンは1歳以上の小児に使用可能で、用量調整により幅広い年齢層に対応できます。ただし、メジコンも1~12歳での使用で副作用が多いという報告があるため、必要最小限の使用にとどめるべきです。

去痰薬の単独使用も有効な選択肢です。カルボシステインやアンブロキソールは小児にも使用可能で、痰の性状を改善して排出を促すことで、結果的に咳症状を軽減できます。特に湿性咳嗽の場合は、無理に咳を止めるよりも去痰薬で痰の排出を助ける方が理にかなっています。

漢方薬の使用も検討できます。麦門冬湯は乾いた咳に、五虎湯は喘鳴を伴う咳に効果があるとされ、小児にも比較的安全に使用できます。ただし漢方薬にもエビデンスの限界があり、効果には個人差があることを理解しておく必要があります。

去痰配合剤の高齢者への投与と注意点

高齢者に去痰配合剤を投与する際には、通常成人よりも慎重な対応が求められます。添付文書には「一般に高齢者では生理機能が低下しているので用量に注意すること」と明記されており、減量や投与間隔の延長を検討する必要があります。

高齢者で特に問題となるのは、肝機能・腎機能の低下です。ジヒドロコデインは主として肝代謝酵素UGT2B7、UGT2B4および一部CYP3A4、CYP2D6で代謝されるため、肝機能が低下している高齢者では薬物の血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなります。腎機能低下により薬物の排泄が遅延することも、蓄積リスクを高めます。

副作用が出やすくなるということです。

高齢者で頻繁に見られる副作用として、便秘が挙げられます。コデイン類は消化管の蠕動運動を抑制するため、もともと便秘傾向にある高齢者では症状が悪化しやすくなります。長期投与により腸閉塞を引き起こした報告もあり、排便状況の確認は必須です。

眠気やふらつきも重要な副作用です。抗ヒスタミン成分であるクロルフェニラミンは中枢神経抑制作用があり、高齢者では転倒のリスクが高まります。特に夜間のトイレに行く際の転倒事故が多く、骨折から寝たきりになるケースもあります。服薬後は無理に動かず、必要に応じて介助を求めるよう指導することが大切です。

前立腺肥大症や緑内障がある高齢者には使用できない場合があります。クロルフェニラミンの抗コリン作用により、前立腺肥大症では尿閉を、閉塞隅角緑内障では眼圧上昇を引き起こす可能性があります。これらの疾患の既往がある患者には、処方前に確認が必要です。

尿閉や眼圧上昇のリスクがあるということですね。

高齢者における抗コリン薬負荷の総合評価も重要です。日本版抗コリン薬リスクスケールによれば、複数の抗コリン作用を持つ薬剤を併用している場合、認知機能低下や転倒、せん妄などのリスクが累積的に増加します。クロルフェニラミンを含む配合剤を処方する際は、他に服用している薬剤の抗コリン作用も確認し、総合的なリスク評価を行うべきです。

日本老年薬学会による日本版抗コリン薬リスクスケール(PDF)

高齢者への処方時には、開始用量を通常成人の半量程度に減量することを検討します。例えばフスコデ配合錠であれば、通常成人では1回1錠を1日3回のところを、1回0.5錠から開始し、効果と副作用を観察しながら慎重に増量するアプローチが推奨されます。投与期間もできるだけ短期間にとどめ、長期投与が必要な場合は定期的に継続の必要性を再評価することが重要です。

去痰配合剤の相互作用と併用禁忌薬

去痰配合剤には併用禁忌および併用注意の薬剤が複数存在します。医療従事者は処方前に必ず患者の服薬歴を確認し、危険な相互作用を回避する必要があります。

まず併用禁忌となるのは、MAO阻害剤(セレギリン、ラサギリン、サフィナミドなど)です。これらの薬剤と配合剤に含まれるデキストロメトルファンやメチルエフェドリンを併用すると、セロトニン症候群を引き起こす可能性があります。セロトニン症候群は、興奮、錯乱、発汗、振戦、高熱、筋硬直などを呈する重篤な副作用で、死に至ることもあります。MAO阻害剤は主にパーキンソン病の治療に使用されるため、パーキンソン病患者には特に注意が必要です。

死に至ることもあるということです。

併用注意の薬剤として、中枢神経抑制薬があります。ベンゾジアゼピン系睡眠薬・抗不安薬、バルビツール酸系催眠薬、フェノチアジン系抗精神病薬などとの併用により、相加的に中枢神経抑制作用が増強され、過度の鎮静、呼吸抑制、昏睡などが生じる可能性があります。特に高齢者や呼吸機能が低下している患者では、わずかな呼吸抑制でも重大な結果につながるため、併用は可能な限り避けるべきです。

アルコールとの併用も避けなければなりません。アルコールは中枢神経抑制作用を増強するだけでなく、肝代謝酵素を阻害してコデインの血中濃度を上昇させる可能性があります。患者には服薬期間中の飲酒を控えるよう明確に指導することが重要です。

CYP3A4阻害薬との相互作用にも注意が必要です。イトラコナゾール、クラリスロマイシン、グレープフルーツジュースなどは、ジヒドロコデインの代謝を阻害し、血中濃度を上昇させる可能性があります。逆にCYP3A4誘導薬(リファンピシン、カルバマゼピンなど)は代謝を促進し、効果を減弱させる可能性があります。

効果が減弱する可能性があるということですね。

市販薬との併用にも注意が必要です。総合感冒薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用内服薬、抗ヒスタミン剤含有の内服薬などは、有効成分が重複する可能性が高く、併用すると過剰摂取になり副作用が強く出ます。患者には「病院の薬を飲んでいる間は、市販の風邪薬や咳止めを買わないでください」と具体的に伝えることが大切です。

併用に特に注意が必要な場面として、術後管理があります。手術後に鎮痛目的でオピオイド系鎮痛薬(モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンなど)が投与されている患者に、咳症状の緩和目的で配合剤を追加処方する場合、呼吸抑制のリスクが著しく増加します。このような状況では、非麻薬性鎮咳薬への変更や、去痰薬単独での対応を検討すべきです。

併用禁忌薬に関する厚生労働省資料(PDF)

去痰配合剤と単独成分薬の使い分け基準

去痰配合剤と単独成分の鎮咳薬・去痰薬をどのように使い分けるかは、臨床判断の重要なポイントです。咳のタイプ、原因疾患、患者背景の3要素を総合的に評価して選択します。

まず咳のタイプによる使い分けです。乾性咳嗽(痰を伴わない乾いた咳)の場合、鎮咳薬単独での使用が基本となります。デキストロメトルファン(メジコン)やチペピジンなどの非麻薬性鎮咳薬が第一選択で、効果不十分な場合にコデイン類の使用を検討します。配合剤には去痰成分が含まれていないため、乾性咳嗽には必ずしも適していません。

一方、湿性咳嗽(痰を伴う咳)では、去痰薬を併用または単独で使用することが推奨されます。痰が気道に貯留している状態で強力な鎮咳薬を使用すると、痰の排出が妨げられ、気道閉塞や肺炎のリスクが高まるためです。カルボシステインやアンブロキソールなどの去痰薬で痰の性状を改善し、排出を促すことで、結果的に咳も軽減されます。

結果的に咳も軽減されるということですね。

痰が非常に粘稠で咳も激しい場合には、配合剤の使用が選択肢となります。フスコデやムコブロチンなどの配合剤は、鎮咳作用と気管支拡張作用を同時に発揮し、咳を抑えつつ痰の排出も助けるバランスの取れた効果が期待できます。ただし、配合剤だけでは去痰効果が不十分な場合、カルボシステインやアンブロキソールを追加することもあります。

原因疾患による使い分けも重要です。気管支喘息の発作時には、咳止めの使用は原則として避けるべきです。喘息では気道の炎症と収縮により咳が生じており、咳を無理に止めると痰が排出できなくなり、気管支が痰でおぼれてしまう危険があります。喘息には気管支拡張薬や吸入ステロイドなどの根本的な治療が必要です。

COPDや慢性気管支炎の患者では、長期的な去痰薬の使用がエビデンスで支持されています。カルボシステインやアンブロキソールは、気道のクリーニングを促進し、COPD増悪の予防効果があることが報告されています。これらの疾患では、急性増悪時以外は鎮咳薬よりも去痰薬を優先すべきです。

患者背景も判断材料になります。運転業務や機械操作を行う患者には、眠気の副作用が少ない薬剤を選ぶ必要があります。配合剤に含まれる抗ヒスタミン成分は眠気を引き起こすため、業務に支障をきたす可能性があります。このような患者には、抗ヒスタミン成分を含まない単独の鎮咳薬や去痰薬を選択します。

妊婦・授乳婦への使用も慎重を要します。コデイン類は胎盤を通過し、母乳中にも移行するため、妊娠中や授乳中の使用は原則として避けるべきです。どうしても咳症状の緩和が必要な場合は、デキストロメトルファンやカルボシステインなど、比較的安全性の高い薬剤を選択し、必要最小限の期間にとどめます。

エビデンスの観点からも重要な点があります。実は配合剤の有効性を示す質の高いエビデンスは限られています。多くの研究では、鎮咳薬や去痰薬の単独成分の効果は検証されていますが、配合剤として使用した場合の上乗せ効果を明確に示すデータは不足しています。このため、安易に配合剤を選択するのではなく、個々の成分の必要性を吟味し、必要最小限の薬剤で治療することが推奨されます。

必要最小限の薬剤で治療することが推奨されます。

処方期間についても考慮が必要です。急性上気道炎による咳であれば、通常1~2週間で自然軽快するため、長期処方は避けるべきです。2週間以上咳が持続する場合は、咳喘息、副鼻腔炎、胃食道逆流症、薬剤性咳嗽など他の原因を疑い、原因に応じた治療に切り替える必要があります。漫然と配合剤を長期処方することは、依存リスクを高めるだけでなく、真の原因疾患の診断を遅らせることにもつながります。

鎮咳薬の使い分けに関する薬剤師向け詳細ガイド(m3.com)



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