抗il-4/il-13受容体抗体の作用機序と適応

抗il-4/il-13受容体抗体の作用機序と適応

デュピルマブの副作用で結膜炎が出るのは、投与開始後3か月以内の患者の約10~28%です。

この記事の3ポイント要約
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IL-4Rαサブユニットを標的とする新機序

IL-4とIL-13の両方のシグナル伝達を同時に阻害し、2型炎症を上流から抑制する完全ヒト型モノクローナル抗体です

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6つの適応疾患で承認済み

アトピー性皮膚炎、気管支喘息、結節性痒疹、慢性副鼻腔炎、特発性慢性蕁麻疹、COPDに適応拡大されています

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結膜炎が最も頻度の高い副作用

投与開始から2~4回目頃に多く発現しますが、抗アレルギー点眼薬で多くが改善します

抗il-4/il-13受容体抗体デュピルマブの作用機序

デュピルマブは、IL-4受容体αサブユニット(IL-4Rα)に特異的に結合する完全ヒト型モノクローナル抗体として開発された生物学的製剤です。この薬剤の最大の特徴は、1型受容体(IL-4Rα/γc)と2型受容体(IL-4Rα/IL-13Rα1)の両方に作用することで、IL-4とIL-13という2つの重要なサイトカインのシグナル伝達を同時に阻害できる点にあります。

IL-4とIL-13は、アトピー性皮膚炎気管支喘息などの病態形成に深く関与する2型炎症(Type2炎症)の中心的なサイトカインです。IL-4は主にB細胞のIgE産生を促進し、Th2細胞の分化を誘導します。一方でIL-13は、気道平滑筋収縮の亢進、杯細胞の過形成、皮膚バリア機能の低下など、アレルギー疾患の症状に直結する反応を引き起こします。

つまり上流で阻害することが鍵です。

デュピルマブは、これら2つのサイトカインが受容体に結合する前の段階で阻害するため、2型炎症反応を上流から下流まで広範囲に抑制することができます。従来のステロイドや免疫抑制剤が免疫系全体に影響を及ぼすのに対し、デュピルマブは2型炎症に特化して作用するため、感染症リスクなどの副作用を抑えながら高い治療効果を発揮できるのです。

実際の臨床試験では、デュピルマブ投与により血清中のTARC(Th2ケモカイン)やIgE値の低下、好酸球数の減少が確認されており、2型炎症マーカーが明確に抑制されることが示されています。東京ドーム5個分に相当する広大な炎症領域でも、この薬剤は効果的に炎症を鎮静化させることができるのです。

日本小児アレルギー学会誌の抗IL-4/13受容体抗体に関する総説には、デュピルマブの作用機序と臨床応用について詳細な解説があります。

抗il-4/il-13受容体抗体の適応疾患と承認状況

デュピルマブ(商品名:デュピクセント)は、日本国内で現在6つの適応症を有する生物学的製剤となっています。2018年1月にアトピー性皮膚炎に対して初めて承認されて以来、適応疾患は着実に拡大してきました。

まず最初の承認はアトピー性皮膚炎でした。

2018年にアトピー性皮膚炎(既存治療で効果不十分な患者)、2019年には気管支喘息(既存治療で喘息症状をコントロールできない重症または難治の患者)への適応が追加されました。その後、2020年に鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、2022年に結節性痒疹、2023年に特発性の慢性蕁麻疹、そして2025年3月には慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する適応が追加承認されています。

COPDに対する適応追加は特に注目すべき進展です。デュピルマブはCOPDに適応を有する初めての生物学的製剤となりました。COPD患者の一部にはType2炎症が病態に関与しており、血中好酸球数が高値を示す患者群では、デュピルマブ投与により増悪リスクが有意に低下することが臨床試験で確認されています。

小児への適応も拡大されています。アトピー性皮膚炎では2023年9月に生後6か月以上の小児への適応が承認され、気管支喘息では2025年12月に6~11歳の小児気管支喘息患者への適応が追加されました。これにより、デュピルマブは日本で初めて生後6か月から全年齢のアトピー性皮膚炎に適応を有する生物学的製剤となったのです。

各適応疾患に共通するのは「既存治療で効果不十分な患者」という条件が付いている点です。最適使用推進ガイドラインでは、外用療法や標準治療を一定期間実施しても十分な効果が得られない患者に対して使用することが推奨されています。例えばアトピー性皮膚炎では、ステロイド外用薬などによる適切な治療を一定期間行っても十分な効果が得られず、IGAスコア3以上かつEASIスコア16以上などの基準を満たす場合に投与対象となります。

抗il-4/il-13受容体抗体の副作用プロファイル

デュピルマブの臨床試験および市販後調査で報告されている副作用のうち、最も頻度が高いのは結膜炎関連の眼症状です。臨床試験データによると、実薬治療群では5~28%の患者で結膜炎が発現しており、プラセボ群の2~10%と比較して明らかに高い頻度となっています。

結膜炎の発現時期には特徴があります。投与開始から比較的早期の2~4回目(投与開始後2~8週間)頃に多く発現する傾向があり、多くの症例では抗アレルギー作用のある点眼薬で改善します。重症化して治療中止に至るケースは少ないものの、眼科との連携が重要です。結膜炎の発症機序については、IL-13阻害により涙液中のムチン産生が低下してドライアイが生じる、あるいはアトピー性皮膚炎に伴う眼瞼炎が顕在化するなど、複数の機序が考察されています。

注射部位反応も比較的よく見られる副作用です。日本人を含む臨床試験では、注射部位反応が7.2%の患者で報告されており、発赤、腫脹、疼痛などの症状が含まれます。これらの症状は通常軽度で自然に軽快することがほとんどですが、適切な注射手技と注射部位のローテーションにより発現頻度を低減できます。

その他の副作用としては、頭痛(3.0%)、アレルギー性結膜炎(1.7%)、ヘルペス感染、好酸球増多症などが報告されています。デュピルマブは2型免疫応答を抑制するため、寄生虫感染に対する生体防御機能が低下する可能性があります。添付文書では、寄生虫感染患者に対しては本剤投与前に寄生虫感染の治療を行うこと、投与中に寄生虫感染を起こし抗寄生虫薬による治療が無効な場合には投与を一時中止することが記載されています。

寄生虫流行地域への渡航予定がある場合には特に注意が必要です。

重篤な副作用の発現頻度は低く、ステロイドや従来の免疫抑制剤と比較して安全性プロファイルは良好とされています。ただし、生物学的製剤特有の注意点として、過敏症反応やアナフィラキシーのリスクがあり、初回投与時には特に注意深い観察が必要です。

日本眼科医会のアトピー性皮膚炎と目の病気に関する資料では、デュピルマブ投与時の眼合併症について詳しく解説されています。

抗il-4/il-13受容体抗体の費用と高額療養費制度

デュピルマブの薬価は1本(300mg)あたり約53,661円(2023年9月時点)となっており、3割負担の患者では約16,098円の自己負担が発生します。アトピー性皮膚炎の標準的な投与スケジュールでは、初回に2本を投与し、その後は2週間ごとに1本を投与するため、初回月は約32,196円、2回目以降は月2回の投与で約32,196円の自己負担となります。

年間の薬剤費だけで約35万円以上という高額な治療費になりますが、高額療養費制度を活用することで自己負担額を大幅に軽減できます。この制度は月単位で適用されるため、3か月分(6本)をまとめて処方することで効果的に活用できるのです。

例えば年収370~770万円の患者(70歳未満)の場合、高額療養費制度を適用すると月額の自己負担上限は80,100円+(医療費-267,000円)×1%となります。3か月分をまとめて処方すると、薬剤費約29万円に対して自己負担は約80,100円となり、3か月で約21万円の負担軽減になります。さらに多数回該当(過去12か月で4回以上高額療養費制度を利用)すると、4回目以降は月額44,400円まで自己負担が軽減されるのです。

自己注射に切り替えることで通院頻度も減らせます。

患者が自宅で自己注射を行う在宅自己注射指導管理料を算定する場合、1回で最大3か月分(6本)の処方が可能となり、通院は3か月ごとで済むようになります。院内注射の場合は毎月支払いが発生するため高額療養費制度の上限に達しにくくなりますが、自己注射では3か月分をまとめて処方することで確実に高額療養費制度を活用できます。

小児の場合は子ども医療費助成制度が適用となるため、自治体によっては自己負担がほとんど発生しないケースもあります。ただし、自治体ごとに制度内容が異なるため、事前に確認が必要です。患者の経済的負担を軽減するためには、高額療養費制度、限度額適用認定証、各種医療費助成制度について患者に適切に情報提供することが医療従事者の重要な役割となります。

アトピー性皮膚炎治療薬の費用シミュレーションでは、デュピクセントとイブグリースの費用比較と高額療養費制度の活用法が詳しく解説されています。

抗il-4/il-13受容体抗体の中止後再発リスクと長期管理

デュピルマブ治療を中止した後の再発リスクについては、近年複数の研究報告が蓄積されてきています。中国の研究チームによる後ろ向きコホート研究では、中等度~重度のアトピー性皮膚炎患者がデュピルマブ治療を中止した後の再発率は23.4%(95%信頼区間16~30%)で、再発までの期間の中央値は29週であったと報告されています。

多施設共同研究では、全身治療再開の確率は31週で25%、94週で50%と推定されました。興味深いことに、アトピー性皮膚炎の家族歴を持つ患者や非典型的なアトピー性皮膚炎表現型の患者では、疾患悪化のリスクが有意に高いことが明らかになっています。つまり、患者の背景因子によって中止後の経過が大きく異なる可能性があるのです。

症状が良くなっても慎重な判断が求められます。

臨床試験データでは、デュピルマブ中止後に疾患のリバウンド(急激な悪化)を示す根拠は認められていませんが、半年から1年かけて徐々に悪化する症例が多く報告されています。多くの患者は症状が悪化する前に治療再開を希望されるため、中止後も定期的な経過観察が重要です。

日本の臨床現場では、デュピルマブ治療の出口戦略として複数のパターンが観察されています。①休薬後も急速な増悪傾向を認めず外用療法で維持している群、②再燃時に2~3回の投与により改善し再度休薬が可能な群、③休薬前と同様に投与間隔を4~8週ごとに延長しながら長期維持している群などです。患者ごとに最適な維持療法を個別化することが、長期的な疾患コントロールには不可欠となります。

投与間隔を延長する際には注意が必要です。デュピルマブの投与間隔を伸ばすと、抗薬物抗体(ADA)が出現する可能性があり、この抗体が誘導されると治療効果が低下する可能性があります。臨床試験では、投与16週の時点までに投与間隔を延長すると効果が減弱し、抗薬物抗体の頻度が増加することが報告されています。そのため、症状が改善しても2週間ごとの投与を守るのが基本とされ、最低2年間は継続することが推奨されています。

長期的な視点で見ると、デュピルマブ治療により皮膚バリア機能が改善し、2型炎症が長期間抑制されることで、疾患の自然経過が変わる可能性も示唆されています。ただし、小児における長期的な安全性データについては今後さらなる蓄積が必要とされており、成長期の患者では特に慎重なモニタリングが求められます。

抗il-4/il-13受容体抗体と他の生物学的製剤との使い分け

現在、アトピー性皮膚炎に対する生物学的製剤として、デュピルマブ(デュピクセント)以外に、抗IL-13抗体であるトラロキヌマブ(アドトラーザ)とレブリキズマブ(イブグリース)が使用可能となっています。これらの薬剤は作用機序が異なるため、患者の状態に応じた使い分けが重要です。

デュピルマブはIL-4とIL-13の両方を阻害するのに対し、トラロキヌマブとレブリキズマブはIL-13のみを特異的に阻害します。IL-13は、アトピー性皮膚炎の病態形成において中心的な役割を果たすことが知られており、皮膚バリア機能の低下や組織の線維化(苔癬化)にも深く関与しています。トラロキヌマブは、IL-13がIL-13受容体複合体(IL-4Rα/IL-13Rα1)とIL-13Rα2の両方に結合するのを阻害します。

レブリキズマブの特徴は投与間隔の柔軟性です。

レブリキズマブは、デュピルマブと効果発現機序が似ていますが、半減期がデュピルマブの5.1日に対して21.3日と約4倍長く、血中滞留時間が長いため1回の注射で効果が長く続きます。投与間隔を2~4週間で柔軟に調整できるのが大きな特徴で、症状に応じて個別化した投与スケジュールを組むことが可能です。ある意味でデュピルマブの後継薬剤ともいえるプロフィールを持っています。

副作用プロファイルにも違いがあります。欧州のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでは、IL-4を阻害せずIL-13のみを標的とするトラロキヌマブは、結膜炎を含む眼合併症の発現頻度がデュピルマブよりも低いとされています。実際の臨床試験でも、トラロキヌマブやレブリキズマブでは結膜炎の発現率がデュピルマブと比較して低い傾向が報告されており、眼症状が懸念される患者では抗IL-13抗体が選択肢となります。

気管支喘息に対する適応では、デュピルマブは12歳以上で承認されていますが、トラロキヌマブとレブリキズマブは喘息に関連する臨床試験で十分な効果が示されず、日本では喘息への適応を取得していません。したがって、アトピー性皮膚炎と喘息を合併している患者では、両疾患に効果が期待できるデュピルマブが第一選択となることが多いのです。

さらに、デュピルマブは結節性痒疹、慢性副鼻腔炎、特発性慢性蕁麻疹、COPDなど多彩な適応を持つため、複数のアレルギー疾患を合併している患者では、デュピルマブ1剤で複数の病態をコントロールできる利点があります。一方で、アトピー性皮膚炎単独で眼症状のリスクが高い患者や、投与スケジュールの柔軟性を重視する患者では、抗IL-13抗体製剤が適している場合もあります。

医療従事者は、各薬剤の特性を理解した上で、患者の病態、合併症、ライフスタイル、費用負担などを総合的に評価し、最適な薬剤選択を行うことが求められます。

アトピー性皮膚炎の新しい治療における生物学的製剤の比較では、デュピクセント、アドトラーザ、イブグリースの詳細な比較が掲載されています。

Please continue.