小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の一覧と特徴
エゼチミブ単独療法でも約18%のLDL低下を得られますが、スタチンとの併用では逆に効果が弱まることがあります。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の単剤一覧
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬として現在臨床で使用されている有効成分は、エゼチミブのみとなっています。これは世界初の小腸コレステロールトランスポーター(NPC1L1)阻害薬として開発され、スタチン系薬剤とはまったく異なる作用機序でコレステロールを低下させる薬剤です。
先発品のゼチーア錠10mg(オルガノン)の薬価は64.4円です。これに対して後発品は多数存在し、価格帯は19.3円から34円の範囲に分布しています。代表的なジェネリック医薬品としては、エゼチミブ錠10mg「JG」(日本ジェネリック)が19.3円、エゼチミブ錠10mg「サワイ」(沢井製薬)が19.3円、エゼチミブ錠10mg「DSEP」(第一三共エスファ)が30.7円などがあり、先発品と比較して約30~70%のコスト削減が可能です。先発品と後発品の薬価差は年間で約1万円~1万5000円程度になるため、長期服用が必要な脂質異常症治療においては経済的負担の軽減につながります。
OD錠(口腔内崩壊錠)も複数のメーカーから発売されており、嚥下機能が低下した高齢患者や水なしで服用したい患者に対応できる剤形が用意されています。エゼチミブOD錠10mg「トーワ」などが該当します。
効能・効果は高コレステロール血症、家族性高コレステロール血症、ホモ接合体性シトステロール血症の3つです。通常成人にはエゼチミブとして1回10mgを1日1回食後に経口投与します。添付文書上は食後投与となっていますが、実臨床では食前投与を指示する医師もいます。これは食事からのコレステロール吸収を効果的に抑えるためです。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の配合剤一覧
エゼチミブはスタチン系薬剤との相性が良いため、配合剤が積極的に開発されてきました。現在日本で使用可能なスタチン・エゼチミブ配合薬は3種類あります。それぞれ異なるスタチンと組み合わされており、患者の病態や既往歴に応じた選択が可能です。
アトーゼット配合錠(オルガノン)はエゼチミブ10mgとアトルバスタチンの配合剤で、LD錠(アトルバスタチン10mg)とHD錠(アトルバスタチン20mg)の2規格があります。アトルバスタチンはストロングスタチンに分類され、LDLコレステロールの強力な低下作用を持つため、ハイリスク患者の二次予防に適しています。
ロスーゼット配合錠(オルガノン)はエゼチミブ10mgとロスバスタチンの配合剤です。LD錠はロスバスタチン2.5mg含有で薬価69.1円、HD錠はロスバスタチン5mg含有で薬価67.8円となっています。ロスバスタチンもストロングスタチンに分類され、特に日本人においては低用量でも十分な効果が得られることが知られています。
リバゼブ配合錠(興和)は2022年に発売された最も新しい配合剤で、エゼチミブ10mgとピタバスタチンを組み合わせた製品です。LD錠はピタバスタチン1mg含有、HD錠はピタバスタチン2mg含有です。ピタバスタチンは国産のスタチンで、腎排泄型であるため腎機能障害患者でも用量調整が不要という利点があります。
これらの配合剤を使用する場合の原則として、まず各成分の単剤での投与を行い、効果不十分な場合に配合剤への切り替えを検討することが推奨されています。つまり、いきなり配合剤から開始するのではなく、スタチン単独またはエゼチミブ単独で治療を開始し、目標値に到達しない場合に配合剤を選択するという段階的アプローチが基本です。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の作用機序とNPC1L1阻害
エゼチミブの作用機序は、小腸上部の刷子縁膜に存在するコレステロールトランスポーターNPC1L1(Niemann-Pick C1-Like 1)を選択的に阻害することにあります。NPC1L1は食事性および胆汁性コレステロールを小腸壁細胞内に取り込む際に中心的な役割を果たすタンパク質で、この輸送体が機能しないとコレステロールは腸管から吸収されずに便中に排泄されます。
エゼチミブおよびその活性代謝物であるエゼチミブグルクロン酸抱合体は、小腸壁細胞に存在するNPC1L1に直接結合し、そのコレステロール輸送機能を阻害します。その結果として小腸壁細胞での食事性および胆汁性コレステロールの吸収が選択的に抑制され、肝臓へのコレステロール供給が減少します。肝臓でのコレステロール含量が低下すると、肝細胞表面のLDL受容体が増加し、血液中からLDLコレステロールを積極的に取り込むようになります。
興味深いのは、NPC1L1がコレステロールに対して高い選択性を持つことです。つまりトリグリセリド(中性脂肪)や他の脂質の吸収には影響を与えず、コレステロールの吸収のみを阻害します。動物実験では小腸でのコレステロール吸収が約70%抑制されることが確認されています。
スタチン系薬剤が肝臓でのコレステロール合成を抑制するのに対し、エゼチミブは腸管からのコレステロール吸収を抑制するという、まったく異なる作用点を持ちます。体内で作られるコレステロールを減らすスタチンと、体の外から入ってくるコレステロールを減らすエゼチミブという理解が臨床現場では分かりやすいでしょう。この作用機序の違いが、両者を併用することで相加的な効果が得られる理由です。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の効果とLDL低下率
エゼチミブ単独投与による効果について、国内第Ⅲ相試験のデータでは、LDLコレステロールの低下率は平均17.2~18.6%と報告されています。具体的には、LDL-Cが180mg/dLの患者では約140~150mg/dL程度まで低下することが期待できます。総コレステロールは約12.8~17.0%低下し、トリグリセリド(中性脂肪)も約2.2~7.0%減少します。
スタチンとの併用により、さらなるLDL-C低下が得られます。エゼチミブとスタチンを併用すると、スタチン単独と比較して追加で10~20%のLDL-C低下が期待できるというデータがあります。例えばロスバスタチン5mgで効果不十分だった患者にエゼチミブ10mgを追加すると、ロスバスタチンを10mgに増量するよりも効果的な場合があり、かつ副作用リスクも低く抑えられます。
国内の実臨床データでは、エゼチミブ単独群での6か月時点でのLDL-C低下率は22±19%であったとの報告もあります。52週間の長期投与でもこの効果は維持され、エスケープ現象(薬剤の効果が徐々に減弱する現象)はほとんど認められません。これはスタチン系薬剤で時に見られる長期使用時の効果減弱が、エゼチミブでは起こりにくいことを示しています。
家族性高コレステロール血症患者に対する効果も確認されています。ヘテロ接合体性家族性高コレステロール血症患者では、スタチンにエゼチミブを追加することで平均23.0%のLDL-C低下が得られました。ホモ接合体性家族性高コレステロール血症については、HMG-CoA還元酵素阻害剤やLDLアフェレーシス等の非薬物療法の補助として使用されます。
臨床試験IMPROVE-ITでは、急性冠症候群後の患者においてシンバスタチン・エゼチミブ併用療法がシンバスタチン単独療法と比較して、心血管イベントを有意に減少させることが示されました。つまりLDL-Cを下げるだけでなく、実際の心血管イベント抑制効果も証明されています。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の副作用と安全性プロファイル
エゼチミブの副作用発現頻度は国内臨床試験で18.6%(22/118例)と報告されており、比較的良好な忍容性を示しています。最も頻度の高い副作用は消化器症状で、便秘が3.4%(4/118例)、下痢、腹痛、腹部膨満などが10~15%の患者で報告されています。これらの消化器症状のほとんどは軽度で、体が薬に慣れることで自然に改善するケースが多いのが特徴です。
肝機能への影響としては、ALT(GPT)上昇が2.5%(3/118例)で認められています。ただしエゼチミブ単独使用時の肝機能障害の発現頻度は非常に低く、重篤な肝障害の報告はまれです。スタチンと併用する場合は、併用するスタチンの注意事項も遵守する必要があり、定期的な肝機能検査(AST、ALT)の実施が推奨されます。
重大な副作用として添付文書に記載されているのは、過敏症、横紋筋融解症、肝機能障害です。ただしエゼチミブ単独での横紋筋融解症の発現頻度は極めて低く、因果関係も確立していません。スタチンで横紋筋融解症のリスクが高いとされる甲状腺機能低下症患者、腎機能障害患者、高齢者などでは、エゼチミブはスタチンよりも安全な選択肢となる可能性があります。実際、スタチン不耐症(副作用のためにスタチンを服用できない患者)に対して、エゼチミブは有効な代替治療薬として位置づけられています。
筋肉症状はエゼチミブ投与患者の約1~3%に認められ、特にスタチンとの併用時に発現頻度が上昇します。筋肉痛、脱力感、手足の力が入らない、赤褐色の尿などの症状が出現した場合は、CK(クレアチンキナーゼ)値を測定し、横紋筋融解症の可能性を検討する必要があります。CKが正常上限の10倍以上、または筋肉痛を伴うCK上昇が見られた場合は投与中止を考慮します。
長期投与試験では、52週間投与した178例での副作用発現頻度は36.0%で、主な副作用は消化器症状と肝機能検査値異常でした。重篤な副作用の発現は少なく、長期使用においても安全性プロファイルは良好と評価されています。
禁忌事項としては、エゼチミブの成分に対する過敏症の既往歴がある患者、および重篤な肝機能障害のある患者(スタチンと併用する場合)が挙げられます。妊婦または妊娠している可能性のある女性には、スタチンとの併用は禁忌であり、エゼチミブ単独でも投与しないことが望ましいとされています。
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬の臨床での使い分けと処方設計
エゼチミブの適応を考える場面はいくつかあります。第一に、スタチン単独では目標LDL-C値に到達しない場合です。動脈硬化性疾患予防ガイドラインでは、冠動脈疾患既往のある高リスク患者では、LDL-C 100mg/dL未満を目標とすることが推奨されています。スタチンを増量する代わりにエゼチミブを追加することで、副作用リスクを抑えながら目標達成が可能になります。
第二に、スタチン不耐症の患者です。筋肉痛や肝機能障害などのためにスタチンを十分量使用できない、あるいはまったく使用できない患者において、エゼチミブは有力な治療選択肢となります。横紋筋融解症のリスクが低いため、高齢者や腎機能障害患者でも比較的安全に使用できる利点があります。
第三に、家族性高コレステロール血症患者です。特にヘテロ接合体性FH患者では、スタチンとエゼチミブの併用が標準的な治療戦略となっています。ホモ接合体性FH患者では、LDLアフェレーシスなどの非薬物療法の補助として使用されます。
処方設計における注意点として、エゼチミブは1日1回10mg食後投与が基本です。しかし実臨床では、飲み会や外食の多い患者に対して食前の頓用を指示する医師もいます。これは食事のタイミングに合わせてコレステロール吸収を効果的に抑えるための工夫ですが、添付文書上の用法とは異なるため、患者への十分な説明が必要です。
配合剤を選択する際は、患者の背景疾患を考慮します。腎機能障害があればピタバスタチン配合のリバゼブが適しています。ピタバスタチンは腎排泄型のため、腎機能低下時でも用量調整が不要です。一方、強力なLDL-C低下が必要な二次予防患者では、アトルバスタチン配合のアトーゼットやロスバスタチン配合のロスーゼットが選択肢となります。
定期的なモニタリングとして、投与開始後は4~8週間ごとに脂質検査を実施し、効果を確認します。肝機能検査(AST、ALT)は投与開始後12週までは定期的に、その後も6か月ごとに実施することが推奨されます。CKは筋肉症状が出現した場合に測定しますが、無症状でもスタチン併用時は定期的な測定を考慮します。
患者教育も重要な要素です。エゼチミブは「食事から入ってくるコレステロールを抑える薬」という分かりやすい説明を行い、継続的な服薬の重要性を理解してもらいます。ただし、薬だけに頼るのではなく、食事療法や運動療法といった生活習慣の改善が基本であることを強調する必要があります。脂質異常症治療における薬物療法は、あくまで生活習慣改善を補完するものという位置づけです。
日本動脈硬化学会の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
オルガノンプロ(ゼチーア、アトーゼット、ロスーゼットの製品情報)

【医師監修】 LDLコレステロールケア LDL悪玉コレステロールケア 血中のLDLコレステロールの酸化を抑制 オリーブ由来ヒドロキシチロソール5.25mg 30粒 30日分 サラシア ギムネマ イヌリン 田七人参 機能性表示食品 GMP認定工場製造 サプリメント 新日本ヘルス