クリノフィブラート販売中止の理由と代替治療

クリノフィブラート販売中止理由と経過措置

リポクリン服用中の患者は2020年3月末までに処方変更が必要でした。

この記事の3つのポイント
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クリノフィブラート製剤の完全販売中止

2020年3月31日の経過措置期限をもって、先発品リポクリン錠200及びすべての後発品が薬価削除され、市場から完全に姿を消しました

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代替フィブラート系薬剤への切り替え

ベザフィブラート、フェノフィブラート、ペマフィブラートなどの現行フィブラート系薬剤への処方変更が実施されました

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横紋筋融解症リスクへの継続的注意

代替薬でも腎機能低下例では横紋筋融解症のリスクがあり、定期的な腎機能検査とCK値のモニタリングが必要です

クリノフィブラート販売中止の経緯と時期

クリノフィブラート製剤は2020年3月31日をもって経過措置期限を迎え、完全に販売中止となりました。先発品のリポクリン錠200(大日本住友製薬)をはじめ、クリーンファイブ(鶴原製薬)などの後発品も含めて、すべてのクリノフィブラート製剤が薬価基準から削除されています。

これは脂質異常症治療における大きな転換点でした。クリノフィブラート製剤は1日3回服用(朝、昼、夕食後に各200mg)という用法で、高トリグリセリド血症の治療に長年使用されてきた薬剤です。

経過措置期限とは、薬価基準から削除されることが決まった医薬品について、特定の期日まで使用が許可される制度です。

つまり経過措置が基本ですね。

医療現場では、経過措置期限の告示を受けて2019年頃から計画的な処方変更が進められました。特に長期服用患者が多かったため、医療機関では患者ごとに適切な代替薬の選択と丁寧な説明が求められました。在庫がなくなる前に、各施設で処方切り替えのタイミングを調整していたのです。

薬価削除の背景には、より新しいフィブラート系薬剤の登場や、1日1回服用で利便性の高い製剤の普及がありました。医療経済的な観点からも、使用頻度の低下した古い規格の整理が進められたと考えられます。

クリノフィブラートの副作用と販売中止との関連

クリノフィブラートを含むフィブラート系薬剤の重大な副作用として、横紋筋融解症が知られています。これは骨格筋が障害され、筋肉細胞の成分が血液中に流出する状態です。発症頻度は0.1%未満と報告されていますが、腎機能低下例では発症リスクが明らかに上昇します。

横紋筋融解症の初期症状として、筋肉痛、脱力感、褐色尿(ミオグロビン尿)が挙げられます。血液検査ではCK(クレアチンキナーゼ)値の著明な上昇、血中および尿中ミオグロビンの上昇が特徴的です。重症化すると急性腎不全を合併し、透析が必要になる場合もあります。

腎排泄型の薬剤だからです。

フィブラート系薬剤は主に腎臓から排泄されるため、腎機能が低下していると薬剤の血中濃度が過度に上昇し、横紋筋融解症発症リスクが高まります。クリノフィブラートの添付文書では、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の腎機能障害患者は禁忌とされていました。

スタチン系薬剤との併用も重要な注意点でした。以前はスタチンとフィブラート系薬剤の併用は「原則併用禁忌」とされていましたが、2018年10月に添付文書が改訂され、腎機能に注意しながら併用が可能となっています。ただし併用時は横紋筋融解症のリスクが単剤使用時より高まるため、定期的な腎機能検査とCK値のモニタリングが不可欠です。

販売中止の直接的な理由が副作用だけではないものの、副作用リスクを考慮した適正使用の推進と、より安全性の高い薬剤への移行が背景にあったと言えます。特に高齢化社会において腎機能低下例が増加する中で、薬剤選択の見直しが進められました。

クリノフィブラート販売中止後の代替薬選択

クリノフィブラート販売中止に伴い、患者の処方は他のフィブラート系薬剤や異なる作用機序を持つ脂質異常症治療薬へ切り替えられました。代替薬の選択には、患者の脂質プロファイル、腎機能、併用薬、服薬アドヒアランスなど複数の要因を考慮する必要があります。

現在使用可能なフィブラート系薬剤として、ベザフィブラート(商品名:ベザトールSR)、フェノフィブラート(商品名:リピディルトライコア)、ペマフィブラート(商品名:パルモディア)があります。それぞれ特徴が異なるため、患者に応じた選択が求められます。

ベザフィブラートは1日2回服用の徐放製剤で、中性脂肪を約30〜46%低下させる効果があります。ジェネリック医薬品が豊富で薬価が比較的安価という利点がありますが、腎機能低下例では血中濃度が上昇しやすいため注意が必要です。

フェノフィブラートは1日1回服用で服薬コンプライアンスに優れています。トリグリセリド低下効果はベザフィブラートよりやや強力とされます。ただし、粉砕不可の製剤が多く、嚥下困難な患者では使用しにくい場合があります。

最も新しいフィブラート系薬剤です。

ペマフィブラート(パルモディア)は2018年に発売された選択的PPARαモジュレーターで、従来のフィブラート系薬剤と異なり肝代謝型です。腎排泄への依存度が低いため、軽度から中等度の腎機能低下例でも使用しやすいという特徴があります。トリグリセリド低下効果は非常に強力で、40〜50%の低下が期待できます。ただし、血清クレアチニン値が2.5mg/dL以上の重度腎機能障害患者には禁忌です。

フィブラート系以外の選択肢として、EPA・DHA製剤(エパデールロトリガなど)もあります。中性脂肪低下率は20〜40%程度ですが、抗血小板作用や抗炎症作用もあり、心血管イベント抑制効果が報告されています。腎機能低下例でも比較的安全に使用できる点がメリットです。

代替薬への切り替え時には、脂質プロファイルの変化を確認するため、投与開始後1〜3ヶ月で血液検査を実施することが推奨されます。また、切り替え前後で患者に自覚症状の変化がないか丁寧に確認することが重要です。

日本動脈硬化学会の脂質異常症診療Q&Aでは、フィブラート系薬剤の選択基準と使い分けについて詳しい解説が掲載されています。

クリノフィブラート販売中止が医療現場に与えた影響

クリノフィブラート製剤の販売中止は、長期服用患者を抱える医療機関に少なからず影響を与えました。特に高齢者や腎機能低下例では、薬剤変更に伴う副作用リスクや効果の違いに注意が必要だったため、医師・薬剤師の業務負担が増加しました。

処方変更時の患者説明が最も重要な課題でした。長年同じ薬を服用していた患者にとって、薬剤変更は不安を伴います。「なぜ薬が変わるのか」「効果は同じなのか」「副作用は大丈夫か」といった疑問に対して、丁寧な説明と安心感の提供が求められました。

1日3回から1日1回になる可能性があります。

服薬回数の変更も影響の一つです。クリノフィブラートは1日3回服用でしたが、代替薬の多くは1日1〜2回服用です。服薬回数が減ることは一般的には服薬アドヒアランス向上につながりますが、生活リズムが変わることで逆に飲み忘れが増える患者もいます。薬剤師による服薬指導で、新しい服薬タイミングを具体的に説明することが重要でした。

薬価の変動も考慮すべき点です。クリノフィブラート(リポクリン錠200)の薬価は1錠12.60円でしたが、代替薬は製剤により異なります。ベザフィブラートSR錠200mg(後発品)は約10〜15円、フェノフィブラート錠80mg(後発品)は約20〜30円、ペマフィブラート錠0.1mg(先発品のみ)は約100円と幅があります。

患者負担を考慮した薬剤選択が必要でした。

薬剤在庫管理の面では、経過措置期限までに計画的な在庫処分が求められました。医療機関や薬局では、デッドストックを避けるため処方変更のタイミングを調整し、期限切れによる廃棄を最小限に抑える努力がなされました。

電子カルテや薬剤管理システムでは、クリノフィブラートの処方をアラート表示するなどの対応が取られました。誤って販売中止薬を処方しないよう、システム的なサポートが整備されたのです。

医療現場での経験は、今後の薬剤販売中止への対応にも活かされています。患者影響を最小限にするため、早期の情報共有と計画的な処方変更、丁寧な患者説明が重要であることが再認識されました。

クリノフィブラート販売中止から学ぶ脂質異常症治療の変遷

クリノフィブラート販売中止は、脂質異常症治療における薬物療法の進化を象徴する出来事でした。1960年代に登場したフィブラート系薬剤の第一世代から、現在の選択的PPARαモジュレーターまで、約60年の治療薬の変遷を振り返る機会となります。

フィブラート系薬剤の歴史は、クロフィブラートの登場から始まりました。クロフィブラートは1965年に日本で承認されましたが、副作用の問題から先発品は販売中止され、現在は後発品のみが継続販売されています。クリノフィブラートはその後継として開発され、より副作用が少ないとされましたが、それでも完全にリスクを排除できるわけではありませんでした。

治療方針の変化も重要です。

現代の脂質異常症治療では、LDLコレステロール管理が最優先とされ、スタチン系薬剤が第一選択薬となっています。高トリグリセリド血症に対するフィブラート系薬剤の位置づけも変化し、心血管イベント抑制効果のエビデンスがより重視されるようになりました。特に、大規模臨床試験の結果に基づいた薬剤選択が標準となっています。

2018年の添付文書改訂により、スタチンとフィブラートの併用が条件付きで可能になったことも大きな変化です。従来は「原則併用禁忌」でしたが、腎機能に注意しながら併用することで、LDLコレステロールとトリグリセリドの両方をコントロールできるようになりました。これにより治療選択肢が広がりましたが、同時に適正使用のための知識と注意深いモニタリングが求められます。

ペマフィブラートの登場は、フィブラート系薬剤の新時代を示しています。選択的PPARαモジュレーターという新しい作用機序により、従来のフィブラート系薬剤より強力なトリグリセリド低下効果と、腎機能低下例でも使いやすい薬物動態特性を併せ持ちます。2022年に発表されたPROMINENT試験では、心血管イベント抑制効果は示されませんでしたが、膵炎発症抑制効果が確認されています。

個別化医療の重要性も増しています。患者の脂質プロファイル、腎機能、肝機能、併用薬、遺伝的背景などを総合的に評価し、最適な薬剤を選択するアプローチが標準となりました。単に数値を下げるだけでなく、心血管イベントや膵炎などの合併症予防を見据えた治療戦略が求められているのです。

クリノフィブラート販売中止を通じて、医療従事者は薬剤の生涯管理(ライフサイクルマネジメント)の重要性を改めて認識しました。新薬開発だけでなく、既存薬の適正使用推進、安全性情報の蓄積、そして必要に応じた市場からの退出まで、一連のプロセスが患者の安全と医療の質向上に寄与します。

今後も脂質異常症治療薬は進化し続けるでしょう。PCSK9阻害薬やインクレチン関連薬の脂質改善効果など、新たな治療選択肢も登場しています。医療従事者は最新の知見をアップデートしながら、個々の患者に最適な治療を提供することが求められます。

厚生労働省のHMG-CoA還元酵素阻害薬とフィブラート系薬剤の併用に関する資料では、2018年の添付文書改訂の背景と根拠が詳しく解説されています。