ポリカルボフィルカルシウムの商品名と特徴
後発品の薬価が先発品より約1.8倍高くなっています。
ポリカルボフィルカルシウムの主要商品名一覧
ポリカルボフィルカルシウムを含有する医薬品には、複数の商品名が存在します。医療現場で最も広く知られているのが「ポリフル」と「コロネル」です。この2つは長年、過敏性腸症候群治療の中心的な役割を担ってきました。
ポリフルはヴィアトリス製薬(旧マイラン製薬)が販売しており、錠剤500mgと細粒83.3%の2つの剤形があります。一方、コロネルはアステラス製薬が販売していましたが、2024年1月に製造中止となりました。薬価が安価すぎて製造継続が困難になったことが背景にあります。
さらに、富士化学工業が製造し日医工が販売する「ポリカルボフィルCa細粒83.3%『日医工』」も存在します。こちらは後発医薬品に分類されますが、薬価面で特殊な状況が生じています。
すべて同一成分です。
過敏性腸症候群に対する効能効果は各製品で共通しており、下痢型・便秘型・混合型のいずれにも適応があります。腸管内の水分を調整することで、便の硬さを最適化する作用機序も同じです。
商品名の選択は、医療機関の採用状況や供給状況に左右されることが多くなっています。特に2025年以降、ポリフルの出荷調整が断続的に発生しているため、代替品としてポリカルボフィルCa「日医工」を採用する医療機関が増加しました。
KEGG医薬品データベース:ポリカルボフィルカルシウムの商品一覧
このリンクでは、ポリカルボフィルカルシウムを含む全製品の薬価や添加物、相互作用情報を比較できます。処方設計の際に、各商品の詳細な違いを確認するのに役立つ情報源となっています。
ポリカルボフィルカルシウムの薬価比較と逆転現象
ポリカルボフィルカルシウム製剤の薬価には、医療従事者が見逃せない重要な特徴があります。それは後発品のほうが先発品より高額という「薬価逆転現象」です。
錠剤500mgの場合、先発品であるポリフル錠は1錠あたり9.4円です。
しかし細粒剤では状況が異なります。
先発品のポリフル細粒83.3%は1gあたり14.9円ですが、後発品のポリカルボフィルCa細粒83.3%「日医工」は1gあたり26.7円となっています。
つまり後発品のほうが約1.8倍高いのです。
これは薬価改定の仕組みによって生じた現象です。先発品は市場実勢価格に基づいて段階的に薬価が引き下げられてきました。一方、後発品は当初設定された薬価から十分な引き下げが行われず、結果として先発品を上回る価格になってしまったのです。
この薬価逆転により、日医工の細粒は「診療報酬における加算等の算定対象とならない後発医薬品」(☆マーク品目)に指定されています。つまり、後発医薬品使用体制加算などの算定には含めることができません。
患者負担の面でも影響があります。1日1.8g(0.6g×3回)を30日間処方した場合、ポリフル細粒なら薬価ベースで約805円、日医工細粒なら約1,445円となり、約640円の差が生じます。
3割負担の患者で約192円の差です。
医療機関の経営面では薬価差益が重要です。
仕入れ価格によっては、高薬価の後発品のほうが利益率が高くなる場合もあります。しかし患者負担を考慮すると、薬価が低い製品を選択することが望ましいとされています。
令和7年度薬価改定においても、この逆転現象は継続する見込みです。処方時には剤形による薬価の違いを確認し、患者への説明や医療機関の採用品選定に活用することが推奨されます。
ポリカルボフィルカルシウムの供給状況と製造中止の背景
ポリカルボフィルカルシウム製剤は、2024年以降深刻な供給不足に直面しています。この状況は医療現場に大きな影響を与えており、処方計画の見直しを余儀なくされる施設も少なくありません。
まず2024年1月、先発品の一つであるコロネルが製造中止となりました。アステラス製薬は、薬価の低さから製造コストを回収できず、事業継続が困難になったことを理由に挙げています。コロネル錠500mgの薬価は製造中止時点で約9円台、細粒も15円前後でした。
次いで2025年6月、もう一つの主力製品であるポリフルが出荷停止に追い込まれました。ヴィアトリス製薬の発表によれば、製造委託先工場における製法変更に伴う複数の問題が原因です。具体的には、認定作業者の不足、工数の大幅増加、製造スケジュールの遅延などが重なりました。
出荷停止は完全ではありません。
2025年8月26日からポリフル錠500mg(100錠PTP)が、9月11日からポリフル細粒(0.6gおよび1.2gの105包)が限定出荷で再開されました。しかし需要に対して供給量が大幅に不足しており、医療機関への配分は厳しく制限されています。
一方、ポリカルボフィルCa細粒83.3%「日医工」も限定出荷となっています。2024年10月時点で「製造販売業者の出荷量」がA区分(通常出荷)からB区分(限定出荷)に変更され、全ての注文に応えられない状況が続いています。
この供給不足により、過敏性腸症候群患者の治療に支障が出る懸念が高まっています。日本大腸肛門病学会は、ポリカルボフィルカルシウムを「供給確保医薬品」の候補成分として推薦する事態になりました。
代替薬への切り替えが必要な場合、イリボー(ラモセトロン)やリンゼス(リナクロチド)などの新しいIBS治療薬、あるいは酸化マグネシウムなどの従来型緩下剤が選択肢となります。ただしこれらは作用機序や適応病型が異なるため、患者ごとの症状評価と丁寧な説明が求められます。
ポリカルボフィルカルシウムの禁忌事項とカルシウム含有量への配慮
ポリカルボフィルカルシウムの処方時には、禁忌事項を厳密に確認する必要があります。特に見落としやすいのが、製剤名には明記されていない「カルシウム含有」という特性です。
本剤1.0g中には、カルシウムとして約200mgが含まれています。通常の1日投与量1.5~3.0gで計算すると、300~600mgのカルシウムを摂取することになります。これは成人の1日推奨摂取量(650~800mg)の約半分に相当する量です。
このため高カルシウム血症の患者には絶対禁忌となっています。高カルシウム血症を助長し、悪心・嘔吐・意識障害などの症状を悪化させる危険があるためです。
また腎結石のある患者も禁忌です。
カルシウムの過剰摂取が結石形成を促進し、症状を悪化させるおそれがあります。
腎不全患者にも原則禁忌です。
軽度腎障害および透析中の患者は慎重投与となりますが、それ以外の腎不全患者には投与できません。腎機能が低下しているとカルシウムの排泄が障害され、体内に蓄積して組織への石灰沈着を引き起こす可能性があるためです。
高齢者への投与時にも注意が必要です。一般に高齢者は腎機能が低下していることが多く、高カルシウム血症があらわれやすくなります。添付文書では「減量するなど用量に留意すること」と記載されており、1日1.5gから開始するなどの配慮が推奨されます。
併用注意薬剤としては、活性型ビタミンD製剤(アルファカルシドール、カルシトリオールなど)があります。これらの薬剤は腸管でのカルシウム吸収を促進させるため、併用すると高カルシウム血症のリスクが高まります。
カルシウム拮抗薬やジギタリス製剤との併用時にも配慮が必要です。高カルシウム血症状態では、これらの薬剤の作用が減弱したり、ジギタリス中毒のリスクが上昇したりする可能性があります。
処方前には必ず腎機能検査値を確認しましょう。血清クレアチニン値、eGFR、血清カルシウム値などをチェックし、禁忌に該当しないことを確認してから処方することが安全な医療提供につながります。
ポリカルボフィルカルシウムの剤形選択と服薬指導のポイント
ポリカルボフィルカルシウムには錠剤と細粒の2つの剤形があり、患者の状態や嚥下能力に応じて適切に選択することが重要です。それぞれの剤形には特徴があり、服薬指導の内容も異なります。
錠剤500mgは、1錠でポリカルボフィルカルシウム500mgを含有します。標準的な用法は1日3~6錠を3回に分けて食後投与です。嚥下機能に問題のない成人患者に適しており、携帯性に優れています。
細粒83.3%は、1g中にポリカルボフィルカルシウム833mg(乾燥物として)を含有します。標準的な用法は1日1.8~3.6g(1回0.6~1.2g)を3回に分けて食後投与です。嚥下困難な高齢者や、錠剤の服用が苦手な患者に適しています。
最も重要な服薬指導は「十分な水と一緒に服用すること」です。
本剤は水分を吸収して膨潤する性質があるため、水分摂取が不十分だと食道や咽頭に停滞し、窒息や食道閉塞のリスクが生じます。実際に海外では、高齢者が錠剤を喉に詰まらせて心停止に至った死亡例が報告されています。
コップ1杯程度(約200mL)の水で服用するよう明確に指導する必要があります。特に高齢者や寝たきり患者では、服薬後もすぐに横にならず、しばらく座位または立位を保つことが推奨されます。
下痢状態の患者では、1日1.5gから開始することが望ましいとされています。過敏性腸症候群の下痢型では、初回から標準量を投与すると便が硬くなりすぎる可能性があるためです。効果を見ながら段階的に増量することで、最適な便性状を得られます。
効果発現までの時間も説明しておきましょう。本剤は即効性ではなく、効果が現れるまで数日から1週間程度かかることがあります。患者が「効かない」と自己判断で中止しないよう、継続服用の重要性を伝えることが大切です。
長期投与時の注意点として、症状改善後も漫然と継続投与しないことが添付文書に記載されています。過敏性腸症候群は症状の波があるため、定期的に症状を評価し、必要に応じて休薬や減量を検討することが適切な薬物療法につながります。
細粒剤の場合、味に関する配慮も必要です。ポリカルボフィルカルシウム細粒は無味に近いものの、患者によっては飲みにくさを感じることがあります。オブラートやゼリーに包んで服用する方法を提案すると、アドヒアランス向上に役立つ場合があります。

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