5-アミノサリチル酸メサラジンの作用機序と副作用、服薬指導のポイント

5-アミノサリチル酸とメサラジンの基本

寛解維持中の患者が自己判断で中止すると、1年以内に50%以上が再燃します。

この記事の3つのポイント
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5-ASA製剤の作用機序と種類

活性酸素消去作用とロイコトリエン抑制により腸管局所で抗炎症効果を発揮。ペンタサ・アサコール・リアルダは放出機構が異なります。

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不耐症と重篤な副作用

投与開始1〜2週間以内に約10%の患者で不耐症が発生。間質性肺炎や腎障害などの重篤な副作用は頻度不明ですが定期的なモニタリングが必要です。

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服薬指導の重要ポイント

寛解維持には継続服用が不可欠で、中止による再燃率は50%超。ゴーストピルは正常な現象であり、腎機能の定期検査が推奨されます。

5-アミノサリチル酸メサラジンの定義と特徴

5-アミノサリチル酸(5-ASA)は、メサラジンとも呼ばれる抗炎症薬で、潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患(IBD)の治療に使用される基本薬剤です。この薬剤は結核治療薬パラアミノサリチル酸(4-アミノサリチル酸)の位置異性体として開発されました。

メサラジンは5-ASAという別名でも広く知られており、医療現場では両方の名称が使用されています。化学構造上、サリチル酸骨格にアミノ基が結合した構造を持ち、この構造が抗炎症作用の基盤となっているのです。

この薬剤の最大の特徴は、腸管局所で直接作用する点にあります。全身への吸収が少ないため、全身性の副作用が比較的少なく、長期使用が可能な薬剤として位置づけられています。軽症から中等症の炎症性腸疾患に対して一選択薬となっており、寛解導入と寛解維持の両方で効果を発揮します。

日本国内では、サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)と、メサラジン単剤のペンタサアサコール、リアルダの計4種類の経口製剤が使用可能です。加えて、坐剤や注腸剤などの局所製剤も用意されており、病変部位や炎症の範囲に応じて使い分けられています。

日経メディカル:5-アミノサリチル酸製剤の詳細な薬理作用と臨床使用に関する解説

5-アミノサリチル酸メサラジンの作用機序

メサラジンの主な作用機序は、炎症性細胞から放出される活性酸素種を消去することにあります。炎症部位では好中球やマクロファージなどの炎症細胞が活性化し、大量の活性酸素を産生します。この活性酸素が腸管粘膜の組織障害を引き起こすのですが、メサラジンはこれを直接消去することで炎症の進展を抑制するのです。

活性酸素消去が第一の機序です。

加えて、メサラジンはロイコトリエンB4(LTB4)の生合成を抑制する作用も持っています。ロイコトリエンは強力な炎症メディエーターであり、好中球などの炎症性細胞を組織へ誘導する働きがあります。この生合成を阻害することで、炎症細胞の組織への浸潤を抑制し、炎症の拡大を防ぐことができます。

さらに、メサラジンはホスホリパーゼDの活性化作用や、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)ガンマの活性化など、複数の抗炎症経路に作用することが報告されています。これらの多角的な作用により、腸管の炎症を総合的に抑制する効果を発揮します。

重要な点として、メサラジンは腸管粘膜に直接接触することで効果を発揮するため、経口投与された薬剤が効率的に大腸まで到達する必要があります。このため、各製剤は薬剤放出機構に工夫が凝らされており、上部消化管での早期吸収を防ぎ、標的部位である腸管で確実に薬剤が放出されるよう設計されているのです。

メサラジン徐放錠の詳細な作用機序に関する添付文書情報(PDF)

5-アミノサリチル酸メサラジン製剤の種類と特徴比較

メサラジン製剤は、その薬剤放出機構によって大きく3つのタイプに分類されます。それぞれの特徴を理解することで、患者の病態に応じた適切な製剤選択が可能となります。

ペンタサは時間依存型の放出機構を持つ製剤です。エチルセルロースでコーティングされた微小顆粒が、消化管内の水分を吸収しながら徐々に膨潤し、小腸から大腸にかけて広い範囲でメサラジンを放出します。このため、小腸病変を伴うクローン病にも適応があるのが大きな特徴です。投与量は1日1500mg〜4000mgで、3回分割または1日1回投与が可能です。

アサコールとリアルダはpH依存性の放出機構を採用しています。アサコールは腸溶性コーティングがpH7.0以上で溶解するよう設計されており、回腸末端から大腸で薬剤を放出します。リアルダはMMX(multi matrix system)技術を用いており、pH7.0で崩壊した後、親水性マトリックスから大腸で持続的にメサラジンを放出する仕組みです。

pH依存型が基本構造です。

リアルダの最大の利点は1日1回投与が可能な点にあります。1日2400mg〜4800mgを1回で服用できるため、服薬アドヒアランスが向上しやすく、実際の臨床研究でもリアルダは最も高い服薬継続率と最も低い再燃率を示したというデータがあります。服薬回数が少ないことは、長期治療が必要な炎症性腸疾患患者にとって大きなメリットとなります。

サラゾスルファピリジン(サラゾピリン)は、5-ASAとスルファピリジンがアゾ結合した製剤です。大腸内の腸内細菌によってアゾ結合が切断され、5-ASAが遊離します。古くから使用されている製剤ですが、スルファピリジン成分による副作用(頭痛、嘔気、薬物アレルギー)が問題となることがあり、現在では他のメサラジン製剤が使用できない場合に限定的に使用されることが多くなっています。

局所製剤として坐剤と注腸剤も重要な選択肢です。直腸炎型やS状結腸に限局した病変では、経口剤に局所製剤を追加することで上乗せ効果が期待できます。ペンタサ坐剤1gは直腸部に、ペンタサ注腸1gは直腸から脾彎曲部まで到達するとされています。

福岡県薬剤師会:経口メサラジン製剤の詳細な比較と使い分けに関する情報

5-アミノサリチル酸メサラジンの用法用量と服薬上の注意点

メサラジン製剤の基本的な用法用量は、製剤の種類によって異なります。ペンタサ錠・顆粒の場合、通常成人では1日1500mgを3回に分けて食後に経口投与しますが、寛解期には1日1回の投与とすることも可能です。中等症の再燃寛解型潰瘍性大腸炎では、1日4000mgまで増量することが認められています。

アサコール錠では1日2400mgを3回に分けて食後投与するのが基本ですが、寛解期には1日1回2400mgの投与も可能です。リアルダ錠は1日1回2400mgを食後投与し、活動期には1日1回4800mgまで増量できます。ただし、4800mg投与時は8週間を目安に有効性を評価し、漫然と継続しないことが重要です。

食後服用が原則となります。

服薬指導において最も重要なポイントは、寛解期でも自己判断で服薬を中止してはいけないことです。症状が落ち着いても大腸粘膜には炎症が残っていることが多く、服薬を中止すると炎症範囲が拡大し再燃しやすくなります。実際、寛解維持中に5-ASA製剤を中止した場合、1年以内に50%以上が再燃するというデータがあり、長期寛解を維持するには継続服用が不可欠です。

ゴーストピルと呼ばれる現象について患者に説明することも重要です。ペンタサやアサコール、リアルダなどの徐放性製剤では、薬剤が溶け出した後の抜け殻が便中に排泄されることがあります。これは正常な現象であり、薬効には影響ありません。患者が「薬が溶けずに出てきた」と不安を抱くことがあるため、あらかじめ説明しておくことで服薬中断を防ぐことができます。

腎機能と肝機能の定期的なモニタリングも必要です。メサラジンは稀に間質性腎炎やネフローゼ症候群、肝機能障害を引き起こすことがあるため、投与期間中は定期的に血液検査を行い、腎機能(BUN、クレアチニン)と肝機能(AST、ALT)をチェックすることが推奨されます。特に長期投与例では、1〜2年に1回程度の定期検査が望ましいとされています。

錠剤を噛み砕いたり割ったりしてはいけない点も重要です。徐放性や腸溶性のコーティングが施されているため、これを破壊すると薬剤が適切な部位で放出されず、効果が減弱したり副作用のリスクが増加したりする可能性があります。ただし、メサラジン錠250mgなど一部の製剤は二分割が可能なものもあるため、製品ごとの添付文書を確認する必要があります。

ゼリア新薬工業:アサコール錠のインタビューフォーム(PDF)で用法用量の詳細情報

5-アミノサリチル酸メサラジンの副作用と不耐症への対応

メサラジン製剤は比較的安全性の高い薬剤ですが、約10%の患者で副作用のために服用継続が困難となる不耐症が発生します。この頻度は専門施設では15%程度とも報告されており、近年では高用量化や後発品の増加、腸内細菌叢の変化(dysbiosis)などが原因として指摘されています。

メサラジン不耐症の典型的な症状は、投与開始から1〜2週間以内に出現します。下痢の悪化、発熱、腹痛、頭痛、関節痛などがみられ、血液検査では好酸球の上昇が認められることがあります。注意すべきは、これらの症状が潰瘍性大腸炎やクローン病の悪化と非常に似ているため、鑑別が困難な点です。

投与開始直後の経過観察が鍵です。

興味深いことに、一度症状が改善した後、1〜2週間経過してから急に発熱や下痢、血便、腹痛が出現した場合は、メサラジン不耐症を強く疑う必要があります。このパターンは「最初は良くなったのに急に悪化した」という患者の訴えとして現れ、疾患の悪化とは異なる経過をたどります。

重篤な副作用としては、間質性肺疾患、心筋炎、間質性腎炎、ネフローゼ症候群再生不良性貧血汎血球減少、肝炎、膵炎などが報告されています。これらの発生頻度は「頻度不明」とされていますが、いずれも投与初期から数週間以内に発症することが多いため、投与開始後の慎重な経過観察が重要です。

特に間質性肺炎は好酸球性肺炎や肺胞炎などの形態をとり、息切れ、空咳、発熱などの呼吸器症状で発現します。腎障害では尿検査蛋白尿や血尿が認められ、血清クレアチニンの上昇がみられます。これらの副作用が疑われた場合は速やかに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。

メサラジン不耐症と診断された場合の対応として、軽症であれば脱感作療法(少量から開始して徐々に増量する方法)が試みられることがあります。また、不耐症の原因が製剤の殻(コーティング成分)にある場合、同じメサラジンでも坐剤や注腸剤、サラゾピリンは使用可能なこともあります。不耐症のために経口5-ASA製剤が使用できない場合でも、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤、JAK阻害薬などの他の治療選択肢があるため、治療継続は可能です。

薬剤性過敏症症候群も重要な副作用の一つです。初期症状として発疹と発熱がみられ、さらに肝機能障害、リンパ節腫脹、白血球増加、好酸球増多、異型リンパ球出現などを伴う遅発性の重篤な過敏症状が現れることがあります。この場合も速やかに投与を中止し、全身管理を行う必要があります。

日本医事新報社:炎症性腸疾患治療中のメサラジン不耐症の診断と対応に関する専門的解説

5-アミノサリチル酸メサラジンの妊娠・授乳時の安全性と特殊な状況での使用

メサラジン製剤は、妊娠中および授乳中の女性においても比較的安全に使用できる薬剤として位置づけられています。現在の医学的知見では、メサラジンは妊娠・授乳期に使用可能な薬剤とされており、炎症性腸疾患の活動性炎症が妊娠転帰に悪影響を与えることを考慮すると、寛解維持のために継続使用することが推奨されます。

動物実験(ラット)ではメサラジンの催奇形性は認められていませんが、妊婦への投与に関する安全性は完全には確立していないため、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すべきとされています。実際の臨床では、多くの専門医が寛解維持中の妊婦に対してメサラジン製剤の継続を推奨しており、病状が安定した状態で妊娠を迎えることが最も重要と考えられています。

妊娠中の継続が基本方針です。

授乳に関しては、メサラジンがヒト母乳中へ移行することが報告されており、国内外で乳児に下痢が起きることが報告されています。このため、添付文書上は「授乳中の婦人への投与は避けることが望ましい」とされていますが、実際には治療上の有益性と母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を個別に検討することとされています。

多くの専門施設では、授乳4時間程度あけることで影響が少なくなるとの報告もあり、実際には授乳を継続しながらメサラジン製剤を使用しているケースも少なくありません。ただし、乳児の便の状態を注意深く観察し、下痢などの症状が出現した場合は速やかに医師に相談する必要があります。

サラゾスルファピリジン内服例では、葉酸の補充が推奨されます。スルファピリジン成分が葉酸の吸収を阻害するため、妊娠を考えている女性や妊婦では葉酸サプリメントの追加投与が必要です。一方、メサラジン単剤製剤(ペンタサ、アサコール、リアルダ)では、このような葉酸補充の必要性は特に指摘されていません。

生物学的製剤との併用時の注意点も重要です。抗TNF抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブなど)は、妊娠後期に胎盤を通過して胎児に移行するため、妊娠後期での中止が議論されていますが、メサラジンについては妊娠期間を通じて継続可能とされています。妊娠を希望する炎症性腸疾患患者では、まず5-ASA製剤で寛解を維持し、安定した状態で妊娠することが最良の戦略とされています。

高齢者への投与では、腎機能の生理的低下を考慮する必要があります。高齢者では腎機能が低下していることが多いため、定期的な腎機能検査を実施し、腎障害の早期発見に努めることが重要です。用量調整が必要な場合もあり、患者の腎機能に応じた慎重な投与が求められます。

JCHO四日市羽津医療センター:薬と妊娠・授乳に関する詳細な資料(PDF)