レジパスビル・ソホスブビル配合剤とは
糖尿病治療薬を併用する患者では低血糖リスクが想定外に高まります。
レジパスビル・ソホスブビル配合剤の基本情報と作用機序
レジパスビル・ソホスブビル配合剤(商品名ハーボニー配合錠)は、2015年に承認されたC型肝炎治療薬です。本剤は2つの異なる作用機序を持つ直接作用型抗ウイルス薬の配合剤として開発されました。
つまり複合的な治療効果です。
本剤に含まれるレジパスビルは、HCV複製複合体の中でもNS5A複製複合体を阻害する薬剤です。一方のソホスブビルは、ウイルスRNA複製過程においてNS5Bポリメラーゼを阻害し、ウイルスRNA合成を直接停止させる作用を持ちます。2つの成分が異なる標的に作用することで、ウイルスの増殖を多角的に抑制する仕組みとなっています。
臨床試験では、本剤による治療でウイルス排除率が95%を超える高い有効性が示されました。
従来のインターフェロン治療と比較すると、治療期間が大幅に短縮され、副作用も少ないという特徴があります。1日1回1錠を12週間服用するだけで治療が完了するため、患者のコンプライアンス向上にも寄与しています。
これは画期的な進歩です。
本剤の薬価は1錠55,491.7円(2025年2月時点)と高額ですが、肝炎治療特別促進事業による医療費助成制度を利用すれば、患者の自己負担は月額最大2万円に抑えられます。発売当初は1錠8万円を超える価格設定でしたが、その後の薬価改定により価格が引き下げられています。12週間の治療で必要な総薬剤費は約466万円ですが、助成制度の活用により治療へのアクセスが改善されました。
医療用医薬品データベース(KEGG)- ハーボニー配合錠の詳細な添付文書情報が確認できます
レジパスビル・ソホスブビル配合剤の適応と投与方法
本剤の適応は、セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎、およびC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善です。投与前にはHCV RNAが陽性であることを確認する必要があります。
これが治療開始の条件です。
通常成人には1日1回1錠を12週間経口投与します。本剤はいつ服用してもよい薬剤ですが、朝食後または夕食後のいずれかに決めて服用することが推奨されています。服用時間を固定することで、飲み忘れのリスクを減らし、治療効果を最大化することができます。
新薬は通常14日分を限度とする投薬期間の制限がありますが、本剤はソホスブビル単剤と同様に例外措置として28日分の処方が認められています。ボトル包装が28錠入りのみの製品設計であることから、発売当初より28日処方が可能となっています。ただし、処方日数の柔軟性が高い反面、薬剤の安定性や高額な薬価を考慮して、適切な処方日数を判断する必要があります。
28日分処方が可能です。
本剤の使用に際しては、肝予備能や臨床症状等により非代償性肝硬変でないことを確認することが重要です。非代償性肝硬変の患者には、別の治療選択肢を検討する必要があります。また、B型肝炎ウイルス感染の有無も投与前に確認し、既往感染者ではHBV DNA量等のモニタリングを行う必要があります。C型肝炎直接型抗ウイルス薬投与後にB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されているためです。
ジェノタイプ1型のC型慢性肝炎患者を対象とした国内第III相臨床試験では、本剤単独12週投与により良好な安全性と忍容性が示されました。治療歴の有無、代償性肝硬変の有無にかかわらず、高い有効性が確認されています。
レジパスビル・ソホスブビル配合剤の禁忌と慎重投与
本剤には重要な禁忌事項がいくつかあります。まず、本剤の成分に対して過敏症の既往歴がある患者には投与できません。
禁忌項目を確認しましょう。
最も重要な禁忌は、重度の腎機能障害(eGFR 30mL/分/1.73m²未満)または透析を必要とする腎不全の患者です。ソホスブビルの主要代謝物であるGS-331007は腎臓から排泄されるため、重度の腎機能障害患者では血中濃度が著しく上昇する可能性があります。血液透析により4時間で投与量の約18%が除去されますが、腎機能正常健康被験者と比較してソホスブビルのAUCが約20倍に増加することが報告されています。
処方前の腎機能評価が必須です。
薬剤との併用に関する禁忌も存在します。カルバマゼピン、フェニトイン、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)含有食品は、強力なP糖蛋白誘導作用により本剤の血漿中濃度を低下させ、効果を減弱させるため併用禁忌となっています。これらの薬剤を服用中の患者には、本剤を投与できません。
アミオダロンとの併用には特別な注意が必要です。併用により徐脈等の重篤な不整脈が発現するおそれがあり、海外の市販後において死亡例も報告されています。やむを得ず併用する場合は、併用投与開始から少なくとも3日間は入院下で心電図モニタリングを実施し、退院後も少なくとも2週間は患者または家族が心拍数を連日確認する必要があります。
厳重な監視が求められます。
B型肝炎ウイルス感染の患者または既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体またはHBs抗体陽性)では、本剤投与によりB型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。投与に先立ってB型肝炎ウイルス感染の有無を確認し、投与中はHBV DNA量等のB型肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うことが重要です。
高齢者に対しては、患者の状態を観察しながら慎重に投与する必要があります。一般に生理機能が低下しており、既往歴や合併症を伴っていることが多いためです。また、妊婦または妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与します。
レジパスビル・ソホスブビル配合剤との相互作用と併用注意薬
本剤は多くの薬剤と相互作用を示すため、併用薬の確認が極めて重要です。特に胃酸関連薬との相互作用は臨床現場で頻繁に問題となります。
胃薬の併用に注意が必要です。
プロトンポンプ阻害剤(PPI)との併用では、レジパスビルの血漿中濃度が低下し効果が減弱するおそれがあります。レジパスビルの溶解性は胃内pHの上昇により低下するためです。本剤と併用する場合は、PPIを空腹時に本剤と同時投与することが求められます。
本剤投与前にPPIを投与してはいけません。
オメプラゾール20mgを本剤投与4時間前に投与した場合、レジパスビルのAUCが96%、Cmaxが92%低下したという報告があります。
H2受容体拮抗剤との併用も注意が必要です。ファモチジン等のH2受容体拮抗剤を併用する場合は、本剤と同時に投与するか、または本剤投与と12時間の間隔をあけて投与する必要があります。制酸剤(水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等)も同様にレジパスビルの血漿中濃度を低下させるため、併用時は投与タイミングに注意します。
同時服用または間隔が基本です。
ジゴキシンとの併用では、レジパスビルの腸管でのP糖蛋白阻害作用によりジゴキシンのバイオアベイラビリティが増加します。併用する場合はジゴキシンの血中濃度モニタリングを行うなど慎重に投与する必要があります。
テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩を含有する製剤との併用により、テノホビルの血漿中濃度が上昇します。作用機序は不明ですが、テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩が基質となるP糖蛋白およびBCRPに対するレジパスビルの阻害作用が関与すると考えられています。
ロスバスタチンとの併用では、レジパスビルのBCRP阻害作用によりロスバスタチンのバイオアベイラビリティが増加し、横紋筋融解症を含むミオパチーの発現リスクが高くなるおそれがあります。スタチン系薬剤を併用する患者では、筋肉痛などの症状に注意を払う必要があります。
リファブチンやフェノバルビタールは、P糖蛋白の誘導作用によりレジパスビルおよびソホスブビルの消化管における吸収を低下させる可能性があるため、併用注意となっています。これらの薬剤を併用する場合は、本剤の効果が減弱するおそれがあることを念頭に置く必要があります。
日経メディカル薬剤データベース – ハーボニー配合錠の相互作用と副作用の詳細情報
レジパスビル・ソホスブビル配合剤の副作用管理と患者モニタリング
本剤の副作用発生率は約22%と報告されており、比較的良好な忍容性を示しています。主な副作用は軽度から中等度のものが中心です。
副作用は管理可能なレベルです。
頻度5%未満の副作用として、鼻咽頭炎、貧血、頭痛、悪心、便秘、口内炎、腹部不快感、皮膚そう痒症、発疹、倦怠感が報告されています。これらの症状が出現した場合、多くは対症療法で管理可能ですが、症状の程度や患者の状態に応じて適切な処置を行う必要があります。頭痛は約5%の患者で発現し、悪心や便秘は約3%程度の頻度で見られます。
重大な副作用として最も注意すべきは高血圧です。収縮期血圧180mmHg以上または拡張期血圧110mmHg以上に至った例も報告されているため、投与中は血圧の推移等に十分注意する必要があります。定期的な血圧測定を行い、異常が認められた場合には速やかに対処します。
血圧モニタリングが重要です。
脳血管障害も重大な副作用として挙げられています。脳梗塞、脳出血等の脳血管障害があらわれることがあるため、神経学的症状の出現に注意を払う必要があります。めまい、頭痛、視覚障害、言語障害、運動麻痺などの症状が見られた場合は、直ちに医師に報告するよう患者指導を行います。
頻度不明の副作用として、徐脈、房室ブロック、心房細動、血管性浮腫、疲労が報告されています。特に徐脈等の不整脈は、アミオダロン併用時に発現リスクが高まります。不整脈の徴候(失神寸前の状態、浮動性めまい、ふらつき、極度の疲労感、息切れ、胸痛など)が認められた場合には、速やかに医療機関を受診するよう指導します。
C型肝炎直接型抗ウイルス薬投与開始後、ワルファリンやタクロリムスの増量、低血糖によりインスリン等の糖尿病治療薬の減量が必要となった症例が報告されています。本剤による抗ウイルス治療に伴い、肝機能が改善することで肝臓での薬物代謝が変化し、併用薬の用量調節が必要になる可能性があるためです。
治療域の狭い薬剤に注意です。
ワルファリン、タクロリムス等の肝臓で代謝される治療域の狭い薬剤や糖尿病治療薬を使用している患者に本剤を開始する場合には、原則として処方医に連絡するとともに、PT-INRや血中薬物濃度、血糖値のモニタリングを頻回に行うなど患者の状態を十分に観察することが推奨されています。特に糖尿病患者では、C型肝炎ウイルスの排除により肝機能が改善すると、インスリン抵抗性が改善して血糖値が低下する可能性があります。低血糖症状(冷汗、動悸、手指の震え、意識障害など)の出現に注意し、必要に応じて糖尿病治療薬の減量を検討します。
服薬指導では、PTP包装の薬剤はPTPシートから取り出して服用するよう指導することも重要です。PTPシートの誤飲により、硬い鋭角部が食道粘膜へ刺入し、穿孔をおこして縦隔洞炎等の重篤な合併症を併発する可能性があります。