耐性乳酸菌1.8と抗生物質併用
ニューキノロン系抗菌薬に耐性乳酸菌を処方すると保険査定される
耐性乳酸菌1.8%製剤の規格と特徴
耐性乳酸菌1.8%製剤、代表的なものとしてラクスパン散1.8%は、1g中に18mgの耐性乳酸菌を含有する医療用医薬品です。この規格は他の耐性乳酸菌製剤と比較すると濃度が高い設定になっています。
つまり高濃度設定ですね。
通常の投与量は1日3gを3回に分割して経口投与します。これにより1日あたり54mgの耐性乳酸菌を摂取することになり、抗生物質や化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善を目的としています。耐性乳酸菌は抗菌剤存在下においても生育し、乳酸などを産生することで腸内環境を整える働きがあります。
ラクスパン散1.8%は2022年にキッセイ薬品工業が諸般の事情により製造販売中止を決定しました。経過措置期間を経て現在は販売終了となっていますが、同等の効果を持つ代替薬として、レベニン散やビオフェルミンR散などの耐性乳酸菌製剤が引き続き使用されています。これらの代替薬は散剤だけでなく錠剤の形態もあり、患者の服薬状況に応じて選択できます。
KEGG医薬品データベース(レベニンの薬物動態や投与後の糞便中菌数データなど詳細情報)
耐性乳酸菌製剤は投与後2日目から糞便中に認められ、3日目に最大となります。その後7日目にはほとんど認められなくなるため、抗生物質治療中は継続的な投与が必要です。腸内での定着期間が短いことを考慮すると、治療終了後も数日間は投与を続けることで、腸内環境の早期回復が期待できます。
規格が高濃度なのは利点です。
製剤の選択時には、患者の年齢や症状、アレルギーの有無などを総合的に判断する必要があります。特に小児の場合は体重換算で投与量を調整し、1日量として体重10kgあたり0.72g程度を目安とすることが一般的です。成人用量の3gは体重約40kg以上を想定した設定となっています。
耐性乳酸菌とニューキノロン系抗菌薬の保険適応問題
耐性乳酸菌製剤は多くの抗生物質に対して耐性を持つように設計されていますが、すべての抗菌薬との併用が保険適応となるわけではありません。特にレボフロキサシン(クラビット)などのニューキノロン系抗菌薬との併用は、添付文書上の適応に含まれていないため、保険査定の対象となるリスクがあります。
どういうことでしょうか?
ビオフェルミンR散やレベニン散などの耐性乳酸菌製剤の添付文書を確認すると、適応症として「抗生物質・化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善」と記載されています。しかしながら、この「抗生物質」にはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系、テトラサイクリン系などが含まれますが、ニューキノロン系は明記されていません。これは開発当時の耐性試験でニューキノロン系への耐性が確認されていなかったためです。
実際の臨床現場では、ニューキノロン系抗菌薬と耐性乳酸菌製剤を併用処方した場合、保険審査で査定される事例が報告されています。審査機関は添付文書の適応症を厳格に解釈するため、記載のない抗菌薬との併用は認められないという判断がなされることがあります。これは医療機関にとって経済的な損失につながります。
m3.com薬剤師コラム(抗菌薬と整腸薬併用時の保険適用詳細と菌種別の使い分け解説)
ニューキノロン系との併用が必要な場合、代替策としてミヤBM錠(酪酸菌製剤)やビオスリー配合散などの生菌製剤への変更が推奨されます。これらの製剤は抗菌薬耐性の有無にかかわらず整腸作用を示すことが報告されており、ニューキノロン系との併用でも保険査定のリスクが低くなります。酪酸菌は芽胞を形成するため、抗菌薬の影響を受けにくいという特性を持っています。
査定回避には酪酸菌です。
一方で、研究レベルではニューキノロン系抗菌薬存在下でも耐性乳酸菌が一定の生存率を示すというデータも存在します。臨床効果としては、耐性の有無よりも腸管への接着能や菌数の方が重要という指摘もあります。しかしながら、現行の保険制度では添付文書の記載が判断基準となるため、処方時には十分な注意が必要です。
処方設計の段階で、使用する抗菌薬の系統を確認し、適切な整腸剤を選択することが医療従事者に求められます。電子カルテのアラート機能を活用し、不適切な組み合わせを事前に防ぐシステム整備も有効です。疑義照会の際には、査定リスクを医師に説明し、代替薬への変更を提案することが薬剤師の重要な役割となります。
耐性乳酸菌製剤と牛乳アレルギー患者への禁忌
耐性乳酸菌製剤の中には、製造工程で培地に脱脂粉乳を使用しているものがあり、牛乳アレルギー患者には禁忌となるケースがあります。かつて販売されていたエンテロノン-R散や耐性乳酸菌散10%「トーワ」などがこれに該当し、添付文書にも明確に禁忌として記載されていました。
厳しいところですね。
牛乳アレルギーは、牛乳中のタンパク質(主にカゼインやβ-ラクトグロブリン)に対するアレルギー反応です。脱脂粉乳にもこれらのアレルゲンが含まれるため、培地に使用された場合、最終製品中に微量ながら残留する可能性があります。アナフィラキシーなどの重篤なアレルギー反応を引き起こすリスクがあるため、問診時に必ず牛乳アレルギーの有無を確認する必要があります。
一方、ビオフェルミンR散・錠、レベニン散・錠、ラックビーR散などは、製造工程で脱脂粉乳を使用していないため、牛乳アレルギー患者にも使用可能です。これらの製剤は牛乳成分を含まない培地で培養されており、添付文書上も牛乳アレルギーに関する禁忌記載がありません。同じ耐性乳酸菌製剤でも、製造方法によって使用可否が異なる点に注意が必要です。
脱脂粉乳不使用品を選びます。
2022年には牛乳アレルギー禁忌の耐性乳酸菌製剤が相次いで販売中止となりました。エンテロノン-R散は2023年3月、耐性乳酸菌散10%「トーワ」は2024年3月で経過措置期間が終了しています。これは原薬入手困難などの理由によるものですが、結果として牛乳アレルギー患者への処方リスクが減少したとも言えます。
日経メディカル(牛乳アレルギー禁忌整腸薬の販売中止経緯と代替薬選択の実務解説)
現在、医療機関で処方される耐性乳酸菌製剤のほとんどは牛乳アレルギーに対応可能な製品となっています。しかしながら、後発品や一部の古い在庫が残っている可能性もあるため、処方箋を受けた際には製品名を確認し、必要に応じて添付文書やインタビューフォームで培地成分を確認することが推奨されます。
牛乳アレルギー患者への服薬指導では、「乳酸菌」という名称から牛乳との関連を心配する患者もいます。乳酸菌は菌の名称であり、牛乳そのものとは直接関係がないこと、使用している製剤が脱脂粉乳を含まないことを丁寧に説明することで、患者の不安を解消できます。アレルギー歴は必ず薬歴に記録し、次回以降の処方でも継続的に確認する体制を整えることが重要です。
耐性乳酸菌1.8の投与後効果発現時期と腸内動態
耐性乳酸菌を投与した場合、腸内での動態を理解することは適切な服薬指導につながります。健常人にレベニン散を3日間経口投与した研究では、耐性乳酸菌は投与後2日目より糞便中に認められ、菌数は3日目に最大となり、投与中止後7日目ではほとんど認められなくなったことが報告されています。
2日目から効果が出ます。
この動態データから、耐性乳酸菌は腸内に定着するのではなく、通過菌として一時的に腸内環境を整える役割を果たしていることがわかります。抗生物質治療中は継続的に投与することで、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを維持し、下痢や腹痛などの副作用を軽減できます。効果が最大になるのは投与3日目頃ですが、個人差や腸内環境の状態によって変動します。
臨床現場では、抗生物質による下痢がいつ出現するか予測が難しいため、抗生物質投与開始と同時に耐性乳酸菌製剤を処方することが一般的です。予防的投与により、腸内菌叢の乱れを最小限に抑えることができます。抗生物質治療が終了しても、腸内環境の回復を促すため、さらに数日間(2~3日程度)継続投与することが推奨されます。
効果発現までの期間は、急性の抗生物質関連下痢では比較的早く(2~3日以内)症状改善が見られることが多いです。一方、慢性的な腸内環境の改善を目的とする場合は、1~2週間程度の継続投与が必要になることもあります。患者には「すぐに効果が出る場合もあれば、しばらく続けて効果が現れる場合もある」と説明し、自己判断での中断を避けるよう指導することが大切です。
継続投与が基本です。
抗生物質投与中止後の腸内細菌叢の回復には、通常2~4週間程度かかるとされています。耐性乳酸菌製剤は投与中止後7日目にはほとんど排出されるため、その後は自身の腸内細菌が回復してくる時期となります。この回復期間をサポートするため、食事からの発酵食品摂取や食物繊維の積極的な摂取を勧めることも有効です。
糞便中の菌数測定は研究目的では行われますが、日常臨床では実施されません。しかしながら、便の性状(色、硬さ、回数)の変化を観察することで、間接的に腸内環境の改善度合いを評価できます。下痢が続く場合や血便が見られる場合は、偽膜性腸炎などの重篤な合併症の可能性もあるため、速やかに医師に報告する必要があることを患者に伝えておきます。
耐性乳酸菌1.8製剤の代替選択肢と独自の使い分け視点
ラクスパン散1.8%の製造中止後、医療現場では適切な代替薬の選択が求められています。単純に他の耐性乳酸菌製剤に切り替えるだけでなく、患者の背景や併用薬、アレルギー歴などを総合的に考慮した選択が重要です。
代替薬の選択基準があります。
耐性乳酸菌製剤の中で最も使用されているのはビオフェルミンR散・錠とレベニン散・錠です。両者は同じ耐性乳酸菌(Streptococcus faecalis 129 BIO 3B-R)を含有していますが、含有量に違いがあります。ビオフェルミンR散とレベニン散は1g中に6mgの耐性乳酸菌を含むのに対し、ラクスパン散1.8%は1g中18mgと3倍の濃度でした。このため代替時には投与量の調整が必要になる場合があります。
ラックビーR散は1g中に10mgの耐性乳酸菌を含有し、ビオフェルミンRとラクスパン散の中間的な濃度となっています。菌株はビフィズス菌(Bifidobacterium longum)を使用しており、乳酸菌とは異なる菌種です。ビフィズス菌は大腸での定着性が高いとされており、特に便秘傾向のある患者への効果が期待されます。製剤選択時には、下痢型か便秘型かという腸の状態も考慮に入れることができます。
ビフィズス菌製剤も選択肢です。
ニューキノロン系抗菌薬との併用が必要な場合、前述の通り耐性乳酸菌製剤は保険査定のリスクがあります。この場合、ミヤBM錠(酪酸菌)やビオスリー配合散(乳酸菌+酪酸菌+糖化菌)が有力な代替候補となります。酪酸菌は芽胞形成により胃酸や抗菌薬に強く、腸内で酪酸を産生して大腸粘膜のエネルギー源となる特徴があります。
ファーマスタイル(整腸剤一覧と抗菌薬併用時の使い分け、各製剤の成分含有量比較表)
高齢者や嚥下困難のある患者では、散剤よりも錠剤の方が服用しやすい場合があります。ビオフェルミンR錠やレベニン錠は、散剤と同等の効果を持ちながら、携帯性や服用の簡便性に優れています。外来患者や在宅療養患者では、服薬アドヒアランス向上のために剤形選択も重要な要素となります。
小児患者への処方では、味や服用量の調整が課題となります。耐性乳酸菌製剤はほとんどが無味または微かな特異臭程度で、苦味はないため、小児でも比較的服用しやすい薬剤です。体重換算での用量設定を行い、保護者には服薬の重要性と継続の必要性を丁寧に説明することが求められます。
剤形と年齢で選択します。
独自の視点として、耐性乳酸菌製剤以外の整腸剤との併用という選択肢もあります。例えば、酪酸菌製剤と併用することで、異なるメカニズムで腸内環境を整えることができます。酪酸は大腸粘膜細胞のエネルギー源となり、バリア機能を強化する作用があるため、乳酸菌の整腸作用と相補的な効果が期待できます。ただし、多剤併用は患者負担やコストの面でデメリットもあるため、個別の状況に応じた判断が必要です。
製剤選択の際には、薬価も考慮要素となります。後発品を含めた耐性乳酸菌製剤は比較的安価ですが、長期投与では患者の経済的負担も無視できません。同等の効果が期待できる場合は、最も薬価の低い製剤を選択することも合理的な判断です。医療経済の観点からも、適切な製剤選択は医療従事者の責務と言えます。
