三剤併用療法ピロリ除菌の最新エビデンスと治療成績

三剤併用療法ピロリ除菌の実践

クラリスロマイシン耐性菌でも除菌率92%を達成できます

この記事の3ポイント要約
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ボノプラザン使用で除菌率が向上

従来のPPIでは75.9%だった一次除菌率が、P-CABであるボノプラザンの使用により92.6%まで上昇。クラリスロマイシン耐性菌に対しても約90%の除菌成功率を示します。

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クラリスロマイシン耐性率は30~40%

日本国内の耐性菌率は30%以上で全地域で15%を超えており、一次除菌失敗の主要因となっています。服薬コンプライアンス60%以下では除菌率が30%低下するため、患者指導が重要です。

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三次除菌ではシタフロキサシンが有効

二次除菌失敗例には、ニューキノロン系のシタフロキサシンを用いた三剤併用療法が70~90%の除菌率を示します。ペニシリンアレルギー患者には代替レジメンを選択可能です。

三剤併用療法ピロリ除菌の基本構成と作用機序

三剤併用療法は、胃酸分泌抑制薬1剤と抗菌薬2剤を組み合わせた治療法で、ピロリ菌除菌の標準的アプローチとして確立されています。具体的には、プロトンポンプ阻害薬(PPI)またはカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)に、アモキシシリンクラリスロマイシンを併用します。

治療期間は1日2回、7日間の服用が基本です。この短期集中型の治療スケジュールにより、患者さんの服薬負担を最小限に抑えながら高い除菌率を目指します。

胃酸分泌抑制薬の役割は、胃内pHを5以上に保つことで抗菌薬の効果を最大化することにあります。ピロリ菌に対する抗菌薬の感受性は胃内の酸性度に大きく影響されるため、十分な酸分泌抑制が除菌成功の鍵となるわけです。アモキシシリンは時間依存性の抗菌薬で、高い胃内pHを維持することで殺菌効果が持続的に発揮されます。

クラリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬で、ピロリ菌のタンパク質合成を阻害して増殖を抑制します。この薬剤も酸性環境では効果が減弱するため、胃酸抑制薬との併用が不可欠です。

つまり三剤の相乗効果が基本ということですね。

正しく服用すれば一次除菌の成功率は77.3~93.3%とされていますが、近年の耐性菌増加により実際の除菌率は変動しています。2024年版の日本ヘリコバクター学会ガイドラインでは、クラリスロマイシン耐性の確認とP-CABを含む三剤併用療法が新たに推奨されました。

日本ヘリコバクター学会「H.pylori除菌治療ガイドライン2024」では、最新の除菌レジメン選択基準が詳しく解説されています

三剤併用療法ピロリ除菌におけるクラリスロマイシン耐性の実態

クラリスロマイシン耐性は、三剤併用療法の最大の課題となっています。日本国内の耐性菌率は30~40%に達しており、2000年の7.0%から2010年には31.0%へと急激に上昇しました。小児ではさらに高く、34.7%との報告もあります。

耐性菌に感染している患者さんでは、標準的な三剤併用療法の除菌率が著明に低下します。具体的には、クラリスロマイシン感受性菌では90%以上の除菌率を示すのに対し、耐性菌では76.2%程度まで低下するのです。これは約15ポイントの差で、10人中1~2人が余計に除菌失敗することになります。

耐性菌が発生する主な原因は、過去の抗菌薬使用歴です。風邪や気管支炎などでマクロライド系抗菌薬を服用した経験がある患者さんでは、ピロリ菌がすでに耐性を獲得している可能性が高まります。

また、除菌治療中の服薬中断や飲み忘れも耐性菌発生の要因となります。不完全な除菌治療は、生き残ったピロリ菌に耐性を獲得する機会を与えてしまうため、患者さんへの服薬指導が極めて重要です。服薬コンプライアンスが60%以下になると除菌率が30%も低下するという報告があります。

耐性菌対策として、2024年版ガイドラインでは一次除菌前のクラリスロマイシン感受性検査が推奨されています。感受性検査により耐性菌と判定された場合は、クラリスロマイシンを使用しない代替レジメンへの変更を検討します。ただし、現時点では一次除菌時のクラリスロマイシン感受性検査のみが保険適用となっており、コストベネフィットを考慮した運用が求められます。

興味深いことに、ボノプラザンを用いた場合はクラリスロマイシン耐性菌に対しても高い除菌率を示します。これは強力な酸分泌抑制効果により、アモキシシリンの殺菌効果が最大限に発揮されるためと考えられています。

耐性菌でも除菌できるのは驚きですね。

三剤併用療法ピロリ除菌でのボノプラザンとPPIの選択基準

胃酸分泌抑制薬の選択は、三剤併用療法の除菌率を大きく左右する重要な判断ポイントです。現在使用可能な薬剤は、従来のプロトンポンプ阻害薬(PPI)4種類と、新しいカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)であるボノプラザンがあります。

ボノプラザンは2015年に登場した新しいクラスの酸分泌抑制薬で、PPIと比較して明確な優位性を示しています。第3相ランダム化比較試験では、ランソプラゾール使用時の75.9%に対し、ボノプラザン使用時は92.6%という高い一次除菌率を達成しました。これは約17ポイント、つまり6人に1人が追加で除菌成功する計算になります。

PPIは投与後に体内で酸の存在下で活性化される必要があり、効果発現まで時間がかかります。一方、ボノプラザンは酸による活性化を必要とせず、酸性環境下で安定なため、速やかかつ持続的に胃酸分泌を抑制できます。結果として、抗菌薬の効果が最大限に発揮される環境を早期に整えられるのです。

特筆すべきは、クラリスロマイシン耐性菌に対する除菌率の違いです。従来のPPIを用いた三剤併用療法では耐性菌の除菌率が大幅に低下しますが、ボノプラザンを用いると耐性菌に対しても約90%の除菌率を維持できます。ある研究では、クラリスロマイシン耐性株に対する除菌率が、ボノプラザン・アモキシシリンの2剤併用で92.3%、従来の3剤併用で76.2%と、2剤併用の方が有意に高い結果が示されました。

ネットワークメタアナリシスでも、ボノプラザンを用いた三剤併用療法が、諸外国で推奨されるビスマス製剤を含む4剤併用療法や逐次療法を含む他のレジメンよりも最も高い除菌効果を示すことが報告されています。標準的3剤併用療法の除菌率が75.7%なのに対し、ボノプラザン使用で90%超は大きな進歩です。

PPI間での除菌率の差は報告されていませんので、PPIを選択する場合はどの製剤でも同等と考えられます。ただし、7日間の短期投与であることから、副作用の懸念も限定的です。

医療経済的観点からは、一次除菌での成功率向上により二次除菌への移行を減らせることで、トータルの医療費削減につながる可能性があります。除菌失敗は患者さんの不安や負担増加にもつながるため、初回から高い除菌率が期待できるボノプラザンの選択が合理的です。

天神橋みやたけクリニック「ピロリ菌治療の問題点」では、クラリスロマイシン耐性率の推移と対策が詳しく解説されています

三剤併用療法ピロリ除菌の副作用マネジメントと服薬指導

三剤併用療法における有害事象の発現率は、報告により14.8~66.4%と幅がありますが、多くの研究で20~40%程度とされています。高齢者では約10%以下と比較的低く、忍容性が高いことが示されています。

最も頻度の高い副作用は消化器症状です。下痢が3.4~22.8%、軟便、腹部膨満感、便秘などが報告されています。これは抗菌薬が腸内細菌叢に影響を与えるためで、通常は一過性で治療終了後に改善します。下痢止めの使用は腸内の細菌バランスをさらに乱す可能性があるため、症状が軽度であれば経過観察が基本です。

味覚異常も比較的多く見られる副作用で、特に金属様の味覚や苦味を感じることがあります。これはクラリスロマイシンの影響と考えられ、9.8%程度の頻度で報告されています。治療期間が7日間と短いため、我慢できる範囲であれば継続を推奨します。

皮疹やアレルギー反応は2.1~5%程度で発現します。軽度の発疹であれば抗アレルギー薬の併用で対応可能ですが、広範囲の発疹や呼吸困難などの重篤なアレルギー症状が出現した場合は直ちに服用を中止し、医療機関を受診するよう指導する必要があります。

逆流症状(胸やけ、呑酸)が9.8%程度で出現することもあります。これは除菌成功により胃酸分泌が正常化または一時的に増加するためで、むしろ除菌が効いている証拠とも言えます。

症状が強い場合は制酸薬の追加で対応します。

服薬指導で最も重要なのは、飲み忘れや自己判断での中断を防ぐことです。服薬コンプライアンスが除菌成否を大きく左右するため、以下の具体的な対策を患者さんに提案します。

📋 服薬管理の工夫

  • カレンダーや記録表を活用し、服用したらチェックする習慣をつける
  • 薬を目につきやすい場所(食卓、洗面所など)に置く
  • スマートフォンのアラーム機能で服薬時間を通知する
  • 1週間分の薬をピルケースに小分けにしておく

万が一飲み忘れた場合の対処法も明確に伝えます。気づいた時点ですぐに服用し、次の服用時間が5時間以内に迫っている場合はその回を飛ばして次回から再開します。

絶対に2回分を一度に服用してはいけません。

副作用が出現した場合の対応も事前に説明しておきます。軽度の下痢や味覚異常であれば治療を継続し、重篤な症状が出た場合は速やかに連絡するよう伝えます。患者さんが自己判断で服薬を中断すると耐性菌発生のリスクが高まるため、不安な症状があれば必ず相談するよう強調します。

除菌治療中の生活指導も重要です。アルコールは薬剤との相互作用や副作用増強の可能性があるため、治療期間中は禁酒を推奨します。また、喫煙も除菌率を低下させる因子として報告されているため、禁煙または減煙を勧めます。刺激の強い食品(辛い料理、カフェイン過多の飲料)は胃に負担をかけるため控えめにするよう助言します。

整腸剤の併用については、下痢症状の軽減や腸内細菌叢の保護を目的に処方されることがありますが、現時点では除菌率への明確な影響は示されていません。ただし害はないため、患者さんの希望や症状に応じて併用を検討します。

三剤併用療法ピロリ除菌失敗後の二次・三次除菌戦略

一次除菌で成功しなかった場合、二次除菌では薬剤の組み合わせを変更します。具体的には、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに置き換えた三剤併用療法を実施します。このレジメンは保険適用で、除菌率は90%以上と高い成功率を示します。

二次除菌でもボノプラザンまたはPPIを使用し、アモキシシリンは継続します。メトロニダゾールはニトロイミダゾール系の抗菌薬で、クラリスロマイシンとは異なる作用機序でピロリ菌を攻撃します。一次除菌と同様に1日2回、7日間の服用が標準です。

一次除菌と二次除菌を合わせた累積除菌率は97~98%に達するため、大多数の患者さんは二次除菌までに除菌成功します。これは100人中97~98人が除菌できる計算で、非常に高い成功率と言えます。

しかし、二次除菌でも失敗する患者さんが2~3%存在します。この場合、三次除菌は保険適用外となり自費診療での対応となりますが、適切な薬剤選択により70~90%の除菌率が期待できます。

三次除菌で最も広く用いられているのは、シタフロキサシンを使用した三剤併用療法です。シタフロキサシンはニューキノロン系抗菌薬で、強い抗菌活性を有し、クラリスロマイシンやメトロニダゾールに耐性のピロリ菌にも効果を示します。ボノプラザンまたはPPI、アモキシシリン、シタフロキサシンの組み合わせで、70~80%程度の除菌率が報告されています。

北里大学などの専門施設では、シタフロキサシン療法に加えて、さらに高度な四次除菌療法も実施されています。リファブチンというリファマイシン系抗菌薬を用いた三剤併用療法は、シタフロキサシン耐性菌に対しても有効とされています。

ペニシリンアレルギーの患者さんでは、アモキシシリンが使用できないため特別な配慮が必要です。この場合、標準的な保険適用レジメンが使えないため、初回から自費診療での対応となります。代替療法としては、ボノプラザンまたはPPI、クラリスロマイシン、メトロニダゾールの組み合わせや、シタフロキサシンとメトロニダゾールの組み合わせが選択されます。最近の報告では、ボノプラザンとテトラサイクリンの組み合わせも有望とされています。

除菌失敗の原因を特定することも重要です。服薬コンプライアンス不良、耐性菌の存在、胃内pH上昇不十分、喫煙などが主な要因として挙げられます。二次除菌、三次除菌に進む前に、これらの要因を改善することで除菌成功率を高められます。

特に服薬状況の確認は必須です。飲み忘れや自己中断があった場合は、次回除菌時により徹底した服薬指導を行います。また、喫煙者には禁煙を強く勧め、PPI使用時はボノプラザンへの変更を検討します。

感受性検査が可能な施設では、使用予定の抗菌薬に対する耐性の有無を確認してから除菌レジメンを決定することで、より高い成功率が期待できます。ただし、三次除菌以降の感受性検査は保険適用外であり、検査費用も考慮する必要があります。

患者さんへの説明では、三次除菌以降は自費診療となることや費用負担について事前に十分な情報提供を行います。一方で、除菌成功により胃がんリスクが大幅に低減することを説明し、治療継続の動機づけを行うことも重要です。除菌できれば胃がんリスクが約3分の1になるという具体的な数字を示すと理解が深まります。

北里大学北里研究所病院「ピロリ菌外来」では、三次除菌以降の専門的治療について詳細な情報が提供されています