LABA/LAMA/ICS配合剤の種類と使い分け

LABA/LAMA/ICS配合剤の基本

喘息患者にLABA単剤を処方すると増悪リスクが3倍高まります。

この記事の3ポイント要約
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トリプル配合剤の特徴

テリルジー、エナジア、ビレーズトリの3製剤が喘息・COPD治療に使用され、それぞれデバイスと吸入回数が異なります

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禁忌と注意事項

LAMA含有のため閉塞隅角緑内障・前立腺肥大には禁忌、ICS含有のため吸入後のうがいが必須です

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適応と使い分け

末梢血好酸球数300/μL以上でICS追加が有効、現行喫煙者ではICS効果が減弱することがあります

LABA/LAMA/ICS配合剤は、長時間作用性β2刺激薬と長時間作用性抗コリン薬、そして吸入ステロイドの3成分を1つの吸入器に組み合わせた製剤です。これまで複数の吸入器を使い分けていた患者にとって、服薬負担を大きく軽減できる治療選択肢として注目されています。日本国内では2019年以降、テリルジーエリプタ、ビレーズトリエアロスフィア、エナジアブリーズヘラーの3製剤が承認され、臨床現場で活用されています。

これらの配合剤が登場した背景には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や気管支喘息における増悪予防の重要性があります。LAMA/LABAの2剤配合では症状コントロールが不十分な患者や、頻回に増悪を繰り返す患者に対して、ICSを追加することで炎症を抑制し、さらなる増悪リスク低減が期待できるのです。

特にCOPD患者では、末梢血好酸球数が300/μL以上の場合にICS追加の効果が高いことが複数の臨床試験で示されています。一方で喘息患者においては、ICS/LABA配合剤でコントロール不良の場合にLAMAを追加する形でトリプル製剤が使用されます。医療従事者はこの使い分けを理解し、患者の病態に応じた適切な処方提案を行うことが求められます。

LABA/LAMA/ICS配合剤の3成分の役割

長時間作用性β2刺激薬(LABA)は気管支平滑筋を弛緩させて気道を拡張し、効果が12~24時間持続します。この持続性により、患者は1日1~2回の吸入で安定した気管支拡張効果を得られます。ただし、LABAには抗炎症作用がないため、喘息患者に単剤で使用すると喘息死のリスクが増加することが米国食品医薬品局(FDA)から報告されており、必ずICSとの併用が必須とされています。

長時間作用性抗コリン薬(LAMA)は、気道平滑筋のムスカリン受容体を遮断することで気管支収縮を抑制します。COPD治療においてはLAMAが一選択薬とされ、LABAと比較して増悪予防効果が優れていることが示されています。喘息治療では従来あまり使用されてこなかったものの、近年の研究でICS/LABAに追加することで肺機能改善や増悪リスク低減に寄与することが明らかになりました。

吸入ステロイド(ICS)は気道炎症を抑制する作用を持ち、喘息治療の土台となる薬剤です。全身性の副作用は少ないものの、口腔内に残留すると口腔カンジダ症や嗄声といった局所副作用を引き起こす可能性があります。このため、ICS含有製剤を使用した後は必ずうがいを行い、口腔内に残った薬剤を洗い流すことが重要です。うがいが困難な場合は、水を飲むだけでも一定の予防効果があります。

3成分を組み合わせることで、気道拡張と炎症抑制の両方を同時に達成できます。気道拡張によって患者の息切れや呼吸困難感が改善され、炎症抑制によって増悪リスクが低減します。配合剤として1つの吸入器にまとめることで、患者のアドヒアランス向上も期待できるのです。

LABA/LAMA/ICS配合剤が必要な患者像

COPD患者においては、LAMA単剤やLAMA/LABA配合剤を使用しても症状コントロールが不十分で、年2回以上の中等度増悪または入院を要する重度増悪がある場合にトリプル製剤が検討されます。特に末梢血好酸球数が300/μL以上の患者では、ICS追加による増悪予防効果が顕著に表れることが知られています。これは好酸球増多が気道の2型炎症を示唆しており、ステロイドが効きやすい病態だからです。

喘息患者では、ICS/LABA配合剤による維持療法を行ってもコントロールが不良で、咳や痰が残存する場合にLAMAを追加したトリプル製剤が選択肢となります。喘息予防・管理ガイドライン2021では、治療ステップ3以上での使用が明記され、難治性喘息の管理において重要な位置づけとなっています。ただし、喘息患者へのLAMA使用は比較的新しい概念であり、適応を見極める必要があります。

喘息とCOPDのオーバーラップ(ACO)を有する患者にも、トリプル製剤は有用な選択肢です。ACOは両疾患の特徴を併せ持ち、単一の疾患として治療するよりも両方の病態に対応する必要があります。喘息の炎症制御とCOPDの気道閉塞改善を同時に行えるトリプル製剤は、こうした患者の症状改善と増悪予防に貢献します。

現行喫煙者のCOPD患者では、ICSの効果が減弱する可能性があることに注意が必要です。研究によれば、喫煙を続けている患者では好酸球数に関わらずLABA/LAMAがLABA/ICSを上回る増悪予防効果を示すことが報告されています。禁煙支援と並行して、患者の喫煙状況を考慮した薬剤選択が求められます。

LABA/LAMA/ICS配合剤の3製剤比較

テリルジーエリプタは、グラクソ・スミスクライン社が開発したエリプタ型のドライパウダー吸入器です。フルチカゾンフランカルボン酸エステル(ICS)、ウメクリジニウム(LAMA)、ビランテロール(LABA)を含有し、1日1回1吸入で使用します。エリプタデバイスは蓋を開けるだけで吸入準備が完了する簡便さが特徴で、操作ミスが少ないとされています。テリルジー100と200の2規格があり、COPDと喘息の両方に適応を持つ唯一のトリプル製剤です。

1か月の薬価(3割負担)はテリルジー100で約2550円、テリルジー200で約2902円となります。テリルジーは強く深く吸入する必要があり、一定の吸気流速が求められます。吸気力が弱い患者では薬剤が十分に肺に到達しない可能性があるため、患者の吸入能力を評価することが重要です。

エナジアブリーズヘラーは、ノバルティスファーマ社が開発したカプセル式の吸入器です。モメタゾンフランカルボン酸エステル(ICS)、グリコピロニウム(LAMA)、インダカテロール(LABA)を含有し、1日1回1カプセルを専用デバイスにセットして吸入します。国内初の喘息適応を取得したトリプル製剤として2020年8月に承認されました。中用量と高用量の2規格があり、1か月の薬価(3割負担)は中用量で約2610円、高用量で約2983円です。

ブリーズヘラーはカプセルをセットする手間がありますが、吸入時にカラカラと音が鳴ることで患者自身が吸入を確認できる利点があります。ゆっくり優しく吸うことが推奨されており、強く吸いすぎると喉に張り付いてむせる感じがあります。エリプタと異なる吸入法のため、患者への丁寧な指導が必要です。

ビレーズトリエアロスフィアは、アストラゼネカ社が開発した加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)です。ブデソニド(ICS)、グリコピロニウム(LAMA)、ホルモテロール(LABA)を含有し、1日2回、1回2吸入の使用方法です。他の2製剤が1日1回であるのに対し、1日2回という点が異なります。56吸入と120吸入の2規格があり、薬価は56吸入で4127.6円、120吸入で8771.9円です。

エアロスフィア製剤は霧状に噴霧されるため、吸気流速が低い高齢者でも使用しやすいという特徴があります。吸入器を押す操作のみで簡便ですが、吸入と噴霧のタイミングを合わせる協調動作が求められます。COPD適応のみを持ち、喘息には適応がありません。

LABA/LAMA/ICS配合剤のデバイスと吸入指導

ドライパウダー吸入器(DPI)であるテリルジーとエナジアは、患者自身の吸気力で薬剤を吸い込む仕組みです。このため、一定以上の吸気流速が必要となります。テリルジーのエリプタ型は最低吸気流速が比較的低めに設定されていますが、それでも十分な吸気力がない患者では薬剤が口腔内にとどまってしまいます。吸気力の評価には、患者に深く息を吸ってもらう動作を確認するか、専用のテスターを使用する方法があります。

エナジアのブリーズヘラーは、カプセルをセットして穴を開ける操作が必要です。カプセルが回転して粉砕される音が聞こえるため、吸入が正しく行われているか患者自身が確認できます。ただし、カプセルのセット忘れや穴開け不十分といったエラーが起こりやすく、初回の指導を丁寧に行う必要があります。また、使用後のカプセル殻は取り出して廃棄する手間があります。

ビレーズトリのエアロスフィア製剤は加圧ガスで噴霧するため、吸気力が弱くても使用できる利点があります。高齢者や呼吸機能が著しく低下した患者に適しています。ただし、吸入器を振ってから使用する必要があり、噴霧ボタンを押すタイミングと吸入のタイミングを合わせる協調動作が求められます。この協調が苦手な患者には、スペーサーを併用することで成功率が向上します。

吸入後のうがいは、ICS含有製剤すべてに共通する重要な指導事項です。口腔カンジダ症や嗄声の予防のため、吸入直後に十分な水でうがいを行い、薬剤を洗い流します。外出先などでうがいができない場合は、水を飲むだけでも効果があります。また、食前に吸入するようにすれば、その後の食事と飲み物で自然に口腔内が洗浄されるという工夫もあります。

LABA/LAMA/ICS配合剤使用時の独自の注意点

閉塞隅角緑内障と前立腺肥大による排尿障害は、LAMA含有製剤すべてに共通する禁忌事項です。抗コリン作用により隅角の収縮が強まり緑内障症状が悪化する可能性があるため、特に閉塞隅角緑内障では重大なリスクとなります。一方、開放隅角緑内障は禁忌ではなく慎重投与となっており、使用可能です。処方前に患者の緑内障のタイプを確認することが重要です。

前立腺肥大症患者では、抗コリン作用により排尿困難や尿閉のリスクが高まります。添付文書では禁忌とされていますが、実臨床では軽度の前立腺肥大で排尿障害がない患者には慎重に使用されることもあります。泌尿器科と連携し、排尿状態をモニタリングしながら使用する必要があります。高齢男性のCOPD患者では前立腺肥大の合併が多いため、LAMA使用の可否が治療選択の大きな分かれ目となります。

デスモプレシン投与中の患者にアテキュラ(ICS/LABA配合剤)を使用する場合、低ナトリウム血症のリスクが高まるため禁忌とされています。トリプル製剤であるエナジアにも同様の注意が必要です。デスモプレシンは夜間多尿による夜間頻尿の治療薬として高齢者に処方されることが多く、見落としやすい相互作用です。患者の併用薬を確認する際、特に高齢者では泌尿器系の薬剤に注目しましょう。

末梢血好酸球数は、ICS追加の適応を判断する重要な指標です。COPD患者で好酸球数が300/μL以上の場合、トリプル製剤による増悪予防効果が高いことが示されています。逆に、好酸球数が低い患者では肺炎リスクの上昇が懸念されるため、LAMA/LABA配合剤の方が適切な場合があります。定期的な血液検査で好酸球数をモニタリングし、治療方針の見直しに活用することが推奨されます。

ICS使用による肺炎リスクは、特にCOPD患者で注意すべき副作用です。ICSが気道の局所免疫を抑制することで、細菌感染のリスクが高まる可能性があります。高齢者、喫煙歴が長い患者、既存の呼吸機能障害が重度の患者ではリスクが高くなります。咳や痰の増加、発熱といった肺炎の兆候があれば、速やかに医師に相談するよう患者指導を行います。