LABA/LAMA配合剤とは効果と種類の選び方

LABA/LAMA配合剤の基礎と適応

LABA/LAMA配合剤はICS併用時のみ選択できるわけではありません。

この記事の3つのポイント
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2つの作用機序の相乗効果

LAMAとLABAは異なる受容体に作用し、単剤より高い気管支拡張作用を発揮します

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4種類のデバイスの特徴

患者の吸気能力や手技に応じて、エアロスフィア、ブリーズヘラー、エリプタ、レスピマットから選択できます

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吸入手技の確認が治療成否を左右

正しく吸入できない患者が約4割存在し、定期的な手技確認が不可欠です

LABA/LAMA配合剤の作用機序と相乗効果

 

LABA/LAMA配合剤は、長時間作用性β2刺激薬(LABA)と長時間作用性抗コリン薬(LAMA)を組み合わせた呼吸器疾患治療薬です。LABAは気管支平滑筋のβ2受容体を刺激して気道を拡張し、LAMAはアセチルコリンM3受容体を遮断することで気管支収縮を抑制します。この2つの異なる機序が組み合わさることで、単剤使用時よりも強力な気管支拡張効果が得られることが臨床試験で実証されています。

特に注目すべきは、LAMAとLABAの併用による相乗効果です。気道平滑筋細胞のM3受容体とβ2受容体は相互に作用し合い、併用することで単剤の足し算以上の効果を発揮します。これは基礎研究でも確認されており、両者を同時に使用することで気管支拡張作用が増強されるメカニズムが解明されています。

つまり相乗効果が期待できるということですね。

COPD治療においては、LAMAが一選択薬として推奨されていますが、単剤で効果が不十分な場合にLABA/LAMA配合剤へのステップアップが検討されます。日本呼吸器学会のガイドラインでは、中等度以上のCOPD患者で症状コントロールが不良な場合、LAMA/LABA配合剤の使用が推奨されています。配合剤にすることで、服薬アドヒアランスの向上も期待できるため、治療継続という観点からも有用性が高いとされています。

増悪抑制効果についても、LAMA単剤と比較して優れているというエビデンスが蓄積されつつあります。IMPACT試験やFULFIL試験などの大規模臨床試験では、LABA/LAMA配合剤がICS/LABA配合剤と比較しても同等以上の効果を示しました。ただし、長期的な増悪抑制効果についてはまだ議論の余地があり、個々の患者の病態に応じた選択が重要です。

日本内科学会雑誌のCOPD吸入療法に関する論文では、LAMA/LABA配合剤の臨床成績と位置づけについて詳しく解説されています。

LABA/LAMA配合剤の適応疾患と使い分け

LABA/LAMA配合剤の適応は主にCOPD(慢性閉塞性肺疾患)です。現在日本で承認されている4種類の配合剤(ウルティブロ、アノーロ、ビベスピ、スピオルト)は、いずれもCOPDの諸症状の緩解を適応としています。注意すべき点は、これらの配合剤は基本的に気管支喘息には適応がないということです。喘息とCOPDのオーバーラップ症候群(ACO)など、特殊な病態では使用を検討する場合もありますが、原則としてCOPD専用と考えるべきです。

喘息には不向きということですね。

一方、ICS/LABA配合剤の一部(例:アドエアの特定規格)はCOPDにも適応を持っています。このため、喘息とCOPDの鑑別が重要になります。COPDの診断基準は、気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーでFEV1/FVC<0.7を示すことです。40歳以上で喫煙歴があり、慢性の咳や痰、労作時呼吸困難などの症状がある患者では、COPDを疑い適切な検査を行う必要があります。

使用のタイミングとしては、LAMA単剤またはLABA単剤で症状コントロールが不十分な場合に配合剤への切り替えが検討されます。ただし、重症例や症状が強い場合には、最初からLAMA/LABA配合剤を使用することもあります。呼吸機能検査の結果、症状の頻度、増悪の既往などを総合的に評価し、個々の患者に最適な治療選択を行うことが求められます。

日経メディカルのCOPD治療に関する記事では、LAMA/LABA配合剤を第一選択とすべきかについて専門医の見解が紹介されています。

LABA/LAMA配合剤の種類とデバイスの特徴

日本で使用可能なLABA/LAMA配合剤は2026年2月現在、4種類あります。ウルティブロ(グリコピロニウム+インダカテロール)、アノーロ(ウメクリジニウム+ビランテロール)、ビベスピ(グリコピロニウム+ホルモテロール)、スピオルト(チオトロピウム+オロダテロール)です。成分の組み合わせは異なりますが、いずれもLAMAとLABAの配合という点では共通しています。

それぞれ異なるデバイスを使用しており、この違いが処方選択の重要なポイントになります。ウルティブロはブリーズヘラー(DPI:ドライパウダー吸入器)、アノーロはエリプタ(DPI)、ビベスピはエアロスフィア(pMDI:加圧式定量噴霧吸入器)、スピオルトはレスピマット(SMI:ソフトミスト吸入器)を採用しています。

デバイスが処方の決め手です。

DPI(ブリーズヘラー、エリプタ)は粉末状の薬剤を吸気の力で吸入するタイプで、勢いよく吸い込む必要があります。そのため、一定以上の吸気流速が求められます。COPDの重症患者では吸気流速が低下している場合があり、そのような患者にはDPIは不向きです。逆に、手技が比較的シンプルで、吸入と噴霧のタイミングを合わせる必要がないという利点があります。

pMDI(エアロスフィア)は加圧ガスで薬剤を噴霧するため、患者自身の吸気力が弱くても使用できます。吸気流速が低下したCOPD患者でも使いやすいとされています。ただし、ボンベを押すタイミングと吸気開始を同期させる必要があり、この協調運動が苦手な患者には難しい場合があります。ビベスピのエアロスフィアは世界初の薬剤送達技術を採用しており、多孔性粒子が肺の末梢まで到達しやすい設計になっています。

SMI(レスピマット)は噴射ガスを使わず、やわらかい霧をゆっくり生成します。吸気流速が低い患者でも使用でき、また吸入と噴霧の同期もpMDIほど厳密である必要がありません。操作がやや複雑で事前のセットが必要ですが、幅広い患者に対応できる万能型デバイスといえます。

LABA/LAMA配合剤の吸入指導における重要ポイント

吸入薬の効果を最大限に引き出すためには、正しい吸入手技の指導が不可欠です。驚くべきことに、吸入薬を処方されている患者の約40%が正しく吸入できていないという報告があります。吸入手技の誤りは治療効果の低下に直結し、症状コントロール不良の原因となります。そのため、処方時だけでなく、定期的に吸入手技を確認することが医療従事者の重要な役割です。

4割の患者が誤った手技です。

共通する重要なポイントとして、まず吸入前に十分に息を吐き出すことが挙げられます。肺の中に古い空気が残っていると、新しく吸入した薬剤が十分に肺の奥まで届きません。次に、吸入時はゆっくり深く吸い込むことが大切です。急いで吸うと薬剤が喉に当たって止まってしまい、肺まで届きません。吸入後は息を止めて数秒間(5~10秒程度)保持することで、薬剤を肺に定着させます。

デバイス別の注意点も押さえておく必要があります。DPI(ブリーズヘラー、エリプタ)では、カプセルのセットや吸入器の準備を正しく行うこと、そして力強く吸入することが重要です。カプセルが残っていないか、吸入器が正しくセットされているかを毎回確認します。pMDI(エアロスフィア)では、容器をよく振ってからボンベを押すタイミングと吸気開始を合わせることが最大のポイントです。SMI(レスピマット)では、カートリッジの準備や回転操作を正確に行う必要があります。

誤った吸入手技の典型例として、吸入器を口に入れたまま呼気してしまう、吸入後すぐに息を吐いてしまう、吸入器の角度が不適切、などがあります。これらのエラーを防ぐために、プラセボ吸入器を用いた実技指導が推奨されています。患者に実際にデモンストレーションしてもらい、その場で誤りを修正することが効果的です。また、吸入指導用の動画や資料を活用し、視覚的に理解を促すことも有用です。

服薬アドヒアランス向上のためには、吸入のタイミングを生活習慣に組み込むことが効果的です。例えば、朝の歯磨き後、夜の就寝前など、日常動作と関連付けることで忘れにくくなります。また、吸入回数が1日1回の製剤(ウルティブロ、アノーロ、スピオルト)と1日2回の製剤(ビベスピ)があるため、患者のライフスタイルに合わせた選択も重要です。

LABA/LAMA配合剤の副作用管理と禁忌事項

LABA/LAMA配合剤の副作用は、LABAとLAMAそれぞれの成分由来のものが現れる可能性があります。LABA由来の副作用として、手の震え(振戦)、動悸、頻脈、不整脈などがあります。これは交感神経刺激作用によるもので、特に高齢者や心疾患を持つ患者では注意が必要です。血清カリウム値の低下も報告されており、定期的な血液検査でモニタリングすることが推奨されます。

LAMA由来の副作用として最も多いのは口渇です。抗コリン作用により唾液分泌が抑制されるためで、患者によっては非常に不快な症状となります。吸入後にうがいをすることや、こまめに水分補給を行うことで対処できます。その他、便秘、排尿困難、眼圧上昇などの抗コリン作用による症状が現れることがあります。

口渇は最も頻繁な副作用です。

重大な副作用として、心房細動(頻度0.1%)と重篤な血清カリウム値の低下が添付文書に記載されています。特に心疾患の既往がある患者、利尿薬を併用している患者、ステロイド薬を併用している患者では、これらのリスクが高まる可能性があります。動悸や不整脈の症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診するよう患者指導を行います。

禁忌事項として重要なのは、閉塞隅角緑内障と前立腺肥大等による排尿障害です。これはLAMAの抗コリン作用により、これらの疾患が悪化する可能性があるためです。処方前に必ず既往歴を確認し、該当する患者には使用を避けます。なお、開放隅角緑内障は禁忌ではありませんが、慎重投与の対象となります。

慎重投与が必要な患者として、甲状腺機能亢進症、高血圧、心疾患、糖尿病などがあります。LABAの交感神経刺激作用により、これらの疾患が悪化する可能性があるためです。特に糖尿病患者では、高用量のβ2刺激薬により血糖値が上昇する恐れがあるため、血糖モニタリングが推奨されます。

副作用を最小限に抑えるためには、適切な用法・用量を守ることが基本です。効果が不十分だからといって自己判断で吸入回数を増やすことは危険です。また、他のβ2刺激薬や抗コリン薬との併用には注意が必要で、作用が増強されて副作用リスクが高まります。複数の吸入薬を使用している場合は、薬剤の重複がないか確認することが重要です。

LABA/LAMA配合剤処方時の患者フォローアップ戦略

LABA/LAMA配合剤を処方した後の継続的なフォローアップは、治療成功の鍵となります。処方開始から2~4週間後に初回フォローアップを行い、効果判定と副作用の確認を行います。患者が感じる症状の変化、特に労作時の息切れの改善具合を詳しく聴取します。客観的な評価として、mMRC息切れスケールやCAT(COPD Assessment Test)などの質問票を活用すると、症状の変化を数値化して把握できます。

吸入手技の再確認は、処方開始後1ヶ月以内に必ず実施すべきです。初回指導では理解できていても、自宅で実際に使用する中で誤った方法に変わってしまうケースが少なくありません。患者に実際にデモンストレーションしてもらい、各ステップを確認します。誤りがあればその場で修正し、正しい方法を再度実演して見せることが効果的です。

定期フォローアップの頻度は、患者の状態によって調整します。安定している患者では3ヶ月ごと、症状が不安定な患者や高齢者では1~2ヶ月ごとのフォローアップが推奨されます。各フォローアップでは、症状の変化、増悪の有無、副作用の出現、服薬アドヒアランス、吸入手技の再確認を行います。また、スパイロメトリーによる呼吸機能検査を年1~2回実施し、客観的な評価を行うことも重要です。

年1~2回の呼吸機能検査が基本です。

アドヒアランス低下のサインを早期に発見することも重要です。吸入薬の残数が予定より多い、症状が改善しない、増悪の頻度が増えた、などの兆候があればアドヒアランス不良を疑います。その原因を探り、忘れやすい場合は服薬リマインダーアプリの活用、手技が難しい場合はデバイスの変更、副作用が辛い場合は薬剤の変更などを検討します。

治療効果が不十分な場合の対応も計画的に行います。2~3ヶ月使用しても症状改善が不十分な場合は、吸入手技の再確認、アドヒアランスの確認を行った上で、治療のステップアップを検討します。ICSの追加(ICS/LABA/LAMAのトリプル療法)、テオフィリン薬の追加、PDE4阻害薬の追加などが選択肢となります。また、喘息の合併や他の疾患の可能性も考慮し、必要に応じて専門医への紹介を検討します。

患者教育の継続も忘れてはいけません。COPDは進行性の疾患であり、禁煙の継続、適度な運動、感染症予防(インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン接種)など、薬物療法以外の管理も重要です。定期的に患者と疾患管理について話し合い、セルフマネジメント能力を高めることが、長期的な治療成功につながります。




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