LABA/ICS配合剤の種類と選択・使い分け・吸入手技のポイント

LABA/ICS配合剤の基礎知識と選択

吸入手技を正しく行えている患者は3割以下という事実があります。

この記事の3つのポイント
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LABA単独使用は禁忌

LABAを単独使用すると喘息関連死亡のリスクが3.65倍に増加するため、必ずICSとの併用が必要です

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吸入手技エラーが7~8割

実際の臨床では患者の7~8割が何らかの吸入手技ミスをしており、治療効果に大きく影響しています

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デバイス選択が重要

患者の吸入能力や身体機能に合わせた適切なデバイス選択が治療成功のカギとなります

LABA/ICS配合剤が必要とされる理由と安全性の背景

 

気管支喘息COPDの治療において、LABA/ICS配合剤は現在の標準治療として広く使用されています。この配合剤が開発された背景には、重要な安全性の問題が存在しました。

長時間作用性β2刺激薬(LABA)は強力な気管支拡張作用を持ち、24時間近く効果が持続する優れた薬剤です。しかし過去の研究で、LABA単独使用時に喘息関連死亡や気管内挿管のリスクが増加することが明らかになりました。実際のデータでは、LABA使用群はプラセボ群より喘息関連死亡や気管内挿管が1.83倍多く、さらに重要なことに、吸入ステロイド(ICS)と併用しても吸入ステロイド単独群より3.65倍多いという結果が報告されています。

このような背景から、LABAは必ずICSと併用することが強く推奨されるようになりました。配合剤という形態を取ることで、患者がLABAのみを単独で使用するリスクを完全に排除できます。

これは医師にとっても大きな安心材料ですね。

配合剤には気道の炎症を抑えるICSと、気管支を広げるLABAの2つの作用が含まれています。ICSは喘息治療の土台となる薬剤で、気道の慢性炎症を改善し、気道過敏性を低下させることで発作の予防に働きます。一方LABAは即効性こそSABA(短時間作用性β2刺激薬)に劣るものの、長時間にわたって気道を拡張し続けることで、日中・夜間を問わず症状をコントロールします。

この2つの成分を併用することで、単独使用時よりも高い治療効果が得られることが多くの臨床試験で証明されています。さらに、配合剤として1つのデバイスにまとめることで、患者のアドヒアランス向上にも寄与します。2つの薬剤を別々に吸入するよりも、配合剤の方が増悪率が低いことも報告されています。

喘息管理におけるLABAの安全性に関する研究(CareNet)

LABAとICSの併用による安全性データが詳しく掲載されています。喘息関連の挿管や死亡例の具体的な数値を確認できる重要な参考資料です。

LABA/ICS配合剤の種類とデバイス別の特徴

現在、日本国内で使用可能なLABA/ICS配合剤には複数の種類があり、それぞれ異なるデバイスと薬剤組成を持っています。医療従事者として、各製剤の特徴を正確に把握することが適切な薬剤選択につながります。

主なLABA/ICS配合剤として、アドエア(サルメテロール+フルチカゾンプロピオン酸エステル)、シムビコート(ホルモテロール+ブデソニド)、フルティフォーム(ホルモテロール+フルチカゾンプロピオン酸エステル)、レルベア(ビランテロール+フルチカゾンフランカルボン酸エステル)、アテキュラ(インダカテロール+モメタゾンフランカルボン酸エステル)が挙げられます。

それぞれの製剤にはデバイスの違いがあります。

アドエアにはディスカス(ドライパウダー式)とエアゾール(pMDI:加圧式定量噴霧吸入器)の2つの剤形があり、患者の吸入能力に応じて選択できます。ディスカスは円盤型のデバイスで、レバーを動かすことで薬剤がセットされ、患者は強く吸い込む必要があります。一方エアゾールは、ボタンを押すと薬剤が噴射される仕組みで、呼吸との同調が重要です。

シムビコートはタービュヘイラーというドライパウダー式デバイスを使用します。このデバイスの最大の特徴は、維持療法だけでなく発作時の屯用としても使用できる点です。つまり、定期吸入に加えて、症状が悪化した際に追加吸入が認められている唯一のICS/LABA配合剤なのです。

フルティフォームはpMDI製剤で、微細な粒子径が特徴です。

レルベアはエリプタというデバイスを採用しており、1日1回の吸入で24時間効果が持続します。エリプタデバイスは蓋を開けるだけで自動的に薬剤がセットされ、吸入後は蓋を閉じるだけという非常にシンプルな操作性が特徴です。高齢者や操作が複雑な患者にとって、この簡便性は大きなメリットとなります。

アテキュラは吸入用カプセルを使用する方式で、カプセルをセットして穴を開け、吸入する仕組みです。この製剤にはデスモプレシン(男性における夜間多尿による夜間頻尿を適応とするもののみ)投与中の患者には禁忌という特徴があるため、処方時には注意が必要です。

吸入薬の合剤一覧(m3.com薬剤師コラム)

LABA/ICS配合剤の成分とデバイスを図表で整理した資料です。各配合剤の成分の組み合わせを視覚的に理解するのに役立ちます。

LABA/ICS配合剤の使い分けと選択基準

喘息ガイドラインに基づく治療ステップに応じて、LABA/ICS配合剤の選択が行われます。ガイドラインでは、軽症持続型から中等症持続型の喘息患者に対して、低用量から中用量のICS/LABAが推奨されています。

薬剤選択の際には、まず患者の重症度を評価します。

治療ステップ2では低用量ICSが基本ですが、コントロール不良の場合はステップ3として低用量ICS/LABAへのステップアップが検討されます。ステップ3では低用量ICS/LABAまたは中用量ICSが選択肢となり、ステップ4では中用量ICS/LABAや高用量ICSが用いられます。

ICS/LABA配合剤の中でも、用量規格による使い分けが重要です。アドエアは50、125、250の3規格があり、このうち250ディスカスと125エアゾールのみがCOPDにも適応を持ちます。レルベアは50(小児用)、100、200の規格があり、100エリプタは喘息とCOPD両方に適応がありますが、200エリプタと50エリプタには喘息の適応のみとなっています。

患者の身体機能や認知機能も選択基準の一つです。

吸気流速が十分に得られない高齢者や小児では、ドライパウダー式よりもpMDI製剤が適している場合があります。ただしpMDI製剤は呼吸との同調が必要なため、その点の評価も欠かせません。同調が困難な場合は、スペーサーの併用が有効です。

アドヒアランスの観点からは、1日1回で済むレルベアは服薬継続性の向上が期待できます。忙しい働き盛りの患者や、服薬管理が困難な高齢者には特に有用な選択肢です。実際、1日1回製剤は1日2回製剤と比較してアドヒアランスが向上することが報告されています。

シムビコートの屯用可能という特性は、症状の変動が大きい患者に適しています。定期吸入に加えて症状悪化時に追加吸入できるため、コントロールの微調整がしやすくなります。ただし、この使い方を患者が正しく理解していることが前提です。

医療経済的な観点も無視できません。

各製剤の薬価には差があり、1か月あたりの薬剤費は1,400~1,700円程度(3割負担)の範囲で変動します。長期間の治療となるため、患者の経済状況も考慮に入れた選択が求められます。

LABA/ICS配合剤における吸入手技エラーの実態と対策

吸入療法の最大の課題は、手技エラーの頻度が極めて高いことです。実際の臨床現場では、吸入薬を使用している患者の約7割から8割が何らかの手技ミスをしているというデータが存在します。この数字は、医療従事者が想像する以上に深刻な問題です。

手技エラーの内訳を見ると、最も多いのが吸入不十分で、全体の約53%を占めます。これには吸入力不足、吸入漏れ、吸入時の咳嗽などが含まれます。次いでデバイス操作の誤りが約47%と高頻度で認められます。

具体的なエラー事例として報告されているものには、驚くべきケースがあります。

あるCOPD患者では、pMDI製剤であるフルティフォームにスペーサーを付けて吸入するよう指導されていたにもかかわらず、スペーサーを外して直接口に噴射していたケースがありました。また別の喘息患者では、シムビコートタービュヘイラーを処方されていたものの、デバイスを回転させて薬剤をセットする操作を行わず、ただ吸っているだけという事例も報告されています。

これらは決して稀な例ではないんです。

日常的に喘息やCOPD患者を診察している医師のうち、患者が誤った使い方をしているのを発見したことがある医師は4割に上るというデータもあります。つまり、処方する側が想定していない使用法が、相当数の患者で行われている可能性が高いのです。

手技エラーが治療効果に与える影響は甚大です。どれほど優れた薬剤でも、肺の奥まで適切に到達しなければ効果は発揮されません。コントロール不良と判断されてステップアップを検討する前に、まず吸入手技が正しく行えているかを確認することが不可欠です。

エラーを防ぐためには、初回処方時の丁寧な指導が基本となります。ただし、一度の指導だけでは不十分であることも明らかになっています。定期的に手技の確認を行い、必要に応じて再指導を繰り返すことが重要です。

多職種連携も効果的な対策の一つです。

医師だけでなく、薬剤師や看護師、理学療法士などが協力して患者を支援することで、吸入手技の習得率が向上します。特に薬局薬剤師による服薬指導時のチェックは、継続的なフォローアップの機会として貴重です。病薬連携により吸入手技評価・指導を行った研究では、約4割の患者で吸入エラーが確認され、そのうち多くが指導・練習の繰り返しと多職種連携により手技を習得できたと報告されています。

デバイス選択の再検討も重要な対策です。患者の理解力や身体機能に対して、選択されたデバイスが複雑すぎる場合、別のより簡便なデバイスへの変更を検討すべきです。例えば、操作の複雑なタービュヘイラーからエリプタへの変更、呼吸同調が困難なpMDIからドライパウダーへの変更などが考えられます。

吸入練習器の活用も有効です。実際の薬剤を使わずに練習できるツールを使用することで、患者は安心して何度も練習できます。正しく吸入すると笛の音が鳴る練習器なども提供されており、視覚的・聴覚的なフィードバックが得られることで習得が促進されます。

吸入療法の失敗事例集(ナース専科)

実際に起こった吸入ミスの驚くべき事例が紹介されています。患者指導の際に注意すべきポイントを学べる貴重な資料です。

LABA/ICS配合剤の副作用マネジメントと患者教育

LABA/ICS配合剤には特有の副作用があり、その適切なマネジメントが治療継続のカギとなります。医療従事者は副作用の予防法と対処法を患者に明確に伝える必要があります。

最も頻度の高い副作用は、ICS成分に起因する局所的な問題です。口腔カンジダ症、嗄声(声のかすれ)、口腔内乾燥が代表的なものとして知られています。これらは吸入されたステロイド薬が口腔や咽頭に付着することで発生します。

口腔カンジダ症は、ステロイドによる局所免疫抑制により口腔内の常在菌であるカンジダが増殖することで起こります。

白い苔のような付着物が舌や口腔粘膜に現れ、痛みや不快感を伴うことがあります。

予防の基本は、吸入後のうがいです。

吸入直後に十分な量の水で、少なくとも2~3回はしっかりとうがいをすることで、口腔内に残った薬剤を洗い流せます。

嗄声は声帯へのステロイド付着により起こります。特に声を使う職業の患者にとっては深刻な問題となり得ます。こちらも吸入後のうがいで予防できますが、さらにスペーサーを使用することで薬剤の口腔内への付着を減らすことも有効です。

全身性の副作用は、ICS/LABA配合剤では通常の経口ステロイドと比較して極めて少ないとされています。これは、吸入により薬剤が直接気道に到達し、全身循環への移行が少ないためです。ただし、高用量を長期間使用する場合には、骨粗鬆症や副腎抑制のリスクがゼロではありません。

LABA成分による副作用として、振戦、動悸、頻脈などのβ刺激作用に関連した症状が出現することがあります。

これらは特に治療開始初期や用量増量時に現れやすく、通常は継続使用により軽減します。しかし、症状が強い場合や持続する場合は、用量調整や薬剤変更を検討する必要があります。

患者教育において重要なのは、副作用の多くが予防可能であることを強調することです。特に吸入後のうがいは、面倒でも必ず行うよう習慣化を促します。「発作で苦しい時に無理にうがいをする必要はありませんが、落ち着いたら必ず行ってください」という現実的な指導が効果的です。

また、副作用が現れた場合の対応についても事前に説明しておきます。軽度の症状であれば様子を見ても良いが、口腔カンジダ症が疑われる場合や症状が強い場合には速やかに受診するよう伝えます。

発作止め(SABA)の頻回使用についても注意喚起が必要です。

LABA/ICS配合剤を使用していても、発作時にはSABAが必要になることがあります。しかし、SABAの使用頻度が週に数回以上になる場合は、コントロールが不十分である可能性が高く、治療のステップアップを検討すべきサインです。過去には、SABAを頻繁に使いすぎた患者で死亡率が上昇したという報告もあり、この点は患者に明確に伝える必要があります。

シムビコートの屯用については、定期吸入との区別を明確にする教育が重要です。定期吸入は毎日決まった時間に行い、症状悪化時のみ追加吸入を行うというルールを、患者が正確に理解していることを確認します。追加吸入の上限回数についても具体的に指導します。

気管支喘息治療の最新知見(東京都医師会)

ICS/LABAの副作用管理とアドヒアランス向上のポイントがまとめられています。嗄声や口腔カンジダの予防策について詳しい情報が得られます。


吸入療法 6ー1 特集:喘息の治療戦略におけるICS/LABA新規配合剤(pM