オーラノフィン作用機序と免疫抑制効果
注射金剤が効かない患者でもオーラノフィンは効果を示します。
オーラノフィンの基本的な作用機序と分子標的
オーラノフィンは関節リウマチに対する金製剤として最も古い抗リウマチ薬のひとつですが、その作用機序は長らく完全には解明されていませんでした。現在では、オーラノフィンの主要な標的タンパク質がチオレドキシン還元酵素(TrxR)であることが明らかになっています。このセレノプロテインは細胞内の酸化還元状態を調節する重要な役割を担っています。
オーラノフィンの分子構造は、アセチル化されたチオグルコースに金原子とトリエチルホスフィンが配位した独特な形をしています。
投与触媒のような構造といえます。
体内では、まず金原子と硫黄原子の間の結合が切断されます。次に金原子とリン原子の間の結合が開裂することで、活性型となって効果を発揮すると考えられています。
金原子は、チオレドキシンレダクターゼの活性部位にあるセレノシステイン残基のセレノール基(-SeH)と共有結合を形成します。セレノシステインは硫黄の代わりにセレン原子を持つ特殊なアミノ酸で、ヒトでは数種類のタンパク質にしか使われていません。これが”21番目のアミノ酸”と呼ばれる理由です。
金原子とリン原子の結合が開裂した後、付近にあるシステイン残基のチオール基(-SH)とも金原子が反応して架橋を形成します。この二重の結合により、チオレドキシンレダクターゼの酵素活性が強力に阻害されるのです。生化学実験だけでなく、タンパク質結晶構造解析でもこの反応機構が確認されています。
結果として、免疫細胞による抗体産生や抗原提示が抑制されることで、抗リウマチ作用が発現します。
つまり基本的な作用です。
この機序は、サイトゾル型とミトコンドリア型の両方のチオレドキシンレダクターゼに対して働くことが知られています。
オーラノフィンの分子構造と作用機序の詳細について、Chem-Stationの解説記事で確認できます
オーラノフィンと注射金剤の作用機序の違い
オーラノフィンは経口投与可能な金製剤として開発されましたが、同じ金製剤である注射金剤(金チオリンゴ酸ナトリウム、シオゾール)とは作用機序が異なることが臨床的に重要です。注射金剤とは作用機序が異なるため、注射金剤が無効の症例でもオーラノフィンは効果を示すことがあります。比較的早期の軽症関節リウマチの治療に適しています。
注射金剤の場合、投与方法は1〜2週間に1回の筋肉注射で、効果発現までに2〜3ヶ月、注射総量で200〜300mgが必要とされます。有効性は約3分の2の患者で認められますが、効果は高い一方で副作用のリスクも相対的に高めです。皮疹、蛋白尿、肝障害などが主な副作用として報告されています。
一方、オーラノフィンは経口投与で、通常1回3mgを1日2回服用します。効果発現までには通常3〜4ヶ月を要し、患者によっては6ヶ月かかることもあります。効果はそれほど高くないものの、重篤な副作用は他の抗リウマチ薬に比して低頻度です。
主な副作用は下痢や軟便で、副作用発現率は16.37%(925/5,651例)と報告されており、そのうち下痢が6.05%、発疹が2.97%、そう痒が2.57%、腹痛が1.82%となっています。
消化器症状が多いということですね。
骨髄障害、腎障害、肝障害、間質性肺炎の報告もありますが頻度は低いとされています。
作用機序の違いが臨床効果の違いに反映されているため、注射金剤で効果が得られなかった場合でも、オーラノフィンへの切り替えを検討する価値があります。炎症反応が中等度以上の場合には注射金剤が選択されることが多く、比較的早期で骨破壊が著明でなく炎症反応も高度でない場合にはオーラノフィンが使用されます。
オーラノフィンの免疫系への作用と抗炎症効果
オーラノフィンの免疫系への関与としては、サプレッサーT細胞活性の誘導が挙げられます。サプレッサーT細胞は免疫反応を抑制する働きを持つリンパ球で、過剰な免疫反応を制御することで自己免疫疾患の症状を緩和します。末梢血中のリンパ球に作用し、免疫グロブリンの産生を抑制するのです。
具体的には、B細胞からのIgGやIgMなどの免疫グロブリンの産生が抑制されます。これにより、関節リウマチで見られる異常な抗体産生が軽減されます。
B細胞に直接作用ということですね。
さらに、マクロファージや単球に作用して、IL(インターロイキン)やTNF-α(腫瘍壊死因子α)などの炎症性サイトカインの産生も抑制されます。
抗炎症作用のメカニズムとしては、ライソゾームという細胞内小器官からの酵素放出を阻害することも報告されています。ライソゾーム酵素は組織破壊に関与するため、その放出を抑えることで関節炎症が軽減されるわけです。
投与後、オーラノフィンは関節内の滑液に蓄積することが知られています。滑液は関節を包む滑膜から分泌される液体で、関節の潤滑や栄養供給を担っています。オーラノフィンが滑液中に蓄積することで、局所での抗炎症作用が持続的に発揮されると考えられています。
オーラノフィン中の金のおよそ25%が吸収され、極めて速やかに代謝されるため、血中ではオーラノフィンそのものとしては検出されません。吸収された金の60%(投与量の15%)が尿中に排泄され、残りは糞便中に排泄されます。
効果が現れるまで時間がかかるのは基本です。
遅効性のため、効果判定には少なくとも3ヶ月程度の投与期間が必要となります。患者さんには、すぐには効果が出ないことを事前に説明しておくことが、治療継続のために重要です。
オーラノフィンの血清アルブミン結合と生物活性
近年の研究で、オーラノフィンが血清中で速やかにアルブミンと共有結合性の付加物を形成し、これが生物活性を著しく低下させる原因となっていることが明らかになりました。この発見は、オーラノフィンのがん治療への応用を検討する過程で得られたものです。
アルブミンは血清中で最も豊富なタンパク質で、様々な物質と結合して運搬する役割を持っています。オーラノフィンの金イオンは、アルブミンのシステイン残基と共有結合を形成しやすい性質があります。この結合が形成されると、金原子がチオレドキシンレダクターゼと結合する機会が減少してしまいます。
血清不活性化の問題を克服するため、研究チームは新たにトリエチルホスフィンなどのリガンド(配位子)を補充する戦略を開発しました。リガンドを補充することで、アルブミンとの結合を動的に制御し、標的タンパク質であるチオレドキシンレダクターゼへの到達を促進できることが示されています。
これはつまり、アルブミン-金結合の動的制御により治療効果が回復するということです。
リガンド補充は実用的です。
この知見は、オーラノフィンを関節リウマチ以外の疾患、特にがん治療に応用する際に重要な意味を持ちますが、関節リウマチ治療においても投与方法の最適化に役立つ可能性があります。
実際、オーラノフィンは動物モデルにおいて抗がん活性を示しており、肺がんや卵巣がんに対する臨床試験が進められています。米国ではがん治療へのオーラノフィンの効果を検討する第2相臨床試験の実施がFDA(米国医薬品局)から承認されています。抗リウマチ薬としての用途から、がん治療薬としての再精製(drug repurposing)が期待されているわけです。
オーラノフィンのがん治療効果とリガンド補充による血清不活性化からの回復について、CareNet Academiaで詳細な研究報告が公開されています
オーラノフィンのがん治療や感染症への応用展開
従来、オーラノフィンは抗リウマチ薬として使われてきましたが、最近になって赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)にも非常によく効くことが判明しました。910種類の化合物コレクションから最もよく効く物質として、オーラノフィンが選び出されたのです。
意外な発見ですね。
従来の赤痢アメーバ治療薬であるメトロニダゾールと比較して、オーラノフィンは半数効果濃度で約10倍強い活性を示すことが分かりました。しかも、副作用はメトロニダゾールよりも小さいと考えられています。赤痢アメーバに感染させたマウスを使った実験でも、オーラノフィンの効き目が確認されています。
赤痢アメーバでの標的もやはりチオレドキシンレダクターゼのようで、少量のオーラノフィンを投与したときの遺伝子発現パターンの変化から推測されています。寄生虫の酸化還元系を阻害することで抗寄生虫作用を発揮するわけです。
オーラノフィンは様々ながんに対する抗がん活性も研究されており、この研究グループでは、オーラノフィンがp53の安定化制御に関与することで腸管を放射線障害から保護する可能性も報告されています。p53は”ゲノムの守護神”と呼ばれる重要ながん抑制遺伝子です。
卵巣がん再発患者に対するオーラノフィンとシロリムス併用療法の臨床試験も実施されましたが、PKCι(プロテインキナーゼCイオタ)を発現する再発性高悪性度漿液性卵巣がん患者において、期待されたほどの抗腫瘍活性は示されませんでした。
今後の研究が必要です。
犬の骨肉腫に対する研究では、オーラノフィンを標準治療と組み合わせることで雄犬の生存期間が改善することが示されています。このように、オーラノフィンはリウマチ治療薬としての枠を超えて、多様な疾患への応用が模索されている薬剤なのです。
臨床診療での使用は減少していますが、オーラノフィンに関する研究は継続しており、がんや細菌および寄生虫感染を含むいくつかの異なる疾患の治療が有望視されています。2015年6月に経口金製剤「リドーラ錠」は製造上の問題もあり販売中止となりましたが、基礎研究レベルでは依然として注目を集めている薬剤です。
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