デクスメデトミジンと商品名
先発品プレセデックスと後発品で薬価が約2倍違う。
デクスメデトミジンの先発品商品名
デクスメデトミジン塩酸塩の先発品商品名は「プレセデックス」です。ファイザー株式会社と丸石製薬株式会社が製造販売しています。
プレセデックスは、α2アドレナリン受容体作動薬に分類される鎮静薬として医療現場で広く使用されています。集中治療室における人工呼吸中の鎮静や、局所麻酔下での非挿管手術・処置時の鎮静に用いられる薬剤です。この薬剤の最大の特徴は、呼吸抑制作用がほとんどないことにあります。
ほかの鎮静薬と異なる点ですね。
先発品のプレセデックスには、2mLバイアル製剤と50mLシリンジ製剤の2つの剤形があります。2mLバイアル製剤は1瓶あたり2,421円、50mLシリンジ製剤は1筒あたり2,229円の薬価が設定されています。シリンジ製剤は注射器に薬液が充填済みで、すぐに使用できる利便性があります。
医療現場では商品名「プレセデックス」で呼ばれることが多いですが、一般名である「デクスメデトミジン」や略称の「DEX」で表記される場合もあります。薬剤管理や処方時には、これらの名称が同一の薬剤を指していることを理解しておく必要があります。
KEGGの医療用医薬品データベースには、プレセデックスの詳細な薬剤情報が掲載されており、添付文書の内容や薬価情報を確認できます。
デクスメデトミジンの後発品一覧と薬価比較
デクスメデトミジンの後発品(ジェネリック医薬品)は、複数のメーカーから販売されています。主な後発品は、サンド株式会社の「デクスメデトミジン静注液200μg『サンド』」とニプロ株式会社の「デクスメデトミジン静注液200μg『ニプロ』」です。
先発品プレセデックスと後発品の薬価差は非常に大きくなっています。プレセデックス2mLバイアルが2,421円であるのに対し、サンドの後発品は1,102円、ニプロの後発品は1,455円です。つまり先発品と比較して、サンド製は約1,300円、ニプロ製は約1,000円も安価になります。
医療費削減効果が大きいです。
50mLシリンジ製剤では、プレセデックスが2,229円であるのに対し、ニプロの後発品シリンジは1,943円で約300円の差があります。集中治療室で長時間使用する場合、この価格差は医療機関の薬剤費に大きく影響します。たとえば1日3本使用する患者が10名いた場合、年間で数百万円規模のコスト削減につながる計算です。
後発品は有効成分が先発品と同じデクスメデトミジン塩酸塩で、同等の効果が期待できます。ただし添加物や製剤特性に若干の違いがある場合があるため、初めて使用する際には各メーカーの添付文書を確認することが推奨されます。
一部の後発品では、用法用量や適応症が先発品と完全に一致していない場合があります。特に小児の非侵襲的検査時の鎮静については、2023年2月に先発品プレセデックスに追加された新しい適応であり、後発品がすべて同じ適応を取得しているわけではありません。
使用前に確認が必須です。
デクスメデトミジンの作用機序と特徴
デクスメデトミジンは、α2アドレナリン受容体に高い選択性を持つ作動薬として作用します。中枢神経系の青斑核に存在するα2受容体を刺激することで、ノルアドレナリンの放出を抑制し、鎮静作用を発揮します。この作用メカニズムは、GABA受容体に作用するベンゾジアゼピン系やプロポフォールとは根本的に異なります。
最大の特徴は呼吸抑制がほとんど生じないことです。通常の鎮静薬では深い鎮静状態になると呼吸中枢が抑制されますが、デクスメデトミジンではα2受容体を介した作用のため、呼吸機能が比較的保たれます。このため非挿管患者の鎮静に適しており、人工呼吸からの離脱時にも使用しやすい薬剤となっています。
安全性が高いということですね。
もう一つの重要な特徴は、刺激に対して容易に覚醒する点です。デクスメデトミジンで鎮静されている患者は、呼びかけや軽い刺激で目を覚まし、コミュニケーションを取ることができます。刺激がなくなればまた眠りにつくという、自然な睡眠に近い状態を作り出します。この特性により、患者の意識レベルを確認しながら処置を進めることが可能です。
鎮痛作用を併せ持つことも見逃せない特徴です。脊髄後角のα2受容体に作用して痛みの伝達を抑制するため、オピオイド鎮痛薬の使用量を減らせる可能性があります。実際の臨床では、デクスメデトミジン使用によりフェンタニルなどのオピオイドの投与量を30%程度削減できたという報告もあります。
循環器系への作用は複雑です。投与初期には末梢のα2受容体刺激により血管収縮が起こり、一時的に血圧が上昇することがあります。その後、中枢での交感神経抑制作用により血圧低下と徐脈が生じます。この二相性の反応を理解しておくことが、安全な使用のカギとなります。
日本麻酔科学会の催眠鎮静薬ガイドラインでは、デクスメデトミジンの薬理作用と臨床使用時の注意点が詳しく解説されています。
デクスメデトミジンの副作用と発現頻度
デクスメデトミジンの副作用で最も高頻度に発現するのは低血圧です。臨床試験データによると、低血圧の発現率は約48%に達しています。これは薬理作用による必然的な反応であり、特に循環血液量が少ない患者や高齢者で顕著に現れます。
約半数の患者で起こるリスクです。
徐脈も重要な副作用で、発現頻度は約23%です。心拍数が50回/分以下に低下する場合もあり、特に迷走神経緊張が高い患者では注意が必要です。重度の徐脈が生じた場合には、抗コリン剤(アトロピン)の投与やペースメーカーの使用が必要になることがあります。
意外なことに、高血圧も約12%の患者で報告されています。これは初期負荷投与時に末梢血管収縮が起こるためで、投与速度が速いほど発現しやすくなります。高血圧は一過性であることが多いですが、脳血管障害のリスクがある患者では慎重な対応が求められます。
呼吸抑制の発現率は約3%と比較的低いですが、ゼロではありません。特に他の鎮静薬やオピオイドと併用した場合には、呼吸抑制のリスクが高まります。単剤使用であれば呼吸抑制はまれですが、併用薬がある場合には注意深い観察が必要です。
副作用に対処するためには、バイタルサインの継続的なモニタリングが不可欠です。少なくとも5分ごとに心拍数、血圧、酸素飽和度、呼吸数を記録することが推奨されています。低血圧や徐脈が発現した場合には、投与速度を減速または中止し、必要に応じて輸液や昇圧薬の投与を行います。
高齢者では副作用が発現しやすくなります。生理機能の低下により、深い鎮静作用が現れやすく、作用持続時間も延長する傾向があります。65歳以上の患者では、投与速度を減速することを考慮すべきです。
まれですが重大な副作用として、心室細動や心停止が報告されています。発現頻度は0.1~0.3%と低いですが、発生した場合には致命的となる可能性があります。このリスクを考慮し、デクスメデトミジンは救急蘇生の準備が整った環境でのみ使用することが添付文書で義務付けられています。
デクスメデトミジンの適応と使用条件
デクスメデトミジンの保険適応は、大きく分けて3つあります。第一に集中治療における人工呼吸中および人工呼吸離脱後の鎮静、第二に局所麻酔下での非挿管手術・処置時の鎮静、第三に小児の非挿管での非侵襲的処置および検査時の鎮静です。
2023年2月に追加された小児適応が注目されています。この適応により、デクスメデトミジンは小児のMRI検査時などの鎮静に使用できる日本初の静注薬となりました。それまで小児の検査時鎮静では、抱水クロラールなどの経口薬が主に使用されていましたが、効果が不十分な場合や経口摂取できない場合に対応が困難でした。
小児領域での選択肢が広がりました。
小児適応では、年齢と体重に応じて投与量が細かく設定されています。生後1ヶ月以上2歳未満では、初期負荷投与として9μg/kg/時を10分間投与し、維持投与は1.5μg/kg/時です。2歳以上では初期負荷投与12μg/kg/時、維持投与1~2μg/kg/時となっています。修正在胎45週未満の新生児には使用できません。
デクスメデトミジンを使用する際には、必ず満たすべき条件があります。患者の呼吸状態や循環動態を継続的に監視できる環境が必須で、パルスオキシメーター、心電図モニター、血圧計による常時監視が求められます。また救急蘇生のための器具(気管挿管セット、用手換気用バッグなど)と薬剤を直ちに使用できる状態に準備しておく必要があります。
人員配置の要件も厳しく定められています。非挿管患者の管理に熟練し、デクスメデトミジンの薬理作用を正しく理解した医師が必要です。さらに、手術や処置を行う医師とは別に、患者の監視に専念する医師または看護師を配置しなければなりません。これは患者の異常を瞬時に認識して適切に対応するための重要な要件です。
内視鏡診療での使用については複雑な状況があります。デクスメデトミジンは内視鏡鎮静に対して保険適用を持つ唯一の薬剤ですが、実際の臨床現場ではベンゾジアゼピン系薬剤(ミダゾラムなど)が適応外で広く使用されています。デクスメデトミジン単独では十分な鎮静が得られない場合もあり、使用方法については各施設での検討が必要です。
日経メディカルの解説記事では、内視鏡領域でのデクスメデトミジン使用の実際と課題について詳しく述べられており、実務の参考になります。
禁忌事項として、本剤の成分に対する過敏症の既往がある患者には使用できません。また重篤な不整脈や心不全のある患者では、循環動態への影響を考慮して慎重な判断が求められます。低血圧や徐脈が生じやすい薬剤であるため、これらのリスクが高い患者では使用を避けるか、より厳重な監視体制が必要です。