ペランパネル水和物の作用機序と副作用、投与方法の注意点

ペランパネル水和物の臨床における適正使用

併用療法と単剤療法で最高用量が倍も違うことをご存知ですか。

この記事の3つのポイント
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世界初のAMPA受容体拮抗作用

シナプス後膜のAMPA受容体を選択的に阻害する新規作用機序により、従来の抗てんかん薬とは異なるアプローチで発作を抑制します

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攻撃性などの精神症状に注意

易刺激性6.8%、攻撃性3.5%と高頻度で精神症状が発現するため、投与開始時から十分な観察が必要です

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併用薬で用量設定が変わる

CYP3A誘導作用を持つ抗てんかん薬との併用で血中濃度が約50%低下するため、維持用量の調整が必須です

ペランパネル水和物の作用機序と薬理学的特徴

ペランパネル水和物(商品名:フィコンパ)は、エーザイ株式会社の筑波研究所で創製されたファースト・イン・クラスの抗てんかん薬です。本剤の最大の特徴は、シナプス後膜に主として存在するAMPA(α-amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic acid)型グルタミン酸受容体に対する選択的な非競合的拮抗作用にあります。

従来の抗てんかん薬の多くは、ナトリウムチャネル遮断作用、カルシウムチャネル遮断作用、GABA受容体作動作用などの機序で効果を発揮しますが、ペランパネルはこれらとは全く異なる作用点を持っています。つまり、神経伝達物質であるグルタミン酸によるAMPA受容体の活性化を選択的に阻害することで、神経細胞の過剰興奮を抑制するという独自のメカニズムです。

AMPA受容体はてんかん波の発生並びにシナプスを介した伝播に重要な役割を持つと想定されています。本剤がこれらを抑制することにより抗てんかん作用を発揮するわけです。この新規作用機序により、従来の抗てんかん薬で十分な効果が得られなかった症例での有効性が期待されています。

エーザイの製品情報ページでは、ペランパネルの創薬背景と作用機序の詳細が解説されています

ペランパネルは主として薬物代謝酵素CYP3Aで代謝されるため、この酵素の活性に影響を与える薬剤との相互作用に注意が必要です。特にカルバマゼピンやフェニトインなどのCYP3A誘導作用を持つ抗てんかん薬を併用する場合、ペランパネルの血中濃度が約50%程度に低下する可能性があります。

ペランパネル水和物の適応と投与方法の実際

ペランパネル水和物は、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)および強直間代発作に対して適応を有しています。製剤としては錠剤(2mg、4mg)、細粒(1%)、そして2024年4月に新たに発売された点滴静注用製剤が使用可能です。

経口製剤の用法用量は、単剤療法と併用療法で大きく異なります。単剤療法の場合、成人及び4歳以上の小児には1日1回2mgの就寝前経口投与より開始し、その後2週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増します。維持用量は1日1回4〜8mgとし、1日最高8mgまでです。

一方、併用療法では、成人及び12歳以上の小児に1日1回2mgの就寝前経口投与より開始しますが、漸増間隔が1週間以上と短くなります。維持用量は1日1回4〜8mgですが、1日最高12mgまで増量可能です。最高用量が単剤療法の1.5倍となっていることが大きな違いですね。

さらに注意が必要なのは、CYP3A誘導作用を持つ抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトインなど)を併用する場合です。このような場合、維持用量は1日1回8〜12mgに設定されます。血中濃度が低下するため、より高用量が必要になるということです。

点滴静注用製剤は、一時的に経口投与ができない患者における代替療法として使用されます。投与方法は、成人及び4歳以上の小児にペランパネル経口投与と同じ1日用量を、1日1回30分以上かけて点滴静脈内投与します。ただし、4歳以上12歳未満の小児への投与時間は90分とする必要があります。経口投与が可能になった場合は速やかに経口製剤に切り替えることとされており、国内外の臨床試験において5日間を超えた点滴静脈内投与の使用経験はありません。

ペランパネル水和物の副作用と安全性管理

ペランパネル水和物で最も注意すべき副作用は、攻撃性等の精神症状です。臨床試験データによると、易刺激性が6.8%、攻撃性が3.5%、不安が1.5%、怒りが1.1%、幻覚(幻視、幻聴等)が0.6%、妄想が0.3%の頻度で認められています。これらの精神症状は、ちょっとした刺激で気持ちや体の変調をきたす、周囲に暴言を吐いたり暴力をふるう、器物を破壊する、敵意をもつ、不安、死にたいという気持ちになるなどの形で現れることがあります。

特に重要なのは、本剤を増量した場合にこれらの精神症状が多く認められる点です。また、ペランパネルの代謝を促進する抗てんかん薬を併用する場合により高頻度となることも報告されています。小児における易刺激性、攻撃性・敵意等の精神症状の発現割合が成人に比べて高くなることも示唆されているため、小児患者では特に注意深い観察が必要です。

このような症状があらわれた場合には、本剤の減量又は投与中止を考慮し、適切な処置を行う必要があります。患者さんや家族にも、これらの症状が現れる可能性について十分に説明し、症状に気づいたらすぐに連絡するよう指導することが大切ですね。

その他の主な副作用としては、浮動性めまい、傾眠、頭痛などの中枢神経系症状が高頻度で認められます。また、運動失調(ふらつき)も多く見られ、転倒のリスクがあるため、特に高齢者では注意が必要です。めまい、眠気、注意力・集中力・反射運動能力などの低下が起こる可能性があるため、本剤服用中は自動車の運転など危険を伴う操作を避けるよう患者指導が必須となります。

PMDAの適正使用ガイドでは、副作用の詳細な発現状況と対策が記載されています

ペランパネル水和物の薬物相互作用と血中濃度管理

ペランパネル水和物は主としてCYP3Aで代謝されるため、この酵素系に影響を与える薬剤との相互作用に細心の注意が必要です。特にCYP3A誘導作用を持つ薬剤との併用では、ペランパネルの血中濃度が著しく低下する可能性があります。

具体的には、カルバマゼピン、フェニトイン、フェノバルビタール、プリミドン、リファンピシン、セイヨウオトギリソウ含有食品などが該当します。これらを併用する場合、ペランパネルの血中濃度が約50%程度まで低下することが報告されており、維持用量を8〜12mgと高めに設定する必要があります。

逆に、CYP3A阻害作用を有する薬剤(イトラコナゾール、ケトコナゾール、クラリスロマイシンなど)との併用では、ペランパネルの血中濃度が上昇する可能性があります。このような場合には、副作用の発現に十分注意しながら慎重に投与する必要がありますね。

ペランパネルの治療域は明確に確立されていないため、血中濃度モニタリング(TDM)は必須ではありません。しかし、服薬コンプライアンスの確認や副作用発現時、相互作用がある薬剤との併用時などにおいては、血中濃度測定が治療方針決定に有用な情報を提供する可能性があります。参考値として、報告されている血中濃度範囲は0.05〜0.4μg/mLとされています。

採血のタイミングとしては、連続投与における定常状態到達後(投与開始後約2〜3週間)のトラフ値(次回投与直前)を測定するのが基本です。ペランパネルの半減期が約105時間と非常に長いため、定常状態に達するまでに時間がかかることも特徴の一つとなっています。

ペランパネル水和物投与における特定患者への配慮

妊婦または妊娠している可能性のある女性に対しては、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとされています。動物実験(ラット)において、妊娠及び授乳期間中の投与で一般状態の悪化が認められる用量で、胚・胎児死亡率の増加、出生児の体重増加抑制及び死亡率増加が報告されています。

授乳婦に対しては、治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討する必要があります。授乳ラットに投与したとき、ペランパネル又はその代謝物が乳汁中へ移行することが報告されているため、慎重な判断が求められます。実際の臨床では、個々の症例においてリスクとベネフィットを丁寧に評価し、患者さんと十分に話し合って決定することが重要です。

小児患者に対しては、4歳以上で使用可能です。4歳以上12歳未満の小児に対する用法用量は、成人及び12歳以上の小児とは異なる点に注意が必要です。具体的には、1日1回2mgの就寝前経口投与より開始し、その後2週間以上の間隔をあけて2mgずつ漸増します(成人では1週間以上の間隔で漸増可能)。また、点滴静注用製剤を使用する場合、4歳以上12歳未満の小児への投与時間は90分とし、成人の30分以上よりも長い時間をかけて投与する必要があります。

高齢者に対しては、特に転倒リスクに注意が必要です。運動失調、浮動性めまい、傾眠などの副作用により転倒しやすくなるため、患者さんやご家族に対して転倒予防の指導を行うことが大切ですね。また、一般に高齢者では生理機能が低下しているため、慎重に投与を進める姿勢が求められます。

肝機能障害患者では、ペランパネルのクリアランスが低下し血中濃度が上昇する可能性があるため、軽度及び中等度の肝機能障害のある患者では慎重に投与し、重度の肝機能障害のある患者では投与は推奨されません。腎機能障害患者では、軽度から中等度の障害では用量調整は不要ですが、重度の腎機能障害及び透析を受けている患者では、薬物動態が十分に検討されていないため慎重投与が必要です。

KEGGの医療用医薬品データベースには、特定患者における詳細な投与上の注意が記載されています

これらの情報を総合的に理解し、個々の患者さんの状態に応じた適切な投与計画を立てることが、ペランパネル水和物の臨床使用において極めて重要となります。