非エルゴリン系ドパミン作動薬の特徴と副作用管理

非エルゴリン系ドパミン作動薬の特徴と副作用管理

非麦角系は突発的睡眠で自動車運転が禁止されます。

この記事の3つのポイント
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非エルゴリン系の基本構造

麦角アルカロイド構造を持たず、心臓弁膜症のリスクが低い安全性の高いドパミン作動薬です。プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチンなどが代表的な薬剤です

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特有の副作用リスク

突発的睡眠による自動車事故の報告が18例あり、運転禁止の厳格な指導が必要です。また衝動制御障害(ICD)による病的賭博や性欲亢進などにも注意が必要です

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適切な患者管理

パーキンソン病とレストレスレッグス症候群の両方に適応があり、用法用量や投与経路の違いを理解した上で、定期的なモニタリングが求められます

非エルゴリン系ドパミン作動薬の基本的特徴と分類

非エルゴリン系ドパミン作動薬は、麦角アルカロイド構造を持たないドパミン受容体作動薬の総称です。脳内のドパミン受容体、特にD2およびD3受容体を直接刺激することで、不足しているドパミンの作用を補い、パーキンソン病の運動症状を改善します。現在、日本で使用可能な主な薬剤には、プラミペキソール(ビ・シフロール、ミラペックス)、ロピニロール(レキップ)、ロチゴチン(ニュープロパッチ)、タリペキソール(ドミン)、アポモルヒネなどがあります。

これらの薬剤は、麦角系ドパミン作動薬(ブロモクリプチン、ペルゴリド、カベルゴリン)と比較して、心臓弁膜症や肺線維症などの重篤な心血管系副作用のリスクが著しく低いという特徴があります。このため、新規にドパミン作動薬を開始する場合には、非エルゴリン系が一選択となっています。麦角系は効果不十分または忍容性に問題がある場合のみ使用が推奨されています。

つまり非エルゴリン系が原則です。

非エルゴリン系ドパミン作動薬は、パーキンソン病の早期から進行期まで幅広く使用されます。65歳未満の若年パーキンソン病患者では、L-ドパによる運動合併症(ジスキネジアwearing-off現象)の発症を遅らせる目的で、第一選択薬として使用されることが多いです。また、L-ドパとの併用により、L-ドパの必要量を減らし、運動症状の日内変動を改善する効果も期待できます。

薬剤ごとに受容体への親和性や薬物動態が異なります。プラミペキソールはD3受容体への親和性が特に高く、ロピニロールはD2受容体ファミリーに対する選択的なアゴニストです。ロチゴチンは経皮吸収型製剤(貼付剤)であり、1日1回の貼付で24時間安定した血中濃度を維持できるという利点があります。嚥下障害のある患者や内服薬の管理が困難な患者にとって、貼付剤は有用な選択肢となります。

日経メディカル処方薬事典の非麦角系ドパミン作動薬解説には、作用機序と副作用の詳細が記載されています

非エルゴリン系ドパミン作動薬と麦角系の違いと選択基準

非エルゴリン系と麦角系の最も重要な違いは、心臓弁膜症のリスクです。麦角系ドパミン作動薬、特にペルゴリドとカベルゴリンは、長期投与により心臓弁膜症を引き起こすリスクがあることが、海外の大規模疫学研究で明らかになっています。これはエルゴリン骨格が5-HT2B受容体を刺激し、心臓弁の線維化を引き起こすためと考えられています。欧米では1日3000μgを超える投与量で特にリスクが高いとされていますが、日本国内で使用される少量投与(ペルゴリド1.5mg/日以下)でも発症例が報告されています。

これが選択基準です。

非エルゴリン系は、この心臓弁膜症のリスクが極めて低いため、安全性の面で優れています。日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドライン2018では、新規にドパミンアゴニストを開始する場合は、まず非麦角系薬を選択し、効果不十分や忍容性に問題がある場合にのみ麦角系の使用を検討することが推奨されています。特に若年者、長期治療が予想される患者、心疾患のリスクがある患者では、非エルゴリン系の選択がより重要です。

服用開始時の消化器症状については、従来、麦角系の方が非麦角系よりも出やすいとされてきました。しかし実際には、非エルゴリン系でも悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状は高頻度で認められます。プラミペキソールの臨床試験では、L-ドパ非併用例で33.7%、併用例で31.4%に副作用が認められ、その多くが消化器系症状でした。このため、どちらの系統を選択する場合でも、少量から開始し、慎重に増量することが重要です。

効果の面では、非エルゴリン系も麦角系も、パーキンソン病の運動症状改善において同等の有効性を示します。ただし、薬剤間で受容体への親和性や薬物動態が異なるため、個々の患者の症状や背景に応じて薬剤を選択することが求められます。効果不十分な場合には、同じ系統内での薬剤変更や、L-ドパとの併用療法を検討します。

日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドラインには、各薬剤の特徴と用量比の詳細な情報があります

非エルゴリン系ドパミン作動薬の突発的睡眠リスクと運転管理

非エルゴリン系ドパミン作動薬の最も重大な副作用の一つが、突発的睡眠です。これは前兆のない突然の眠気や睡眠発作で、日常生活や自動車運転中に起こると重大な事故につながる可能性があります。2008年3月の医薬品・医療機器等安全性情報No.245では、プラミペキソールとロピニロールによる突発的睡眠について注意喚起が行われ、添付文書の「警告」欄に記載されることになりました。

発売後の調査では、本剤服用中に自動車を運転し、突発的睡眠により自動車事故を起こした症例が18例報告されています。この数字は氷山の一角であり、報告されていない事例も多数存在すると推測されます。傾眠や突発的睡眠の頻度は稀とされていますが、一度発症すると患者本人や周囲の人々の生命に関わる重大な結果をもたらします。

重大なリスクがあります。

このため、患者には本剤の突発的睡眠および傾眠等についてよく説明し、本剤服用中には自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業に従事させないよう注意することが添付文書で義務付けられています。服薬指導の際には、単に「眠気が出ることがある」という曖昧な説明ではなく、「運転中に前兆なく突然眠ってしまい、事故を起こす危険性がある」ことを具体的に伝える必要があります。

症状が出現した場合には、減量、休薬、または投与中止などの適切な処置を行います。また、他のドパミン作動薬への変更も検討します。ただし、突発的睡眠はドパミン受容体作動薬に共通する副作用であるため、薬剤変更後も慎重な観察が必要です。患者には、眠気や突発的睡眠が出現した場合は、すぐに医師または薬剤師に連絡するよう指導します。

職業ドライバーや運転が必須の患者の場合、非エルゴリン系ドパミン作動薬の使用は慎重に判断する必要があります。どうしても使用する場合は、家族や職場の理解を得た上で、運転を控える期間を設けるなどの対策が必要です。L-ドパ製剤や他の抗パーキンソン病薬への変更も検討すべきでしょう。

厚生労働省の医薬品・医療機器等安全性情報には、突発的睡眠についての詳しい注意喚起が掲載されています

非エルゴリン系ドパミン作動薬による衝動制御障害(ICD)の管理

衝動制御障害(Impulse Control Disorder: ICD)は、パーキンソン病患者におけるドパミン補充療法の重要な非運動性合併症です。病的賭博、性欲亢進、買いあさり、むちゃ食いなどの過剰または有害な衝動や行動を特徴とします。ICDは、持続的な思考や、何かをしたいという制御できない衝動を伴い、患者自身がそれを問題と認識していない場合も多いです。

非エルゴリン系ドパミン作動薬は、ICDの発症リスクが比較的高いことが知られています。特にドパミンD3受容体への親和性が高い薬剤で発症しやすく、プラミペキソールではそのリスクが報告されています。ICDの発症メカニズムは、中脳辺縁系におけるドパミンD3受容体の過剰刺激が関与していると考えられています。この系統は報酬系と呼ばれ、快感や動機付けに関わる脳の領域です。過剰なドパミン刺激により、報酬系が異常に活性化され、衝動的な行動が抑制できなくなります。

発症の危険因子には、若年発症、男性、新奇性追求性格、ドパミンアゴニストの高用量使用、うつ病の既往などが挙げられます。ドパミンアゴニスト服用者の約15〜30%にICDが発症するという報告もあり、決して稀な副作用ではありません。しかし、患者や家族がこの副作用について知らないことも多く、発見が遅れるケースが少なくありません。

注意深い観察が必要です。

ICDの早期発見のためには、定期的なスクリーニングが重要です。診察時に、ギャンブル、買い物、性行動、食行動などについて、変化がないか本人および家族から情報を収集します。日本神経学会のパーキンソン病診療ガイドラインでは、ドパミンアゴニスト服用者に対して、ICDのスクリーニングを定期的に行うことが推奨されています。ICDが疑われる場合は、速やかに薬剤の減量または中止を検討します。

治療としては、原因薬剤の減量または中止が最も効果的です。ドパミンアゴニストの中止により、ICDの症状は改善することが多いですが、パーキンソン病の運動症状が悪化する可能性があるため、L-ドパへの切り替えなどの代替療法を慎重に検討する必要があります。また、ICDに伴う多額の借金や家族関係の崩壊など、社会的・経済的な問題が深刻化している場合は、精神科や心療内科との連携も必要になります。

日本神経治療学会誌には、パーキンソン病患者の行動障害とICDについての詳しい解説があります

非エルゴリン系ドパミン作動薬の適応疾患と投与方法の実際

非エルゴリン系ドパミン作動薬の主な適応疾患は、パーキンソン病と中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(RLS、下肢静止不能症候群、むずむず脚症候群)の2つです。パーキンソン病に対しては、早期から進行期まで幅広く使用され、L-ドパ単独療法、L-ドパとの併用療法のいずれでも効果を発揮します。RLSに対しては、プラミペキソール(ビ・シフロール)とロチゴチン(ニュープロパッチ2.25mg)に適応が認められています。

パーキンソン病に対する投与方法は、薬剤ごとに異なります。プラミペキソールの場合、通常は1日量0.125mgから開始し、1週間ごとに1日量0.125mgずつ増量し、維持量(標準1日量1.5〜4.5mg)を定めます。

1日2〜3回に分けて食後に服用します。

徐放錠(ミラペックスLA)の場合は、1日1回の服用で済むため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。

ロピニロールは、1日量0.25mgから開始し、最初の1週間は1日3回に分けて食後に服用します。以後、経過を観察しながら、原則として1週間ごとに1日量0.75mgずつ増量し、維持量(標準1日量3〜15mg)を定めます。徐放錠(レキップCR)も開発されており、1日1回の服用が可能です。

少量から開始が基本です。

ロチゴチン(ニュープロパッチ)は、1日1回4.5mg/日から開始し、以後経過を観察しながら1週間ごとに1日量として4.5mgずつ増量し、維持量(標準1日量9〜36mg)を定めます。貼付部位は、腹部、大腿部、上腕部、肩、背部のいずれかの正常で乾燥した皮膚面とし、毎回貼付部位を変更します。同じ部位への再貼付は、少なくとも14日間空けることで、皮膚刺激を軽減できます。

RLSに対しては、プラミペキソールの場合、通常1日量0.25mgを就寝2〜3時間前に服用します。ロチゴチンの場合は、1日1回2.25mg/日から開始し、症状に応じて1週間以上の間隔をあけて増量し、維持量(1日量4.5mgまで)を定めます。RLSでは症状が主に夕方から夜間に出現するため、投与タイミングの工夫が重要です。

薬剤の切り替えが必要な場合は、換算表を参考にします。例えば、プラミペキソール3mg/日は、ロピニロール9mg/日、ロチゴチン18mg/日にほぼ相当します。ただし、これはあくまで目安であり、個々の患者の症状や副作用を観察しながら、用量を調整する必要があります。

PMDAの審査報告書には、プラミペキソールの用法用量と臨床試験のデータが詳細に記載されています