アレンドロン酸ナトリウム水和物添付文書の用法用量と重要な基本的注意
服用後30分以内に横になると食道潰瘍のリスクが急上昇します。
アレンドロン酸ナトリウム水和物の添付文書における基本情報と効能効果
アレンドロン酸ナトリウム水和物は骨粗鬆症治療薬として広く使用されているビスホスホネート系化合物です。添付文書によれば、本剤は劇薬に指定されており、処方箋医薬品として厳格な管理が求められています。
日本標準商品分類番号は873999に分類され、骨粗鬆症の診断が確定している患者にのみ適用されます。効能効果として骨粗鬆症のみが承認されており、日本骨代謝学会の診断基準等を参考に患者を選定することが添付文書に明記されています。
製剤としては5mg錠と35mg錠が存在し、それぞれ1日1回投与と週1回投与の用法で使用されます。つまり投与頻度が異なる製剤があるということですね。
有効成分としてアレンドロン酸ナトリウム水和物が含まれ、5mg錠では6.53mg(アレンドロン酸として5.00mg)、35mg錠では45.68mg(アレンドロン酸として35mg)が配合されています。添加剤には結晶セルロース、D-マンニトール、カルメロース、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウムが使用されており、白色の素錠として供給されます。
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アレンドロン酸ナトリウム水和物の添付文書に記載された禁忌事項と投与制限
添付文書では4つの重要な禁忌事項が明記されています。患者の安全を守るため、これらは絶対に遵守しなければなりません。
第一に、食道狭窄又はアカラシア(食道弛緩不能症)等の食道通過を遅延させる障害がある患者への投与は禁忌です。本剤の食道通過が遅延することにより、食道局所における副作用発現の危険性が高くなるためです。
食道通過障害は重篤な合併症につながります。
第二に、30分以上上体を起こしていることや立っていることのできない患者にも投与できません。これは本剤が食道粘膜に長時間接触すると潰瘍形成のリスクが急上昇するためです。
第三の禁忌は本剤の成分あるいは他のビスホスホネート系薬剤に対し過敏症の既往歴のある患者です。
アレルギー反応が生じる可能性が高まります。
第四に低カルシウム血症の患者への投与も禁忌とされています。添付文書では低カルシウム血症がある場合には本剤投与前に必ず治療することと明記されており、ビタミンD欠乏症又はビタミンD代謝異常のようなミネラル代謝障害がある場合にはあらかじめ治療を行う必要があります。
国内の医療情報データベースを用いた疫学調査では、骨粗鬆症治療にビスホスホネート系薬剤を使用した腎機能障害患者のうち、特に高度な腎機能障害患者(eGFRが30mL/min/1.73㎡未満)で、腎機能が正常の患者と比較して低カルシウム血症(補正血清カルシウム値が8mg/dL未満)のリスクが増加したとの報告があります。低カルシウム血症は痙攣やテタニーを引き起こします。
アレンドロン酸ナトリウム水和物の添付文書に基づく用法用量と服用方法の詳細
添付文書に記載された用法用量は製剤により異なります。5mg錠の場合、通常成人にはアレンドロン酸として5mgを1日1回、毎朝起床時に水約180mLとともに経口投与します。35mg錠の場合は、アレンドロン酸として35mgを1週間に1回、朝起床時に水約180mLとともに経口投与します。
服用後少なくとも30分は横にならず、飲食(水を除く)並びに他の薬剤の経口摂取も避けることが必須です。
30分という時間が重要です。
添付文書では本剤は水のみで服用することが強調されています。水以外の飲み物(Ca、Mg等の含量の特に高いミネラルウォーターを含む)、食物及び他の薬剤と一緒に服用すると、吸収を抑制するおそれがあります。
海外で行われた試験において、閉経後女性にアレンドロン酸として10mgを含有する錠剤を水、コーヒー又はオレンジジュースと同時に単回経口投与した結果、水(19.20μg)を同時に摂取した場合と比べ、コーヒー(7.43μg)、オレンジジュース(6.77μg)では約60%減少したと報告されています。つまりコーヒーやジュースで飲むと効果が半減以下になるということですね。
食道及び局所への副作用の可能性を低下させるため、速やかに胃内へと到達させることが重要です。
服用に際しては以下の事項に注意が必要です。
📌 起床してすぐにコップ1杯の水(約180mL)とともに服用すること
📌 口腔咽頭部に潰瘍を生じる可能性があるため、本剤を噛んだり又は口中で溶かしたりしないこと
📌 本剤を服用後、少なくとも30分経ってからその日の最初の食事を摂り、食事を終えるまで横にならないこと
📌 就寝時又は起床前に服用しないこと
海外試験では朝食2、1及び0.5時間前の投与で尿中排泄量がそれぞれ12.68μg、8.88μg及び6.78μgであり、朝食2時間前に投与した場合が最も多かったと報告されています。
吸収率を最大化するには空腹時間が鍵です。
こちらの記事では吸収率に関する具体的なデータが示されています。
アレンドロン酸ナトリウム水和物の添付文書における重大な副作用と発現頻度
添付文書には重大な副作用として8つの項目が記載されています。医療従事者はこれらのリスクを十分に理解し、患者指導に活かす必要があります。
食道・口腔内障害として、食道穿孔(頻度不明)、食道狭窄(頻度不明)、食道潰瘍(0.04%)、食道炎(0.2%)、食道びらん(頻度不明)があらわれ、出血を伴う場合があります。
口腔内潰瘍(頻度不明)も報告されています。
徴候又は症状(吐血、下血、貧血、嚥下困難、嚥下痛、胸骨下痛、胸やけ、口腔内異和感、口内痛の発現・悪化等)に注意することが求められます。
胃・十二指腸障害として(出血性)胃・十二指腸潰瘍(0.4%)、出血性胃炎(0.02%)があらわれることがあります。
上腹部痛や心窩部痛には特に注意が必要です。
肝機能障害、黄疸(いずれも頻度不明)として、AST、ALTの上昇を伴う肝機能障害、黄疸があらわれることがあります。
定期的な肝機能検査が重要です。
低カルシウム血症(0.2%)では痙攣、テタニー、しびれ、失見当識、QT延長等を伴う低カルシウム血症があらわれることがあります。異常が認められた場合にはカルシウム剤の点滴投与等を考慮することが添付文書に記載されています。
中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis:TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)(いずれも頻度不明)も報告されています。
これらは極めて重篤です。
顎骨壊死・顎骨骨髄炎(頻度不明)については、添付文書で詳細な注意喚起がなされています。ビスホスホネート系薬剤による治療を受けている患者において、顎骨壊死・顎骨骨髄炎があらわれることがあり、報告された症例の多くが抜歯等の顎骨に対する侵襲的な歯科処置や局所感染に関連して発現しています。
国内の調査では経口薬の場合0.01~0.04%、経口薬投与中に抜歯された場合0.09~0.34%と報告されています。抜歯時にはリスクが約10倍に上昇するということですね。
外耳道骨壊死(頻度不明)も添付文書に追記されており、耳の感染や外傷に関連して発現した症例も認められることから、外耳炎、耳漏、耳痛等の症状が続く場合には耳鼻咽喉科を受診するよう指導することとされています。
大腿骨転子下、近位大腿骨骨幹部、近位尺骨骨幹部等の非定型骨折(頻度不明)については、長期使用している患者において報告されています。完全骨折が起こる数週間から数ヵ月前に大腿部、鼠径部、前腕部等において前駆痛が認められている報告もあることから、このような症状が認められた場合には、X線検査等を行い、適切な処置を行うことが求められます。
非定型骨折の頻度は6.04/10,000人・年でビスホスホネート製剤5年以上の長期服用で有意に上昇し、8年以上の服用でさらに上昇すると報告されています。
長期投与では慎重な経過観察が必須です。
日本口腔外科学会の顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023
顎骨壊死に関する最新のエビデンスと対応指針が記載されています。
アレンドロン酸ナトリウム水和物の長期投与における休薬期間(ドラッグホリデー)の考え方
添付文書には明示されていませんが、ビスホスホネート系薬剤の長期投与においては休薬期間(ドラッグホリデー)の設定が臨床現場で重要視されています。これは長期使用により非定型大腿骨骨折や顎骨壊死の発生リスクが上昇する可能性が指摘されているためです。
経口ビスホスホネート製剤を5年間投与した後に休薬する主な理由は、この期間を過ぎると非定型大腿骨骨折のリスクが高まるからです。基本的に経口BP製剤は5年、静注BP製剤は3年間投与後に休薬を検討することが提唱されています。
3~5年間の治療継続後に骨折リスクを評価し、骨折リスクが低下していたら、BP系薬の休薬を検討することが推奨されています。ただし休薬後は骨折リスクが上昇する可能性があるため、定期的な骨密度測定と骨折リスク評価が継続的に必要です。
骨折リスクが高い患者では継続投与を選択し、リスクが低い患者では一定期間の休薬を設けるという個別化医療のアプローチが重要になります。
患者ごとのリスク評価が鍵です。
休薬期間中は骨代謝マーカーの測定や骨密度の定期的な評価を行い、再投与のタイミングを判断します。特に腰椎骨密度の変化率や骨代謝マーカー(P1NP、CTX等)の推移を注意深くモニタリングすることで、適切な再投与時期を見極めることができます。
抜歯時のビスホスホネート製剤の休薬については、2023年に改定された日本口腔外科学会のポジションペーパーでは、原則として抜歯時に骨吸収抑制薬を休薬しないことを提案しています。ただし4年以上の使用歴があり、追加のリスク因子(糖尿病、喫煙、免疫抑制状態など)がある場合には、休薬(3ヶ月間のドラッグホリデー)を検討することが推奨されています。
これは新しい知見ですね。
骨粗鬆症に対するビスホスホネート系薬の投与継続期間(日本薬剤師会)
投与継続期間の判断基準について詳しく解説されています。
アレンドロン酸ナトリウム水和物の患者指導におけるポイントと服薬コンプライアンス向上策
添付文書に基づく適切な患者指導は治療効果を最大化し、副作用リスクを最小限に抑えるために不可欠です。医療従事者は服用方法の重要性を患者に十分理解させる必要があります。
まず服用タイミングについて、起床直後の空腹時に服用することの意義を説明します。アレンドロン酸の生物学的利用率(吸収率)は非高齢者及び高齢者でそれぞれ2.49%及び2.83%と極めて低いため、吸収率を少しでも高めるために完全な空腹状態での服用が必要です。
わずか数パーセントしか吸収されません。
水の量については、コップ1杯(約180mL)という具体的な量を示すことが重要です。これは薬剤を速やかに胃内に到達させ、食道粘膜への接触時間を最小限にするために必要な量です。少量の水では食道内に薬剤が停滞するリスクが高まります。
服用後30分間は横にならず、飲食も避ける理由について、食道潰瘍や食道炎のリスクを具体的に説明します。添付文書では食道潰瘍の発現頻度は0.04%、食道炎は0.2%と記載されていますが、適切に服用しない患者では、食道、口腔内に重度の副作用が発現する可能性があるとされています。
守らないとリスクが急増します。
飲み忘れた場合の対応も重要な指導ポイントです。週1回製剤(35mg錠)の場合、気づいた日の翌朝に1錠を服用し、その後は本来の曜日に戻して服用することを指導します。
1日2回分を一度に服用してはいけません。
カルシウムやマグネシウムを含む製剤(制酸剤、サプリメント等)との併用については、本剤の服用後少なくとも30分経ってから服用することを指導します。これらの金属イオンは本剤とキレートを形成し、吸収を著しく低下させます。
歯科受診時の告知について、本剤の使用を歯科医師に必ず告知することの重要性を強調します。抜歯等の侵襲的な歯科処置前には、処方医と歯科医師が連携して休薬の必要性を判断する必要があります。口腔内を清潔に保つことも顎骨壊死予防に有効です。
定期的な歯科検査を受けることを推奨し、口内に異常(痛み、腫れ、歯のぐらつき等)を感じた場合には速やかに歯科・口腔外科を受診するよう指導します。
早期発見が治療成功の鍵です。
服薬アドヒアランスを高めるために、服用日を記録するカレンダーやリマインダーアプリの活用を提案することも効果的です。週1回製剤の場合、毎週同じ曜日に服用する習慣をつけることで飲み忘れを防ぐことができます。
具体的なツールの活用が継続につながります。
副作用の初期症状(嚥下困難、嚥下痛、胸骨下痛、胸やけの発現・悪化等)が出現した場合には、直ちに服用を中止して受診するよう指導します。
早期対応により重篤化を防げます。
DIクイズ:BP製剤服用から朝食までの時間(日経メディカル)
服用タイミングに関する薬剤師向けの詳細な解説が掲載されています。