カルシウム・ビタミンD配合剤の効果と投与
デノスマブ投与時は天然型だけが正解ではありません。
カルシウム・ビタミンD配合剤とデノスマブの関係
デノスマブは破骨細胞の形成を抑制することで骨吸収を強力に抑制します。これにより骨からのカルシウム動員が減少し、結果として血清カルシウム値が低下するメカニズムを持っています。デノスマブによる低カルシウム血症の発現率は、国内第3相臨床試験で0.8%と報告されていますが、市販後調査では重篤な低カルシウム血症の発現率が1.4%に達したというデータもあります。
低カルシウム血症が問題です。
デノスマブ製剤であるプラリア皮下注やランマーク皮下注の投与時には、カルシウムとビタミンDの経口補充が添付文書で必須とされています。具体的には、毎日少なくともカルシウムとして500mg、天然型ビタミンDとして400IUの投与が推奨されています。この補充療法により、重篤な低カルシウム血症の発現を軽減することが可能になります。
デノタスチュアブル配合錠は、この要件を満たすために開発された医療用医薬品です。1錠中にカルシウムとして305mg、天然型ビタミンD(コレカルシフェロール)200IU、マグネシウムとして15mgを含有しています。通常、1日1回2錠の服用で、必要なカルシウムとビタミンDを補充できる設計になっています。
デノスマブ投与開始後、特に最初の1週間は低カルシウム血症の発現リスクが高いことが知られています。ある臨床研究では、投与1週後に12%、2週後に7%の患者で低カルシウム血症が認められたという報告があります。
つまり10人に1人以上です。
したがって、投与開始早期の血清カルシウム値のモニタリングが極めて重要となります。
厚生労働省によるデノスマブの低カルシウム血症に関する安全性情報
カルシウム・ビタミンD配合剤の天然型と活性型の使い分け
天然型ビタミンDと活性型ビタミンDは、体内での代謝過程が大きく異なります。天然型ビタミンD(コレカルシフェロール)は、肝臓で25位が水酸化され、さらに腎臓で1α位が水酸化されて活性型ビタミンD(1,25-ジヒドロキシビタミンD)に変換されます。一方、活性型ビタミンD製剤は最初から活性型として投与されるため、体内での調節機構を介さずに作用を発揮します。
調節が効きにくいです。
デノスマブ投与時に天然型ビタミンDが推奨される理由は、高カルシウム血症のリスクを低減できるためです。天然型ビタミンDは体内で必要に応じて活性化されるため、過剰な作用が起こりにくい特徴があります。実際、デノスマブの国内第3相臨床試験では、全ての患者に天然型ビタミンD400IUとカルシウム600mgが補充され、良好な安全性プロファイルが確認されています。
しかし、活性型ビタミンDの使用が完全に禁忌というわけではありません。腎機能障害患者では、ビタミンDの活性化が障害されているため、活性型ビタミンD製剤の使用が適切な場合があります。また、既に骨粗鬆症治療で活性型ビタミンD製剤を服用している患者では、血清カルシウム値を適切に管理しながら継続使用することも可能です。
第一三共のメディカルコミュニティサイトでは、「血清補正カルシウム値が適切に管理されていれば、活性型ビタミンD製剤の併用は問題ない」と明記されています。ただし重要なのは、活性型ビタミンDを使用している患者に天然型ビタミンDを含むデノタスを追加することは、相加作用による高カルシウム血症のリスクがあるため推奨できないという点です。
どちらか一方です。
薬局薬剤師が注意すべき点として、プラリア皮下注やランマーク皮下注を直接取り扱わないケースでも、患者の薬歴やお薬手帳から注射剤の使用を把握し、カルシウム・ビタミンD製剤の処方内容を確認することが求められます。天然型と活性型の重複投与を防ぐためのチェックが必要です。
第一三共メディカルコミュニティ:プラリア投与時のビタミンD選択に関する情報
カルシウム・ビタミンD配合剤によるマグネシウム補充の意義
デノタスチュアブル配合錠にマグネシウムが配合されている理由は、カルシウム代謝におけるマグネシウムの重要な役割にあります。マグネシウムはカルシウムの骨への沈着を促進し、副甲状腺ホルモン(PTH)やビタミンDの代謝にも関与しています。カルシウムとマグネシウムの理想的な摂取比率は2対1とされており、デノタスチュアブル配合錠は1錠あたりカルシウム305mg、マグネシウム15mgで、2錠服用時にこの比率に近い設計となっています。
バランスが大切です。
マグネシウム不足はカルシウムの過剰吸収や沈着異常を引き起こす可能性があります。血管平滑筋細胞内のマグネシウムが不足すると、カルシウム過多の状態になり、血管収縮が強まって高血圧のリスクが上昇することが知られています。また、マグネシウム不足は骨粗鬆症、こむら返り、メタボリックシンドローム、尿路結石などのリスク因子にもなります。
骨代謝の観点からは、マグネシウムは骨形成に直接関与します。成人の体内マグネシウムの約60%は骨に存在しており、骨の構造維持に不可欠です。マグネシウムはオステオブラスト(骨芽細胞)の活性化を促進し、カルシトニンというホルモンの分泌を助けることで、カルシウムの骨への沈着を促進します。
デノスマブ投与患者において、低カルシウム血症を予防するためにカルシウムを補充する際、マグネシウムも同時に補充することで、カルシウムの吸収と利用効率が向上します。特に高齢者や慢性疾患患者では、マグネシウム不足が潜在的に存在することが多く、カルシウム単独の補充では十分な効果が得られない可能性があります。
マグネシウムを含む便秘薬(酸化マグネシウムなど)とデノタスチュアブル配合錠の併用は、添付文書上問題ありません。ただし、大量の牛乳と酸化マグネシウムの長期併用により、ミルクアルカリ症候群(高カルシウム血症、代謝性アルカローシス、腎機能障害を特徴とする症候群)が発生した症例報告があるため、患者指導では注意が必要です。
1日500ml程度が目安です。
カルシウム・ビタミンD配合剤服用時の高カルシウム血症リスク
高カルシウム血症は、血清総カルシウム濃度が10.4mg/dL以上、または血清イオン化カルシウム濃度が5.2mg/dL以上となった状態を指します。活性型ビタミンD製剤とカルシウム製剤の併用は、この高カルシウム血症の発現頻度を増加させることが臨床試験で確認されています。
定期検査が必須です。
活性型ビタミンD3製剤(エルデカルシトール、アルファカルシドールなど)を骨粗鬆症治療に使用している患者において、3~6カ月に1回程度の血清カルシウム値測定が添付文書で推奨されています。高齢者では腎機能低下例が多く、長期使用により高カルシウム血症をきたすリスクが高まります。特にエルデカルシトールでは、市販後調査で高カルシウム血症の副作用報告があり、定期的なモニタリングの重要性が強調されています。
高カルシウム血症の初期症状は非特異的で、便秘、吐き気、嘔吐、腹痛、食欲不振などが現れます。血清カルシウム値が12~13mg/dL以上になると、倦怠感、疲労感、筋力低下が顕著になります。さらに重症化すると、錯乱、見当識障害、痙攣、不整脈などの神経・循環器症状が出現し、生命に危険を及ぼす可能性があります。
カルシウム1回摂取量が500mg以上になると、高カルシウム血症のリスクが上昇するというエビデンスがあります。デノタスチュアブル配合錠は1日2錠(カルシウム610mg)を1回で服用する設計ですが、食事からのカルシウム摂取量も考慮する必要があります。特に乳製品を多く摂取する患者では、総カルシウム摂取量が過剰になる可能性に注意が必要です。
大量の牛乳とカルシウム製剤の併用について、デノタスチュアブル配合錠の添付文書では「併用注意」として記載されています。牛乳コップ1杯(200ml)には約220mgのカルシウムが含まれており、デノタスと同時に大量摂取すると腸管からのカルシウム吸収が増大し、高カルシウム血症やミルクアルカリ症候群のリスクが高まります。
痛いところです。
サイアザイド系利尿薬もカルシウム排泄を減少させるため、活性型ビタミンD3製剤との併用で高カルシウム血症を生じやすくなります。高血圧治療でサイアザイド系利尿薬を服用している骨粗鬆症患者では、この相互作用に特に注意が必要です。
PMDAによるエルデカルシトールの高カルシウム血症に関する安全性情報
カルシウム・ビタミンD配合剤の服薬指導で伝えるべき情報
デノタスチュアブル配合錠は、噛み砕いて服用するチュアブル錠です。口の中で噛み砕いてから飲み込むことで、カルシウムの吸収を促進します。錠剤をそのまま飲み込むのではなく、しっかり噛み砕くことを患者に指導することが重要です。
噛むことで効果が高まります。
服用タイミングについて、カルシウムサプリメントは一般的に食事中や食後の摂取が推奨されます。胃酸の分泌が活発な状態でカルシウムの溶解と吸収が促進されるためです。空腹時の服用では吸収率が低下し、胃への負担が増加する可能性があります。デノタスチュアブル配合錠の添付文書では特定の服用時間の指定はありませんが、食後の服用が望ましいでしょう。
大量の牛乳との同時服用を避けるよう患者指導が必要です。「大量」の明確な定義はありませんが、デノタス服用前後1~2時間は牛乳の大量摂取(500ml以上が目安)を控えることが安全です。コップ1杯程度の牛乳であれば通常問題ありませんが、ミルクアルカリ症候群の症例報告では、少量でも長期摂取によりリスクがあることが示されています。
控えめがベストです。
高カルシウム血症の初期症状について患者教育を行うことも重要です。便秘、吐き気、食欲不振、異常な喉の渇き、尿量の増加などの症状が現れた場合は、速やかに医師に連絡するよう指導します。特に活性型ビタミンD製剤を併用している患者では、これらの症状に注意を払う必要があります。
カルシウムの吸収は夜間の方が高いという時間栄養学の知見があります。就寝前にカルシウムサプリメントを服用すると、吸収率が向上する可能性が報告されています。デノスマブ投与患者で夜間の低カルシウム血症症状(しびれ、筋肉のけいれんなど)が気になる場合は、夕食後または就寝前の服用も選択肢となります。医師と相談してタイミングを調整してください。
プラリア皮下注の投与を受けた患者には、注射後1週間以内に低カルシウム血症の症状(手足のしびれ、筋肉のけいれん、テタニーなど)が出やすいことを説明します。デノスマブ投与後早期は特に注意が必要で、症状が現れた場合は直ちに医療機関に連絡するよう指導することが、重篤な合併症の予防につながります。
医師への連絡が鍵です。
デノタスチュアブル配合錠は、デノスマブ投与患者の低カルシウム血症予防という明確な目的を持つ医療用医薬品です。単なるカルシウム補充剤ではなく、デノスマブ治療の安全性を担保するための必須の併用薬であることを、医療従事者自身が正しく理解し、患者にも適切に説明することが求められます。
くすりのしおり:デノタスチュアブル配合錠の患者向け情報

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