sglt1阻害薬一覧と選択のポイント

sglt1阻害薬とその特性

純粋なSGLT1阻害薬は腸管グルコース吸収を完全に抑制するため下痢などの消化器症状が強く出る

📋 この記事の3ポイント要約
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現状の承認状況

日本国内で承認されている純粋なSGLT1選択的阻害薬は存在せず、SGLT1/2デュアル阻害薬のソタグリフロジンが開発の中心となっている

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SGLT1とSGLT2の違い

SGLT1は主に小腸に存在し食事からの糖吸収を担当、SGLT2は腎臓に存在し尿中の糖を再吸収する役割を持つ

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臨床上の注意点

SGLT1を過度に阻害すると下痢などの消化器症状が生じるため、SGLT2選択性の高い薬剤が糖尿病治療の主流となっている

sglt1阻害薬の基本的な作用機序

 

SGLT1阻害薬は、小腸に存在するナトリウム・グルコース共輸送体1(SGLT1)を阻害することで、食事由来のグルコースの腸管吸収を抑制する薬剤です。この作用により、食後の急激な血糖上昇を抑える効果が期待されています。

SGLT1は小腸の絨毛上皮細胞に高密度で発現しており、食事中のグルコースとガラクトースを能動的に吸収する役割を担っています。ナトリウムイオンの濃度勾配を利用して糖を細胞内に取り込むため、インスリンに依存しない血糖コントロール機序として注目されてきました。

しかし、1835年にリンゴの樹皮から発見されたフロリジンという天然のSGLT阻害物質は、SGLT1とSGLT2の両方を阻害する非選択的な作用を持っていました。フロリジンは確かに尿糖排泄を促進する効果を示しましたが、腸管でのSGLT1阻害作用が強すぎたため、重度の下痢や消化不良などの副作用が問題となり、臨床応用には至りませんでした。

これが基本です。

この歴史的経緯から、製薬企業はSGLT1を避けてSGLT2を選択的に阻害する方向で開発を進めることになりました。現在臨床で使用されている多くのSGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管に存在するSGLT2に対して高い選択性を持つよう設計されています。

sglt1阻害薬とsglt2阻害薬の違い

SGLTファミリーには主に2つのサブタイプが存在し、それぞれ体内での役割と発現部位が明確に異なります。この違いを理解することは、適切な薬剤選択において極めて重要です。

SGLT2は主に腎臓の近位尿細管に特異的に発現しており、尿細管でろ過されたグルコースの約90%を再吸収する役割を担っています。血液中のグルコース濃度が高い状態では、SGLT2がより多くの糖を血液中に戻してしまうため、糖尿病患者では高血糖が持続する一因となります。つまり、SGLT2阻害によって尿糖排泄が促進されるわけです。

一方、SGLT1は主に小腸の上皮細胞に発現していますが、腎臓や心臓にも存在しています。腎臓においてSGLT1は近位尿細管の遠位部に位置し、残りの約10%のグルコース再吸収を担っています。小腸では食事から摂取したグルコースとガラクトースの吸収に必須の役割を果たしているため、SGLT1を完全に阻害すると栄養吸収障害が生じるリスクがあります。

現在の糖尿病治療で主流となっているのは、SGLT2選択的阻害薬です。代表的な薬剤として、ダパグリフロジン(フォシーガ)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)、イプラグリフロジン(スーグラ)、トホグリフロジン(デベルザ)、カナグリフロジン(カナグル)、ルセオグリフロジン(ルセフィ)の6成分が日本国内で承認されています。これらの薬剤はSGLT2に対して数百倍から数千倍の選択性を持つため、SGLT1への影響を最小限に抑えながら尿糖排泄を促進できます。

各SGLT2阻害薬のSGLT2選択性には差があり、例えばエンパグリフロジンやトホグリフロジンは特に高い選択性(SGLT1に対してSGLT2への親和性が数千倍)を示すのに対し、カナグリフロジンは比較的選択性が低い(約200~300倍)とされています。選択性が低い薬剤では、投与直後に腸管内で局所的に高濃度となり、一過性にSGLT1を阻害して食後血糖上昇を抑制する可能性が示唆されていますが、同時に消化器症状のリスクも若干高まる可能性があります。

意外ですね。

医療法人慈照会による新しい糖尿病治療薬の解説では、SGLT1とSGLT2の役割の違いと、なぜSGLT2選択性が重要なのかについて詳しく説明されています。

sglt1阻害作用を持つソタグリフロジンの特徴

近年、SGLT1とSGLT2の両方を阻害するデュアル阻害薬として、ソタグリフロジンが開発され、海外では既に承認されています。この薬剤は従来のSGLT2選択的阻害薬とは異なる治療コンセプトを持っています。

ソタグリフロジンは、腎臓でのSGLT2阻害による尿糖排泄促進に加えて、小腸でのSGLT1阻害による食後グルコース吸収の抑制という二重の作用機序を持ちます。SCORED試験やSOLOIST-WHF試験などの大規模臨床試験において、心不全および慢性腎臓病を合併した糖尿病患者における心血管イベントや腎機能悪化のリスク低減効果が示されました。

この二重阻害の利点は、腎機能が低下した患者においてもある程度の血糖降下効果が期待できる点にあります。通常のSGLT2阻害薬は腎機能低下に伴って効果が減弱しますが、ソタグリフロジンは小腸でのグルコース吸収抑制作用が残るため、eGFRが低下した状態でも一定の効果を維持できる可能性があります。

結論はデュアル阻害です。

ただし、SGLT1阻害作用に伴う副作用として、下痢や腹部不快感の発現頻度が従来のSGLT2選択的阻害薬よりもやや高いことが報告されています。SGLT1/2阻害薬の臨床試験では、下痢の発現率が実薬群で約6%、プラセボ群で約3%と報告されており、消化器が弱い患者には慎重な投与が必要です。

現時点で日本国内においてソタグリフロジンは未承認ですが、海外では「Inpefa」という商品名で心不全治療薬として承認されています。今後、日本でも承認申請が行われる可能性があり、特に心不全や腎機能低下を伴う糖尿病患者に対する新たな治療選択肢として期待されています。

CareNet学術情報では、ソタグリフロジンのSGLT1/2阻害による糖尿病治療の新たな可能性について最新の臨床試験結果を含めた解説が掲載されています。

sglt1選択的阻害薬の開発状況

純粋なSGLT1選択的阻害薬の開発も、いくつかの製薬企業で試みられてきました。代表的な化合物として、キッセイ薬品が開発したKGA-2727やミザグリフロジンがあります。

ミザグリフロジンは、SGLT1に対して高い選択性を持つ阻害薬として前臨床および初期臨床試験が実施されました。動物実験では、糖尿病の血糖コントロールだけでなく、慢性便秘の改善効果も示唆されています。SGLT1阻害により腸管内の浸透圧が上昇し、水分保持量が増加することで便が柔らかくなるというメカニズムです。

しかし、SGLT1選択的阻害薬の最大の課題は、用量設定の難しさにあります。食事から摂取するグルコースの吸収を適度に抑制する用量では血糖降下効果が不十分となり、効果的な血糖コントロールを目指して用量を増やすと下痢などの消化器症状が強く出現してしまいます。この治療域の狭さが、SGLT1選択的阻害薬の臨床開発を困難にしている主な理由です。

つまり実用化は難航しています。

2006年にキッセイ薬品はグラクソ・スミスクライン社にKGAの技術導出を行いましたが、その後の開発状況については公開情報が限られています。現時点で日本国内において、純粋なSGLT1選択的阻害薬として承認された製品は存在しません。

一方、研究用試薬としては、フロリジン(phlorizin)、フロレチン(phloretin)などのSGLT1阻害物質が入手可能であり、基礎研究レベルでは糖代謝や腸管生理学の研究に活用されています。これらは治療薬ではなく、あくまで実験用途に限定されます。

これが条件です。

sglt1阻害薬の臨床応用における課題と展望

SGLT1阻害薬の臨床応用を考える上で、いくつかの重要な課題と将来の可能性について検討する必要があります。

まず、副作用管理の観点からは、SGLT1阻害による下痢のメカニズムをより詳しく理解することが重要です。SGLT1が阻害されると、小腸でのグルコース吸収が減少し、未吸収のグルコースが大腸まで到達します。この糖が腸管内の浸透圧を上昇させ、水分が腸管内に移動することで浸透圧性下痢が生じます。さらに、大腸内の細菌がこの糖を発酵させることで、ガスの産生や腹部膨満感も引き起こされます。

この副作用を軽減するためには、食事内容の調整が有効な対策となる可能性があります。特に糖質の摂取タイミングや量を調整することで、SGLT1阻害薬投与時の消化器症状を最小限に抑えられる可能性が考えられます。食事指導と組み合わせた投与プロトコルの確立が、今後の研究課題となっています。

また、患者選択の重要性も指摘されています。過敏性腸症候群や炎症性腸疾患などの消化器疾患を有する患者では、SGLT1阻害作用を持つ薬剤の使用は慎重に検討すべきです。一方、便秘傾向のある患者では、SGLT1阻害による腸管水分増加作用が副次的なメリットをもたらす可能性もあります。

厳しいところですね。

心血管保護作用や腎保護作用の観点からは、ソタグリフロジンのようなSGLT1/2デュアル阻害薬が示した臨床試験結果が注目されています。SCORED試験では、心血管死、心不全入院、心不全による緊急受診の複合エンドポイントにおいて、プラセボと比較して26%のリスク低減が示されました。この効果は従来のSGLT2選択的阻害薬と同等以上であり、SGLT1阻害作用が心血管保護効果を損なわないことが確認されています。

腎保護作用についても、慢性腎臓病の進行抑制効果が報告されており、eGFRの低下速度が遅くなることが示されています。この効果のメカニズムには、糸球体過剰ろ過の是正、尿細管グルコース毒性の軽減、抗炎症作用などが関与していると考えられています。SGLT1阻害が加わることで、これらの腎保護メカニズムがさらに強化される可能性も示唆されています。

将来的には、患者の病態や併存疾患に応じて、SGLT2選択性の高い薬剤とSGLT1/2デュアル阻害薬を使い分けることが重要になると考えられます。例えば、腎機能が比較的保たれており消化器症状のリスクを避けたい患者にはSGLT2選択的阻害薬を、腎機能が低下しており心血管リスクが高い患者にはソタグリフロジンのようなデュアル阻害薬を選択するといった、個別化医療のアプローチが求められます。

薬価の観点からも考慮が必要です。2026年時点でのSGLT2阻害薬の薬価は、先発品で1日あたり約150~220円程度、後発品では50~74円程度となっています。今後ソタグリフロジンが日本で承認された場合の薬価設定や、費用対効果の評価も重要な検討事項となります。SGLT2阻害薬は市場拡大再算定の対象となり薬価引き下げが行われていますが、心不全や慢性腎臓病への適応拡大により、糖尿病以外の患者にも処方機会が広がっています。

痛いですね。

処方時の患者説明においては、尿量増加や脱水のリスク、性器・尿路感染症の可能性など、SGLT阻害薬クラス共通の注意事項に加えて、SGLT1阻害作用を持つ薬剤の場合は消化器症状の可能性についても十分に説明する必要があります。特に高齢者では脱水のリスクが高まるため、こまめな水分補給を指導することが重要です。

倉敷平成病院の解説記事では、SGLT2阻害薬の心臓や腎臓保護作用と、各薬剤の選択性の違いについて臨床医の視点から詳しく説明されています。

医療従事者としては、現在利用可能なSGLT2選択的阻害薬の特性を十分に理解した上で、今後登場する可能性のあるSGLT1/2デュアル阻害薬についても最新情報を把握し、患者一人ひとりに最適な薬剤選択を行うことが求められます。臨床試験の結果だけでなく、実臨床での使用経験や副作用報告にも注目し、継続的な知識のアップデートが必要です。




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