胃寄生虫症 症状 診断 治療 予防
胃寄生虫症の症状:腹痛・嘔吐と潜伏期間
胃寄生虫症という臨床ラベルで最も遭遇しやすいのは、海産魚介類の生食後に発症するアニサキス症で、腹痛・嘔吐など急性の上部消化器症状を中心に現れます。
潜伏期間は「1時間から数日」と幅がありますが、国の啓発資料では急性胃アニサキス症は12時間以内に激しいみぞおちの痛み、吐き気、嘔吐を生じると整理されています。
一方で腸アニサキス症は十数時間以降に強い下腹部痛を呈し得るため、同じ“アニサキス”でも痛みの部位と時間軸がズレる点が問診で重要になります。
医療者として注意したいのは、「痛みの強さ」と「検査の異常」が比例しない瞬間があることです。
初期はバイタルが保たれ、腹膜刺激徴候が乏しい場合もありますが、腸病変では腸閉塞や消化管穿孔など重篤な合併症が“まれに”起こり得るため、経過観察の安全域を広めに取ります。
また、寄生虫が胃壁・腸壁へ刺入することで局所炎症が立ち上がるため、鎮痛でいったん落ち着いても原因が消えるわけではない、という説明が患者理解に直結します。
参考)寄生虫疾患(アニサキス、ジアルジア、条虫(さなだむし))
胃寄生虫症の診断:内視鏡と虫体確認
胃寄生虫症(とくに胃アニサキス症)の病原体診断は、内視鏡による虫体の確認が軸になり、摘出した虫体の形態学的検査や遺伝子検査で裏づける流れが示されています。
臨床現場では、食歴(生のサバ・アジ・イワシ・サケ・イカ等)と、発症までの時間(典型は8時間以内)を組み合わせることで、内視鏡の優先度を上げる判断がしやすくなります。
上部内視鏡が可能であれば「診断=治療」に直結し得る点が、一般的な感染性胃腸炎のアプローチと決定的に異なります。
鑑別では、感染性胃腸炎や消化性潰瘍、胆膵疾患などが当然並びますが、胃寄生虫症では「生食+急性の心窩部痛」という組み合わせが強い手がかりになります。
逆に、問診で生食が拾えない(患者が“少しだけ”を申告しない、前日の摂食を忘れる、同席者とメニューが異なる等)と、鑑別の優先順位が崩れやすいのが落とし穴です。
救急外来・当直帯では、発症からの時間を分単位で聞き取り、患者が「いつ痛くなったか」ではなく「いつ食べたか」を軸に再構成するのが有効です。
胃寄生虫症の治療:内視鏡摘出と対処療法
国の情報源では、胃アニサキス症は内視鏡による虫体摘出を行うことが治療として明確に示されています。
腸アニサキス症など内視鏡が到達困難な部位では、対処療法を行いつつ自然排出を待つ、という整理がなされており、病型で方針が分かれます。
このため、診断をつける意義は「寄生虫かどうか」だけでなく、「到達可能かどうか=その場で根治できるか」に直結します。
実務的には、上部内視鏡の段取り(緊急枠、鎮静の可否、抗血栓薬内服状況、食直後で胃内容が多い場合の安全性など)を含めて判断が必要です。
ただし、アニサキスは“胃壁や腸壁に刺入して発症する”とされ、患者の痛みは強く、検査待ち時間そのものが医療体験を悪化させます。
鎮痛・制吐で一時しのぎをしつつ、内視鏡可能な体制へ速やかに接続することが、臨床アウトカムと満足度の両方に効きます。
胃寄生虫症の予防:冷凍・加熱と食歴
予防は極めて具体的で、厚労省資料では「冷凍(-20℃で24時間以上)」または「加熱(70℃以上、または60℃なら1分)」が提示されています。
さらに重要なのは、一般的な料理で使う食酢、塩漬け、醤油、わさびを付けてもアニサキス幼虫は死滅しない、という注意点が明記されていることです。
患者指導では、この“効きそうで効かない民間対策”を先回りして否定するだけで、再発予防の質が上がります。
また、魚介類は死亡後に時間が経つと内臓から筋肉へ幼虫が移動することが知られているため、「新鮮な魚を選ぶ」「丸ごと1匹は速やかに内臓を取り除く」といった行動指針が示されています。
医療従事者が外来でできる最短の介入は、再発予防の“具体策”を1つだけ選んで持ち帰らせることです(例:家庭では生食用でも冷凍条件を確認する、内臓の生食はしない)。
事業者向けにも内臓の生提供を避ける、目視で除去する、冷凍・加熱を徹底する、といったポイントが整理されており、集団発生リスクの低減に直結します。
胃寄生虫症の独自視点:アレルギーと「死んだ虫」
見落とされがちですが、アニサキス症の臨床像にはアレルギー症状が含まれ、蕁麻疹や発疹、呼吸困難などアナフィラキシー症状を生じ得ると整理されています。
さらに、アニサキスアレルギーは虫体の生死にかかわらず発症する可能性があるとされ、これは「冷凍・加熱していれば絶対に安全」という単純化が危うい理由になります。
つまり、胃寄生虫症の再診・相談では「腹痛が主訴ではない」「皮疹が先行する」「食中毒っぽくない」症例も想定し、食歴の聞き方を皮膚症状・呼吸器症状にも拡張する必要があります。
診療の現場で使える問いは、次のように具体化できます。
- 「刺身を食べましたか?」ではなく「サバ・アジ・イワシ・サケ・イカの生や酢〆を、昨日から今日にかけて食べましたか?」
- 「薬味(わさび)を付けたから大丈夫」などの自己判断があったかを確認し、無効であることを短く是正する。
- 呼吸器症状や蕁麻疹がある場合、寄生虫の“刺入”だけでなく“アレルギー”としての重症度評価(アナフィラキシー対応)を同時進行させる。
厚生労働省の「症状(胃型・腸型)と予防(冷凍・加熱・薬味は無効)」の要点整理。
国立感染症研究所の「潜伏期間、臨床像(腸閉塞・穿孔・アレルギー)、診断(内視鏡で虫体確認)、治療(胃は摘出)」の整理。
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/a/anisakis/index.html

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