胃内異物 犬
胃内異物 犬 誤飲 症状
犬の胃内異物は、飼い主が「飲み込んだ瞬間」を見ていないケースが多く、嘔吐・食欲不振・元気消失などの非特異的所見から疑う場面が現場では多いです。胃に留まる異物は、初期は無症状でも、胃内容排出障害が進むと嘔吐の頻度が増え、脱水や電解質異常が前景に出てきます。
一方で「症状が軽い=安全」とは限りません。鋭利な異物(竹串、縫い針、爪楊枝など)は、通過障害よりも穿孔リスクが問題になり得るため、嘔吐が目立たなくても危険度が高い群として別枠で扱う意識が必要です(穿孔は時間差で発症し得ます)。静岡県獣医師会も、異物誤飲を①毒性、②通過障害、③穿孔という観点で整理しており、問診時点で「どの枠か」を意識するとトリアージが速くなります。
臨床で見逃しやすいのは、異物が胃内で“動いている”ケースです。例えば球状物(ボール、ビー玉など)は胃内で位置が変わり、症状が出たり引いたりして来院が遅れることがあります。さらに「布・靴下・マスク」のような柔らかい異物は、胃内で塊化し、急に大きくなった塊が幽門側に嵌頓して症状が急変することがあります(胃内停滞→突然の排出障害)。内視鏡下胃内異物除去の調査でも、誤飲物は球体や塊になったもの、マスクなど多様で、臨床像が一様ではないことが示唆されます。
参考)【動物病院監修】犬の誤飲・誤食~「うっかり食べた」が命に関わ…
現場で有用な観察ポイントを、医療従事者向けに簡潔にまとめます。
- 嘔吐:食後すぐか、時間が経ってからか(排出障害の進行度の推定に使う)
- 腹痛:姿勢(祈りのポーズ)、触診反応、落ち着かなさ
- 便性状:黒色便や吐血があれば粘膜障害や出血の可能性を上げる
- 「飲み込んだ可能性」:確証がなくても、生活環境(おもちゃ・衣類・食品包装)から推定する
静岡県獣医師会が強調している通り、飼い主への質問は「何を・いつ頃・どのくらい」を軸にし、同じ物の残りや破片があれば持参させるだけで診断が大幅に進みます。
胃内異物 犬 レントゲン 超音波 診断
診断の基本は、異物の「位置」「材質」「サイズ」「形状(鋭利か)」「胃腸管への影響(拡張、貯留、蠕動低下)」を、画像と身体所見で短時間に統合して治療方針へ落とすことです。特にレントゲンは、石・金属・骨などの不透過性異物の検出に強い一方、プラスチック、ビニール、ゴム製品、植物の種、コルクなど透過性異物は確認が難しいことがあるため、レントゲン陰性でも誤飲を否定しない姿勢が重要です。
超音波は、透過性異物の検出や、胃腸の壁構造、内容物の性状、腸管拡張、腹水などを同時に評価できる点が強みです。さらに、レントゲンで「写らない」異物を拾いに行けるだけでなく、通過障害の二次所見(胃拡張、液体貯留、腸管運動低下)を拾うことで、異物自体が見えにくい状況でも判断材料が増えます。実臨床でも、エコーを診察室で迅速に当ててスクリーニングする運用が紹介されています。
参考)犬と猫の異物誤飲 – ヒロ動物病院|金沢市|がん・腫瘍・CT…
ただし、画像診断の限界も押さえておく必要があります。
- 胃内のガス・食餌内容で、超音波の描出が落ちる。
- 透過性異物はレントゲンで見えにくい。
- 異物が小さい、または胃内で重なっていると同定が難しい。
そのため、臨床的に疑いが強いのに画像で確証が取れない場合、内視鏡は「診断と治療を同時に行える」選択肢として位置づけられます(胃内に残っている可能性が高いタイミングほど価値が高い)。
診断から治療へつなぐ“現場の表”を置いておきます(入れ子にせず簡潔に)。
| 状況 | 画像の考え方 | 次の一手 |
|---|---|---|
| 金属・石などが疑わしい | レントゲンで検出しやすい | 位置確認→胃内なら内視鏡/催吐検討 |
| 布・ゴム・ビニールが疑わしい | レントゲンで見えにくいことがある | 超音波で胃腸評価、必要なら内視鏡 |
| 鋭利(竹串・針)疑い | 穿孔リスクを優先して評価 | 催吐は慎重、内視鏡や外科も視野 |
胃内異物 犬 内視鏡 治療
胃内異物が胃や食道にあり、把持・回収が可能な形状であれば、内視鏡は開腹手術より低侵襲で回復が早い治療として期待できます。内視鏡は全身麻酔が必要ですが、胃粘膜を直接観察しながら異物を摘出できるため、「存在確認」と「摘出」が同じ麻酔で完結し得る点が現場では大きな利点です。
一方で、医療従事者向けに重要なのは「内視鏡=万能」ではないという現実的な線引きです。内視鏡下胃内異物除去を44頭で調査した報告では、摘出成功率は93.2%で、処置後の合併症はなかったとされていますが、摘出できなかった異物(お手玉、靴下、とうもろこしの芯)もあり、これらは胃切開術で対応しています。つまり“成功率が高いからこそ”、失敗時の外科への移行を前提に準備しておくことが安全設計になります。
器具選択と工夫は、成否と合併症リスクを現実に左右します。上記報告では、鋭利物に透明キャップを用いる、種子類にバスケット鉗子、球体は回収ネットが有効だったなど、異物の性状に応じた戦略が具体的に述べられています。特に尖った大型異物は噴門・食道損傷リスクがあり、ネットで包んで引き抜くほうが安全という考察は、現場の手技選択に直結します。
実務での要点を、チェックリスト風にまとめます。
- 麻酔前:脱水・電解質・誤嚥リスクの評価、絶食状況の確認。
- 内視鏡中:異物把持だけでなく、食道通過時の損傷予防(キャップ、ネット)。
- 内視鏡後:嘔吐再発、吐出、黒色便など粘膜障害サインの再評価。
- 失敗時:胃切開術へ移行できる体制(人員・器具・同意)を事前に整える。
胃内異物 犬 開腹 手術 合併症
内視鏡で摘出できない胃内異物、あるいは異物が腸まで進行して閉塞や穿孔が疑われる場合、開腹手術(胃切開術や腸切開など)が必要になります。静岡県獣医師会の解説でも、異物による通過障害や穿孔は重篤化し得る問題として整理されており、緊急性評価の軸として有用です。
手術が必要になりやすいパターンとして、臨床的には「大きすぎる」「柔らかいが塊化して巨大」「腸に進んでしまった」「鋭利で安全に経口回収できない」が代表です。内視鏡調査でも、靴下やとうもろこしの芯など一部の異物は内視鏡摘出が困難で胃切開術になったと明記されており、術式選択は“異物の種類”と密接です。
合併症は、異物そのものが引き起こすもの(粘膜障害、穿孔、出血、閉塞)と、処置に伴うもの(麻酔リスク、術創感染、縫合不全、術後胃運動低下など)に分けて整理すると説明が通りやすくなります。特に鋭利異物は穿孔という別次元のリスクを持つため、画像で確証がなくても“あり得る”として扱い、催吐の適応を慎重にする姿勢が安全です(穿孔や粘膜損傷の懸念が上がるため)。
医療従事者として飼い主説明で役立つのは、「内視鏡が最善でも、条件が揃わないと手術が必要になる」ことを早期に共有することです。内視鏡成功率が高い報告がある一方で、摘出困難例がゼロではないこと、そして摘出困難例に備えて胃切開術も同時に準備するのが望ましいという考察は、インフォームドコンセントの質を上げます。
胃内異物 犬 再発 防止(独自視点)
胃内異物の治療が終わった後、再発防止は「飼い主の注意喚起」だけでは不十分になりがちです。静岡県獣医師会は、異物誤飲を“偶然”ではなく、その異物への興味や嗜好性があって起きた“必然性”として捉え、同じ物が周囲にあれば再び飲み込む可能性があると述べています。再発防止を医療側が設計するなら、この視点をそのまま行動計画に落とし込むのが実務的です。
ここでは検索上位が語りがちな「誤飲に注意」から一歩進めて、外来で実行可能な“再発予防プロトコル”として提案します(現場で使えるよう、やることを具体化します)。
- 家庭内監査:誤飲物と同素材の物(布、ゴム、プラ)を「犬の目線」で床上から撤去。
- “破壊後”リスクの共有:おもちゃは形が崩れた瞬間に危険度が上がる(球体化・先端の鋭利化・紐状化)。
- 食餌行動の設計:早食いの犬は、採食刺激が強い場面で「咥えて飲み込む」行動が加速しやすいので、知育トイや給餌方法の工夫も再発予防に寄与。
- 来院トリガーの定義:嘔吐が1回でも、誤飲の可能性があるなら“経過観察で様子見”の前に連絡、というルールを紙で渡す。
「何を誤飲したか分からないが元気」という相談が多いからこそ、飼い主の自己判断を減らす“行動のルール化”が効果を持ちます。静岡県獣医師会が提示する「何を・いつ・どのくらい」を軸に、異物の一部や同じ物を提示する行動を飼い主に定着させると、次回が起きた時の診断速度が上がります。
この再発予防は、医療の範囲を少しだけ広げて「生活環境への介入」を含める点が独自性になります。胃内異物の治療は摘出で終わりではなく、再発すると次は腸閉塞や穿孔に進む可能性もあるため、予防を“治療の一部”として設計することが、結果的に救命率と医療資源の両面で合理的です。
参考リンク(レントゲンで写る/写らない異物、誤飲の分類(毒性・通過障害・穿孔)、再発防止の考え方がまとまっています)
参考リンク(内視鏡下胃内異物除去術44頭の異物種類、器具選択、成功率、摘出困難例と胃切開術への移行が具体的です)
内視鏡下胃内異物除去術を試みた犬44頭についての調査(PDF)

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