胃の形態異常と胃軸捻転と瀑状胃と検査

胃の形態異常

胃の形態異常:医療従事者が押さえる要点
🧭

「形の多様性」と「緊急疾患」を分ける

瀑状胃などの個体差と、胃軸捻転のように虚血・穿孔に進む病態を最初に切り分ける。

🩻

検査は「目的」で選ぶ

捻転形式の把握は上部消化管造影、重症度(血流障害や門脈内ガス)は造影CTが強い。

⚠️

Borchardt三徴は知っておく

急性胃軸捻転で重要な臨床手掛かり(嘔吐できない嘔吐発作・上腹部膨隆・胃管挿入困難)。

胃の形態異常の分類と定義(瀑状胃・鉤状胃)

 

胃の形態異常という言葉は、厳密には「疾患名」よりも、画像(健診X線・内視鏡・造影)で観察される“胃の形のバリエーション”から、症状やリスクが説明される場面で使われやすい概念である。実臨床では、病気ではないが形態異常として扱われる代表に瀑状胃があり、上部が折れ曲がって内容物が上部に停滞しやすいと説明されることが多い。瀑状胃は日本人の10人中2~3人程度に見られる、という記載も複数の医療機関サイトで見られる。

健診や説明の現場では、胃の形を「牛角胃・鉤状胃・瀑状胃」の3分類として示すことが多い。たとえば内視鏡クリニックの解説では、胃の形は大きくこの3種類に分類できるとされ、瀑状胃は逆「く」の字型に近い特徴が述べられている。ここで重要なのは、“形そのもの”は必ずしも病気ではない一方で、内容物停滞→胃もたれ、胃酸の偏り、胃炎リスクなど症状側の説明に結び付きやすい点である。

参考)内視鏡医師の知識シリーズ – 福岡の苦しくない内視鏡専門医療…

医療従事者向けには、形態異常を語るときに「先天・体質」と「二次性変形」を同じ棚に置かない配慮が必要になる。前者(瀑状胃など)は「生活指導・症状対策」の話になりやすいが、後者(潰瘍瘢痕や癒着、ヘルニアに伴う走行異常など)は“原因疾患の精査・治療”が主題になるためだ。形態という見た目が似ていても、背景病態が異なると管理の優先順位が逆転する。

参考)胃がねじれる病気「胃軸捻転症(いじくねんてんしょう)」とは?…

胃の形態異常と上部消化管造影の読み方(捻転形式)

胃の形態異常を「説明 가능한個体差」から「鑑別すべき急性腹症」へ切り替えるトリガーの一つが、上部消化管造影で“捻転の形式”を描出できるかどうかである。胃軸捻転症では、上部消化管造影検査が捻転形式の把握に有用とされ、単に“胃が変形している”では終わらせず、どの軸・どの方向でどの程度ねじれているかを詰められる。特に救急や当直では、症状が軽快した間欠性(反復性)例でも、症状出現時の造影が診断をより正確にする、という整理が重要になる。

胃軸捻転の分類は、臨床コミュニケーションの共通言語として価値が高い。小児外科領域の解説では、捻転の形から長軸捻転と短軸捻転に分類され、さらに急性・慢性・間欠性(反復性)にも分けられるとされる。これを押さえると、「慢性で反復する嘔吐+たまたま当日は軽い」という患者でも、上部消化管造影のタイミングや、次の一手(CTで合併症評価、外科コンサルト)を組み立てやすい。

また、上部消化管造影は“整復後の評価”や“再発リスク説明”にも関与する。保存的治療(減圧・内視鏡整復)で一旦落ち着いても、一定割合で再発が報告されているため、形態(固定不全や誘因)の把握がフォロー設計に直結する。単発の「造影で変形」ではなく、「なぜそれが起きうるのか(支持組織の弱さ、横隔膜疾患など)」に説明がつながることが、医療者側の安心感にもなる。

胃の形態異常とCT所見(血流障害・門脈内ガス)

救急・入院診療で胃の形態異常が“本当に怖い”局面は、捻転や絞扼が絡んで虚血・壊死・穿孔へ進む可能性があるときである。日本消化器病学会の解説では、腹部CTで胃の著明な拡張や走行異常が診断に役立ち、造影CTは血流障害や門脈内ガスの有無から、絞扼や穿孔など重症度判断に有用とされている。つまり「形が変」だけでなく、「壁が生きているか」を見る意味がCTにはある。

同資料では、胃軸捻転症は胃の通過障害から胃拡張をきたす疾患で、成因として特発性と続発性、軸(長軸型・短軸型)、方向(前方型・後方型)、急性・慢性、完全・部分などに分類できると整理されている。これらの分類を“検査オーダー”に翻訳すると、造影CTは「合併症の有無を詰める」、造影(UGI)は「捻転形式の理解を深める」、という役割分担が見えてくる。症状が強い急性型が疑わしい場合は、撮像タイミングを遅らせない判断が重要になる。

胃軸捻転は成人ではまれとされる一方、見落とすと致命的になり得るというギャップが臨床の落とし穴になる。小児外科の解説では、捻転が高度になると胃に血液が流れなくなり壊死・穿孔・ショックに至ることがあり、診断や手術が遅れた場合の死亡率が高いという報告もある、と述べられている。形態異常という“穏やかな言葉”に引きずられて重症サインの評価が遅れないよう、画像とバイタル・疼痛・代謝の不一致に敏感でいる必要がある。

胃の形態異常と内視鏡(内視鏡的整復・挿入のコツ)

内視鏡は、胃の形態異常を「見える化」するだけでなく、状況によっては治療(整復)にも関与する点が他検査と異なる。日本消化器病学会の解説では、保存的治療として胃管による減圧や内視鏡的整復を行うとされ、整復困難例や反復例、血流障害で壊死・穿孔を伴う場合などは外科的治療が適応と整理されている。つまり内視鏡は“万能”ではなく、適応と撤退ラインを共有する検査である。

一方で、形態異常は内視鏡手技そのものの難易度にも影響する。瀑状胃のように折れ曲がりが強い胃では、通常の視野と管腔の向きがずれ、挿入が難しくなることがあると、内視鏡関連の解説記事で述べられている。現場的には「胃角が見つからない」「幽門方向が読めない」などの“いつもと違う違和感”が、形態異常のサインになることもある。そうしたときに力で押すより、送気量、体位、スコープのトルク、アングル操作の再設計が安全性に直結する。

参考)https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=3804

瀑状胃に限らず、形態異常例では「症状の原因が器質的病変か、形態に伴う機能的停滞か」の切り分けが重要になる。形態の説明だけで患者が納得してしまうと、実は潰瘍や腫瘍、ヘルニアなどが背景にあるケースの精査が遅れ得るため、内視鏡レポートでは“形態”と“粘膜所見”を別項目として明確に書く運用が望ましい。特に救急搬送や紹介時は、形態異常という一語が情報圧縮になりすぎるため、観察範囲と観察不能部位も含めて残すのが安全である。

胃の形態異常の独自視点(説明と安全設計)

検索上位の解説は「瀑状胃=体質」「胃軸捻転=緊急」という二分で語られがちだが、現場ではこの間に“説明の失敗”という三の問題がある。たとえば健診で「形態異常」とだけ伝わると、患者は「病気なのか、放置でよいのか」を自己解釈し、症状が出ても受診の閾値が上がってしまうことがある。逆に「よくある形」とだけ説明すると、嘔吐できない嘔吐発作や強い上腹部膨隆などの危険サインが出た時に受診が遅れるリスクが残る。ここで医療従事者が担うべきは、“形の説明”ではなく“次に起きたら何をすべきか”まで含めた安全設計である。

安全設計の実務としては、形態異常を指摘した時点で、少なくとも次の2階建てで伝えると齟齬が減る。1階は「今回の検査で直ちに危ない所見は何か(出血・穿孔・高度狭窄の有無など)」、2階は「形態に関連して起きやすい症状と、危険サイン(受診の目安)」である。胃軸捻転の急性例で重要なBorchardt三徴(吐物のない嘔吐発作、上腹部膨隆、胃管挿入困難)は、医療者側が知っているだけでなく、患者側には“言い換えた形”で共有できると再受診のタイミングが早まる可能性がある。

また、カンファレンスや申し送りでは「形態異常」の内訳を“疑う病態”として言語化するのが有益である。たとえば「瀑状胃で挿入困難」「胃拡張+走行異常で捻転疑い」「造影CTで血流障害や門脈内ガスの評価必要」など、次のアクションが動詞で入る形にすると、担当交代後も意図が残る。形態異常は、画像所見というより運用上のリスク(検査難度・誤解・見落とし)を含むため、“説明・検査・緊急度”を一体として扱うのが医療安全の観点から意外に効く。

【胃軸捻転の分類・診断・治療(Borchardt三徴、造影CTの重症度評価、造影の捻転形式把握)に有用】

https://www.jsge.or.jp/wp-content/uploads/2023/08/118-12A.pdf

【胃軸捻転の症状経過(急性・慢性・間欠性)や重症化(壊死・穿孔)と治療の考え方がまとまっている】

http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/ijiku-nenten

タカヂア 【指定医薬部外品】新タカヂア錠 250錠